最弱悪魔と銀氷の魔女 [リメイク版]   作:リメイル

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バスジャック回です。戦闘描写は正直苦手。
できる限りわかりやすくするのを心掛けています。
それでは本編どうぞ。


3弾 事件発生

 

 

 

 

 

 

 

「リュウジ」

 

 

背後からの声に振り返る。

 

 

「ああ。分かってる」

 

 

俺の服装はいつもの武偵高制服ではなく、C装備。

 

 

主に武偵が『出入り』する時に着込む攻撃的な装備だ。

 

 

そう、事件だ。

 

 

ここまでの重装備なのだから、きっと小さな事件ではないだろう。

 

 

「もう1人ぐらいSランクが欲しかったとこだけど。他の事件に出払ってるみたい」

 

 

Sランク。

 

 

俺と神崎、さらに狙撃科(スナイプ)の天才少女レキ。

 

 

あとはキンジ。キンジのランクは勝手に上方修正されているようだ。

 

 

「4人パーティーで追跡するわよ。火力不足はあたしとリュウジで補う」

 

 

「了解」

 

 

「追跡って、何をだ。何が起きた。状況説明ぐらいきちんとしろ」

 

 

このことをまだ理解していないのか、キンジが問いかける。

 

 

「バスジャックよ」

 

 

「バス?」

 

 

「武偵高の通学バス。俺たちの学生寮の前に7時58分に停留するやつだ」

 

 

「!?まじかよ!」

 

 

「ああ。どうやらな」

 

 

あれには武偵高の生徒が大勢で乗っている。

 

 

そんなバスが乗っ取られたのだ。

 

 

「犯人は車内にいるのか」

 

 

「わからん。たぶん、いないだろう」

 

 

「それと、バスには爆弾が仕掛けられているわ」

 

 

爆弾。

 

 

数日前、キンジ始業式に出れなかった原因であるチャリジャック。

 

 

「キンジ。これは”武偵殺し”―――――――あんたの自転車をやったヤツと同一犯の仕業だわ」

 

 

”武偵殺し”

 

 

最近武偵高内で話題の連続殺人犯の通称だ。

 

 

「最初の武偵はバイクを乗っ取られたわ。次がカージャック。

 その次が自転車で、今回がバス.........ヤツは毎回、乗り物に

 ”減速すると爆発する爆弾”を仕掛けて自由を奪い、遠隔操作でコントロールするの。

 その操作に使う電波にパターンがあってね。あんたを助けた時にも、今回も、その電波をキャッチしたのよ」

 

 

「でも、武偵殺しは「あれは真犯人じゃないんだよ」......!?ちょっと待て。お前らは何の話をしてるんだ」

 

 

俺がキンジの言葉を途中で遮り、口を開く。

 

 

どうやらまだ理解が及んでいないようだ。

 

 

神崎はビシッとキンジに振り向き、そのツリ目で睨んだ。

 

 

「背景の説明をしてる時間はないし、あんたには知る必要もない。このパーティーのリーダーはあたしよ」

 

 

キンジはそれでも神崎に投げかける。

 

 

俺は立ち上がり、装備を確認する。

 

 

ベレッタM9、刀身の長い日本刀。

 

 

俺は拳銃のマガジンを確認しながら二人の会話に耳を傾ける。

 

 

「キンジ。これが約束の、最初の事件になるのね」

 

 

約束。

 

 

キンジのお試し期間は起こった最初の事件まで。これで見極められることになる。

 

 

「言っておくが、俺にはお前が思い込んでいるような力はないんだぞ」

 

 

「万が一、ピンチになるようだったら あたしが守ってあげるわ。安心しなさい」

 

 

あきれたように言葉を返すキンジに、彼の考えが予想できた。

 

 

キンジ、お前。まさか........

