派手なのは苦手なので、とりあえず隠れて敵を倒そうと思う 作:名無しの投稿者
「ハイド、一緒にレベル上げに行かないか?」
「別にいいけど、クロムはどうしたの?」
「ばっ! 声が大きい! 今はクロムは関係ないだろ! からかいが過ぎるぞ! クロムは今日は仕事が忙しくてログインできんそうだ!」
「あぁ、そう。分かった、いいよ」
「よし! では早速行くぞ、ハイド!」
「ちょ、ちょっと待ってよ! 腕掴んで引っ張らないでよカスミさん!」
「むぅ……」
慌ただしくホームを出ていくハイド達を頬を膨らませて眺めていたサリーに、メイプルとカナデが近付いてくる。
「何か最近、あの二人親しげだよね~」
「うん! 仲良しだね!」
純粋なメイプルはともかく、カナデは完全に揶揄い目的だ。顔にニヤニヤと笑みが零れている。
「サリー、うかうかしてたらカスミにハイド取られちゃうよ?」
「なっ! べ、別に私は関係ないし!」
「でもサリー、ハイドくんのこと好きなんでしょ?」
「は、はぁ!?」
反射的に反論しようとするも、メイプルの揶揄いの色はない純粋な瞳に思わず言葉が詰まる。その後ゴニョゴニョと小さく言い訳を呟いていたが、やがてサリーは観念したように頷いた。
「ぐぬぬ……! ………はぁ、そうだよ。認める認めます! 私はハイドが好きだよ! これで満足!?」
サリーが初めて自分の口で想いを認めたので、メイプルもカナデも……ついでにいつの間にか同じ机についていたイズも、皆ニヤニヤと笑みを浮かべている。
「ようやく認めたわね、サリーちゃん♪」
「イズさん!? いつからいたんですか!?」
「ここに来たのはついさっきだけど、サリーちゃんがハイドくんと仲良しのカスミに嫉妬してむくれてた所から話は聞いてたわ」
「最初からじゃないですか! あと別に嫉妬はしてないです!」
そうは言うものの、その時のサリーの機嫌は
「それで、サリーちゃんがどうやったらだ~い好きなハイドくんに振り向いてもらえるか、だったかしら?」
「そんな話はしてないです! 一から十まで捏造するのやめてくれません!?」
もうサリーは羞恥やら怒りやらで目をグルグルさせて限界寸前だ。顔の赤みもどちらの感情のものか分からなくなってきている。
「はいはい、揶揄い過ぎたわ。ごめんなさいね? でもこのまま眺めてるだけだと、本当にカスミにハイドくん取られちゃうわよ? 彼女美人だし、いつも和服着てるから分かり辛いけど胸は私以上に大きいし」
「イズ、その話僕の前でするのやめてもらっていいかな? 一応こんななりでも男の子なんだ、僕」
カナデが苦笑しながらイズを諫める。中性的な容姿を持つ自覚はあるが、心は完全に思春期の男子なので、女性的な部位の話となるとやはり少し照れてしまう。因みにこの話は、自分の胸に手を当てて少し落ち込んでいるメイプルにも流れ弾を受けている。
「サリーちゃんは可愛いしスレンダーでスタイルもいいと思うけど、そこら辺はやっぱりカスミには負けちゃうでしょ? ハイドくんは外見だけで女の子を選ばなそうだけど、やっぱり男の子だし……ね?」
「ぐぅ……!」
サリー自身も女性的な魅力の面でカスミに敵わないのは既に分かっていた。まだ高校生で成長の余地があるとはいえ、現時点での差は圧倒的だ。
「だから、もっと積極的にハイドくんにアピールすべきよ! サリーちゃんの奥手な部分は面白、じゃなくて可愛いと思うけど、奥手なだけじゃ男の子に振り向いてもらえないと思うの!」
「今何か変な単語が出てきませんでしたか? 面白……?」
「特にハイドくんはサリーちゃんの気持ちに欠片も気付いてないぐらいとっても鈍ちんさんだし」
「無視ですかそうですか」
普段揶揄う以外は二人の関係を微笑ましく見守っていたイズはどこへやら。今は関係を進めようとサリーを唆している。
