学校帰りに何となくフェイトちゃんの家にお邪魔した。今日はアルフが出迎えてくれた。おっぱい触ろうと思ったら子供モードだった。解せぬ。仕方がないので頬擦りしておくか!
「アルフ〜♪」
「毎度毎度いいかげんにしておくれよ……」
さすが子供モード、ほっぺが柔らかくてプニプニした感触だ。おっぱいとはまた違った感触で新しい。ヴィータの頬と変わらないとも言うけど。
無理矢理抱きしめていると、アルフはウンザリした様子で子犬モードに変身した。
「はあ、今日ははやての大好きなリンディさんがいるからそっちに行っとくれ」
「え、本当⁉︎ 行ってきまーす」
アルフはリンディママがフェイトちゃんの部屋でお掃除してるからねと去り際に教えてくれた。
よし、ここはリンディママのお手伝いをしよう。そしてあわよくばご褒美を……そうと決まればいきなり部屋に入って驚かせよう。
抜き足差し足忍び足……フェイトちゃんのお部屋の前に到着。中の様子は……リンディママの声が聞こえるね、どれどれ。
「ギリギリだわ……かなりキツイけど、わたしもまだまだイケるんじゃないかしら」
何だろう、お仕事の独り言だったら盗み聞きも良くないし早くお手伝い終わらせて甘えよう。
「手伝いに来たよー!」
『あ』
ドアを開けた僕とリンディママの声が重なるのは同時だった。リンディママは予想外の出来事に、僕は予想していた光景と違ったことに声を漏らした。
あ…ありのまま今見た事を話すよ!
僕が部屋に入ったらリンディママがフェイトちゃんの学生服を着ていた。
な…何を言っているのかわからないと思うけど僕も何をしているのかわからなかった…
頭がどうにかなりそうだった…コスプレだとかイメクラだとか、そんなチャチなもんじゃあ断じてない。
「あ、あのね、はやて、これは違うよの」
何が違うんだろう?間違えてフェイトちゃんの学生服を着たとでも言うのだろうか。ちなみに着ているのは私立聖祥大学付属中学校の制服だ。つまりJCの着る服をアラ○ォー女が着ていることになる。これは大変だ!
でもリンディママはアラフ○ーでも20代にしか見えないので問題ない。むしろイイ。
「これはね、フェイトの服におかしなところがないかチェックしてたのよ、オホホ」
オホホて……まあ、いいけど。
じっくり見るとリンディママが着たフェイトちゃんの制服はピチピチでサイズが合ってない。特に胸のところなんかはボタンが悲鳴をあげてるんじゃないかと言うくらい。ブレザーが押し上げられてるしウエストもキツそう。少し食い込んだスカートの上に少量ながらお肉が乗ってる。フェイトちゃんが着たら普通の丈だけど、リンディママがスカートをはくと下着が見えそう。
「は、はやてそんなに見られたら恥ずかしいわ」
「よく似合ってるよ。おかしなところがないか僕も見てあげるよ」
「え? ええ⁉︎」
「じゃあ適当にポーズとってみて」
僕に見つかったことで墓穴を掘ったリンディママに乗じて、このままいこう。
リンディママは顔を引きつらせながら「こうかしら?」とポーズをしてくれた。
「もっと笑顔にすると可愛いよ!」
やや不自然ながらも笑顔になってくれる。色んなポーズをして貰うと、ヤケクソになったのかウインクまでキメだす始末。まあ全部こっそり撮影してるんですけどね。魔法って便利だね(ゲス
最後にクルリとその場で一回転してキラッ☆までしてくれた。スカートがふわりと浮いてストッキングに覆われた下着が見えた。今日は白か……さすがリンディママだ、JCの制服を着ても、なんともないよ!提督の肩書きは伊達じゃない(無関係
「ね、ねえはやて、もういいでしょう。これだけやればおかしなところはないわ」
着てる時点でおかしいという事は黙っておくよ。僕は紳士だからね!
