派手なのは苦手なので、とりあえず隠れて敵を倒そうと思う   作:名無しの投稿者

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毎度毎度次回の更新予告をして破り続けてきました。
今後、更新予告はしない事にします。どうせ破ってしまうので。

今回はかなり難産でした。全くモチベーションが湧かず、書きだすまでにかなりの時間がかかってしまいました。
よって、今回は短めです。


暗殺者と相談

 

「(うわ~! ヤバいヤバいヤバい!! 言っちゃった言っちゃった言っちゃった!!)」

 

 帰宅した理沙は脳内パニック状態で、ベットの上で悶えまくっていた。

 辛うじて『好きだ』と直接言いはしなかったものの、態度と言葉で思いっきり伝えた自覚はある。

 

「……これで意識されなかったら為す術ないんだけど……流石にそれはない、よね?」

 

 これまでの蒼汰の鈍さを見ていると、残念ながら断言はできない。だがこればかりは悩んでいても仕方がないので、一旦考えるのを止める事にした。

 

「実際会うまで分かんないしね。影山の場合、表情変わらな過ぎて意識されてても分かんないかもしれないけど」

 

 教室でも常に無表情の彼を思い出し、理沙は苦笑した。

 そしてそんな無表情がデフォルトの彼はと言うと……

 

(…………………………………マジか)

 

 自宅のベットの上で、着替えもせずに突っ伏していた。

 

(白峯さんが? 俺を? マジで? 勘違い……いや、それはない、と思う。だ、抱き着かれたし、デートする対象になるかとか聞かれたし。でも急にそんなこと言われてもな~~!!)

 

 友人すらまともにいなかった蒼汰である。当然ながら恋愛経験など皆無だ。そこに突如として現れた自分に好意を寄せるであろう存在(理沙)に、蒼汰の感情は大いにかき乱されていた。

 

(っていうか、どうしよう……誰かに聞いて欲しい……でも誰に? 母さんや父さんは……ダメだな。面白がって揶揄われる未来しか見えない)

 

 余談だが、蒼汰の両親は彼とは真逆でかなり陽気な性格をしている。そんな二人にとって、息子の恋愛事情などからかいのネタにしかならない。

 

(もうマフラーの件で問い詰められてんだ。これ以上燃料を与えて堪るか。……でもそうなると、本格的に相手がいない……)

 

 必要が無かったために楓の連絡先すら知らない蒼汰が、他のクラスメイトの連絡先を知っているはずもない。

 

(誰かいないかな~……あっ)

 

 頭を抱えながらスマホの連絡先一覧を表示すると、一人だけ相談できそうな相手を見つけた。

 蒼汰はチラリと時計を確認する。

 現在の時刻は二一時。

 遅すぎるという訳でもないので、蒼汰はさっそく電話を掛けた。

 

『もしもし? 蒼汰か? 電話を掛けてくるなんて珍しいな。どうかしたか?』

「澄玲姉さん、助けてほしい」

『な、ん、はぁ!? 一体どうしたんだ!?』

 

 珍しくかかってきた従姉弟からの電話で開口一番に助けを求められ、澄玲は大いに困惑した。

 

『一体どうしたんだ蒼汰。いきなり』

「と、突然ゴメン。ちょっと相談に乗って欲しくて」

『それは構わないが……』

 

 そこで蒼汰は思い出した。今日澄玲と会った時に誰と一緒にいたのかを。

 

「……ところで澄玲姉さん」

『ん? ()()()()?』

「クロムさん、黒岩さん? とは今一緒じゃないの?」

『んな!? いいいいきなりなんだ!』

「いや、一緒だったらお邪魔したかなと思って」

 

 澄玲も雅人も、既に成人している男女である。冬の夜九時という時間は、成人のカップルがまだ共に出歩いていても何らおかしくない時間帯だ。

 

『雅人さんとは既に別れている! それは余計な気遣いだ!』

「そっか。ならよかった」

 

 澄玲が雅人を名前呼びした件については後で問いただそうと、蒼汰は心に誓った。

 

『コホンッ。それで? 相談とは何だ?』

「その、白峯さんにね?」

『白峯……と言うと、確か今日会ったサリーの本名だったな』

「そう。それで白峯さんに、今日デートのつもりで誘ったって言われたんだけど……」

『だろうな』

「うぇ!?」

 

 今度は蒼汰が奇声を上げる番だった。蒼汰としてはまずそこが一番信じられない部分だったのに、こうもあっさりと受け入れられると困ってしまう。

 

「ななな、何でそんなあっさり……」

『受け入れるのか、と聞きたいのか?』

「まぁ、その……うん」

『そんな気はしていたが、やはり全く気付いていなかったのか……サリーには同情するな』

「同情?」

 

