派手なのは苦手なので、とりあえず隠れて敵を倒そうと思う   作:名無しの投稿者

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遅れて申し訳ありません!!
ドクストが面白くって……最終巻が発売してついつい一巻から読み返してしまいました……。
毎度書いてあるこの文言に皆さん反省していないと思われているでしょうか。実は私も内心『私って反省してないな』っと思っております。
次回こそは……次回こそは予告通りにしたい……!!


暗殺者と第五回イベント

 十二月に入り、『NWO』では第五回イベントが開催された。イベント内容は第三回イベントに似ており、公開されているイベントモンスターを倒す事で手に入るポイント数を競い合うというもの。そして今回はイベント期間中、現実(リアル)の時期に合わせて地形が変化しており、フィールド全域を真っ白な雪が覆い尽くし、空からも新たに雪が降り続けてる。

 

(別に寒くないし、雪は別にいいんだけど……視界が殆ど真っ白でイベントモンスターが見つけ辛いな)

 

 殆どのイベントモンスターは体が白いため、周囲の雪と同化して遠目からは非常に見つけ辛いのだ。

 

(ま、アレぐらいデカくて特徴があれば話は別だけど)

 

 ハイドの視線の先には、四メートル超の巨大な雪だるまがのっしのっしと歩いていた。

 目と口が石で鼻が人参、木の腕に袋を持っている。巨大な分見つけやすいのもそうだが、頭にある赤い色の帽子は全面雪景色の今フィールドではかなり目立っていた。

 あの雪だるまは今回のイベントにおいて、最もポイントの高いモンスターでもある。

 

(よし、やるか。【隠形】)

 

 ハイドは姿を隠すと素早い動きで雪だるまの背後を取り、()()に持った武器を構えた。

 

(一気に行くか。【隠れ身】【セクスタプルスラッシュ】)

 

 両手合わせて十二連撃を叩き込まれた雪だるまは、みるみるHPを減らして最後にポトリと何かを落として消えていった。

 

(……セクタプルまではやりすぎだったか。流石イズさん特製の武器。使いやすいし威力も高い)

 

 ハイドの両手にはいつも使用している【忍びの小刀】ではなく、二本の赤い短剣が握られていた。この武器は今回のイベントの内容を見たハイドがイズに製作を依頼したものだ。この短剣には両方とも、攻撃が炎属性になるスキルが付与されている。その分攻撃の威力が減少する欠点もあるが、今回のイベントモンスターは炎属性が弱点なので、今回のイベントに限ればこの欠点は仕事をしない。

 

(しかし(【暗殺】)対策……って訳ではないんだろうけど、最近首のないモンスターが増えてきたような気がする……)

 

 ハイドの短刀に付与されているスキル【暗殺】は、即死させるのに急所を狙う必要があるのだが、現在彼は【首狩り(ヴォーパル)】の効果によって首以外の急所が消失している。なので首が無いモンスターが相手だと、【暗殺】が発動できないのだ。

 

(……まぁできないものは仕方ない。その都度なんか対策してくか。さてさて、確か何かドロップしてた気が……)

 

 ハイドが雪だるまからドロップしたアイテムに近付く。青い包装に白いリボンが巻かれた箱。それを確認したハイドは一気に上機嫌になった。

 

(お、ラッキー。ドロップした♪)

 

 ハイドは雪だるまからドロップした青い箱を拾うと、アイテムの詳細を表示する。

 

【アイテムボックス】

十二月二十五日以降、一週間使用可能。中身はランダム。

 

 このアイテムは雪だるまから稀にドロップするアイテムで、中身は今回のイベント限定のスキルだ。ハイドは今まで何体か雪だるまを倒してきたが、【プレゼントボックス】がドロップするのは今回が初めてだ。

 

(ようやくドロップしたよ……最低一個は欲しかったから、これで一応は一安心かな)

 

 流石に今回のイベント限定と言われてしまえば、気になってしまうのが人の性である。だがそもそも雪だるまの出現率そのものがあまり高くない上に、【プレゼントボックス】のドロップ率が結構渋い。中には一つも手に入れる事の出来ないプレイヤーも出てくるだろう。

 

(そう考えれば一個でも手に入ればかなりラッキーだよな。後はポイントに専念しよう。ウチ(【楓の木】)は人手不足だし……)