ただ内心では、見守り仲間だったのはずのカスミが急にハイドと距離が近くなったことについて、帰ってきたらきっちり問い詰めようと考えていた。まぁそれは後の話なのでとりあえず置いておこう。
「イズの言う事も一理あるかもね~。ハイドの鈍さは常軌を逸してるし」
「ならハイドくんをデートに誘ってみるって言うのはどうですか?」
「いいわねメイプルちゃん! その案採用よ!」
「ちょちょちょっと待ってください!?」
「「え?」」
気付けば本人の意思をガン無視して、とんでもない方向に進みかけたので慌てたサリーが声を上げる。
「え? じゃありませんよ! 私デートになんて誘いませんから! って言うか誘えませんから!」
「まぁサリーは恥ずかしがり屋だからね~。それはちょっと難しいんじゃない?」
サリーだけでなくカナデにも言われて、二人は少し考えてみる。揶揄われただけで顔を真っ赤にしてしまうサリーが、ハイドをちゃんとデートに誘えるのか……
「無理ね」「無理だね」
「でしょ?」
「そうなんだけど、断言されるとそれはそれでむかつく……!」
サリーの憤りは当然のようにスルーされ、切り替えるようにイズが咳払いをした。
「別の方法を考えましょう。カナデは何か案はあるかしら?」
「案って言われてもな~。う~ん……じゃあ普段と違う格好してみるとか?」
「普段と違う格好?」
「うん。ゲームだといつも同じ服、と言うか装備でしょ? 確かお洒落な服を売ってる店が町にいくつかあったはずだし、そういった服を着てみたらどうかなって思って」
「「それだ!」」
メイプルとイズが満面の笑みで机を叩きながら立ち上がる。この段階で、サリーはこれを拒否するのは無理だと悟った。先程と比べて勢いが段違いなのだ。
「服だけじゃなくて、髪型も変えてみたらどうかしら。サリーちゃんいつもポニーテールだし、印象が大分変るんじゃない?」
「いいかもです! 普段と違うサリー見てみたい!」
「……テンション高いなぁ」
二人はキャッキャとはしゃぎながらどこの店に行くか計画を立て始める。
サリーも女の子なのでお洒落に興味がないわけではないが、この二人のテンションに圧倒され気圧され気味だ。
「あ、あの~。出来れば髪は楽だからこのままの方がいいんだけど……」
「「ダメ!」」
「ア、ハイ。そうですか……」
ダメもとで行った抵抗も瞬殺され、もう好きにしろと言わんばかりにサリーが机に突っ伏した。そんなサリーの肩に、カナデが手を置いて優しく声を掛ける。
「頑張ってサリー。きっと着せ替え人形になると思うけど」
違った。死刑宣告だ。
「うぅ……カナデ、代わってくれない?」
「イヤだ」
サリーのお願いも、カナデにすげなく断られる。
「って言うか無理じゃない? 二人ともサリーにお洒落させる気満々だよ?」
「分かってる……でも絶対振り回される」
「それは……諦めた方がいいんじゃない?」
「だよねぇ……はぁ」
大きなため息を吐くサリーにカナデは同情するように苦笑した。一方メイプルとイズはそんなサリーの様子などお構いなしである。
「サリーはどんな服が似合うと思います?」
「そうねぇ。サリーちゃんの装備はピッチりとしてカッコいい感じだし、もっと女の子らしい可愛らしい服なんてどうかしら?」
「いいですね! あっそうだ! サリーっていつも青い服着てるので、赤とか緑の服なんてどうですか!?」
「それもいいわね!」
「はぁ……憂鬱だなぁ……」
「うん……ホント、頑張ってね」
遂に気力がなくなったサリーは、カナデの言葉にも手をひらひらと振って返すだけだった。
◇◇◇
翌日。ログインしたサリーは待ち構えていたメイプルとイズに捕まり、見た目を変えるアクセサリーが売られている店に連れ込まれた。
「お~色々ある!」
「どんなのがいいかしら?」
「もう好きにして……」
様々な服や髪形を試され、既にサリーはクタクタだ。しかしメイプルとイズはそんなサリーなどお構いなしである。
「ワンピースもドレスも可愛くて迷っちゃうわ♪」
