派手なのは苦手なので、とりあえず隠れて敵を倒そうと思う 作:名無しの投稿者
そして、更新予告を無くした途端三ヵ月近く更新を放置してしまい本当に申し訳ありませんでした……!!
特別な事情等は一切ございません! ただ単純にスランプでして、一文字も書けない日が多くここまで長くかかってしまいました。申し訳ございません!
さて、長々と言い訳を書いていてもしょうがないのでそろそろまいりましょう。
では、本編です。
蒼汰が大いにかき乱された翌日のクリスマス当日、蒼汰は入手していた【プレゼントボックス】を開封するためにゲームにログインした。
「……あっ」
「ん? あ! ハイドくん! おはよう!」
先にゲームにログインしていたメイプルとサリーを見て思わず声を上げたハイドを目敏く発見したメイプルは、シュバッと手を上げながら元気よく挨拶をする。サリーもメイプルが挨拶をした方向を見てハイドを発見した。
「あっ、ハイド。お、おはよう……」
「……おはようメイプルさん。えっとその……サリー、さんも、おはよう」
「(あ、あれ? まさかハイド、照れてる?)」
ここまで分かりやすい態度をとるとは思っていなかったサリーは目を丸くする。
元々ハイドは感情が表情に出ない代わりに、態度の方に出やすい。さらにハイドにとって未知の領域である恋愛関係が原因の為、動揺してより態度に出てしまっているのだ。
「(そ、っか……ちゃんと照れてくれてるんだ。よかった……)」
何の反応もされなのではと懸念していたサリーは、ハイドのあからさまな態度を見て安堵した。流石にあそこまでして無反応だったらもうどうすればいいのかわからなくなる。
一方微妙な距離感を感じ取ったメイプルは、小首を傾げて二人の様子を窺う。
「(喧嘩してる訳じゃない、よね?)」
いつもと感じが違うものの取り敢えず仲が悪くなったわけではなさそうなので、メイプルはホッと安堵の息を吐いた。
「……? メイプルさん?」
「あ、ううん。何でもないよ。ハイドくんもこれ開けに来たの?」
メイプルが手に持った赤い箱を見せながら聞くと、ハイドも頷きながらインベントリの中から青い【アイテムボックス】を取り出した。
「……メイプルさんも持ってたんだ。俺も何体か倒したけど結局一個しかドロップしなかったんだよな。……メイプルさん大変だったでしょ。遅いし」
「え? ……あ、そうだね、うん! 大変だったよ!」
(うっわ嘘くせ~。メイプルさん強運だし、一発で出てきたとかありえそう……)
途端にきょどって目が盛大に泳ぎ始めたメイプルを見て、ハイドは半ば確信した。事実だった場合あまりの強運に心がやさぐれそうになるので特別確認したりはしないが。
「早速開けちゃおうよ! さてさて、何が出るかな~♪」
上機嫌に歌うメイプルに続いてサリーとハイドもリボンを解いて箱を開けると、中からスキルが取得できる巻物が出てきた。
(中身はスキルか。一体どんなスキルなのやら……)
巻物を開くと中に書かれていた文字が光り輝き、その光が消えて巻物が崩れると同時にアナウンスが鳴り響く。
『スキル【吹雪】を取得しました』
【吹雪】
スキルを使用したプレイヤーを中心に半径五メートルに、勢い良く雪が吹き荒れて範囲内の視覚を著しく失わせる。
効果時間は三秒間。十分後に再使用可能。
(おぉ、中々いいスキルだな。俺にピッタリだ)
短い秒数とは言え、周囲の目視を困難にするのはハイドにとってかなりのメリットだ。実はこのスキルは使用者にも効果があるのだが、ハイドの場合は【暗視】の効果により視覚を遮るスキルの効果が一切効かない。
「ハイドくんはどんなスキルだったの? 私達はこんなだったよ!」
そう言ってメイプルとサリーはスキルの詳細を表示したパネルをハイドに見せる。
メイプルは三秒間相手を行動不能にする【凍てつく大地】を、サリーはMPを消費して壊れない氷の柱を作り出す【氷柱】を取得したようだ。二人に習い、ハイドも取得したスキルの詳細を見せた。
「【吹雪】……確かハイドには目視されてない時に姿を消せるスキルがあったよね? 滅茶苦茶相性がいいんじゃない?」
「…………あぁ、そうだな。急に視界が悪くなれば、必ず俺を見失う。そうすればスキルが発動できる」
ただでさえ極端に気配の薄いハイドである。視界の悪い場所で見つけるのは至難の業だろう。
「……メイプルの方は行動不能にするスキルか」
「うん! 強そうな相手だったら、パパっと凍らせちゃうよ!」
「……そうだな。今のところメイプルの最大の弱点は機動力だし、相手のそれを奪えるのはいいと思うぞ」
極振りであるメイプルにはいくつか弱点が存在するが、その最もたるものは
「よし! じゃあ今年はこれで終わりかな」
「ん? そうなの?」
「少しずつ課題終わらせないとだし、一月になってすぐも忙しいし……」
「……なるほど、分かった。じゃあメイプルはしばらくインできないんだ」
「うん。サリーとハイドくんもちゃんと課題やらないとだよ?」
「私はもう終わらせたからね。遊ぶよ?」
サービス開始時に成績不良でゲームを禁止されていた少女とは思えない発言である。メイプルはサリーのやる気がある時とそうでない時の差に呆れつつ、ハイドの方に視線を移した。
「……俺も年内に終わるように計画通り進行中。もう今日の分は終わってる」
「ハイドくんは計画通り終わらせる派なんだ」
「……めんどくさいのを一気にやるのは好みじゃないんだ」
「そっか。じゃあ私も頑張るね!」
そう言い残すとメイプルはログアウトして消えていった。メイプルが消えるのを確認したハイドは、そのままギルドホームから出ようとするが、その肩をサリーが掴んで止める。
「ちょっと待った」
「…………な、何かな? サリー、さん」
「えっと、その……き、昨日は、いきなりゴメン」
(ん、あれ? 何で俺、いきなり謝られてんの???)
