派手なのは苦手なので、とりあえず隠れて敵を倒そうと思う 作:名無しの投稿者
い、一応私の正月休みは七日までなのでギリセーフという事にしておきましょう!
それと次回予告の“結婚”の文字に反応する方が結構多かったですね。狙い通りです!
きちんと予告通り結婚しますよ。嘘予告はしません!
「あっ、そうだ。蒼汰」
「何? 何かあった?」
ある日の食事中、蒼汰は母親に呼ばれ顔を向ける。
「今週の日曜日、結婚式だから予定空けときなさい」
「……は?」
◇◇◇
「「結婚式!?」」
「……あぁ。母さんの妹、つまり俺の叔母だな」
ハイドは母親に言われた内容を、翌日ギルドホームにてメイプルとサリーに報告していた。
「ハイドくんも行くの?」
「……幼い頃に遊んでもらったし、何度かお世話になった記憶もある。行かないのは流石に不義理だ」
「まぁそうだね。じゃあ日曜日はログインできないんだ?」
「……そうなるな。朝から家を出るし、帰るのは夜になると聞いてるから」
「ほ~。つまりハイドも日曜はログインできないのか」
机に座って話していたハイド達の背後から、クロムが現れる。
「クロムさん、ハイド
「いや、さっきまでカスミと一緒だったんだが、カスミも今週の日曜日親戚の結婚式に出席するんでログインできないそうでな。ハイドも同じみたいだから偶然だなと思ってよ」
「……そうですね」
「もしかしたら、ハイドくんとカスミが出席するの、同じ結婚式かもね!」
(いや、そんな訳ないだろ。全国で結婚式場が幾つあると思ってんだよ)
ハイドも確かに同じ日に結婚式に出席するのは偶然だとは思っているが、流石にそれが同じ結婚式だとは考えていなかった。
(ただでさえメイプルとサリーが同じクラスなのに、カスミさんともリアルで会うとか、そんな偶然が何度もあるとは思えない)
その考えがフラグになるなんて、この時のハイドは思いもしなかった。
◇◇◇
日曜日当日。
式の開催場所が蒼汰の住んでいる場所から少し離れているので、早朝から母親に連れられ会場に向かう。準備を整えて結婚式会場であるホテルの宴会場に到着すると、既に何人もの招待客が集まっていた。
この挙式は所謂『人前式』と呼ばれるもので、この宴会場で結婚式を行いそのまま披露宴へと移行する。
蒼汰の母親が人が集まっている新郎新婦の方へ歩いていくと、新婦の方が気付いて近付いてきた。
「姉さん! 久しぶり! 元気だった?」
「ホント久しぶりね。あなたも元気そうで何よりだわ」
「もちろんよ! 今日来たのは姉さん一人?」
「夫は仕事の関係で来られなかったけど、息子は連れて来たわよ。ほら、蒼汰」
「……久しぶりです。結婚おめでようございます」
記憶にある女性とは言え、蒼汰の記憶上最後に会ったのは小学生の低学年であり、それから六年以上経っている。少々他人行儀になってしまうのも致し方ないだろう。
「え? あっ! 君蒼汰君? 大きくなったわねぇ! ゴメン全然気付かなかったわ!」
「気にしなくていいわよ。この子影が薄くて、時々私でも見失う事あるから」
「いや、それはそれで母親としてどうなのよ……」
(それはそうなんだけど、何か面目ないな……)
自分の体質の問題なので、蒼汰はどこか申し訳なさを感じてしまう。その後新郎とも程々に話し、その場を離れた。
「いや~久しぶりに会ったわ。やっぱり距離が遠いと中々会う機会もないわね」
「そうだね」
母親に相槌を打ちながら豪華な内装に視線を移す蒼汰だったが、ふと一人の女性に目を止めた。周りの女性が殆どドレス姿な中、その女性は珍しく桜色の綺麗な着物を着ておりそれなりに目立っている。腰辺りまであるストレートの黒髪と、その髪に付けられた桜の髪留めは着物にも合っており非常に綺麗な女性だ。
だが蒼汰は、容姿や着物姿が理由で女性を見ていた訳でない。
(桜色の着物、長い黒髪、桜の髪飾り……何処かで見たことあるような……)
「蒼汰? どうかしたの?」
「いや、別に……」
母に声を掛けられすぐに視線を前に戻したが、そこは母親だ。直前まで蒼汰が何処を見ていたかすぐに分かった。
「あら? あの娘……」
その女性に心当たりがあった母親は、足早にその女性に近付いていく。
「ねぇアナタ、もしかして
「え?」
着物の女性は急に声を掛けられ驚いたように母を見ていたが、やがて誰だか分かり目を見開いた。
「
因みに玲奈は蒼汰の母の名前だ。
「いや~綺麗になっちゃって~見違えたわ~」
「ありがとうございます。玲奈さんもお変わりなさそうで」
どうやら澄玲というらしい女性と、玲奈の間で話が盛り上がり蒼汰が置いてけぼりになる。
「あっ、いけない。蒼汰、憶えてるかしら? 私の兄の娘、蒼汰の従姉よ」
「ん? 蒼汰? 蒼汰がいるのか?」
「えぇ、確か私の後ろに……」
「ここにいる」
「おぉ! そこにいたのか! ……あれ? 少し前に同じ様な事があったような……?」
澄玲が首を傾げている一方、蒼汰の方も澄玲に既視感を感じていた。
(やっぱりどこかで会った事がある、しかも結構最近なはず……どこだ? どこで会ったんだ? 俺に年上の女性の知り合い何ていないはずなんだけど……?)
