スイートルームイベント   作:鳶子

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スイートルームイベント:スティーヴン・J・ハリス編

♡ ♡ ♡

 

 

 

扉を開けるとそこにいたのは…スティーヴンくんだった。

この部屋では、他のみんなは僕を相手に妄想をし始めるんだよな…。スティーヴンくんは、僕を相手にどんな妄想をしているんだろう?

 

「Good evening…来てくれてありがとう、こむぎ君」

僕が部屋の中に入ると、スティーヴンくんは軽く手を振って言った。

 

「ううん、全然大丈夫だよ」

「急に呼び出したりしてすまない。どうしても、確かめたいことがあってな。こんなこと誰かに話したことは無いんだが…親友の君になら、話せると思うんだ」

「…親友かあ……」

僕はスティーヴンくんの親友という設定みたいだ。思わず呟くと、スティーヴンくんは途端に不安そうな顔をした。

 

「僕達はそう思っていたんだが…ち、違ったか…?」

「いや、そんなことないよ!ごめんね、ちょっと親友って言われたのが、その、嬉しくて…」

「そうか…なら良かった。それで、話がしたいんだ。少し長くなるかもしれないが、聞いてもらっていいかな」

「うん、もちろん。親友なんだからなんでも聞くよ」

「Thanks…立ち話もなんだから、とマシューが言っているし、このベッドの上にでも座ろうか」

 

僕達は2人でベッドの上に腰かけた。前から思ってたけど、マシューさんっていうのは気遣いができるすごく優しい人なんだろうな…。

スティーヴンくんが少し緊張した面持ちで話し始める。

 

 

「Well…ジョークもない身の上話だから、こむぎ君にとってはつまらないかもしれないが。

…僕達…いや、"俺"は昔から、人と仲良くするのが苦手だったんだ。周りの人のことをあまり、信じることができなかった」

「…うん」

「表向きでは仲良くできていても、本当は相手が自分のことをどう思っているのかなんて、分からないだろう。それに、そんなことを考えてしまう弱い俺は…何か些細なことがきっかけで、周りの人に軽蔑されたり嫌われてしまうかもしれない。

そんな風に不安になると、どうしても他人を信頼することができなくて…」

 

苦しそうな表情で話していたスティーヴンくんは、そこで一旦言葉を止める。

 

「俺にとって…ジョン、メアリー、ジャック、マシュー…頭の中に住むたくさんの人格たちだけが、信頼出来る友人だった。彼らの他に、心の底から信じられる他人は、1人としていなかったんだ」

「…………」

 

スティーヴンくんがそんな思いを抱えていたなんて、今まで全く知らなかった。友達や周りの人を信じられないということは、きっと普通に生きている僕には想像もつかないような、とても苦しいことなんだろうと思う。

 

彼の顔を見ると、スティーヴンくんは少し困ったように眉を下げて、小さく笑った。

「君に変な奴だと…弱い奴だと思われても仕方がない。ただ、これだけは伝えさせて欲しいんだ」

「…うん」

 

「君の真っ直ぐな人柄に、無邪気な笑顔に…俺を親友だと言ってくれたことに、救われた。俺は初めて、 本当の意味で、他の誰かを信じられるんじゃないか…そう思ったんだ」

スティーヴンくんは、真剣な眼差しで僕を見据える。

 

「俺は…君を信じたい。」

 

「…………」

「君の気持ちを確かめたいんだ、こむぎ君。君は今も、これからも…俺の事を『親友』だと呼んでくれるか?俺は君を…信頼しても、良いんだろうか?」

 

「…いいよ。全部良い。僕は君のヒーローみたいにかっこいいところも、君が弱いと思っている部分も…親友として、君の全てを受け止めたい」

「…………」

「なんでもできる完璧な人なんて、この世にいるはずないよ。誰にでも弱い部分はあるし、不安に囚われちゃうこともある。

でもそういう時こそ、他人を…僕を、頼って欲しい。そうやって互いに支え合ってこそ、親友って呼べるんじゃないかな」

 

「……そうだな。ありがとう、こむぎ君」

 

孤軍奮闘するヒーローは確かにとてもかっこいいけれど、お互いに信頼して背中を預け合えるバディのような親友。最初はそれでもいいんじゃないんだろうか。

世界を救うヒーローだって、生まれた時から完璧な超人って訳じゃないだろう。

 

 

「…HAHA,やっぱりシリアスな雰囲気には慣れないな!」

スティーヴンくんは誤魔化すように、照れくさそうに頬を赤くして笑った。

 

「君の言葉が聞けてとても嬉しかったよ。俺と親友でいてくれて、ありがとう」

 

彼はそう言って立ち上がると…突然、強く抱きしめてきた。

そう言えばアメリカの映画って、親友がよくハグをするシーンみたいなのがあるような。やっぱりスティーヴンくんは、根っからのアメリカ人なんだな…ちょっぴり恥ずかしいけど、嬉しいな。

 

「こんな俺だが…これからもよろしく頼む、こむぎ君。」

「うん、こちらこそ。スティーヴンくん」

 

その夜は、2人でアメリカと日本の文化について熱く語り合った…。

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