派手なのは苦手なので、とりあえず隠れて敵を倒そうと思う 作:名無しの投稿者
今回本当に難産だった上に、仕事が忙しくて書く時間が無かった影響でモチベーションも中々沸かず……結果かなりの時間が経ってしまいました……。
では言い訳も程々にして、本編です。
「……因みにだけど、白峯さん」
「ん? 何?」
いくつかの店を冷かしながら歩いていた蒼汰は、ふと隣にいる理沙に質問を投げかける。
「……午前中は適当にぶらつくって言ってたけど、どこか行きたい場所でもあったのか?」
「いや? 別にないけど?」
「……え、ないの?」
「うん、ないよ?」
理沙の思わぬ答えに、蒼汰は目を丸くする。蒼汰は理沙に対して、割と綿密な計画を立てて行動する印象を持っていたのだ。少なくとも第四回イベントではそのように行動している。
こういう行き当たりばったりなのは
「まぁ影山が行きたい場所があったら割り当てやすい時間を作りたかったっていうのもあるんけど……私と影山って、お互いほとんど何も知らないでしょ? こうやってぶらつきながらでも話せたらいいなって思ったんだ」
理沙の言葉を聞いて、蒼汰は小さく納得の声を上げた。
先程澄玲に説明したように、蒼汰と理沙はNWOで会うまでは友人という間柄ではなかった。同じクラスの隣の席であったため全く話さないという訳ではなかったのだが、そういう関係まで発展するには如何せん蒼汰の気配が薄すぎた。本人に用事がない限り、雑談をする対象として頭に浮かんでこないのだ。
「……そう、だな。(別に話すようになって然程時間も経ってないし、気にしなくてもいいとは思うけど……まぁそこは白峯さんの匙加減かな)……分かった。何か聞きたい事があったら聞いてくれ」
「じゃあまずは……」
◇◇◇
その後蒼汰と理沙は、本屋やアパレルショップ、電気屋のゲームコーナーなどを冷やかして周った。なおゲームコーナーで理沙が興奮しっぱなしだったのは言うまでもない。
そして正午を過ぎたころ、理沙おすすめのカフェでお昼を済ませると、そのまま彼女の案内で設備の整ったゲームセンターへ向かった。
「私が知ってる中ではここがこの辺で一番いいゲーセンだよ。新しい筐体も入るの早いし」
(流石白峯さん、そこら辺詳しいな。いやしかし、白峯さん本当にゲーム好きだな)
蒼汰は説明しながら目をキラキラさせている理沙を眺める。
(午前中に白峯さんからおすすめのゲームを聞いたらめっちゃ語られたし、ゲームコーナーでも新作を熱心に見てたし。あれだけNWOをやってるのに、他のゲームにも手を出す気なのか?)
蒼汰は勉強以外の殆どの自由時間を、NWOに費やしている。
過去に何度かオンラインゲームをやっていた時も一つのゲームを集中してやっており、元々一つの事に熱中しやすいタイプなのだ。なのでNWOに嵌っている現在、然程他のゲームに関心が持てない。
因みに、家庭用ゲームでないゲームセンターのゲームは蒼汰の中では別腹扱いである。
「……確かに凄いな。こういう大きなゲームセンターには来た事ないから結構新鮮だ」
「あれ? 影山こういう場所初めてなんだ」
「……あぁ。俺が遊んだ事があるのは、デパートの中にあるような少しこじんまりしたところだけ」
なお親と共に来たデパートで蒼汰が勝手に行動せずとも毎回親が蒼汰を見失ってしまうため、建物内にあったゲームコーナーに放り込まれたというのが事の経緯である。
「……メダルゲームは結構長く遊べた」
「あぁ、なるほど……」
その言葉で概ねの経緯を察して、理沙は遠い目になった。蒼汰の親はかなり苦労してきたらしい。
「ともかく、何かやりたいゲームはある? 影山に合わせるけど」
「……じゃあ、アレで」
そう言って蒼汰が指さしたのは、ハンドルやペダルが付いた筐体、レースゲームだった。
「レースゲーム? いいよ。あ、ちょっと待ってね。今……」
理沙がいつもの調子で操作しようとして、ふっと思い返した。蒼汰は、ゲームセンターほぼ初心者である。
「……いや、やっぱり何でもない。それじゃあ早速やろうか」
(イヤ今絶対何か言いかけたでしょ。え? もしかして俺が知らないだけで、ゲーム開始前に何かするのが常識だったりするのか?)
