派手なのは苦手なので、とりあえず隠れて敵を倒そうと思う 作:名無しの投稿者
気付けば前回の更新から二ヵ月以上……いえ、もうほぼ三ヵ月ですね。
年度末の忙しさに加えて、目に見えてモチベーションが低下しておりまして……申し訳ないです!
では言い訳もそこそこに、本編です。
「カラアゲくん、ちょっといいかしら?」
レベル上げのためにフィールドに赴こうとしたカラアゲとハイドは、にこやかに手招きをするイズに呼び止められた。
「イズさん? どうかしたんですか?」
「ちょっと手伝ってほしい事があるのよ。クエスト中で余裕がないならまたの機会にするけど」
「いえ、大丈夫です。今はレベル上げに行こうとしていただけなので」
「カラアゲくん一人で?」
「……イズさん、俺もいます」
「え? あっ、ハイドくんも一緒だったの。ごめんなさい、気付かなかったわ」
(さっきからカラアゲにしか話しかけてなかったからもしかしてとは思ってたけど、案の定見つかってなかったか)
ハイドが傍にいても見つけられないのはいつもの事なので、特に反応せずに話の続きを促す。
「レベル上げなら丁度良かったわ、私も連れて行って貰えないかしら?」
「イズさんも、ですか?」
「えぇ。新作のコレを試したいのよ」
そう言ってイズが取り出したのは、何種類かの色が付いた一,二センチ程の半透明の球体だった。
「……ビー玉、ですか?」
(イズさんが新作って言ったんだから何かの特別なアイテムなんだろうけど、大きさ的にも形的にもビー玉にしか見えない)
予想通り過ぎるカラアゲとハイドの反応に、イズは思わす苦笑する。
「違うわこれも立派な私の武器、爆弾よ」
「へ~…………爆弾!?」
その正体を聞き、カラアゲが摘まんで光に透かしていた球をテーブルの上に放り出す。
「そう、爆弾。と言ってもまだ完成してないんだけど」
「……未完成?」
「このアイテム、【魔力爆弾】っていうアイテムなんだけど、最後にMPを注入しないと完成しないのよ」
(だからカラアゲに協力を頼んだのか。カラアゲのMPは相当多いから実験し放題だもんな)
イズのMPは100しかないため、いくつもの【魔力爆弾】を完成させようすればその分だけポーションが必要となる。だがMPに極振りしているカラアゲなら、イズよりも遥かに大量の【魔力爆弾】にMPを入れる事が出来る。
「分かりました、僕は大丈夫ですよ。一緒に行きましょう!」
「……俺も問題ありません」
「助かるわ。あ、カラアゲくんにはこれも渡しておくわね」
同行の許可を貰ったイズは、インベントリから取り出した小袋をカラアゲの手の平に乗せた。中身を確認すると、爪の先ほどの大きさの錠剤が出てきた。
「これは何ですか?」
「【マナ・タブレット】っていうMP回復用のアイテムよ。ポーションだと固定値回復だけど、その【マナ・タブレット】は割合回復なの。MP量の多いカラアゲくんにピッタリでしょ?」
【新境地】や【錬金合成】を取得しているイズ特製のポーションは他の生産職が作ったポーションとは段違いに素晴らしい効果を持っているが、極振りしているカラアゲのMPを全回復させるためには何本もポーションを使用する必要があった。だがこの【マナ・タブレット】一つで、そのほとんどを肩代わりできる。
「わぁ! ありがとうございます!」
「いいのよ。じゃあ早速行きましょうか」
◇ ◇ ◇
「さてと、いい
新アイテムを試したくてしょうがないイズは、周囲を見渡しながら呟いた。目をランランと輝かせながら爆破対象を探す姿は少々恐ろしい。
「あ、モンスターが居ました」
そうして三人でフィールドを歩いていると、カラアゲがモンスターを発見した。イズもモンスターの姿を確認すると、【魔力爆弾】を入れていた袋に手を突っ込む。
「う~ん、まずはどの色から試そうかしら? ……よし、これにしましょう」
そう言ってイズが取り出したのは、赤く染まった【魔力爆弾】だ。既にカラアゲがMPを注入済みである。
「それっ!」
投げられた【魔力爆弾】はモンスターに当たると大きな音と共に爆発し、モンスターを光となり散っていった。