「そうだね、後は動いてみて大丈夫か調べないとね(暗黒微笑」
僕はキメ顔でそう言った。そしてそのまま魔法を発動。私立聖祥大学付属中学校へ転移した。立ち入り禁止の屋上だから誰も居ないから安心だね。
「はやて! 管理外世界で魔法を使っちゃ駄目でしょ!」
ダメよ〜ダメダメ。
「大丈夫だよ。誰も居ないのは確認済みだから」
「緊急時を除く不用意な魔法の行使は違反ですからね」
「わかってるよ」
「ならいいわ、早く戻りましょう。こんな格好見られたら……」
こんな格好云々は聞こえない(難聴)
「うん、わかったよ。それじゃ
「え……」
「管理外世界での魔法の行使は違法だからね。仕方ないね」
リンディママの手を引いて強引に歩き出す。屋上のドアは*魔法で開錠した。魔法って便利(二回目)!
ん?管理外世界での魔法行使は違反?バレなきゃ問題ない。
*このはやては特殊な訓練を受けております。魔法での開錠は絶対に真似しないで下さい。
靴はフェイトちゃんの部屋でポーズを取ってもらう時にバリアジャケットで生成しておいた。まさに計画通りだよ。
リンディママは自分で言った手前があるので魔法を使えない。使おうと思えば使えるけど提督という立場が邪魔をする。
屋上から校舎内に入るとリンディママは尻込みしてなかなか廊下に出ようとしない。
「大丈夫だよ、もう放課後をかなり過ぎてるから人は殆ど居ないから」
手を引っ張っるけどなかなか動かない。もう〜しょうがないなぁ。
「不審者がいるよ! 誰か来て!」
「っ⁉︎」
廊下に響き渡るように叫ぶとリンディママは顔面を蒼白にした。
「さあ不審者から逃げようか」
すぐに人が来るだろう(外道)リンディママが見つからない為にはここを離れるしかない。手を引くと僕の背中に縮こまるようについて来るリンディママ。いつ見つかるかヒヤヒヤものだね。怯えるリンディママも新鮮で可愛いよ!
「不審者は何処だ!」
「⁉︎」
廊下の曲がり角から突然先生が出て来た。流石名門聖祥だね、叫んで1分も経ってないのに駆けつけて来たよ。
「あっちです! 向こうの階段を降りて行きました」
「わかった! 君達は教室に隠れなさい」
先生はいもしない不審者を追いかけて向こうの階段へ走っていった。丁度近くに僕の教室があるので、言われた通りに隠れた。
「ハァハァ……」
「いやー吃驚したね。やっぱり気付かなかったよ。あっ、騒いじゃ駄目だよ。人に見つかっちゃう」
怒ろうとしたリンディママを先に制する。折角だから僕の教室だと教えておいた。
「ここが僕の席、そこがフェイトちゃんで、ここがすずかちゃん。あそこがなのはちゃん、その向こうがアリサちゃんだよ」
僕がリンディママに席を教えていると校内放送が流れた。何々?校内に不審者が侵入、生徒は最寄りの部屋に入り鍵を閉めて、安全が確認されるまで外に出ない事……なるほどね。
「前も思ったのだけれど」
「ん?」
「はやてはとんでも無いことをサラッと仕出かすのね」
「そうかな?」
とんでも無いと言えば、闇の書を修正したり、管理局でなく聖王教会に入ったり、管理局の手柄を掠め取ったしかしてないや。次元犯罪者狩ったり、逆に手を組んだり(スカえもんに限る)とか大した事無いよね。
「はあ……どうしてこんなことに」
「じゃあ指示通り鍵を閉めて待とうか」
鍵を閉めて振り向くとリンディママは窓際にもたれ掛かり腕を組んで溜息を吐いていた。アンニュイな雰囲気がリンディママの何とも言えない美しさを醸し出している。その姿に見惚れてしまった。
じっと見ている僕に気が付いたリンディママはどうしたの?と首を傾げる。見惚れてました、なんて言うのもアレだしなあ。そうだ!放課後の教室で二人きりで更に密室と言えばヤレることは色々あるじゃないか!