「ミニスカートも可愛かったよ!」
「……あの、さっきから思ってたんですけど、何でさっきからスカートばっかりなんですか? 出来れば私はジーンズとかの方が好きなんですけど……」
これまで試着した服が全てスカートだったことに疑問を覚えたサリーがその服を選んできたイズに聞いてみると、あっさりとした返答が返ってくる。
「だってサリーちゃんの装備はショートパンツじゃない。いつもと違う服を選ぶのが目的なんだし、スカートになるのは当然でしょ?」
「それにサリー私服は全部ズボンだよね? だからスカートのサリーも見てみたいなって思って♪」
「…………そう」
メイプルの指摘した通りサリーの私服はパンツしかなく、スカートなど制服以外では着用しない。
ボーイッシュな格好を好んでおり、女の子らしいスカートは自分には似合わないという思い込みを持っていたからだ。
「大丈夫! スカートのサリーすっごく可愛かったよ! これならハイドくんも可愛いって言ってくれるよ!」
「っ! な、何でここでハイドの名前が出てくるのよ!」
「え? だって今選んでる服ってハイドくんに見せるために選んでるんだよね? 可愛く見られるために」
「うぐ! それはそう、だけど……」
ぐうの音も出ない反論に、サリーの頬が真っ赤に染まってく。ハイドへの好意に自覚はあるしそれも認めているのだが、他人に言われるのは恥ずかしいらしい。
「ねぇねぇサリーちゃん? こういうの着てみない?」
イズの手にあったのは、白いブラウスに紅色のコルセットスカートだった。首元にはスカートと同じ色の蝶ネクタイまで付いている。
「おぉ! マイやユイみたいな感じだ!」
「うぇ!? い、いえそういうのは遠慮します……私には似合わないし……」
「そんな事ないよ~! 物は試しだよ!」
「そうよサリーちゃん! 絶対可愛いわよ!」
キラキラとした目で迫る二人に根負けしたサリーが、イズの持ってきた服に着替える。ついでに服装に合わせ髪もツインテールにさせられた。
「うぅ、何か今までで一番恥ずかしいかも……」
「大丈夫だよサリー! とっても可愛いから!」
「そうね! じゃあこの服で決定!」
「ちょ! 流石にこの服着たままハイドに会うのは恥ずかしいんですけど!?」
今のサリーは服装に加え、ツインテールという髪型も相まって非常に可愛らしい印象を受ける。
普段サリーはカッコいい服装を好むので、印象を変えるという目的は十分に果たしているのだが、こんな格好で
「そんなに恥ずかしがらなくても大丈夫よ。今のサリーちゃんとっても可愛いから。私が保証するわ!」
「保証するって言われても……」
そういう問題ではないだが、これは言っても聞きそうにない。そう悟ったサリーは、口を噤んだ。
そんなやり取りをしている内に、イズは服とアクセサリーの代金をさっさと支払いサリーの背中を押す。
「それじゃあ、このままちょっとを散策しましょう♪」
「いやだから待ってください! 恥ずかしいんですって!」
「大丈夫だよサリー。別にハイドくんに会う訳じゃないし、ただサリーと街を周って色々したいなぁって思っただけだから。その恰好でハイドくんに会うのはまた今度ね!」
「その今度はずっと来ないで欲しいんだけどね……」
久しぶりにサリーとのんびりできるとルンルン気分のメイプルは、いつの間にか黒髪ロングでフリルの付いたスカートに服装が変わっている。普段の元気いっぱいな印象から打って変わり、おとなしそうな少女に見える。
自分の背中を押しているイズの方を見てみると、腰まである水色の長い髪がベリーショートになっており、メイプルと髪型が真逆になっている。服装もフリルの付いたアイボリーのオフショルダーに、紺色のミニスカートを履いていた。
「い、いつの間に……」
「ふふっ。サリーちゃんの服を選んだ時に、一緒に自分達のも選んだのよ。サリーちゃんを着せ替え人形にしてる時に思ったのよ。普段と違う服も気分転換になっていいかなって」
