スイートルームイベント   作:鳶子

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スイートルームイベント:根焼夢乃編

♡ ♡ ♡

 

 

扉を開けるとそこにいたのは…根焼くんだった。

この部屋では、他のみんなは僕を相手に妄想をし始めるんだよな…。根焼くんは、僕を相手にどんな妄想をしているんだろう?

 

「遅いよ宗形ぁ」

根焼くんはベッドの上に寝っ転がっていたけど、部屋の中に入ってきた僕に気づくと体を起こした。

 

「ごめんごめん…」

「…はぁ、こんな遅くまでナニしてたの?早くこっち来なよ」

手招きされるがままに、ベッドの上に乗る。ここまでのしゃべり方や態度はいつもと変わらないように思えるけど、僕は根焼くんの中でどんな存在なんだろう…?

 

僕が隣に座ると、根焼くんは僕のセーターの袖をくいっと引っ張った。そして自分のネクタイを慣れた手つきで緩めると、シーツの上に手をついて、上目遣いで見つめてくる。

 

 

「もー、待ちくたびれすぎて帰っちゃおうかと思ったよ。…早くヤろ」

「……へ?」

 

…やる?って、何を?

 

「忘れちゃった?コレだよ、コレ」

そう言うと根焼くんは、右手で作ったOKマークの親指と人差し指の間に、左手の人差し指を差し込んでみせた。

 

「……んな、!?」

「なーに照れちゃってんだよ。好きなクセに」

「そんな訳ないでしょ!?ぜ、絶対そんなことやらないからね!!」

 

「…はぁ!?お前、今日ボクが何のために来たと思ってんの!?」

胸ぐらをぐいっと掴まれる。…いや、いくら夢でもさすがにその一線は超えちゃだめだろう…!

 

「知らないよそんなの!!とにかく、絶対だめだからね!!」

「……………」

根焼くんをむりやりに遠ざけると、彼はかなりむすっとした顔をした。

 

「………ご、ごめん」

「……………」

どうやら拗ねてしまったみたいだ。なんとか機嫌を治さないと…。で、でも、どうすればいいんだ……?

 

 

「…宗形のせいでよれちゃったんだけど。直して」

しばらくすると、根焼くんは不機嫌そうに自分のネクタイを指さした。

 

「わ、わかった…」

僕はおずおずとネクタイに手を伸ばす。自分のネクタイは簡単に結べるけど、人のをやるとなると意外と難しいな…。いつも通りやろうとしても、なんだかあべこべになってしまう。

 

「…ばーか、へたくそ」

そのネクタイの主は、手間取る僕をにやにやと楽しそうに見つめていた。

 

「そう思うなら自分でやってよ…」

「やだ。宗形がいい」

「えぇ……」

「あはは、顔赤くなってやんの」

「…………」

 

な、何なんだ、一体……。

振り回されてるのはわかるけど、ワガママな彼がちょっと可愛く見えてしまうのは気のせいだろうか…。

 

「…はい、できたよ」

ちょっと形は不細工だけど、なんとか結ぶことができた。

 

「ありがと、」

 

根焼くんがいきなりぐいっと顔を寄せてきたので、思わず仰け反る。すると彼は残念そうに元のあぐらの姿勢に戻った。

「ちぇっ。不意打ちなら上手くいくかと思ったのになぁ…」

 

「…い、今の何?」

「さぁ?ご自慢の勘で察しなよ、宗形クン」

「…………」

あからさまに僕の頬を狙ってきてたってことは…き、キス、しようとしてたんだよな………。今度は言われなくても顔が熱くなっていくのがわかる。

 

彼は何も言わずに僕をじっと見つめている。次は何をするつもりなんだろう…?見つめ返しながらも、自然と身構えてしまう。

 

「………………」

「………………」

 

なんだかじっと見てると、誘惑されているというか、根焼くんに吸い込まれちゃいそうだ…。

そっと視線を逸らすと、ぐいっと肩を掴まれて向かい合うような格好にさせられる。

 

「…どう?煽られてその気になった?」

「いや、それはならないけど…」

「ふーん。…でも、ボクのことずっと考えてるでしょ?」

 

「…!」

 

悪戯っぽく微笑まれて気づく。…そういえば、この部屋に来てから、根焼くんのことしか考えていない気がする。

彼が何を考えているのか、次は何をしてくるのか。そんなことばかり思案していた。

 

「…うん」

「宗形って正直すぎ。そのまま大人になったら、悪い奴にすぐ騙されて搾り取られちゃうだろうなぁ…」

「あはは、そうかもね……」

「ほんっとダメダメだよ、お前。今日も全然空気読めないし?女のコだったら一発でフラれてるよ」

「うっ………」

 

根焼くんに比べたら、確かに勉強やら運動やら、全てが劣ってるんだろう。でも、だったらどうして…

 

「…じゃあ、根焼くんは、どうしてそんなダメダメな僕がいいの?」

「………………」

 

根焼くんは答えずに、また僕の方に近づいてくる。反射的にぎゅっと目を瞑ると、僕の予想とは裏腹に、包み込むような、程よい強さで抱きしめられた。

体の緊張を解すように、丁寧な手つきで髪を梳かれた後、ゆっくりと耳元で囁かれる。

 

「ボクは不完全な君が好きなの。頭が君でいっぱいになっちゃうぐらい。」

 

「……!」

 

…今のは、キュンと来ない人の方がおかしいだろう……。

 

 

 

「…チキンな宗形のために、今日は一緒に寝てあげるだけにしてやるよ」

「…?一緒に寝るって…」

「隣で寝るだけ。何?本番がいいならそうするけど?」

「え、遠慮しときます……」

 

根焼くんの隣で、抱き枕にされながら眠りについた…。

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