【完結】 セブルス・スネイプの天国   作:トライアヌス円柱

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13話 魔法学校の平和な日常

 

 セブルスはポッター少年と別れたあと、明日の授業で使用する薬の材料を補充しに温室へ向かう途中、なにやら見飽きた光景に出くわしてしまった。

 

 「やっぱり透明マントは最後の手段にしたいんですよ、道具に甘えてばっかりじゃ、きっといつか足元掬われるわ」

 

 「おお、その通りだ我が愛弟子、それならばどうする?」

 

 「やっぱり先生たちみたいにアニメーガスになるのが最適じゃないかな、と」

 

 「素晴らしい、その意気や良し! 早速教えようじゃないか!」

 

 「おいおい先生そりゃないぜ、俺たちには全然教えてくれなかったのに、シェリーにはすぐかよ!」

 

 「そうだぜ、えこ贔屓反対だ!」

 

 「何を言う、私が学生時代には、独力で学び勝ちとったのだぞ? 君たちも我々の後継者を自負するなら、それくらいの気概を見せて欲しかったものだ」

 

 「その代わり、いたずらグッズの開発はこっちが上だぜ!」

 

 「そうとも。先生たちは『気絶キャンディ』や『伸び耳』なんて作れなかっただろ?」

 

 ……頭痛がしてきた。もはやホグワーツ中で知らぬ者はいないメンツが固まっている。

 

 人気沸騰中(あくまで本人談)の2年生の赤毛のやんちゃ娘シェリー・ポッター。

 

 校内のいたずら案件は8割がたは彼らの仕業。ご存知、双子のウィーズリーこと、フレッドとジョージ。

 

 そして、こちらが一番の問題である、闇の魔術の防衛術の教師、シリウス・ブラック。

 

 悪戯好きの生徒がいるのは、ホグワーツでは日常茶飯事だ。何年も何十年も連錦と続いてきたことである。そこに女子生徒が混ざっているのは多少珍しいことではあるが、まだ下級生の頃にはそういう例はみられる。

 

 だが、生徒の悪戯計画に教師が混ざるなど、長いホグワーツの歴史でもそう何度もなかったことだ。いや、過去に例があること自体がおかしいのではあるが。

 

 質の悪いことに、この連中は学内で人気が高い、特にグリフィンドールでそうだが、スリザリンですら一定の支持者がいる。むしろこの4人を嫌っているのはレイブンクロー生が多い。何かと騒ぎを起こす彼らは、静寂を好むあの寮からはウケが悪い。

 

 

 「でもフレッド、やっぱりゲロを吐かせるようなものは駄目よ。汚いのは私キライ」

 

 「そうだ、いくら悪戯と言えど、汚れるようなものは推奨しないな。ゲーゲートローチには改良の必要がある」

 

 「相変らずシェリーに甘いよな先生」

 

 「まあでも、シェリーのアドバイス通りに改良した鼻血ヌガーは女生徒にもウケたし、今回も改良は必要じゃないか?」

 

 「うんうん、2人の悪戯も商品も、とっても面白いけどやっぱりスマートでキレイな方が素敵でしょ?」

 

 「ついこの前、上級生に糞爆弾投げつけた女のセリフとは思えませんなぁ」

 

 「そうそう、おかげでフィルチがカンカンだったぜ」

 

 「あれは……! だって、仕方ないでしょ!? あのトロール野郎が私の友達にいやらしいちょっかい掛けてきたんだから!」

 

 「うむ、我々の時代も女子へのスカート捲り等は、絶対の禁則事項としていたからな。まぁ、それはジェームズがリリーに冷たい目で見られたことが発端だったが……」

 

 「ん? 何か言ったシリウスおじさま」

 

 「いやいや、何でもないさシェリー。それと学校では先生と呼びなさい」

 

 「授業ではきちんと呼んでるもん」

 

 「ダメだ。ホグワーツにいる間は先生と呼ぶように」

 

 「はぁい」

 

 なんだかなんだで聞き分けの良いところが、この悪戯娘が好かれる由縁だろう。いろいろやらかし失敗もするが、基本一度お説教を受けたことは反省し、そのまま繰り返さないのがこの娘の特徴だ。もっとも手を変え品を変えてまた色々とやらかすのだが……

 

 「あ、でもフレッドにジョージ、ジニーが言ってたけど、貴方たちのお母さまがまた貴方たちに吼えメールを送るらしいわよ? それも今回は一人に一通」

 

 「マジかよ勘弁してほしいぜ。どうして我らが麗しの母君は、男のロマンを理解してくれないんだ?」

 

 「この調子じゃあ、開店の許可なんて夢のまた夢だぜ」

 

 「そう悲観するな、いざとなったら私も口添えしよう」

 

 「頼むぜシリウス先生。さすがは我らが師匠」

 

 「パッドフット先生に幸あれ!」

 

 

 今日もホグワーツの問題児4人(一人は教師)は楽しそうである。このまま様子を眺めていても、頭痛が大きくなるだけだろう。ならばもっと建設的な行動を起こすべきだ。

 

 セブルスは4人に、というかその内の一人に目掛けて大股で近づいていき、大声で怒鳴りつける。

 

 「ブラック! 貴様は仮にも教師だろう、なにを生徒と一緒によからぬことを企んでいる」

 

 「む、出たな鉄面皮教師。生徒と教師が談話していることに何の問題がある? それに貴様、またシェリーに罰則を与えただろう!」

 

 「廊下をあそこまで汚せば、罰則を課さない方が異常だ馬鹿め!」

 

 「ならば喧嘩両成敗にすべきだろう! シェリーだけ罰則とはどういうことだ!」

 

