派手なのは苦手なので、とりあえず隠れて敵を倒そうと思う 作:名無しの投稿者
そうしてレベルやスキルレベルを上げている内に、あっという間に一週間が経ち第一回イベント当日になった。
イベントの開始地点である町の広場の噴水には、参加不参加を問わず多くのプレイヤーが集まっていた。そしてそれはハイドも例外ではない。
(うぅ……イベントに参加しないまでもせめて様子ぐらいは見ようと思ってここに来たけど……そりゃそうなるよな。イベントの様子が見れるのココだけだし、そりゃ人もいっぱい集まるよな……)
第一回イベントではイベント開始と同時に、開始地点である噴水広場でイベントの様子がスクリーンに生中継される。そのため不参加である生産職のプレイヤーも、有望だったり強いプレイヤーを探す目的などでこの場に集まっているのだ。
その結果、人混みの苦手なハイドは広場付近の路地の陰に隠れている。
(早くイベント開始されないかな……そうすれば大半のプレイヤーが転送されるだろうから、大分マシになるのに……)
すでに人酔い気味のハイドは、若干顔色を悪くしながら切に願う。その数分後、ようやく待ち望んだ声が聞こえてきた。
『それでは、第一回イベント! バトルロイアルを開始します!』
その言葉に反応して、周りが一切にうおおおおおっ! といった雄たけびが響く。
『それでは、もう一度改めてルールを説明します! 制限時間は三時間。ステージは新たに作られたイベント専用マップです! 倒したプレイヤーの数と倒された回数、それに被ダメージと与ダメージ。この四つの項目からポイントを算出し、順位を出します! さらに上位十名には記念品が配られます! 頑張って下さい!』
アナウンスがルールの再説明を終えると、スクリーンにカウントダウンが表示される。
(改めてルールを聞いてみても、やっぱ俺が上位十名に入るのは無理があるよな。見つかるとステータス下がるから余計に。イベント専用マップはある程度広いだろうけど、ヒット&ウェイにも目視されずにってのは限界があるしな)
ハイドがそんな事を考えている内に、カウントダウンがゼロになってイベントの参加者が光に包まれて転移していった。そしてイベントの様子がスクリーンに映し出されると、ハイドはようやく路地の陰から出てきてスクリーンのよく見える位置に移動した。
(お~もう戦闘が始まってるところもあるな。転移してまだ数秒だってのに、展開が早いな)
スクリーンには戦闘風景がランダムに表示されるようで、次々に画面が移り変わっていく。中でも一際目立つのは、白を基調としたの剣と盾を装備している男の画面だ。
(金髪碧眼のまるでTHE・主人公! って見た目をしてるイケメンが、ゲーム内最高レベルの【聖剣】のペインさんか。何でも現プレイヤー最強って噂らしいが……うん、アレは人間辞めてるな。何であんな動きが出来るんだよ。おかしくね?)
ペインは二方向以上の同時攻撃や、魔法による範囲攻撃など剣のみでは受け流せない攻撃のみ盾を使って防いでいる。それ以外の攻撃は剣で受け流すか、攻撃する前に倒して攻撃をさせていない。
(何人同時に攻撃されてると思ってんだよ。範囲魔法も四方同時攻撃もまったく意味をなしてない。直撃は一切受けてないし、反撃は一撃も外してない。化物だな……)
ペイン以外にも、有名なプレイヤーはプレイヤーを倒して順当に順位を上げているようだった。
(俺と同じ短剣使いの【神速】のドレッドさん。桁違いの威力の火の魔法を使う【炎帝】のミィさん。斧を使って大地を割る攻撃をする【地割り】のドラグさん。剣を複数に分裂させる【崩剣】のシンさん。魔法を地面に設置できる【トラッパー】のマルクスさん。有名なプレイヤーは多分
ハイドは事前情報で知っていたプレイヤーの戦いを見ていると、ふと広場の一部が異様な雰囲気に包まれているのに気が付いた。
「何だ、あれ……?」
「た、盾が剣や人を食ってる……のか?」
「どんなスキル持ってるんだよ……」
「さっきあの子、頭に振り下ろされた大剣はじき返してたぞ」
「体オリハルコンなの? それともアダマンタイト?」
(何の話してんだ? 盾が剣を食う? 頭に振り下ろされた大剣はじき返した? それ人間かよ)
ハイドは周りから聞こえてきた声に怪訝な顔を浮かべながら、その人達が見ているスクリーンの前に移動して唖然とした。
そのスクリーンに映っていたのは、黒を基調にして胸の部分に赤いバラが書かれた鎧を着ている大盾を持った少女だった。今もその少女が持っている大盾が新たに人を飲み込んで、周囲の人達がまた驚愕している。
しかしハイドはそんな事よりも、その見覚えのある黒髪ショートカットの少女がこのゲームにいる事自体に驚いていた。
(……え? あれって、本条さん……だよね? 顔同じだし、プレイヤーネームも本条さんの名前の