必死に記憶を遡っている蒼汰を見て、玲奈はやはり思い出せないかと笑みを零す。
「小学校に入る前ぐらいにあったことあると思うんだけど」
「小学生に入る前……? …………あ~何となく、古い物好きの親戚のお姉さんに遊んでもらった記憶がある」
「それが澄玲ちゃんよ」
「出来れば骨董品好きと言って欲しいがな。でも本当に久しぶりだな、蒼汰」
「……えぇ。澄玲お姉ちゃ、お姉さん」
昔の呼び方が出た蒼汰だが、慌てて言い直す。その様子に思わず澄玲が噴き出す。
「フフッ。別にお姉ちゃんでもいいんだぞ?」
「……揶揄わないで」
ニヤニヤしながら言って来る澄玲に、蒼汰は照れたように顔を背ける。
「そう言えば澄玲ちゃん、アナタ良い人いないの? もう成人したでしょう?」
「えっ!? いえ、その……そういう人は、まだ……」
いきなり始まった下世話な話題に、澄玲は困惑し頬を僅かに染める。だが玲奈の方はそんな澄玲の様子などお構いなしに話を続けた。
「そうなの? 澄玲ちゃんは綺麗だしあんまり心配はしないけど、いい男がいたら積極的になった方がいいわよ? そういう人は機を逃したらいつの間にか他の女性といい関係になってたりするからね」
「は、はい」
その後は玲奈と澄玲が話し、蒼汰は母親と話す澄玲をじっと見つめていた。
(母さんの旧姓は確か『香川』、だったはず。つまりこの人のフルネームは『
結局二人の話が終わるまで考え続けたものの心当たりは思いつかず、蒼汰は気になったが一旦頭の隅に置いておく事にした。
◇◇◇
結婚式も無事に終わって、そのまま順調に披露宴に移行する。それぞれ席を離れて新郎新婦と話をしに行ったり他の招待客と話したりと、自由に歓談の時間を楽しんでいた。
「ふぅ……」
「ん? 蒼汰か?」
「……澄玲お姉さん」
結婚式の開始から数時間も経過して蒼汰も疲れてしまったので壁際で一息ついていると、先に壁際に立っていた澄玲が声を掛けてきた。
「玲奈さんはどうしたんだ?」
「……母は、叔母の方に行ってる。話が長かったから、俺だけ離れたんだ」
「そうなのか」
「そう言えば、さっき母さんからチラッと聞いたんだけど、澄玲お姉さんお爺ちゃんの骨董品屋で働いてるの?」
「あぁ。昔から骨董品とか古いものが好みでな。無理を言って働かせてもらっている。中々楽しいよ」
(う~ん、やっぱりどこかで会った気がするんだよな~……どこだ?)