 

 今回のようなフィールド探索型のイベントでは、人数と【AGI】の高さが重要になってくる。しかし【楓の木】は人数はもちろんのこと、【AGI】が比較的高いプレイヤーがハイドとカスミとサリーの三人しかいない。よってこの三人は第三回イベントの時と同様に、フィールド中を駆けずり回っている。無論他のメンバーも協力してくれてはいるのだが、他のメンバー全員のポイントを合わせてもハイド達の内一人が稼いだポイントにすら届かないのが現状である。

 

(別に不満はないけどね。こういうのは役割分担だし)

 

 カナデの記憶力や【魔導書】に応用力、イズの生産、マイとユイの攻撃力、クロムの決して倒れない粘り強さ、カラアゲの支援、そして何と言ってもメイプルの規格外性。ハイドも他のメンバーには随分と助けられてきた。今回は自分が助ける番だとハイド達は張り切っている。

 

(さてと、次は……ん?)

 

 モンスターを探すために動き出そうとしたハイドだが、メッセージの通知音に再び動きを止めた。

 

(メイプルから? えっと何々……? え? マジで?)

 

 メッセージの内容は、ギルドでクリスマスパーティーを行いたいため、食材集めに協力して欲しいというものだった。

 確かに今回のイベントでは、調理すればケーキやチキンなどクリスマスらしい料理になるアイテムがイベントモンスターからハズレアイテムとしてドロップする。数を集めて並べれば、パーティーらしくなるだろう。楽しい事が大好きなメイプルらしい催しだ。

 

(……いやいや、間に合うのか?)

 

 パーティーをしたいというのならば、ハイド的には協力するのに否はない。ポイント稼ぎのついでに食材を集めればいいだけなので、今とさして苦労は変わらない。だが時間が問題だった。

 

(クリスマスが過ぎるまでに全員が集まれる日が明日で最後だから、パーティーは明日やりたい。それは分かるけど、いくら何でも準備期間一日は短過ぎませんかねぇ!? 普通もっと余裕もってお知らせするよね!?)

 

 なおメイプルが今日突然思い付いてしまった結果である。

 因みに補足すると、現在ログインしているギルドメンバーはハイドの他にはメイプルとイズだけだ。なので調理担当であるイズを除くと、実質的にハイドとメイプルの二人だけで食材等を準備する必要がある。

 

(やりますよ! やりますけどね!! うおらぁ!! モンスターはどこじゃあぁ!!!)

 

 半ばヤケクソになりつつ、ハイドは猛スピードでモンスターを探すため駆けだしていった。

 

     ◇◇◇

 

 翌日。

 【楓の木】のギルドホームの居間にあるテーブルには、ハイドとメイプルで集めた食材で作られた料理が所狭しと並べられている。そしてギルドメンバーが一堂に会する中、ギルドマスターであるメイプルがジュースが注がれたグラスを片手に立ち上がった。

 

「えっと……さ、サリー? こ、こういう時って何て言ったらいいんだっけ?」

「えっ!? 何か言うために立ったんじゃないの!?」

「な、何も考えてなかったけど思わず立っちゃって……」

(何だそりゃ。まぁ割とノリと感情で生きてるメイプルさんらしいっちゃらしいけど)

「う~! メリークリスマス! 来年もよろしくお願いします! 乾杯っ!」

 

「「「「「「「「「乾杯っ!」」」」」」」」」

 

 マイとユイとカラアゲが料理をおいしそうに食べながら楽しそうに話したり、クロムがカスミの腰につけられた新たな刀について言及したり、新作のパズルをカナデにものの数十秒で解かれたイズが八つ当たり交じりに料理を押し付けたり。

 最初の音頭こそかなりグダグダだったものの、皆思い思いにパーティーを楽しんでいる。

 

(みんな楽しそうで何より。頑張って準備した甲斐があったよ)

 

 そんな皆の様子を、主催者の一人であるハイドはテーブルの隅っこで自分用に確保した料理を頬張りながら眺めていた。

 

(はてさて、明日から何しようかな? このパーティーの為にモンスターを狩るペースを大分上げたから、ギルド報酬に必要な分のポイントはもう確保できてる。となれば、イベント始まってほったらかしになってる【通行許可証】のクエストを進めようかな……)

「あっ、いたいた」

 