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 

 

 

 

 

強襲用パラシュートを使いつつ、俺たちはほとんど自由落下するような速度でバスの屋根に転がった。

 

 

キンジは危うくバスから滑り落ちそうになった。

 

 

その腕を俺が掴んで引き留めた。

 

 

「ちょっと!ちゃんと本気でやりなさいよ!」

 

 

それを見て、怒りのこもった声で指摘する神崎。

 

 

「本気だって......これでも、“今は”!」

 

 

ヒステリアモードではないキンジにはこれが精一杯なのか、

そう返しながら屋根にベルトのワイヤーを撃ち込み、振り落とされないようにする。

 

 

神崎は自分もワイヤーを使って、リペリングの要領でバスの背面に体を落としていった。

 

 

俺は支持が来るまで屋根で待機する。すると....

 

 

『キンジ、どう!?ちゃんと状況を報告しなさい!』

 

 

神崎の声が聞こえた。

 

 

神崎は車体下で爆弾らしきものを見つけたそうだ。

 

 

それはカジンスキーβ型のプラスチック爆弾。

 

 

......やはり武偵殺しか。

 

 

爆発すれば、バスどころか電車でも吹き飛ぶレベルだ。

 

 

『潜り込んで解体を....あっ!』

 

 

その瞬間、1台のオープンカーが追突してきた。

 

 

強い振動がバスを襲う。車内から悲鳴が聞こえる。

 

 

俺は体中に魔力を纏わせ、持っている刀に集中させる。

 

 

「キンジ!衝撃に備えろ!」

 

 

纏った魔力を使用し、風で覆い打ち出す。

 

 

飛んできた無数の銃弾を受け止め、破壊させる。

 

 

だが。

 

 

突然、バスが揺れる。

 

 

「むっ」

 

 

俺は衝撃で屋根から落ちそうになるが、魔力を集中させてとどまった。

 

 

その時、俺は見た。

 

 

バスの前方に陣取ったルノー・スパイダーがUZIを放つのを。

 

 

バチッバチッ!!

 

 

そして.......

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鮮血を飛び散らせながら屋根の上から落ちていった神崎を.....

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バスジャックは、レキの一撃で終息した。

 

 

事件後、キンジを庇って負傷した神崎が病院に運ばれた。

どうやら軽傷で済んだらしい。

ただ......彼女の自慢の額に傷を残した。

 

 

『あたしに比べれば、あんたが武偵をやめる事情なんて、大したことじゃないに決まってるんだから!』

 

 

神崎の病室の前で、そんな声を聞いた。

 

 

俺は嫌な予感がした。

 

 

扉は開けず、聴力を高めて会話を聞いた。

 

 

『とにかく......俺は武偵なんてもう辞めるんだ。学校も、来年からは一般の高校に移る』

 

 

やっぱり相手はキンジか。まだそんなことを考えていたのか。

 

 

『分かった.......分かったわよ....あたしが探していた人は......』

 

 

...........神崎。

 

 

『あんたじゃ、なかったんだわ』

 

 

俺はキンジと鉢合わせにならないよう、曲がり角を利用して隠れた。

 

 

今の頭に血が上った彼とと会えば、

取り返しのつかないことになりかねない。

ここは静観しよう。

 

 

その背中からは、なんとも言えない喪失感が溢れていた。

 

 

キンジがいなくなったのを確認して、再び病室の前に立った。

 

 

扉の隙間から見える神崎の表情は暗かった。

 

 

当然だ.......素直に言わないが、信じていた人との決別。

辛いだろうな。

 

 

ノックをし、彼女の許可を得てから中に入った。

 

 

何も聞いていなかった振りをしながら。

 

 

「......リュウジ」

 

 

「大丈夫か?」

 

 

「大丈夫よ。大した怪我じゃないし。なのに大袈裟なのよここの医者は」

 

 

「そうか」

 

 

俺は持って来た見舞いの果物や花をテーブルの上に置いた。

 

 

その時にゴミ箱に入ったファイルを見つけた。

 

 

俺はすぐにファイルを取り出し、書類に目を通した。

 

 

「武偵殺しについての資料よ。読むだけ無駄だけど」

 

