派手なのは苦手なので、とりあえず隠れて敵を倒そうと思う 作:名無しの投稿者
~~運営ルーム~~
「……おぉ!? 何だこいつ!」
「何だ? 不具合か?」
「いや違う! ボッチスキルを二つも手に入れたプレイヤーがいるぞ!」
「「「何だって!?」」」
作業していたスタップの何人かが、この声に反応して立ち上がる。
「パーティー組んだ状態だと狙わなければほぼ確実に手に入らない、あの……!?」
「スキルによってはパーティー組むとむしろ邪魔になる、あの……!?」
「普通にプレイするには癖の強すぎる、あの……!?」
「「「ボッチスキルを二つもだと!?」」」
「仲いいな、お前ら」
連携して話す三人に、別の男が突っ込みを入れる。今や部屋の中のほぼ全員がこの話題に注目していた。
「どんなスキルを取得したんだ!?」
「【寡黙】と【隠者】だな。お、こいつ【
「暗殺者かよ! めっちゃウケる!」
「テンション高いな」
「こいつ二徹してるからな。深夜テンションだろ、深夜じゃないけど」
「【寡黙】と【
五時間話さず行動と、観察してからとどめを急所付近に限定して連続十匹撃破。確かに厳しい。それでもそんなスキルを実装するのがここの運営だが。
「後は【隠者】か。アレは見つかりさえしなければいいけど、普通はそんな上手い事いかないよな。流石に【廃棄】だろ」
「それがこのプレイヤ―、【廃棄】してないみたいだぞ」
「「「何だって!?」」」
「あのスキル使う気なの!? パーティ組まない気なの!?」
「誰だ!? 誰だよ、そんな寂しいプレイヤー!」
「えぇっと、取得プレイヤーは……『ハイド』だな。レベルは4で、プレイ時間は五時間ちょっと。もうログアウトしてるな」
「名前!
「プレイ時間五時間で取得って事は、開始から一言も話してないってことか!? 寂しすぎない!?」
「待て待て! それもそうだが、五時間で【
「おう! 映像は流石にないが、ログは今出すぞ!」
男が機械をいじり『ハイド』のログを出すと、一斉に周りの者達が一斉に集まる。
「マジで一言も話してねぇな! ゲーム中に喋ったの、ステータスを呼び出す時だけじゃねぇか!」
「それも今後は【寡黙】で喋らず出来るから、マジでこのプレイヤーもう話さなくなるんじゃないか?」
「あり得る!」
「ってか狙い正確だな。
「そして【
ハイドの行動に一通り盛り上がると、ログを出した男はその画面を閉じた。
「はい、ここまでな! プレイヤーの行動を面白がるのもいいけど、イベントの準備も進めろよ~!」
「「「は~い!」」」
「第一回イベントはPvPだ。参加人数も多くなるだろうし、準備は怠るなよ!」
「専用マップと、不参加プレイヤー用にイベントの様子を見られる画面の設定の確認やっとくぞ~」
「第一回イベントにこのハイドってプレイヤー出てくるかな?」
「どうだろな~。でも出てきたら確かに面白そうだな!」
そして運営達はワイワイと騒ぎながら……時に面白いスキルを取得するプレイヤー達の様子を見ながら、イベントの準備を進めていくのだった。
◇◇◇
その翌日。昨日の行動により運営に寂しい奴認定されているとは知る由もない蒼汰は、眠たい目を擦りながら教室に向かっていた。
(うぅ、眠い……。五時間もぶっ続けでゲームして夕食の時間に大幅に遅れて母さんに叱られるし、課題のやり忘れに気付いて慌ててやるはめになるし、お陰で寝る時間が大分遅くなった……全部完全に自業自得なんだけどさ……)
昨日ゲームを終えた後の出来事を思い返して、蒼汰は安堵と自身に対する呆れが混ざり小さく溜息を吐く。
(怒られただけでゲームに制限をかけられなかっただけマシか……正直アレだけ怒られてもやめる気は一切ないしな。昨日で大方スタイルのコツは掴めたから、効率を上げてもっと早くレベル上げも出来る。だったら次にやるべきは……)
まだ今日の学校もあるのに、既にゲームの予定を立て始める。昨日の失敗が生かされるか非常に不安である。
考え事をしながら教室の扉を開けて中に入ると、二人の女子高生が自分の席の周りで何やら盛り上がっていた。
「でさ! この前見つけた駅前のカフェがおいしそうだったんだ! 今日一緒に行かない?」
一人目の活発そうな少女は
「いいよ! 楽しみ!」
もう一人の少女は黒髪ショートカットの
性格は天然で少々ドジっ子な面もあるが、そこがまた可愛らしいと人気を集めている一つの要因でもある。理沙の友人らしく、二人で話しているのをよく見かける。
「……あの、白峯さん。ちょっと」
「じゃあ今日の放課後ね。あ~! 楽しみだな~!」
(そして案の定気付かれない……慣れてるからいいんだけど)
理沙が蒼汰の呼びかけを無視しているが、別に虐められているわけではない。蒼汰は非常に影が薄い、というか風景に溶け込んでいる。
一年間同じクラスにいても名前を憶えてもらえた回数は少ないし、場合によっては三年間同じクラスだったとしても忘れられる。それほど影が薄いのだ。
まぁ本人も目立つのを苦手とする性格により無意識に視線を避けるため、余計に認識されないのだが。
「あ、おはよう影山くん!」
ただ何故か楓には蒼汰を普通に認識できるのだが。
(今まで家族以外で普通に認識されたことはないから分かるけど、本条さんはちょっと特殊なんだよな)
「理沙、影山くん来たよ」
「え? うわっ! びっくりした。おはよ影山。いつからいたの? いたんなら声かけてよ」
「……おはよう。本条さん、白峯さん」
「理沙、影山くん声かけてたよ。理沙は気付いてなかったけど」
「えっ、ホント? ごめん影山」
「……別に。慣れてるから」
(寧ろ俺が声をかけた事に普通に気が付いてる本条さんの方が少数派だしね。本当に本条さんはどういう感覚してるんだろう……天然だから人とは少し違う感覚持ってたりして)
内心では少し失礼な事を考えつつ、蒼汰は授業の準備をするためかばんを開けた。
今回はゲームの話ではなく、ハイドのスキルに反応して運営とハイドのリアルの話です。
イベントやクエストを運営が監視したりする描写はあるんですけど、クエストを挟まないスキルの取得まで見れるか分からないので、そこら辺は捏造(オリジナル)で。
またハイドはメイプルやサリーと同じ学校の同じクラスにしました。原作キャラと知り合いって結構見かけますけどね。
次回は少し時間が飛びます。またクエストもオリジナル性もない、ただのレベル上げやスキルの練習を描写してもつまらないですしね。書いてる方も読んでる方も。
ただメイプルってNWOがサービス開始してからどのくらいでゲームを始めたのか、web版にも書籍にも漫画にも載ってないんですよね……大体の期間は察せられるんですけど。なのでそこら辺もまた捏造(オリジナル)でいきます。