 ハイドが料理を一人で美味しく頂きながら明日以降の予定を考えていると、彼の隣の席にサリーが声を掛けながら座った。

 

「探してるのに全然見つからないんだもん。てっきりもうログアウトしちゃったのかと思った」

「……それは俺の体質の問題だ。流石にそこまで非常識じゃない」

 

 確かにハイドは騒がしい場所が苦手だが、いくら何でも皆で楽しんでいるこの場で無言でいなくなるような真似はしない。サリーの方も冗談だったのか、苦笑しながらゴメンゴメンっと軽く謝る。

 

「まぁありがとね。メイプルと二人で食材用意してくれたんでしょ?」

「……そうだけど、君の親友(メイプル)にきちんと言っといてくれないか? 準備期間半日未満は流石にきっつい」

「あはは~。私も聞いてないパーティーを何時から準備してたんだろうとは思ってたけど、やっぱりメイプルの突然の思い付きだったか」

 

 伊達に何年も親友をやってる訳ではなく、サリーはハイドの一言で大まかな事情を察した。その突然の思い付きによって自分達は大いに楽しませてもらっているが、準備する側はかなり大変だっただろう。

 そこで会話が一旦途切れ、サリーが何か言いたそうに髪を弄りながらチラチラとハイドに視線を送る。元より視線に敏感であるハイドがそんな露骨な視線に気付かない訳はなく、彼は怪訝な顔をしながらサリーに顔を向けた。

 

「……何?」

「ふぇっ!? な、何って何が?」

「……いや、さっきから見てくるから話があるのかなって」

 

 思いっきり図星を突かれ、サリーに顔が見る見るうちに赤くなる。そんなサリーを見て、ハイドは内心首を傾げた。

 

(何であんなに顔赤くなってるんだ? え、何言うつもりなの?)

 

 ハイドは察し自体は悪くないので、サリーが感じているのが羞恥心であるのは何となく分かっていた。ただ()()に何かを伝えるのに、何故そこまで恥ずかしがるのかが分からないのだ。

 相変わらず自分への好意限定で極端に鈍くなる奴である。

 

「そ、その! く、くくく」

「……く?」

「くくく、クリスマスイブ! って、空いてるかなって思って!」

 

 何とか言い切ったサリー。もはや首や耳を通り越し、全身が真っ赤だ。

 

(クリスマスイブ……って確か、24日だよな? 予定は……ないな。うん、問題ない)

 

 そもそもハイドが友人と呼べる人間は『NWO』で出会った人しかいないので、基本彼の予定はゲームのみだ。深く考えるまでもなく、予定がない日の方が圧倒的に多い。

 

「……問題ないけど、その日に何かあるのか?」

「り、現実(リアル)の方で、どこか遊びに行かないかなって思ったの」

 

 サリーはハイドの方を見ず、周囲をキョロキョロと見渡し挙動不審だ。そんな彼女の様子にハイドは若干違和感を覚えるも、特に言及する必要はないかなと思い直した。

 

「……別にいいけど、何時に何処集合だ?」

「う~ん、午前十時に駅前で」

「……分かった」

「じゃ、じゃあ、よろしくね!」

 

 それだけ言い終わると、サリーは顔の熱を覚ますようにパタパタと顔を仰ぎながら足早にその場を後にした。流石にもう限界だったようだ。

 

 

 さて、察しが良くなくても気付いたと思われるが、これはサリーが最大限勇気を出して誘ったデートの誘いだ。日付的にも状況的にもこれほど分かりやすいものも早々ないだろう。ただまぁ相手はハイドであるからして……。

 

(24日に駅前集合……オフ会かな?)

 

 ここまで分かりやすい伏線を張られても気付けない。果たしてサリーの想いが通じる日は来るのだろうか……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「く、クロム。その……少しいいだろうか」

「お、おうカスミか。どうかしたか?」

 

 なお、ハイド達とは反対側のテーブルの隅では、もう一つの方もまた進展しそうな雰囲気を出していた。

 




サリーさん、人生で最大の勇気出しました。

ってなわけで次回、クリスマスイブです。

次回は難産が予想されるうえに仕事も忙しくなるので、更新が来月になる可能性大です。ただまぁ一応今月中に更新できるように努力しますが、期待はなさらないでください。
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