困惑するハイド。だがそんなハイドに気付かず、サリーはどんどん話を進める。
「ハイドが、その…あんまり私の事を意識してないのは分かってた。だから(ちょっと勢い任せな部分はあったけど)抱き着いてあんなこと言ったの。ちょっとは私の事を意識してくれるかなって思って……」
(それは効果抜群だったけどな)
サリーの予想した通り、ハイドはサリーの事を恋愛対象として見ていなかったし、昨夜の一件でハイドのサリーを見る目が大きく変わったのも事実である。
「でも昨日のあれはいきなり過ぎたかなって後から思って……ただ一応言っとくけど、別にハイドの事をからかったりとかはしてないから」
「…………それは、分かってる」
「そっか、ならいいんだけど」
カスミに相談していなければ、ハイドの心にその可能性がチラついていたかもしれない。しかし
「だからハイドもいきなりで気まずいだろうけど、なるべくいつも通り接して欲しいの」
「…………いつも、通り」
「そう。具体的に言うと、会話の前のワンテンポがいつもより長いのと、さん付け直してほしいかな」
(気付かれてた……)
どうにもサリー相手にいつも通りの態度が取れなかったハイドの異変は、バッチリ理由付きでサリーに勘づかれてしまっていた。
「………わ、分かった。なるべく直すようにする」
「うん、よろしい。ところで話は変わるけど、私これからスキルの検証でフィールドの方行くけどハイドも一緒に来る?」
サリーの提案に、特に断る理由もないハイドは頷いた。
「……そうだな、俺も一緒に行かせてもらう」
「じゃあ行こうか」
◇◇◇
フィールドに移動したハイドとサリーは、早速発見したモンスター相手に戦闘を開始した。
(【吹雪】)
スキルを発動した瞬間、強烈な風と共に視界が白く覆われる。
(なるほど、この中じゃ視界が殆ど機能しないな。【隠者】の発動も確認した。やっぱりこのスキルはかなり使える)
相対していたモンスターは数メートル先に居るが、ハイドの視界ではその影しか確認できない。しっかりと姿を確認しなければ、目視と判定されないようだ。ハイドはモンスターの影目掛けて【飛撃】による斬撃やナイフを数本飛ばして対処する。【隠者】の効果でステータスが上がっていたこともあり、モンスターはHPを0にしてあっさりポリゴン状になって消えていった。
(効果時間の短さも、どうせすぐに他の隠れるスキルを使えば特に問題じゃない。いかに相手の視界から外れるかは、今の俺にとってかなり重要事項だからな)
ハイドは目視されていると、ステータスは下がるわ、最大の武器である【暗殺】は使えないわと大幅に弱体化する。そのため、姿を隠すスキル等の目視されないためのスキルの存在は、彼にとって死活問題なのだ。
(さて、サリーの方は……)
「【氷柱】!」
「ぷぎゃぁっ!!」
一方のサリーは、突進してきた猪をタイミングよく出現させた氷の柱で受け止めていた。MP3という決して多くない消費で、一分間破壊されない
「【壱式・水剣】【トリプルスラッシュ】!」
【氷柱】で突進を止められた猪は、水を纏った二振りの短剣による連続攻撃であっさりと屠られる。だがモンスターはこの一匹だけではなく、背後からサリー目掛けて突進を仕掛けた。
「【陸式・引き潮】!」
スキルを発動した瞬間、サリーの姿が消えて猪の真後ろに現れる。標的を失った猪は速度を落としたが、その隙を彼女が見逃すはずがない。
「【弐式・水切り】!」
真後ろからの不意打ちを受けてあっという間に消えていく猪を確認して、ハイドはサリーに声を掛けた。
「……使い心地はどうだ?」
「最高。透明じゃなかったら隠れられてさらに言う事なしだったんだけど、まぁない物強請ってもしょうがないしね。そっちはどうだった?」
「……使える」
「それは良かった。ん?」
(何だ?)