「威力特化の奴で私が普通に作る爆弾と同じくらいの威力かしら? でもこれはとりあえず出来た試作品でまだまだ改良の余地があるし、十分有用かしら」
(試作品の段階で今のイズさんが普通に作る爆弾と同等の威力かよ……最終的には一体どんだけ強力になる事やら……)
「じゃあ次を試しましょう!」
それからイズはモンスターを見つける度に範囲特化、ノックバック特化、属性特化と次々に効果を試していく。いずれのそれなりに高い効果を示し、試作段階の実験としてはイズも概ね満足していた。
「最後はこれね! 効果付与!」
「……効果付与?」
「えぇ! 爆弾としてのダメージは少なくなるけど、その分いろいろな効果が付与できるの。これは【麻痺】の効果付与に特化したものだから爆弾としてのダメージはないけど、相手の【麻痺耐性】をある程度減少させて【麻痺】に出来るわ」
「耐性の減少!? す、凄いですね……」
状態異常というのは、相手の【耐性】によって効果が減少したり発動しなかったりする。特に【無効】まで育てられてしまうと、無効対象の状態異常は効かなくなってしまう。その【耐性】をある程度とは言え減少できるアイテムなのだ。
現状【耐性】を減少するスキルやアイテムの情報が皆無なのも相まって、広まってしまえば相当な数のプレイヤーがこのアイテムを求めてイズの元に殺到するのは想像に難くない。
「何処かに【麻痺】を無効にするモンスターとかいないかしら?」
「う~ん……レアモンスターでそんなのがここら辺にいた気がするんですけど……」
(あ~確かにいたな、そんなの。出現率は結構渋かったはずけど)
お目当ての
「ここにもいませんね……」
「いないものね~。あっさり見つかってくないかなって期待もしていたんだけど」
「……まぁ、中々出現しないからレアモンスターなんて呼ばれてますので」
「それもそうね。ほいっと」
ハイドの呟きにイズはあっさりそう言うと、威力を落とした代わりに攻撃範囲を広げた爆弾でモンスターを一掃して再び探索に戻る。モンスター自体は色々出てくるので、目的のモンスターを探しながら比率を変えた【魔力爆弾】の試し打ちを行っているのだ。
そうしてフィールドをあちこち探し回ることさらに一時間、遂にお目当てのモンスターを発見した。
「あっ! いましたよイズさん! ハイドさん!」
「はぁ、やっと見つけたわね」
(……出現し辛いのは重々承知の上で探してはいたけど、ここまで見つからないのは流石に運が悪過ぎだったな……)
三人ともどこか疲労感をにじませながら、見つかったモンスターにこっそり近付く。幸い見つけ際のカラアゲの声は聞こえていなかったらしく、モンスターに気付かれずに接近する事が出来た。
「……【麻痺】、なればいいですね」
「そうねぇ」
「え? その爆弾って相手の【耐性】を減らして麻痺にするものですよね?」
イズとハイドの不穏な呟きに、カラアゲは思わずイズの手の中にある爆弾に目を向ける。
「そうなんだけど、まだこれはまだ試作品でそんなに【耐性】を減らせないの。だから【麻痺】を無効にする相手でも【麻痺】になるか試したいんだけど、一回で【麻痺】になってくれるかは分からないのよ」
一応イズのインベントリの中には【魔力爆弾】をすぐに生産できる材料は揃っているが、生産が終わるまでモンスターを
支援特化のカラアゲはもちろん、いつもは【暗殺】による即死を狙っているハイドも倒さずその場に押し止める戦闘はあまり得意ではない。
ただこのモンスターの発見に三時間もの時間を費やした以上、失敗した際にさっさと倒して再び出現を待つのは避けたいため苦手でもやるしかないのだ。
「……努力はする」
「お願いするわ。じゃあ早速行くわよ!」
言うや否や、イズは爆弾をモンスターに受かって放り投げる。
投げられた爆弾はモンスターの丁度真上の位置まで来る効果を発揮して、まるでプラズマボールのように半径三メートルの球状の効果範囲に電気が発生する。ただ、これはあくまで
(くそっ! 失敗か! これでもくらっとけ!)
