せいしゅんびより   作:skav

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キノコ狩りをした

待ちに待ったキノコの季節である。朝の日課で見つけたキノコは大きく、もう獲っても大丈夫なくらいにたくさん生えていた。そう、今日はキノコ狩りだ。

「なんだが季節毎にツナギの山に来てる気がするなー。」

「とか言って、授業の一環と称して明日は振替休日にするつもりですね?」

「な、なぜバレた・・・。」

そう、今日は日曜日である。それ故分校組に加えて、その保護者達や楓とこのみもいる。

「ま、大勢来るのは一向に構いませんけどね。それじゃあ今日はよろしくお願いしまーす。」

「「よろしくお願いしまーす。」」

秋のキノコ狩りはもはや行事となりつつあった。

「駄菓子屋ー完全に栗獲る気満々じゃん。」

「うるせー、いいからさっさと行くぞ。」

かごを背負い、栗用のはさみを持った楓が夏海達を連れて山に入っていった。

子供達はドングリやら、木の実を集め、知識のある保護者達がキノコを集めるという分担だ。

「さて、一条さんは俺たちと行きましょうか。」

「かごは用意してますので使って下さい。軍手は持ってきましたか?」

「はい、大丈夫です。色々お世話になります。」

今年は一条家が初キノコ取りだ。食べられるキノコ、木の実、山の歩き方など結葵とこのみが教えることになっている。

まずは山に入ってキノコ取りだ。狙い目はタマゴダケ。一見毒々しい色をしているが味は濃厚で格別に美味い。

「一条さんにはタマゴダケを獲ってもらいます。」

「聞いたこと無い名前です。どんなキノコなんですか?」

「鮮やかなオレンジ色で、柄の方が白い卵の形をしているんです。」

「あーそれでタマゴダケって言うんですね。」

一条夫妻と話をしながら、結葵達は生えていそうな場所をくまなく探す。

「結葵ーこっちにいっぱい生えてるよー!」

そして、お目当ての赤いキノコが群生している場所をこのみが見つけた。

「えっと・・・これ、食べられるんですか?」

案の定蛍の母親が疑うような顔をした。無理も無い、初めて見る人はちょっと遠慮するくらい鮮やかな色なのだ。

このみが慣れた手つきで、一本採取し、蛍の母にそれを見せる。

「見た目はアレですけど、食べると美味しいんですよ。」

「・・・それは楽しみです。」

蛍の母はまだ疑っているようだが、そこは食べてもらうしか解決する方法はない。

「それじゃあ、柄を折らないように注意して獲りましょう。たぶん、この近くにも生えているとおもうので。」

と言うわけで、さっそくキノコ狩りを開始した。どうやら穴場らしく、大きなタマゴダケが面白いように次々と見つかる。

「あ、一条さんそれ毒キノコです。」

蛍の父がとった赤いキノコは白いイボがついていた。

「え、そうなんですか?」

「ベニテングダケって言って、似てるけど違う種類です。けど、間違って獲っても大丈夫ですよ、あとで選別しますから。」

とりあえず気にせず獲って、キノコ取りを楽しむのが第一目標だ。ある程度までかごが一杯になったので、今度は木の実取りに移行することにした。

栗やドングリは楓達が取るって来るだろうから、今回狙うのはアケビとさるなしだ。

「アケビって食べたことありますか?」

「えっと・・・子供の時に見た目が怖くて泣いた記憶が。」

恥ずかしそうに蛍の父親が頬をかいた。

「まあ、確かにちょっとグロテスクですよね。あ、あったあった。」

結葵は紫色の果実を指さした。丁度良く熟したものもあれば、熟し切って縦に割れているものもある。

蛍の母親が割れたアケビを見て顔を引きつらせた。

「えっと・・・これ、食べられるんですか?」

「見た目はアレですけど、食べると美味しいんですよ。」

「・・・それは楽しみです。」

全く同じやりとりをこのみとやりとりしていた。まるで口のようにパックリと割れた超完熟アケビは、虫がたかってなんともグロテスクであった。

「完熟すると日持ちしないから、あまり出回らないんです。まあ、ある意味で高級食材ですよ。」

結葵は丁度良く熟した方を取り、かごに入れる。残念ながらさるなしは取れなかったが、代わりにマタタビが取れた。そう、あのマタタビである。

 