蒼汰が戸惑っている間にも、ゲーム画面はどんどん先へ進んでいく。理沙がさっさと車体を選んでしまったので、蒼汰はとりあえず疑問を飲み込んで比較的扱いやすそうな車体を選択した。
「コースはどこにする?」
「……白峯さんのお任せで」
「了解」
あっさりとコースが決まり、スタートのカウントダウンが始まる。
(さて、取り敢えず操作方法は分かる。出来る限り奮闘してみようかな)
◇ ◇ ◇
レースが終わり、ファンファーレが鳴り響く。一位は理沙で、二位の蒼汰とはそれなりに差をつけてゴールした。
「影山、レースゲームは初めてなんだよね? その割には結構上手だったじゃん」
「……一応、マ〇オカートぐらいはやった事あるから
小型ゲーム機とアーケードゲームは大きく違うものの、車を走らせて競争する点は同じである。理沙も蒼汰から出てきた例えは一応理解できるので、苦笑しながら頷いた。
「……それより白峯さん。ゲーム中、大分やり辛そうに見えたけど」
「うぇ!? そ、そんな事はない、よ?」
何とか誤魔化そうとする理沙だが、目が泳ぎまくっているため説得力は全くない。また実際いつもの理沙であれば、自分に合ったエンジン出力とギア比に調整している。
初心者である蒼汰相手に本気でやるのは大人げないと感じた理沙が手加減の一貫として削った工程であり、それ故にやり辛かったのも事実だ。
蒼汰の観察眼は的確であり、予測は完全に的を射ていた。
「……確かに俺は初心者だけどさ、白峯さんのやりたいようにやっていいよ。白峯さんが色々なジャンルのゲームで相当上手いなのは察しがついてるし、接待プレイばっかりじゃつまらないでしょ?」
このゲームセンターに来るまで、蒼汰と理沙はお互いの事を色々と話し合った。
理沙は蒼汰がVRのオンラインゲームをいくつかやった事があるのを知っているし、その全てのゲームで殆どの人に気付かれずソロプレイだったのも知っている。
蒼汰の方も、理沙が父親の影響でレトロなゲームからVRゲームまで様々なゲームをやりこんでいるのも、いくつかの大会で優勝する程の腕前である事も知っている。つまり、初心者である蒼汰が少々差を付けられる
「………本当に本気でやっていいの?」
「……もちろん。俺も大会で優勝できるぐらいのプレイを見てみたい」
「……ふふっ。OK! 挑発は乗った! 世界ランクのレートの走りってやつを見せてあげる」
(……ん? 世界ランク? え、待って? 白峯さんってそのレベルなの?)
蒼汰は驚愕のあまり、コートを脱いで気合を入れる理沙を思わず凝視した。
理沙に大会で優勝経験があるのは知っているが、その大会の規模は聞いていない。
流石にゲームセンターで行われる程度とは思っていなかったが、世界で戦える程とも予想していなかったのだ。
◇ ◇ ◇
二度目のレースが終わった。今度は理沙は本気も本気。先程は事前工程だけでなくレースそのものも手を抜いていたようであり、二位である蒼汰を周回遅れにしてゴールした。世界ランクのレートも伊達ではない。
「よし、私の勝ち」
「……レースゲームで周回遅れって本当にあるんだな……」
「まぁこれが私の本気って奴よ。どうだった?」
「……圧巻だった。白峯さんって別次元なレベルでゲーム上手だよね」
「これまでたくさんやってきたからね。私、ゲームと名の付くものなら大抵のものは勝つ自信あるし」
理沙はその言葉通り、どのゲームをやっても蒼汰に大差をつけて勝ち続けた。
シューティングゲームや格闘ゲームなど、ゲームのジャンルを変えても蒼汰では理沙の相手にはならない。かろうじて理沙が得意ではないと宣言したダンスゲームでは近い点数まで迫ったもののやはり理沙には勝てなかった。
◇ ◇ ◇
そうしてゲームセンターで遊ぶこと数時間。外がすっかり暗くなるころ蒼汰と理沙はゲームセンターから出て帰路についていた。
「いや~楽しかった~。影山はどうだった?」
「……結構楽しめた。白峯さんのプレイは見てるだけで爽快感ある」
「そう? 何か照れるね」
蒼汰は理沙のあまりに圧倒的なゲームスキルを見て早々に勝つことを諦めて、自己ベストを上げたり理沙がやってるプレイを見たりと楽しむ方向を切り替えたのだ。
「あんまり誰かと来た事なかったんだよね~、ゲームセンター」
「……そうだったんだ」
「まぁ、女子でゲームが好きって人は中々珍しいしね。楓には結構いろんなゲームに付き合ってもらったけど、ゲームはあんまり好きじゃなさそうだったから流石にゲームセンターまでは誘わなかったかな」