「リンディママはどんな学校に行ってたの?」
「そうねぇ……小さい頃は地球と同じような感じだったかしら、管理世界だったし私もそれなりの家柄だったからすぐに士官学校にいったけど」
「小さい頃のリンディママか……きっと可愛かったんだろうなあ。あ、結構告白とか結構されたんじゃないかな?」
「うふふ、さてどうかしらね」
「むー」
「でも家の事もあるから断るしかないんだけどね」
家柄か……局内にハラオウン派というのもあるくらいだからそれなりの身分なのだろう。
「それに嫌気がさして士官学校に……ってこんなことはやてに言うことじゃないわね」
「kwsk」
リンディママの過去バナ……私、気になります!
「そうねぇ、士官学校に入る前は……」
リンディママは士官学校に行かなかったら、お嬢様学園みたいなところに入れられて、卒業したら親の決めた相手と結婚させられる予定だった。それが嫌で魔法の才能を理由にして強引に士官学校へ入学したんだって。
「色々あったけど今は自由よ」
「そっか……」
「はやてと比べると波乱万丈とは言えないけど」
「え、そうかな?」
「まったくこの子は……」
何故か溜息を吐かれたでござる。結局告白されたのかは教えてくれなかった。
「リンディママも普通の学校に行きたかったの?」
「……そうね、当時は思ってなかったわ。でも次があるなら普通の生活もいいかもしれないわね」
次っていつさ?
A.今でしょ!
「じゃあしようよ」
「え?」
「普通の学生をね♪」
▼
普通の学生。リンディは自由を得る為に、魔力を持たぬ人が青春と呼ぶ時間を訓練で塗り潰した。その全てが灰色という事はなかったが彩りは少なかった。
士官学校を卒業後、すぐに実績を積み上げる。階級と言う名の階段を駆け足で登りつめた。代えの利かぬ地位に到達した時、リンディは自由を手にした。
自由を手にするまでに全力で駆けた時間は普通に比べれば長いものではなかった。が、その失われた時間は余りに大きく、また戻っては来ない。
夫が死んだ時など自分の選んだ道が間違っていたのではないかと悲しみに暮れながら悩んだ。
前を向き、後ろを振り返らない事で雑念を振り切った頃に思わぬ事が起きた。
闇の書事件。表向きは古代ベルカの子孫が覚醒して闇の書を打ち倒すという偉業を成し遂げた事になっている。実際は闇の書をたった一人の子供が以前の姿に修復した。それまでに紆余曲折はあったが結果的にはそれを成し遂げた。
たった一人の子供とははやてのことである。天涯孤独の身で闇の書に体を蝕まれながらも決して諦めず戦い続け、遂には闇の書を以前の姿である夜天の書に戻したのだ。
このはやては幼い頃に両親が死んでしまい親が居なかった。リンディは引き取ることが出来なかったが、可能な限りはやてを助けようと誓った。
闇の書への復讐から親子共々どころか、今までの被害者達をも解き放ったはやて。養子である娘と同じ学び舎に通っていることから、リンディの元にも頻繁に訪れた。
はやては両親がいない寂しさからなのか、リンディによく甘えるようになった。夫が亡くなった事で息子が異常ともいえる早さで独り立ちしてしまい、誰でも味わえるはずの子育てという普通の時間を失っていた。
その失った時間をはやてが取り戻した。手のかかる子だった。足は動かず、大人より聡明、そして事あるごとに甘えてくる。極め付けは故意に怒られることをして、リンディを困らせるのだ。
はやては怒られたにも関わらず笑顔だった。ワザと怒られて気を引くのだ。構って貰いたいが為に。まるで本当の親にするかのように。リンディはそれが堪らなく嬉しかった。充実した時間だった。はやてはリンディの保護欲を、母性を満たしたのだ。
そんなはやてが普通の学生をしようと言う。その甘美な響きをリンディはいつの間にか受け入れていた。