お互いの成果を報告し合っている最中、サリ-がスキルを確認するパネルを表示して黙り込んだ。何事かとハイドが首を傾げていると、その視線に気が付いたサリーがハイドにも見えるようにパネルを動かす。
「【武操術】のレベルが上がって新しいスキルが使えるようになったんだけどさ、使い方がよく分かんなくて」
【漆式・三態変換】
水、氷、霧のいずれかに使用可能。
今の状態から、別の状態に変化する。
効果時間は最大三十秒。任意解除可能。
三十分後に再使用可能。
(なるほど。確かによく分からんな。水? 氷? 霧? 別の状態に変化ってなんだよ……)
ふとハイドが視線を上げると、そこには先程サリーが出現させた氷の柱が
「……サリー、アレ水に出来るか?」
「え? あぁ、まぁ氷だし出来ると思うけど……そうだね、使ってみない事には分からないか。よし、【漆式・三態変換】!」
パシャっと聳え立っていた氷柱は水に変わり、そのまま地面に降り注いて水溜りと化す。氷柱はスキルの記述で
「えぇ……何、これ……意味ないじゃん」
「……」
がっかりするサリーの横で、ハイドは徐に投擲用のナイフを一本取りだして水溜りに投げつける。ナイフはあっさりと地面に突き刺さった。
(ふむ、なるほどね……)
「ハイド……? 何やってんの?」
「……サリー、【三態変換】を解除してみてくれ」
「え? う、うん。分かった」
ハイドの意図が分からないサリーだが、取り敢えず言われるままに【三態変換】を解除する。するとスキルを解除した瞬間、水溜りが一瞬で凍り付いた。
「あ~、スキルを解除しても元には戻らないんだ」
始終ガッカリ気味のサリーを尻目に、ハイドは先程投げたナイフを手に取り力を込めて引き抜こうとするが、ナイフは地面に突き刺さったままビクともしない。
「えっと、何やってるの?」
「……抜けない」
「え? 軽く刺さってるだけだし、普通は抜けるよね?」
ナイフは刀身が殆ど露出しており、地面に刺さっている部分はかなり少ない事が伺える。にも拘らず、【STR】が200を超えるハイドが力を込めてもナイフは抜ける気配すらない。その後、信じられない様子だったサリーも変わってみたが、結果は変わらなかった。
「何で?」
「……もうちょっと待て」
「いや待てって何を……」
(そろそろ
「ハイド? ちょっと人の話聞いてうわっ!」
サリーがハイドに詰め寄ろうとした瞬間、ナイフが刺さっていた氷溜まりが罅割れて跡形もなく消えていく。
氷が消えたのを確認したハイドは、今度はナイフを手に取る。すると先程あんなに苦労したのが嘘のように、ナイフは片手で簡単に地面から抜けてハイドの手に収まった。
「取れた……明らかに氷のせいで取れなかったよね? 何で? そんな分厚い氷じゃなかったはずだけど……」
「……あの氷は元々【氷柱】だったものだ。アレは効果上破壊が出来ない」
破壊出来ないので、その氷が割れる事もない。よって氷に突き刺さっていたナイフも抜けなかったのだ。
因みに氷の柱の形状ではなくなっているが、それは【三態変換】の効果で氷の状態から水の状態変わっただけで破壊はされていないという判定になっている。さらに水は流動体なので、水溜りにナイフが突き刺さったとしても
ハイドの簡単な解説で凡そ自体の概要を理解したサリーも、数度頷いで意地の悪い笑みを浮かべる。
「なるほどね。これは足止めに使える……そういう事なら他にも色々使い道があるかも。今回は水にしたけど、霧にしてある程度広げてから解除したり、他のスキルを別の状態にしたり……うん、前言撤回! このスキル使える!」
(楽しそうで何よりですね)
【三態変換】の可能性に気付いたサリーは先程までのガッカリ感はどこへやら、目を輝かせて新たなスキルの運用に思いを巡らせ始める。
やがてある程度考えが纏まったのか、キラキラと表情を輝かせたままゆっくりとハイドに向き直った。何を要求されているか凡その見当がついていたハイドも綽綽と頷く。
「……いいよ、気が済むまで付き合う」
「よし! ありがとうハイド!」
「……ついでにクエストも進めるか。ただやるだけじゃもったいない」
「OK! じゃあ早速!」
その後数時間、ハイドはサリーの検証に付き合わされた。今後取れる作戦の幅が大いに広がりサリーは大変満足したが、対称にハイドがクタクタに疲れ果てたのは言うまでもない。
シレッと新しい【武操術】のスキルが出ましたね。詳細を書き忘れたのでこっちに書いておきます。
【陸式・引き潮】
身体を一メートル後方まで瞬時に移動させる。三十秒後に再使用可能。
次回、新作です。