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扉を開けるとそこにいたのは…笑至くんだった。この部屋では、他のみんなは僕を相手に妄想をし始めるんだよな…。笑至くんは、僕を相手にどんな妄想をしているんだろう…?
「………………」
笑至くんはベッドの横に立ち、真面目な顔でこちらを見ている。手には何かの書類を持っているみたいだ。
「……お疲れ様です、宗形さん。今日解決した事件の報告書を届けに参りました」
「報告書…?」
一体何の事件なんだろう。それに今、宗形さんって言ったよな…。
「はい。こちらに」
笑至くんは僕に近づき、手に持っていた書類をこっちに渡してきた。受け取った瞬間ずっしりと重たさを感じて、思わずよろめいてしまいそうになる。
「大丈夫ですか?…今回の件に関しては付箋が貼ってあるページからです。どうぞご確認を」
「う、うん」
誘導されるがままに、2人でベッドの端に座る。言われた通り付箋のついたページを開くと、そこにはドラマで見るような遺体の写真や凶器なんかが写真で貼られていた。
事件の顛末や犯人を特定する決定的な証拠なんかが、フォントのような文字でわかりやすく整理されている。おそらく笑至くんの字なんだろう…すごく綺麗だ。
「…えっと、この事件を僕達が解決した…ってことでいいんだよね?」
「そうです。今回も宗形さんは惚れ惚れするような推理を披露されていて、感服致しました」
「あ、ありがとう……」
とりあえず頭を下げる。どうやら僕が探偵で、笑至くんが助手…ってことみたいだ。笑至くんがいつもより更に丁寧な口調で、なんだかやりづらい…!
「宗形さん、確認は終わりましたでしょうか」
「ああ、うん。まとめてくれてありがとう」
「いえ、それもこちらの職務の内ですので。それでは、本日の業務は終了です」
笑至くんは僕の手からそっと書類を取り上げると、すっと頭を下げる。そして、にこりと笑った。
「お疲れ様でした、宗形くん」
「……?お疲れ、様…」
「今回の事件は苦労しましたね…何せ、宗形くんが集めてきた証拠が……」
宗形くん、に呼び方が戻ってる。もしかして、仕事が終わったから切り替えたんだろうか?仕事とそれ以外で公私の区別をはっきりさせてるのは、なんだか笑至くんらしいと言えばそうなのかもしれない…。
「…聞いてますか?」
「えっ、ごめん!な、何の話だっけ……」
「まあ…雑談なのでいいですよ。お疲れでしょうし気にしないでください」
笑至くんは態度には出さないけど、申し訳ないことをしちゃったな…。心の中でそっと謝る。
「…それにしても、貴方の成長には本当に目を見張るものがありますよ。短期間でこれだけの事件を解決するまでになるとは…探偵として貴方をスカウトしたボクの目に、狂いはなかったのかもしれません」
「…それは、笑至くんのサポートがあったからこそだよ」
これは僕の本心だ。笑至くんがいなかったら、僕は真実を突き止めることなんて、とっくの昔に諦めてしまっていただろう。
「笑至くんがいつも隣でいろんなことを教えてくれて、励ましてくれるから、僕は頑張れるんだよ」
「……ありがとうございます」
笑至くんは嬉しそうに微笑む。その笑顔を見て、ふと思いついた。
「…そうだ、笑至くんは、何か僕にして欲しいこととかないの?いつも君にいろいろしてもらってばっかりだからさ、僕も何か恩返しみたいなことが出来ればいいなって…」
「恩を売っているつもりはありませんが、そうですね……」
笑至くんはしばらく考える仕草をしてから僕の方を向いた。
「…ボクの、頭を撫でてもらえませんか?」
「頭?」
思わず素っ頓狂な声を出してしまう。本当にそんな事でいいんだろうか…?
よく分からないまま、おそるおそる手を伸ばす。頭をそっと撫でたり優しくぽんぽんと叩いたりしてると、笑至くんが動かなくなった。
「笑至くん…?」
…よく見ると、耳が真っ赤だ。
「……ボクは、ジョークのつもりで言ったんですけど…」
「え!?ご、ごめん!!本気で言ってるんだと…」
「いいです。もういいです。分かりにくい冗談を言ったボクのミスです。今日はもう帰ります。お疲れ様でした。」
笑至くんはすくっとベッドから立つと、口元を手で押さえ、真っ赤な顔のままつかつかと早足で部屋を出ていってしまった。部屋にはぽかんとした顔の僕が取り残される。
…これでよかった、のかな?