「リンディママは僕の先輩役ね、だからリンディ先輩って呼ぶから。僕の事は八神くんかはやてくんって呼んでね」
はやては話をドンドン進めていく。ニコニコと屈託の無い笑顔で。あの可愛い顔には逆らえない。何でも与えたくなってしまう目をしている。
「じゃあ始めるね」
今から始めるのは失われた時間の1ページ。あったかもしれない妄想を再現するだけの児戯。
「リンディ先輩……突然呼び出してすいません。来てくれないかと思いました」
役になりきっているのか、はやてらしからぬ真面目な雰囲気に少し気圧された。
「それで……態々放課後の教室に二人きりになってまで話したい事って何かしら」
はやては真面目な雰囲気を崩し、打って変わって頬を赤らめてモジモジし始めた。演技とはいえ大したものだ。
(何て子なの⁉︎ 庇護欲を刺激するツボを心得ているわ。今すぐ抱き締めたくなる)
はやての演技は堂に入っていた。リンディははやての迫真の演技に圧倒されていたが、実際は告白しようとするはやてが本当に恥ずかしくてモジモジしているだけだった。
「あの……その……」
「………………」
「す、好きです! リンディ先輩が大好きです! 付き合って下さい!」
リンディは我慢出来なかった。はやてに駆け寄るとはち切れんばかりの制服の胸部に抱き締めた。
「もがもが」
「……」
「もがもが」
「……」
「もがもが」
「……」
『ちょっと息出来ないよ!』
「あら、ごめんなさい」
豊満な胸で呼吸が苦しくなったはやては念話で抗議した。
「ぷはー」
まるで水面から出たように顔を上げ、溺れかけた者のように息を吐く。しかし胸からは手を離さなかった。流石はやてである。
「ふぅ、はぁ〜。返事もらう前に死んじゃうよ」
「うふふ、ごめんなさいね♪」
「返事聞きたいな」
リンディは機嫌が良かった。墓穴を掘ったとはいえ、今まではやてに振り回されて心臓が止まるかと思った。しかしそれを上回る充足感があった。もう味わえないと思った時間をはやては再び甦らせた。故に
「返事はこれよ」
「んむ⁉︎」
リンディははやてに口付けた。はやての頬を両手で包み込みながら引き寄せ、動かないように固定した。少し本気の口付けだった。
今まではやてとキスした事は数え切れないほどある。頬に額に口に、そのどれもが親愛の証であり、全てはやてが求めてのものだった。
しかし今回は違う。リンディ自らがはやてを求めた。今までとは意味の違う口付け。
リンディははやての唇を自らの舌で割ると口内に侵入し、はやての舌を絡め取った。
「⁉︎」
ビクリとはやての身体が強張った。リンディの予想外の行為に対して驚いたのだ。だが拒否するような事はなく、ただ単に驚いたというだけ。はやてはリンディを受け入れた。
はやては口内に侵入したリンディにされるがままだったが、やがて落ち着いたのかリンディの動きに合わせて舌を絡めるようになった。その動きはまるで軟体生物の交尾に似ていた。決して結ばれぬ二人が擬似的に行う性交に見えた。
ぴちゃぴちゃと唾液の絡む音が教室に響く。はやてが起こした騒ぎに校内は静まり返っていた。
二人が口を離したのは安全が確認されたことを告げる校内放送が流れた時だった。
やや上気させた呼吸で見つめ合う二人は、どちらともなくお互いの唾液に塗れた肌を舐めあう。唾液がなくなった後もそれは止まることはなかった。それどころか両手を恋人のように指を絡めて繋ぎ合わせ、互いを舐めあっていた。
「誰か居るのか? もう校内の安全は確認されたから帰っていいぞ」
「はーい」
二人の行為を中止したのは見回りの教師だった。安全の為に鍵を施錠していなければドアを開けられて見つかっていただろう。
はやてはドアを開けて教師を上手く追い払うと、ドアに背を向けて座るリンディに背後から抱き着いた。
「はぁ〜ビックリした。心臓が飛び出るかと思ったよ」