 

「楓ちゃん、また随分と獲ってきたね。」

あふれんばかりの栗が詰め込まれたかごを見て、結葵は驚きの声を上げた。

「前回はイガを剥いてから獲ったから時間が掛かってからな。今回はちゃんと準備してきた。」

「だからってイガごと持ってくるんだ・・・。まあ、良いんだけどさ。」

「それよりも面白いもの獲ってきたな。」

楓は小さいかごに入っているマタタビを指さした。

「お酒用に獲ってきたんだけど、分けてあげようか?」

「別にいらねーよ。たださ、ことわざあるだろ?あれ思い出してさ。」

「確か猫にマタタビ、お女郎に小判だよね?」

すかさずこのみが答える。さすがは受験生と言ったところか。ちなみに猫にマタタビ、お女郎に小判とは好きで好きでたまらない様子を表現した言葉だ。

「そうそう、猫にマタタビ、お女郎に小判、このみに結葵ってな。」

「な・・・何言ってるのよ、もう・・・。」

「そーかそーか、俺はこのみのマタタビか~、ははははー。」

「もう、結葵まで!」

「はいはい、惚気はそこまでー。お待ちかねのお食事タイムですよ~」

一穂の合図とともに、保護者談が下ごしらえをした様々な料理を手に現れた。

主役はなんと言ってもタマゴダケだ。そのほかにも様々なキノコ料理が並べられ、まさにキノコ尽くしだ。

「さて、じゃあ私たちは未来の息子とお話しようかしらね~。」

このみの母が結葵の腕をがしっと掴んで連行していった。むろんお酒付きで。

「結葵君の作ったマタタビ酒って美味しいのね。」

「ありがとうございます。疲れたときに飲むと良いらしいですよ。」

「さて、と。このみから進学の話聞いたかしら?」

結葵の分の酒を注ぎながら、そんなことを聞く。

「はい、寮生活することも聞いてます。」

「まあ、短大だから二年で帰ってくるんだけど。やっぱり寂しいかしら?」

「それは、まあ・・・はい。寂しいですよ。」

短大に行くのは初めて聞いて少しだけ気持ちが軽くなったが、新たな疑問が湧いた。

「それって、大丈夫なんですか?確か短大で取れるのは二種の方じゃ・・・。」

「私もそう言ったんだけどね。あの子そう言って聞かないのよ。何か考えがあるみたいだけど。」

「そうですか・・・。」

「ま、あの子が路頭で迷うことになったらちゃんと拾ってあげてね?」

「そんなことは無いと思いますけど。分かりました。」

結葵はグイッとグラスを傾ける。マタタビ酒特有の不思議な、でも癖になる味が広がる。

「ねえ結葵君。もしこのみが一緒に東京まで来てって頼んだら君は行く?」

突然変な事を聞いてくるなと、結葵は思った。しかし、良く考えると結構大事な質問かもしれない。

「・・・無理ですね。たぶんですけど、俺は一生ここから離れられない気がするんです。」

「でもそれじゃあ、このみが別の場所で暮らすって言ったらどうするの?一生離ればなれ?」

本当に好きだったら、どこへでも着いていくと答えるべきだろう。しかし、結葵にはその答えは持ち合わせていない。結葵にとってここは生活の糧であり、住む場所であり、そこでしか生る方法を知らない場所なのだ。東京の生活で感じた自分の無力さや、圧倒的な環境の違い。

井の中の蛙大海を知らず。しかし、結葵は蛙では無く淡水魚であった。淡水魚は海では生活できない。そういうことだ。

「もしそうなったら、彼女を連れ戻しますよ。俺としては一生あのご飯を食べられないと死んでしまいそうですから。」

「それは頼もしいわね。ささ、飲んで飲んで~結葵君お酒強いから嬉しいわ。」

いつの間にか数本の酒瓶が、テーブルの上に並べられていた。これはすぐに返してくれそうに無いなと、結葵は悟った。

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