「薄々感じてはいましたけど、やっぱり着せ替え人形扱いだったんですね……」
分かり切っていたことではあったので最早怒りは湧いてこないが、堂々と宣言されてしまうと辟易してしまう。
「イズさ~ん! サリー~! 早く行きましょうよ~!」
待ちきれずにいつの間にか店の外まで出ていたメイプルの催促の声が聞こえてくる。
その声に目を合わせて苦笑しながら、二人はメイプルを追い駆けて店の外に出た。
「はいはい、そんなに慌てないでよメイプル。別に逃げた「……サリー、か?」り、は……しない、から……」
店の外に一歩足を踏み出した瞬間、とても聞き覚えのある声にサリーの体がピシッと固まる。
「あ、あれ? ハイドくんと、カスミ?」
「な、何で二人がここに……?」
「おぉ! 誰かと思えばメイプル達か! 普段と装備が違うから一瞬分からなかったよ」
イズやメイプル以外にハイドと一緒に居たらしいカスミの声もするが、サリーの耳には誰の声も届いていない。ギギギッと油の切れた機械のようなぎこちない動きで声のした方向を向くと、いつもの忍装束を装備したハイドがその場に立っていた。
因みにサリーはそれどころではないため目に映っていないが、カスミもハイドのすぐ隣に立っている。
「……ふむ」
一方のハイドは髪型から上下の服までじっくりとサリーを眺める。
動かずサリーを眺めるハイドと、状況が理解できず動けないサリー。
その状況は数秒間続き、やがてハイドがポツリと一言呟いた。
「……可愛い、と思う。普段と全然印象は違うけどよく似合ってる、と思う」
私服の女の子と出かけたことなどないハイドだが、何とか思ったことを口にする。少々自信無さげな語尾が付いているが、そもそも服装を褒めただけ上出来だろう。
だがその言葉で、サリーの羞恥は限界を遥かに突破してしまった。
「……………ひ」
「……ひ?」
「ひゃあああああぁぁぁぁぁ~~~!!!!!」
顔どころか手や足など全身を真っ赤にすると、反転して全速力でその場を走り去ってしまった。その速さたるや、【AGI】がサリーと近い数値であるはずのハイドやカスミをもってしても一瞬で消え去ったと表現できる程である。
「あ~あ。逃げちゃった」
「まぁしょうがないわね。恥ずかしいからこの格好では会いたくないって言ってたのに急に会っちゃったんだもの」
サリーが逃げて行った方向を見ながらメイプルが呟くと、イズは頬に手を当て溜息を吐く。サリーが本気で恥ずかしがっていたので少なくとも今日ハイドに会わせる気はなかったのだが、偶然というものは恐ろしい。
「……」
「ハイド、無言でこっちを見るな」
「……逃げられた」
「そうだな。逃げられたな」
「俺、何か変なこと言った?」
「……う~ん、返答に困るな。まぁなんだ。女の子と言う奴は複雑なんだ。察してやれ」
「そんなの無理だよ。俺男だし」
そういう意味ではないのだが……と肩を落とすカスミ。サリーの想いが通じる日は遠そうである。
どうすれば
「ん? 誰だ?」
「カスミ? 少しお話いいかしら?」
「あぁ、イズか。どうかしたのか?」
カスミが振り向くと、そこには満面の笑みを浮かべたイズが立っていた。だが何故だろう。惚れ惚れするような綺麗な笑み何にも拘らず、雰囲気がどことなく恐ろしい。
「い、イズ? 何やら恐ろしいオーラを放っているような気がするのだが」
「もう何を言ってるのよカスミったら。街中じゃスキルが使えないんだからそんなオーラ出る訳ないじゃない」
「お、落ち着こう! 頼むから一旦落ち着いてくれ!」
「あら~? 私は物凄く落ち着いているわよ~?」
「(そうは見えないから言ってるんだが!?)」
「いいから、こっちに、来なさい。分かったかしら?」
「……ハイ」
言葉で説得しようにも、イズは聞く耳を持たない。大人しくイズに押されるままハイドとメイプルから少し離れた。
「イズさん、カスミに何の話だろ?」