蒼汰はやはり澄玲の姿にどこか既視感を感じ、じっと見つめているとやがて気まずげに澄玲が蒼汰の方を向く。
「そ、その、蒼汰? 私の顔に何かついているか?」
(…………あぁ、なるほどなるほど。彼女に似てるのか、スッキリした)
ようやく彼女に既視感を感じていた理由にピンときた蒼汰は、数度頷いて目線を外す。ただそうなると訳が分からなくなるのは澄玲の方だった。
「いや、人の顔をじっと見つめた挙句数度頷いてくれるな。気になるだろ」
「(…………訳聞きたそうだし、一応確認できいた方がいい、のかな?)……ゴメン。ただ澄玲お姉さん、少し聞きたい事があるんだけどいいかな?」
「な、何だ?」
「最近、ゲームとかしてる?」
突然何の脈絡もない質問に目を丸くした彼女だったが、特に何も聞かずに素直に頷いた。
「あぁ、最近ハマってな。それなりに話題のゲームだぞ」
「……それって『NWO』だったりする?」
「なっ!」
約十年越しに会った従姉弟に、唐突に自分の嵌っているゲームタイトルを当てられて澄玲の肩がビクッと震える。
一方の蒼汰は、その澄玲の反応により自身の予想の確信が持てた。
「やっぱりカスミさんだったんだ」
「な、何故私のネームを……!?」
「まぁ気付かないよね。俺普段忍装束でほぼ顔隠してるし」
「忍装束? ……あぁ! ハイドか!! えっ、本当にハイドなのか!?」
蒼汰の言葉で結論にようやく彼の正体に辿り着いたが、その真相に驚き澄玲の声が大きくなる。
「本当にハイドだよ。にしても驚いた。カスミさんも今日親戚の結婚式に出席するのは知ってたけど、まさか同じ結婚式とは思わなかった(そんな話はしてたけど、ガチで現実になるとは思わなかったからなぁ)」
「ん? 何故それを知って……あぁ、クロムか」
「そういう事。しら、サリーとメイプルに今日の結婚式の話をしてたら、カスミさんも同じ日に親戚の結婚式だって話をクロムがしてきてね」
「しら……? いや、そうか。まぁ別に口止めもしていなかったが」
危うく出かけた本名に澄玲は若干反応するが、スルーを選択した。深く聞く必要はないと判断したのだ。
「ところでさ、前々から思ってたんだけど」
「何だ?」
「澄玲お姉さんって、クロムが好きなの?」
「………なっ!!」
澄玲の頬が一瞬で真っ赤に染まる。返答を聞くまでもなく図星である。
「あ~分かった分かった。何となくそうじゃないかなぁとは思ってたんだよね」
「ななな何をいい言っているか全く分からない! あぁ全くだ!」」
(その反応と顔で既に自白してるって気付かないのかな?)
耳まで赤くなった顔に動揺しまくりの態度、蒼汰でなくとも分かりそうなものである。
「クロムって、イズさんと結構仲良さげだよね。気の置けない関係って感じかな?」
「や、やはりそう思うか!?」
(めっちゃ食い付くじゃん)
普段からそう思っていたのか、最初に誤魔化そうとしていたはずなのに嬉々として話し出す。
「以前から思っていたがあの二人は距離が近すぎる! やけに気安いし、やはりそういう仲だと思うかハイド!?」
「俺に聞かれても知らないから。一旦落ち着いて。あと近いから離れて」
「はっ……! す、すまない……」
いつの間にか詰め寄っていた澄玲を、蒼汰は若干鬱陶しそうに押し返す。澄玲も蒼汰の言葉で我に返った。
「蒼汰、その……」
「ん、分かってる。誰にも言わない。澄玲お姉さんがクロムを好きだって事もね」
「なっ! くぅ……! そ、そういう蒼汰はサリーをどう思ってるんだ!?」
「ん? 何でサリー?」
「え? あぁいや、そうか。そうだったな……」
「急に納得されても困るんだけど。何の話?」
本気で分からない態度の蒼汰に、澄玲は頭を抱える。気付いていないだろうなとは思っていたが、この話の流れで分からない程、欠片も分かっていなかったとは思っていなかったのだ。
「はぁ……お前はもう少し人の気持ちを考えた方がいいと思うぞ?」
「人の気持ち? 本気で何の話?」
「サリーも苦労するな……」
「だから何でサリー? いい加減教えて欲しいんだけど?」
「自分で考えろ……」
澄玲は心底呆れた感じでこめかみを抑えながら、深くため息を吐いた。彼女にとって蒼汰の鈍さは度を越していたのである。
「むぅ……まぁいいや。どうせこれ以上粘っても教えてくれなそうだし」
「そう拗ねるな。お前が気付かないと意味がないんだ」
「分かったよ」
『それでは皆様、ご着席ください』
「時間みたい。それじゃ戻るね」
「あぁ。またな」
丁度歓談の時間も終わり、二人は席に戻った。その後も披露宴は順調に進み、つつがなく終了するのだった。
という訳で、
騙されましたか?
オリジナル設定
プレイヤーネームの由来は、苗字と名前の一文字目をくっつけた。
蒼汰(ハイド)との関係は従姉弟。澄玲の父親が蒼汰の母親の兄。
澄玲は父方の祖父の店である骨董品屋で働いている。
実は蒼汰が幼い頃に会ったことがあるが、蒼汰の方は当時まだ幼かったのであまり覚えていない。ただ骨董品などの古い物が好きな従姉がいるのは母伝手に聞いていた。
余談設定:蒼汰の母親の名前
次回、思い悩みます。
次回は今月中に更新予定。