抱きつくはやての早鐘のように脈打つ鼓動がリンディの背中からも伝わる程だった。
「……私もよ」
リンディははやての手を自分の胸に当てた。はやてと同様に煩く血液を送る心臓が激しく動いていた。
教室を後にした二人は何となく手を繋いでいた。先程の行為もあり無言だった。廊下に二人の足音だけがする。そんな静寂の多い時間を破ったのははやてだった。
「そうだ、僕水泳部に入ってるんだ。今日は部活が無くて誰もいないから案内するよ」
聖祥のプールは一年を通して使える設備であり、それなりの学費が収められていることを表している。二人はプールに繋がる水泳部専用の更衣室兼部室に来ていた。
「じゃーん! ここが部室だよ。あ、折角だから少し泳いで行こうよ」
「水着なんて持ってないわよ」
「大丈夫! 新品の予備がいっぱいあるから」
はやては箱を漁ると学校指定の水着を取り出した。
「で、でも誰かに見つかったら……」
「ね、お願い……」
またあの目だ。アイ○ルのCMに出てくるチワワのような瞳。庇護欲をそそり、全てを与えたくなる絶対の魔眼。
「も、もう! 少しだけですからね」
リンディはあっさり折れた。脱衣しているところをジロジロと見るので叱りつける。一糸纏わぬ姿となり、水着に足を通したところで気付いた。
(き、きついわね……)
股の角度が急なため足はなんとか通った。何となくはやてを見ると着替えていない。泳ごうと誘ったのははやてなのに、何故着替えに行かないのか?男子更衣室に行ってしまえば先程の箱からより大きなサイズを取り出せるのに。はやての前でサイズを変えるのは見せられない。女の事情とプライドがそれを許さない。
「はやては着替えてこないの?」
「うん? ああ、水泳部の男子は僕一人だから、ここ共用なんだよ」
「そ、そうなの……」
リンディの希望は打ち砕かれたかに思えたが、はやてがモソモソと服を着替えている間に何とか着ることが出来た。
「ねぇもう着替えた?」
「え、ええ、もういいわよ」
振り向いたはやては予想以上の破壊力に感嘆の声をあげた。
「もう少し大きいのはないのかしら? 結構キツイわ」
「それが一番大きいのだよ」
腰周りは問題なかったが、胸と尻が窮屈なようだ。
「リンディママ……じゃなくて先輩のスタイルが良すぎるからキツイんだね」
はやては教室でのやりとりを続けていた。リンディに普通の学生を体験して貰う為だ。
「早く泳ごっ!」
「もう、少しだけですからね」
プールへ出ようとした時、部室へ向かって話し声が近付いていることに気付いた。
リンディは焦った。はやては今日は部活が無いと言っていたが自主練だろうか?部員であるはやては見つかっても問題無い。しかし自分はどうか?明らかに部外者な上に学校指定の水着を無理矢理着ているアラ○ォー女ではないか。
はやてが叫んだ不審者という言葉が頭を過ぎった。その不審者というキーワードに見事に当てはまる自分。
時間が無い、何処かに隠れなければ。ロッカーは狭すぎる。体は入っても胸がつかえて収まらない。ならば何処に?更衣室の外は無理、プールの方へは問題外。部室内を素早く見渡す。ある、あった、あそこしかない。部室からも行けるシャワールーム。個室分けされていて外からは覗かない限り完全に見えない。はやてを引っ張ってシャワールームに入るのと更衣室の扉が開くのは同時だった。
「あれ? 今誰かいた?」
「さっきの不審者だったりして〜」
「ちょっとやめてよね、そういうこと言うの」
ギリギリだった。もう少し遅ければ見つかっていただろう。焦ってはやてまでシャワールームに連れ込んでしまった。
『何で僕まで?』
『つ、つい……』
念話で会話しているとシャワールームに部員達が入って来た。自主練していたと思われる部員は少なく、シャワールームの個室を埋め尽くすほどではなかった。リンディとはやては一番奥に隠れており、たまたま部員はここまで来なかった。シャワーの音に混じって会話が聞こえる。