 蒼汰が首を傾げる姿が電話越しでも想像できた澄玲は、大きく溜息を吐いた。

 

『……つまりだ。サリーの好意は鈍感なお前とクロム以外の全員が把握していたんだ』

「………えぇ!? そうなの!?」

 

 蒼汰が驚愕の声を上げると、澄玲が再び大きく溜息を吐いた。

 

『……それはまぁいい。それで? 結局蒼汰は一体何についての相談がしたいんだ?』

「えぇっと、その……」

 

 実は蒼汰自身、具体的に何を相談したいのかあまりよく分かっていなかった。とにかく頭の中が混乱しており、最低限揶揄われない誰かに相談したかっただけなのだ。

 

「ね、念のために確認しておきたいんだけど」

『私にか? 何だ?』

「白峯さんが俺を好きって言うの、勘違いだったりは……」

『ないな。直接本人に聞いたわけではないが、まず間違いないだろう』

(つまり、自意識過剰っていう線はとりあえず消えたと言ってもいい訳か……)

 

 蒼汰の言葉を澄玲はバッサリと切り捨てる。

 ここまでされておいて、まだ蒼汰の中には自分の勘違いなのではないのかという疑いがあったため、第三者の確証が欲しかったのだ。

 

『というかまだそんな事を言ってるのか? 告白されたんだろ?』

「い、いや、直接好きだ()()言われてない」

『……ん? どういう事だ?』

 

 それから蒼汰は今日あった出来事を大雑把に説明した。プレゼントをもらった事や抱き着かれた事、そして『デートする相手には選ばれない女』かと問われた事も含めて包み隠さず全てである。

 

「それでその、もしかしたら白峯さんは俺の事が、その……す、好きなんじゃないかなって」

『(サリーも大胆な行動をとったものだな。正直予想外だ)』

「え? 何?」

『いや、何でもない。とにかく話は分かった。今までのサリーを見てきた限りで言えば、蒼汰の予想は間違っていないと思う』

「まぁ、うん……だよね」

 

 それは蒼汰も十分予想していたので、今更驚きはしない。

 

『それで?』

「えぇっと、それでって?」

『私が聞きたい事が分からない訳じゃないだろ? サリーに対する気持ちだよ。恋愛的な意味で好きなのか、友人としてしか見れないのか。まだ告白はされていないとはいえ、気持ちを察してしまったのなら自分が相手にどういう感情を持っているのか考えておいた方が良くないか?』

「うぅ……それは、まぁ……」

 

 澄玲に言われて、蒼汰は無言になって考え始める。

 しかし他人と関わり合う事自体が少なかった蒼汰に、自身が抱いている他者への感情を明確に自覚するのは難易度が高かった。

 

「………よく分からない」

『分からない、か。まぁ今すぐ決める必要はない。ただ何時かは答えを出さなくてはならないし、出来ればそのタイミングは早い方がいい。蒼汰本人の問題だから、じっくりと考えろ』

「分かった。相談に乗ってくれてありがとね、澄玲姉さん」

『何。気軽に電話してくるといい。いつでも相談に乗るぞ』

「うん、ありがと」

 

 蒼汰は電話を切ると、ベットに寝転がりながら改めて理沙の事について考え始める。

 

(あぁは言われたけど、正直俺は俺自身の気持ちが分からない。白峯さんの事は好きだ。でもそれがライクなのかラブなのかなんて、一体どうやって分かれっているんだよ……)

 

 蒼汰はベットの上で頭を抱えながら唸り続け……やがて時計の長い針が一回りした頃、ふと悩むのをやめて立ち上がった。

 

(うん、無理だ。これ以上悩み続けても結論何て出ない!)

 

 あまりに唐突で潔すぎる判断であるが、一時間悩み続けて何も進展していない以上諦めるという判断も強ち間違いではない。

 

(そもそも今までそういう対象として見てなかった、()()()()()()()()()()人が好きかどうかの結論何て出るはずないんだよ。つまり何が言いたいかっていうと、もう少し様子が見たい。うんうん、そうだよ。それに今結論を出す必要なんてないんだしさ)

 

 現実逃避のように頭の中で言い訳を重ねる。実際現実逃避であり、それは蒼汰自身もよく分かっている。

 

(でもまぁ、ちゃんと考えておこうかな)

 

 ただ蒼汰とて、完全にこの問題から逃げた訳ではない。

 蒼汰と理沙の関係の変化は、ここからようやく始まるのだ。




理沙の行動と澄玲の助言により大幅前進。ゴールまであと少しですね!

次回、プレゼント開封です。
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