今まで理沙が楓に様々なゲームをお勧めしてきたが(押し付けたとも言う)、いつも数日でリタイアしており長期間楓が嵌ったゲームはNWOが初である。
「だから私も今日はいつもの感じと違って新鮮で楽しめたよ」
「……よかった。ずっとぼろ負け状態だったから、白峯さんが楽しめてるかちょっと心配だったんだよな」
「そんなこと考えてたの?」
そんな雑談をしながら歩いていると、上空からチラチラと雪が降り始めた。蒼汰と理沙は、足を止めて上空を見上げる。
「あっ、雪だ」
(寒いなとは思ってたけど、雪が降るレベルか……これはあんまり長々と外にいない方がいいな)
「影山? どうかした?」
「……コレ」
「え? 何これ?」
蒼汰が肩に下げていたウェストポーチから袋を取り出して理沙に差し出すと、彼女は不思議そうに受け取った。
「……メリークリスマス」
「………え! クリスマスプレゼント!? 用意してたの!?」
差し出されたものの正体に理沙が思わず声を上げるが、厳密に言えばこれは用意していたものではない。午前中に理沙が少しその場を離れた際、彼女に似合いそうなものを蒼汰が選んでこっそり購入したものだ。
(
ウェストポーチの中に入っている包装紙に包まれたハンカチの存在と思い浮かべながら、蒼汰は内心でホッと安堵する。
蒼汰とて何も考えずに今日を迎えた訳ではなく、クリスマスプレゼント用に男性女性どちでも使えるハンカチを用意していた。ただ今日いるのが理沙だけである事と、午前中に理沙に似合いそうなものを見つけたため予定を変更したのだ。
「……先に言っておくけど、俺は誰かにプレゼントを贈った経験がないからセンスに一切自信がない。気に入らなければ遠慮なく言ってくれても、何なら捨ててくれても一向に構わない」
「いや貰っといてそんな失礼な真似しないからね!?」
自虐にしてもあんまりな言い分に勢いよく突っ込みを入れた理沙は、ふと蒼汰の目が笑っていることに気が付いた。
「……冗談だ」
「分かり辛い! 影山は表情がほとんど変わらないから本当に分かり辛いんだけど!?」
ぶつくさ言いながらも嬉しそうに袋を開けると、中からはファーが付いた水色の手袋が出てきた。
「……うん、暖かいし結構いい感じ」
出した手袋を早速身に着けた理沙は満足げに頷き、蒼汰の方を見る。
「どう? 似合ってる?」
「……似合ってると思うぞ。まぁ俺の感性が一般的かの方は自信無いけど」
「一々セリフが自虐染みてるのはどうにかならないの?」
理沙は呆れたように溜息を吐いていたが、今までの蒼汰の言葉から彼の友人関係の薄さは何となく想像がついていたためその関係だろうなと予想は付けていた。
だからと言って、そのままにするつもりも盲点ないが。
「私の好きな色だし、奇抜な柄でもないって言うか普通に単色のシンプルな手袋だからそこまで自信なさそうに言う必要ないでしょ。少なくとも、私は気に入ったよ」
「……そうか。白峯さんが気に入ったなら、それでいい」
満足そうに頷いた蒼汰は、帰るために理沙の傍を通り抜け……ようとしたところを理沙に首根っこを掴まれた。
「ちょっと待った! ストップストップ!」
「うぎゅ!?」
急に襟の後ろを掴まれ首を絞められた蒼汰は、咳き込みながら理沙に抗議の視線を送る。無言に圧力に理沙も謝りながら手を離す。
「ご、ゴメン。でも影山も普通に帰ろうとしてんじゃないわよ。はいコレ」
理沙はそう言いながら、肩に掛けていた手提げ鞄から袋を取り出して蒼汰に押し付けるように渡した。
反射的に受け取った蒼汰だがどうすればいいのか分からず困惑しながら理沙の方を見ると、理沙は赤く染まった頬を腕で隠して顔を背けた。
「い、今こっち見ないで」
「……えっと、これは……」
「いいから、開けなよ……」
諭された蒼汰が袋を開けると、中からは暖かそうな紺色のマフラーが出てきた。
「……マフラー?」
「クリスマスプレゼントよ。影山が普段どんな服着てるか知らなかったから、かなりシンプルなデザインの奴だけど」
予防線の張り方が先程の蒼汰と同レベルである。
一方の蒼汰はと言うと、貰ったマフラーを早速首に巻き付けていた。
「……暖かい」
首を保護する暖かな熱に、蒼汰はポツリと呟いた。
「……ありがとう白峯さん、大切にする」
「~~~っ!!」
蒼汰がお礼を言うと、理沙は顔を真っ赤にしてバッと顔を背ける。
何か変な事を言ってしまったのかと蒼汰は不安になるが……
「(あ、あの顔は反則! 普段滅多に表情変えないくせに! あぁ収まれ私の心臓!! 今の私絶対顔真っ赤だ!)」