「今日ははやてくん来なかったねー」
「またその話か」
「あんたホントに八神くん好きね」
「えーだって可愛いじゃん」
「あーはいはい、でもあの子月村のお嬢様と付き合ってるって話よ」
「え、私はハラオウンさんと付き合ってるって聞いたけど?」
「まあどっちにしてもあんたじゃ勝ち目無いわ」
「そんなあ〜」
部員達ははやての話をしていた。どの時代、どの場所でも女は色恋沙汰が気になるらしい。
(どっちも付き合ってるんだけどね……)
はやては内心で独り言ちる。
リンディは見つかるかもしれないという度重なるスリルに心臓が爆発しそうだった。
「ちょっとあんた胸大きくなってない?」
「あ、わかる」
「嘘⁉︎ この間まで私と同じくらいだったのに!」
「ふっふっふ。はやてくんの為に努力しているのだ!」
「……その程度であの巨乳二人に勝てるの?」
「ぐはっ⁉︎」
「クッソー! 一人だけ大きくなりやがって! 揉ませろー!」
「ああっちょっと! ダメだってば」
キャイキャイと騒ぐ部員。はやてはおっぱいという力に吸い寄せられるようにフラフラとシャワールームから出ようとした。
自分以外の女の胸に引き寄せられるはやてにリンディは複雑な心境だ。擬似的な親である自分に女を感じても困るが、自分以外に刺激されるのも何となく嫌だった。矛盾したような考えだが、リンディも女である。具体的に言うと女として負けているのではないかということだ。勿論若さではどうやっても勝てないが、それ以外では負けているつもりはない。自信はあるのだ。
『私以外の娘が気になるなんてさっきの告白は嘘だったのかしら?』
先程の普通の青春ごっこの続きを持ち出すことではやてを揺さぶった。効果は覿面。リンディの前では甘えん坊で悪戯っ子なはやてだが、根は真面目なのか自分の言動には責任を持っていることをリンディは知っていた。
『そんなことないよ! リンディ先輩大好き!』
はやての必死な言葉に思わずにやけてしまう。
『じゃあここで大人しくしましょうね』
リンディは自分の谷間にはやての頭を抱き込んだ。はやての両手は片方づつ胸に添えられている。つまりいつも通りの体勢になった。こうなればはやては満足するまで動くことはない。
『ほぇあ〜☆』
念話越しに聞こえるはやての満足気な声。その表情は蕩けきって幸せそうだ。この顔を見るとなんとも言えない幸せな気分を味わう。故に何でも許してしまう。
やがて部員達はシャワーを終えて部室から立ち去った。リンディはヘヴン状態のはやてを正気に戻すとプールへ出た。
「思った以上に広いわね」
「でしょ? ここで大会が開けるくらいだよ」
競技用のプールなので足が届かない程度に深い。二人は軽めに競争したりしてすごした。
プールで泳いだ後はシャワーを浴びて着替えるだけなのだが、困ったことが起きた。濡れた水着は脱ぎにくくなる。リンディの水着が張り付いて一人ではどうしようもなくなっていた。仕方なくはやてに頼むと喜色満面で脱がせてくれた。
「着替えを見るのはマナー違反よ。分かってる?」
「は〜い♪」
全然分かっていないとリンディは思った。はやては何故か着替えを見たがる習性がある。若い頃ならまだしも年増になってしまった自分の着替えを見られるのは恥じられた。
はやてはそんな恥じらうリンディを見てモジモジする。年上の女性が恥ずかしがる妙な色気に当てられてしまっていた。
そんなはやてを見たリンディに悪魔が囁く。自分だけ恥ずかしい思いをするのは不公平ではないか?こちらもはやてを脱がしてしまえば平等だろう。
リンディの要請にはやては拒否した。進んで羞恥に塗れる趣味ははやてには無い。リンディは切札を切った。