「ピギィ!」
そのモンスターの攻撃を何とか弾いたハイドは、手持ちのナイフを投げて自分に意識を集中させるとすぐに移動して他の二人が攻撃の巻き添えに会わない様に立ち位置を調整する。
「……カラアゲ、サポート頼む! イズさんは次投げる時に合図お願いします!」
「わ、分かりました! 【
「足止めお願いね!」
ハイドの指示を受けてカラアゲはすぐさま彼の【AGI】を上げて、イズは急いで爆弾の再生産に取り掛かる。その間もハイドは懸命にモンスターの攻撃を避けて、余裕があればナイフを投げてを繰り返し相手の注意を惹き続けた。
(サリーみたくギリギリで回避しながら反撃何て芸当は俺には到底真似できない。でもまぁ、避けるのに集中すればコイツ程度の攻撃を無傷で凌ぐのくらいは問題ない。流石にずっとはきついけど……)
チラッと横目にイズの姿が目に入る。生産職ではないハイドでは爆弾の生産にどれほどの時間がかかるのかは見当もつかないが、そう長く抑える必要はないだろうとは考えていた。
(イズさんは、いつも戦闘中に爆弾を造りながら戦ってるしね。でもいつもよりかは時間がかかってる。まぁ新作だって言ってたし、効果も高い以上それなりに工程が多いのは仕方ないか)
若干のよそ見はすれど、それは戦闘において隙にならない程度のものだ。
再び仕掛けてきたモンスターの攻撃を横に避けると、顔にナイフを投げて牽制しつつ注意を引き付ける。ワンパターンだがそもその相手のHPを一切削っていないので、相手の行動には変化が起こりえない。
そうして何度か攻撃を避けてナイフを投げてを繰り返していると、遂に待望の声がかかった。
「ハイドくん! もういいわよ!」
(待ってましたっと!)
丁度重なったモンスターの攻撃を【跳躍】で躱し、素早くイズの傍に退避する。そしてイズもハイドが離脱したのを確認してから、爆弾を放り投げた。
「さて、【麻痺】してくれるかしら?」
「因みにイズさん、これってどのくらいの確率で【麻痺】になるんですか?」
発動した爆弾によって電気の
「そうねぇ、今回は相手が【無効】にしてるから……大体10%ぐらいかしら?」
(む、それは……結構高い、のか?)
今まで存在していなかった【耐性】減退の試作アイテムとしては上々である。因みに他の【魔力爆弾】と違って、この効果付与の爆弾だけは少しだけ改良したのものを使用している。そうでなければ確率が低すぎたのだ。流石のイズも確率1%のものを試す気にはなれなかった。
「あっ、また失敗しましたね……」
「それじゃあ次ね。えいっ」
電気のエフェクトを振り切って元気に突撃してきたモンスターに向かって、イズは二つ目の爆弾を放り投げる。さらにイズの手元にはもう一つ同じ爆弾がスタンバイしていた。
(三つも作ってたのか……まぁ確率的にしょうがないか)
作っている間慣れない足止めを実行していたハイドとしては一個作ったらさっさと行動を起こして欲しかったところだが、それで失敗した際にまた足止めをする必要がある可能性を考えて口には出さず心の中に留めた。
「……【麻痺】、なりましたね」
「なったわね。でもやっぱり10%は低いわね。実戦使用するなら、もっと確率を上げてからかしら。あ、ハイドくん。倒してもらってもいいかしら?」
「……はい。分かりました」
モンスターが【麻痺】になったらもう用はないので、ハイドが【暗殺】であっさり即死させる。
「さて、私の方は満足したけど、ハイドくん達はどうするの? もう少し続ける?」
「……俺の方はレベルも上がったし、これで終わりでもいいと思ってます。カラアゲは?」
「僕もレベルは上がってます。ハイドさんが終わるなら終わりにしましょう」
「じゃあ一緒に帰りましょうか。帰ったら爆弾の改良ね。腕が鳴るわ! どんな素材を入れてみようかしら?」
ウキウキしながら帰路に就くイズを見て、カラアゲは若干引いている。
「爆弾のレシピを考えながら目を輝かせているのは、ちょっと怖いですね」
(それは出来れば言葉にするのは止めて差し上げろ……)
心の中ではカラアゲの言葉を諫めたハイドだったが、爆弾の改良案を呟きながら満面の笑みを浮かべるイズは控えめに言って不気味であった。
イズが新たな
次回、次層です。