そこまで考えて、ハイドは楓の周りに、いかにもこういうゲームが好きそうな人物を思い出した。
(白峰さん誘われてゲームを始めた……のかな? それにしては、白峰さんがどの画面にも見当たらないけど)
白峰理沙が数々のゲーム大会で入賞、また優勝しているのをハイドは知っている。そんな彼女が、どの画面にも一度も映っていないのはハイドにとっては不自然だった。
(まだゲームを始めれてないのかな……? 白峰さんがこのゲームやってたら、絶対上位に入るだろうし。まぁ、考えても分かる訳ないか)
理沙に関しての思考をここで打ち切ると、再び楓……メイプルが映る画面に目をやった。
(さっきは予想外の本条さんに驚いてスルーしたけど、本当に盾が剣や人を食ってる……というか、飲み込んでるよな。多分何処かのダンジョンかクエストの報酬で手に入れた、特殊なスキルが付与された盾なんだろうけど……反則過ぎだろ)
ハイドが考えている間も、メイプルは次々とプレイヤーを飲み込んだり毒の魔法で倒したりしている。何とかメイプルの元にたどり着いた数少ないプレイヤーの攻撃も、防御どころか反応した様子も見せず体や頭で弾かれている。そしてその後は他のプレイヤーと同じく、例の大盾に飲み込まれて赤い装飾に変わった。
(…………攻撃を受けている時は、何処も光っている様子はないから恐らくスキルは発動していない。素のVITで弾き返してるように見える。動きは遅いから、あの防御力から見てもVIT極振りなのは確実と見ていいだろう。それにしたって全部の攻撃を弾き返すのはおかしいけどな。どんなVITしてるんだよ)
あまりの異常事態に、メイプルの近くにいるプレイヤーは攻撃するのを躊躇する。メイプルはそんな彼らに短剣を向け『【
(本条さんがあの毒竜の魔法を唱えたと同時に、大盾の赤い装飾が割れた。あの紅い装飾は、大盾が人を飲み込む度に増えていた物だ。つまりあの大盾は触れた物を飲み込むだけじゃなく、MPに変換できる。本条さんは大盾に溜め込んだMPを使用して、あの毒竜の魔法が使う。そして攻撃は防御力が高すぎて一切通らない……もうそれラスボスだろ、どう考えても。第一回イベントにいていい存在じゃない)
『現在の一位はペインさん、二位はドレッドさん、三位はメイプルさんです! これより一時間、上位三名を倒した際に得点の三割が譲渡されます! 三人の位置はマップに表示されています! それでは、最後まで頑張ってください!』
制限時間が残り一時間になると、アナウンスがイベントマップ全域と広場に流れる。そしてスクリーンには、先程名前が挙がった上位三人が表示された。
ついさっきまでとあまり変わらず笑みを浮かべているペイン。顔どころか全身から露骨に面倒くさそうな雰囲気を出すドレッド。そして跳び上がって喜んでいるメイプル。
(ペインさんやドレッドさんはともかく、本条さんは現状寧ろ有利になった。AGIの遅い彼女にとって、向こうからプレイヤーが来てくれるのは更にポイントを伸ばすチャンスだからな。鴨がネギ背負ってくるようなものだ)
実際、マップを見てメイプルを倒そうと集まったプレイヤー達は、軒並みメイプルの大盾か毒魔法の餌食となってポイントになっただけだった。
(ただ大盾の使い方に関して言えば、同じ大盾使いのトッププレイヤーであるクロムよりも圧倒的に練度が低い。現に何度も直撃を食らってる……その直撃がダメージになってないから、全く問題ないけどな)
メイプル以外の上位二人にも大勢のプレイヤーが集まってきているが、結局誰も上位三人を倒す事なく制限時間が終了した。
(……今回のイベントを欠席した収穫はあったな。VITが高くて攻撃が通らないと、奇襲しても意味がない。もっとレベルを上げてSTRを上げないと。後ステータスを上げるスキルも探さないとな……それしても本条さんには攻撃通らなそうだけどね)
『それではこれより表彰式に移ります!』
アナウンスの後、ペインさん達上位三人が表彰台に上がった。そして一位から順に簡単に一言インタビューをする。
『次は、メイプルさん! 一言どうぞ!』
(本条さん、明らかに緊張してるよな。噛まなきゃいいけど)
『えっあっえっ? えっと、その、一杯耐えれてよかったでしゅ』
(案の定噛んでるし……あぁあぁ、あんなに真っ赤になっちゃって)
周りのプレイヤーも、微笑ましそうにしながらメイプルを見ている。当のメイプルは恥ずかしすぎて顔を俯かせてしまったため、全く見ていないが。
そんな何処かほっこりした空気の中、NWOの記念すべき第一回イベントが終了した。
はい、という事でハイドがメイプル=楓に気が付きました。
っというか原作でも思ってましたけど、リアルと姿が完全に一緒なのに何で学校の誰も気づいてないですかね?
NWOは話題のゲームと原作でも理沙が言っていたので、誰か気付きそうなものですけど。
次回は二層……に行く前に、ハイドの強化が入ります。