 

「確かに、犯人に繋がるような痕跡はなさそうだな」

 

 

言いながら俺はファイルを閉じて元に戻す。

 

 

「武偵殺しは逮捕された、ってキンジは言ってたけど。あんたが言った通り、誤認逮捕なのよ」

 

 

「そうだろうな。バスジャックやチャリジャックの爆弾から見てすぐにわかる」

 

 

「リュウジはすぐに理解してくれて助かるわ。あのバカキンジとは大違い」

 

 

「まあこれも仕事のうちだ。武偵憲章.......だったか。それにも書かれていたからな」

 

 

武偵憲章第1条『仲間を信じて、仲間を助けよ』

 

 

俺はただそれを守っただけだ。

 

 

「ねえリュウジ。もう一度あたしとパーティーを組まない?今度は護衛とかじゃなくて、ちゃんとパートナーとして........」

 

 

「神崎のパートナーはキンジだ。あんなやつは、世界を探してもあいつしかいないよ」

 

 

俺は知っている。

キンジという男は、そう簡単に終わらせないことを。

 

 

俺が分かる。

この繋がりは、決して途絶えることはないのだと。

 

 

「だから神崎........いや、”アリア”。もう一度あいつを信じてやってくれ」

 

 

名前を言い直し、その目を見て、俺はそう言った。

 

 

アリアは不意の呼び捨てに一瞬同様したが、直ぐに俯いて話を続けた。

 

 

「でも、あたしはもうダメなのよ。もう時間がない」

 

 

「時間がない......帰るのか?ロンドンに」

 

 

「ええ」

 

 

「そうか」

 

 

アリア。本当にそれでいいのか?それで後悔してもいいのか?

 

 

口には出さない。

 

 

それでは、今の精神状態の彼女を追い込むだけだ。

 

 

「なら、あっちの空港までついて行ってやろう。これぐらいやらせてくれ」

 

 

「うん。分かったわ」

 

 

「それとアリア」

 

 

俺は背を向け、病室の扉の方に歩いて行く。

 

 

「そんな1人で背負い込まないで、俺に相談でもしてくれよ」

 

 

そう言って俺は病室を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帰路につこうとした外に出た刹那、タイミングを計ったように携帯が振動する。

 

 

奴だ。

 

 

『やあ■■■■君。いや、今はリュウジ君と呼んだ方がいいかい?』

 

 

「そんなことはどうでもいい.......武偵殺しとやらは貴様の差し金だろう?」

 

 

電話の奥で笑っているのがわかる。

 

 

『確かに彼女は僕の組織の人間だが、直接指示したわけじゃないよ』

 

 

その言葉から、嘘は感じられない。

 

 

『ところで、戻ってくる気にはなってくれたかい?』

 

 

「.......()が戻ったところでどうなる」

 

 

んー、としばらく考える声が聞こえる。

 

 

『もちろん、僕にはメリットがある。かつてイ・ウーの頂点に君臨していた(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)君が戦力になるんだからね』

 

 

「.............」

 

 

『君の大切な彼女(・ ・ ・ ・ ・)との交換条件と考えてくれていいよ。そうすれば君にもメリットがあるだろう?』

 

 

携帯を持つ手に力がこもり、ミシミシと音をたてる。

 

 

「......手は出していないだろうな?」

 

 

『普段冷静な君がめずらしい。安心してくれ、僕は(・ ・)手を出していないよ』

 

 

「.........っ!」

 

 

怒りで魔力とともに頭に血が上るのがわかる。

 

 

『そのうち懐かしい娘たちと会えるだろうから、楽しみにしてくれたまえ。それじゃあ』

 

 

そう言って通話は切れた。

 

 

俺は立ち込める怒りを、近くの街灯を殴ることで沈めた。

 

 

「........私は」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[続く]

 

 

 

 

 

 

 




もういろいろバラしてもいい気がします。
次回はいよいよ武偵殺しとの対決。
では、また次回。
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