 「やり方というものがあるのだ! 監督生に相談するなり副校長に言いつけるなりな! 自らが暴挙ともいえる実力行使をする必要はない!」

 

 「友の苦境を救うのは人として当然だ! 相談したところでなあなあで終わってしまえば被害者の子は泣き寝入りだ!」

 

 セブルスは日ごろから生徒たちに怖い印象を持たれているが有能な先生と認識されており、その厳しさから活発な生徒からは嫌われることが多い。しかし優秀な生徒からは懐かれており、そうした生徒には個人的に指導をすることを厭わない。実力主義で教え方も上手いけれど、やはり笑顔が少ないその姿は特に下級生にはとっつき難さを与えてしまっている。

 

 シリウスはそのルックスもあって「カッコいい大人」として特に女生徒から人気が高く(そのせいで一部の女生徒はシリウスべったりなシェリーを嫌っている)、授業も面白いので慕う生徒も多い。先ほどまでの悪戯っ子たちとのやり取りも、他の生徒には見せない顔だ。特にシェリーに対する過剰なまでの過保護っぷりは、彼のファンの女生徒が見れば幻滅するかもしれない。

 

 シリウス自身はかつて親友が『特定の誰か』に対しての熱烈なアレコレで、多くいた彼のファンが離れて行ったのを間近で観察した経験を活かし、そうした姿は双子のウィーズリー以外には見せないようにしている(それでもわかる人にはわかる)

 

 つまり、2人ともそれぞれ「怖いが有能な先生」「カッコよく素敵な先生」という評判である。しかし、この2人はこうして顔を合わせると途端にダメな大人になることでも有名なのであった。

 

 現に、大声で言い合う2人の様子に、周囲の生徒が何事かと注意を向け、それが例の魔法薬学教師と防衛術教師だと分かると、ああいつものかと納得してしまっている模様だ。

 

 そうした生徒の中でグリフィンドール生は当然自たちの寮監であるシリウスを応援し、スリザリン生はその逆。ハッルフパフ生はおろおろし、レイブンクロー生は溜息をついて素通りしていく。

 

 これもホグワーツでよく見られる光景の一つ。今日も魔法学校は平和である。

 

 

 「お前はいつも生徒たちに甘すぎるのだ! そうして悪戯生徒たちを甘やかしていれば、普通の生徒たちに示しがつかん」

 

 「教師が常に規則規則と締め上げるから反発するんだ! 適度に悪戯を許し、それは自己責任だと言ってこそ、自主性が芽生えるものだ」

 

 「迷惑がかかる他の生徒のことも考えろ!」

 

 「同じ寮になれば兄弟同然! そうした仲間意識を育んでこそのホグワーツだろうが!」

 

 この2人が口論を始めてしまえばもう止まらない。すでに発端であったシェリー・ポッターの罰則云々から話は飛躍し、それぞれの教師のスタンスを否定しあう様子になっている。

 

 自主性こそを重んじるシリウスと、規則を守ってこそ、というセブルス。どちらも一理あるが、全体として正論なのはセブルスであり、生徒に人気があるのはシリウス。

 

 セブルスのやり方は優等生には居心地いいが、普通の生徒にはやや硬い。逆にシリウスのやり方は、活発な生徒には楽しいが、大人しい生徒には騒がしすぎる。

 

 つまりは両極端。それぞれがグリフィンドールとスリザリンの寮監をやっているのだから、さもあらんと言ったところ。しかし、トップの2人がこうして低次元の口喧嘩で終始しているせいか、ここ数年の獅子と蛇の対立は、なんというかとても子供っぽい喧嘩程度で終わっている。

 

 これも、2人の人徳であろうか。まあ、これを人徳と言ってしまえば、『人徳』という単語から抗議が来そうではあるけど。

 

 「そういえば根暗薬学教師。お前今日の授業でまた我がグリフィンドールの生徒を不当に減点したな!」

 

 「何が不当か。宿題を忘れたのだぞ。減点して当然だろう」

 

 「だからといって10点減点はやりすぎだ! 宿題忘れはせいぜい5点が相場だろう。そんなやり方では生徒が自信をなくし、余計萎縮するだけだ」

 

 「ふん、甘やかすことが教育だとでも言うつもりか。貴様がそうしてホグワーツを幼稚園のようにするから、私が正しく導かねばならなくなるのだ」

 

 「生徒が伸び伸び自信をもって学んでこそのホグワーツだろう!」

 

 「馬鹿め、学問というものの本質を学んでこそのホグワーツだ!」

 

 

 といった有様である。周囲では獅子と蛇の寮生は応援と野次を飛ばし、穴熊生が止めようかどうしようかを迷っているという、いつもの魔法学校の風物詩が見られている。鷲寮生徒はもはや一人もいない。

 

 おまけに『シリウス派』の生徒たちの中には「今日はどちらが勝つか」で賭けを始める者たちが出始まる始末で、そしてこれもいつもどおりに、いつの間にか赤毛の双子はその胴元になっているようだ。

 

 だが、こうした状況なると大抵……

 

 「今日という今日は許さんぞ、この陰険スリザリン寮監!」

 

 「貴様こそ年貢の収めどきだ、この蛮勇グリフィンドール寮監!」

 

 「いい加減にしなさい!! ブラックもスネイプも、生徒の前で何たる醜態ですか!」

 

 こうして、マクゴナガル副校長の雷が落ちて、お開きになるのだけど。 これが彼らの日常。平和な魔法学校で綴られ、これからも繰り返されるだろう光景の一つであった。

 

 

 

 

 ………そろそろ時間だ、もうすぐ息子が迎えに来るだろう。ごめんなさいね、でも今日は、貴方に会いにいく日だから。

 

 





次回が最終話となります。
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