「言うことが聞けない子はおっぱい禁止です」
おっぱいマスターであるはやてにとって死ねと言うようなものだ。苦渋の決断をした。
はやてはリンディの手により水着を脱がされ、インナーもずり降ろされた。後ろ手にしてバインドを使う徹底振りである。管理外世界での魔法行使はどうしたと聞きたい。
「まあ♪」
リンディがはやてのインナーを降ろすと勿論アレが見えるわけだが……抵抗出来ないはやては何も言えない。
「可愛い♡」
可愛いと言われて喜ぶ男はあまりいない。しかし問題はそこではなかった。
「ウフフ♪ 子供でも男の子ね」
はやてのものは男を主張していた。プールの後は体が冷えて眠気が来ることがある。脳が睡眠の体勢をとるとリラックス状態になり生理現象が起きたりする。そこへリンディの恥じらう姿がはやての雄を刺激した。つまりはやては……
「大きくしちゃうなんてイケない子ね」
ここで更に悪魔が囁く。リンディもはやてくらいの年齢の時に誰がどうしたこうしたの話は聞いた事がある。だが自由を手にする為にそんな事には構っている暇は無かった。
はやては言った。普通の学生をしようと。つまり青春の時間を疑似体験しようと言ったのだ。リンディはそう解釈した。
自分と同じ年の人も、若かりし頃はイケないことをしていたはずだ。それにはやてにはここに来るまでに散々恥ずかしい思いをさせられて振り回された。少しくらいはやてにも恥ずかしい思いをさせてもバチは当たらない。リンディは自分の中で言い訳を重ね、遂には理論武装が完成した。
▼
リンディママにスッキリさせられてしまった。ナニしたって?言わせんなよ恥ずかしい。
ちょっとリンディママがエロかったからおっきしただけだし!生理現象だし!あれだよ、病気の人が家族に尿瓶お願いするようなもんだし!
リンディママの何かを刺激してしまったらしく大変恥ずかしい思いをさせられたよ。考えたら僕の方がリンディママに恥ずかしいことをさせまくったような希ガス(死語)
しかしあれはいいのかな?リンディママは僕にとって母であるのは間違いない。子供の頃は母>女だったけど、二次性徴始まってからは母≧女って感じになってきた。だからおっぱいしてもお風呂はやめてたんだけど。
リンディママエロい、ヤバイ(結婚しよ)
学校からコッソリ出た僕達は只今下校中。リンディママは青春ごっこが嬉しいらしく、僕と恋人繋ぎで手を握って歩いている。道行く人が思いっきりリンディママを見てギョッとしてるけど、これ言わないほうがいいよね?
「あら、はやてくん」
「おや、どうしたんだ。こんなところで」
声をかけられて振り向くとなのはさんのパパママが仲良く腕を組んでいた。あ、これはヤバイぞ。
「あ、桃子さん、士郎さん。こんばんわ」
僕が挨拶するとリンディママは気付いたのか手をギュッと握った。夕暮れで薄暗くてリンディママには気が付いていない。
「あら隣の子は誰かしら?」
「はやてくんは罪な男だな。ははは」
はははじゃねえし。リンディママ震えてるし。出来たらこのまま立ち去ってくれないかな。
「ぼ、僕これから用事があるので……」
「うふふ、フェイトちゃんとすずかちゃんには内緒ね。隣の娘はどんな子か、し……ら」
桃子さんの声が止まったぞ。やべぇよ……やべぇよ……
「あ……リンディさん?」
リンディママの心境を代弁すると「人生\(^o^)/オワタ」というのが的確だろうか。気不味い沈黙が流れる。
「そうだ桃子、今度なのはか美由希の制服を着てみないか?」
士郎さんの心遣いが逆に苦しい。僕はいたたまれない気持ちになって、その場で転移魔法を使ってハラオウン家に直帰した。
その日はリンディママは部屋から一歩も出てこなかった。
「しばらくおっぱい禁止です!」
なん…だと…⁉︎
ざんねん‼︎ はやての おっぱいは これで おわってしまった‼︎