お礼を言った際に微笑んだ蒼汰にときめいてしまっただけのようである。少しの間パニック状態の理沙とどうしたらいいのか分からない蒼汰で膠着状態が続いたものの、何とか自分の感情を落ち着かせた理沙が蒼汰に向き直った。
「そ、そうだ影山! 連絡先! 連絡先交換しとこうよ!」
「……連絡先? 必要か?」
「必要でしょ! その……ま、またこういう機会があった時、連絡が取れた方が便利でしょ?」
「……こういう機会?」
「ちょ、そこ突っ込むの!?」
「……? ダメだったか?」
「い、いや、ダメって言うか……」
冗談で言っているのかと理沙が蒼汰の様子を窺うと、眉を顰めて小首を傾げている。本気で分かってい無さそうだ。
「……そもそもさ、影山は今この状況をどういう風に認識してるの?」
「……今、この状況?」
「だから私と影山が、男女が
理沙に言われて、蒼汰は改めて状況を考え直す。
(正直何が聞きたいのか分からないけど……えっと、俺と白峯さんが二人きりで遊びに出かけているこの状況だっけか? 何で男女に言い直したのかは分かんないから、そこは一旦置いといて)
割と重要な部分を置いておいてしまったのだが、残念ながら蒼汰の脳内で決めつけられてしまった事に注意をしてくれる人物など存在しない。
(まぁ相手は
「はぁ……やっぱり」
蒼汰の回答に、理沙は大いに顔を顰めながらガックリと項垂れる。
理沙も蒼汰の反応から何となく嫌な予感はしていたのだが、その予想通り蒼汰は理沙にしてはかなり頑張ってきたここまでのアプローチを完全にスルーしていた。
「(影山が物凄く鈍いのは分かってたつもりではあったんだけど、これは結構ショックかも……って言うか何? 二人きりの遊びに誘って、プレゼントも一生懸命選んだのに……ここまでされて欠片も気付かないわけ? それはちょっとどうかと思うんだけど……!)」
虚しさのあまり、理沙の怒りのボルテージが溜まっていく。そして怒りが溜まっていくと程、理沙の理性が段々と活動を休止させた。
「……………ートの………んだけど」
「……ん?」
「だから! デートのつもりだったんだけど!」
理沙から飛び出た思わぬ言葉に耳を疑い、蒼汰は目を丸くする。
あからさまに予想外という態度をとる蒼汰を、理沙は顔を真っ赤にしながら睨みつける。
「影山が今日どういうつもりで来たのかは知らないけど、少なくとも私はデートのつもりで呼び出した」
そこまで言うと、理沙は脳の処理が追い付かず未だに硬直したままの蒼汰に抱き着いて胸に顔を埋めた。
「………はっ。し、白峯、さん?」
抱き着かれた衝撃で、蒼汰は硬直から復活する。だが急な展開にまだ頭は追いついていない。
「影山、一つ聞かせて」
「……は、はい」
「影山にとって私は、デートする相手には選ばれない女なの?」
若干胸から顔を上げて、顔色を伺いながら理沙は蒼汰に尋ねた。怒りに任せて攻勢を仕掛けてみたのだが、少し冷静になったところで改めて思い返すと、蒼汰の意識しなさぶりに自信を失いかけていたのだ。
「……い、いや、そ、そんな事はないよ? し、白峯さんは、と、とても魅力的な女性だと思う」
「……そっ、か。ありがと、嬉しい」
どもりながらもはっきりとした返事を受け取った理沙は嬉しそうに微笑みながら再び蒼汰の胸に顔を埋める。
一方で蒼汰の方は頭の中が大変なパニックになって、抱き着く力を強める理沙にホールドアップをして途方に暮れる。流石の蒼汰でも、ここまで明確に好意を示されれば理沙の想いに気が付く。だからこそ戸惑っているのだ。今まで人付き合いがほぼ皆無な蒼汰は、自分に向けられる感情にとことん疎い。特に恋愛感情など、自分には一生縁がないとまで考えていた。
それを突然叩き付けられたのだ。戸惑い、狼狽えてしまうのも無理はないだろう。
「……さ、さて! もうだいぶ暗くなってきちゃったし、そろそろお開きにしようかな!」
蒼汰に背を向けて、やたら元気そうに話しながら腕を頭の上で組む理沙。
怒りと勢いの衝動に任せて色々大胆な行動をとってしまった理沙だが、元より衝動と言うものは長続きしないし怒りも時間経過と共に引いてくる。つまり端的に言ってしまうと、正気に戻って恥ずかしくなってしまったのである。
「それじゃあ影山! またゲームで!」
それだけ言い残すと、理沙は足早に去っていった。
「………………え?」
遂に蒼汰が理沙の気持ちに気が付きました。
ところで少々話は変わりますけど、何か原作の方でこの作品のオリジナルスキルと似たようなスキルが出てきましたね。【
次回、助けを求めます。
今度こそ今月中に更新したいです。