「……さあ? それよりも、メイプルもイズさんもいつもと
「うん! サリーの服を選ぶついでに買ったんだ! どう? 似合ってる?」
メイプルがハイド見せつけるようにクルリと一回転する。そんなメイプルをしばし眺め、ハイドは頷いた。
「……大人しそうに見える。性格を騙されそうだ」
「それどういう意味ー!?」
二人がじゃれ合っている一方、イズに連れていかれたカスミは少し離れた場所でイズに詰め寄られていた。
「それで? どういうつもりなのかしら?」
「な、何の話だ? それと手の力を弱めてくれないか?」
カスミの要求は無視されたどころか、逆に両肩に置かれた手の力がさらに強まった。
「い、痛い痛い! イズ! 一体何の話なんだ!? きちんと話してくれなければ分からないぞ!?」
「だ、か、ら! ハイドくんのことよ! 急に親しくしちゃって! どういうつもりなの!?」
「……ん? ハイド?」
何を言っているのか分からないといった風にポカンとするカスミに、イズはさらに捲し立てる。
「ここ最近のアナタ達の様子よ! 仲良さげだし、かなり距離も近いじゃない。カスミ、アナタまさかハイドくんのこと……」
「違う違う! それは誤解だぞ!?」
ここまで言われれば、カスミもイズが盛大に誤解しているのが理解できた。慌てて手を振って否定する。
「私には既に別に想いを寄せている相手がいる! ハイドとは親戚だから少し扱いが気安いだけだ! 全く他意はない!!」
「…………はい?」
今度はイズの方がポカンとする番だった。
二、三個掘り下げてみたい単語が出てきたが、とりあえず一番気になった内容から聞いてみる事にする。
「……し、親戚?」
「あぁ。先週の日曜日は私とハイドが揃ってログインしなかっただろ? その日は私の叔母の結婚式だったんだが、そこで偶然ハイドと顔を合わせてな。いや私も初めて知った時は驚いた」
「……因みに、ハイドくんとの関係は?」
「従姉弟だ」
即答で淀みない返答に加えて真っ直ぐなカスミの視線から、イズは彼女の話が嘘ではないと判断した。
「(一応ハイドくんの方にも確認する必要があるけど、多分本当でしょうね)ならいいんだけどね。でも仮に親戚同士でも急に仲良くなり過ぎよね? 知り合いだったの?」
「あぁ。と言っても、最後に会ったのはハイドがまだ小学校に入る前の話だがな。少し面倒を見た事があったんだ」
カスミの話にイズは納得したように頷いた。
「でも驚いたわ。アナタもハイドくんも急に仲良くなるんだもの」
「すまなかった。特に言う内容でもないと思っていたんだ。まさか誤解されていたとは……ん? もしやサリーにも誤解されているのか?」
「う~ん、微妙かしら? 私が少し不安を煽ったのもあるけど、アナタ達の仲の良さを見て嫉妬はしてたわよ」
カスミがやってしまったと眉間に手を当て項垂れた。確かに振り返ってみると、誤解される態度や言動に心当たりがある。
ハイドはサリーに好意を持たれているという自覚が全くないので、これはカスミ側が気を使わなければならないものだ。本当に何故伝わっていないのか分からないぐらい丸分かりな好意なのだが、分からない以上は仕方がない。イズの怒りも納得できる物だった。
「本当にすまなかったなイズ。以後気を付けて行動しよう」
「お願いするわ。じゃあ戻りましょ」
とりあえず話がひと段落したのでメイプル達の元に戻ると、二人に気付いたメイプルが手を上げた。
「二人共お帰りなさい! 何の話してたんですか?」
「カスミがハイドくんの従姉弟だったっていう話よ」
「へ~いとこ……いとこ? 従姉弟!?」
バッと勢いよく振り向いて確認するような目を向けてきたメイプルに、ハイドは少々気圧されながらも頷いた。
「……あぁ、そうだ。俺も知った時は驚いた」
「そうだったんだ!」
「知ったのはつい最近でな。随分誤解させてしまったようですまない」
(誤解? 何の話だ?)
ハイドが問い掛けるようにカスミに視線を向けるが、彼女は気付かなかったふりをしてスルーした。どうせ言ったところで理解されないからである。
(……これは教えてくれなそうだな)
自分に対する感情だけやたら鈍くなるハイドだが、それ以外に関しては割と鋭い。すぐにカスミが教える気がないと悟って引き下がった。
「あっそうそう。ハイドくんとカスミが親戚同士って話が衝撃的過ぎて聞き忘れるところだったわ」
「ん? まだ何かあったのか?」
まだ何か説明不足だったのかとカスミが振り向いてみると、そこにはニマニマとした笑みを浮かべたイズの顔が。先程とは別種の非常に嫌な気配を感じて慌ててイズの口を塞ごうとするが、時は既に遅かった。
「さっきカスミはもう好きな人がいるって言ってたけど、それって誰なの?」
「っ!!」
「えぇ!? そうなのカスミ!?」
(はっや……)
イズの言葉に素早くに喰いついたメイプルが、普段の鈍足が見る影もない速度でカスミに急接近して目をキラキラさせ真相を促す。
その純粋な眼差しと勢いに若干気圧されたものの、カスミの口はそう軽いものではなかった。
「絶対に言わんぞ!」
「え~。いいじゃない。別に減るものでもあるまいし」
(そりゃ言わないだろうよ。特にイズには絶対に)
仲間内に自分が気になっている男性の名前を出して牽制する女性もいるが、カスミはそういうタイプではない。
「ハイドくんは知ってる!? カスミの好きな人!」
「……言わない」
急にメイプルから質問の矛先を向けられるが、ハイドは視線を逸らしながら誤魔化す。
もちろんカスミの想いの先は知っているし、それも本人に聞いて確証も持っているが、かといって本人の許可なく言いふらしたりはしない。
(だからカスミさん? そんな顔でこっち見ないでくれませんかねぇ!?)
決して、真顔でハイドを見つめるカスミの目が怖くて誤魔化したわけではない。ないったらないのだ。
「…………と、ところで、サリーはどこまで逃げて行ったんだ?」
「「「あ」」」
すぐさまマップやフレンドリストで確認したところ、サリーは既にログアウトしていた。羞恥が抑えきれなかったらしい。
◇◇◇
「従姉弟~~~~~!?」
因みに翌日、
因みに気付いた方もいらっしゃるかもしれませんが、ハイドの喋り方には三段階あり、
一段階(初対面だったりまだ慣れていない人など、人見知り発動中の相手)・必要最低限しか喋らず、自分からは基本話しかけない。
二段階(仲間や友達など、一応もう人見知りしない相手)・自分から話しかける事もあるし冗談を言って揶揄う事もあるが、喋る内容を考えて話しているため言葉の前にワンテンポある。
三段階(身内など、完全に気を許した相手)・思ったまま喋る。言葉の前にワンテンポもない。
となっております。三段階目で話す相手は、今のところ母親かカスミ(従姉弟)のみです。
次回、四層へ。
今月中は多分時間的に厳しいので、目標は来月の始めの週にします!