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どこかの部屋、そこにある椅子に私は座っている。
———怖い目にあったみたいだね。
目の前には男性が立っており、朧げに見える。
———レイチェル。
レイチェル……レイチェル・ガードナー。それが私の名前。
———僕はダニー。君のカウンセリングの先生だよ。
気のせいだろうか。先ほどまでの男性とは、違う男性が立っている気がする。しかし、声は変わらない。
———何があったのか、話してくれるかい?
私は———。
「んんっ……ん?」
オルガが眼が覚めるとそこには無機質な見知らぬ部屋。そして見知らぬプラチナブランド色の髪の少女が椅子に座りながら寝ていた。オルガは地面に寝ていたようだが、次第に頭が冴えていき、違和感に気づく。
(は?どういうことだ?俺は確かに撃たれて死んだはずだ)
身体には傷も痛みもなく、血は流れていない。それに死んだ時よりも若返ってるような感覚がした。
何が起きたか、把握しようとしてるうちにどうやら少女の眼も覚めたようだ。
「おぉ、嬢ちゃん大丈夫か?」
「……ここは?」
「よくわかんねぇ」
オルガにも訳が分からず、死んだと思ったらこんな場所に放り出されていた。すぐにでも行動を起こすべきと考えたオルガだが、ライドやタカキと同年齢くらいの少女をこんなところには放っておけないのも確かだ。
「……青くて綺麗な月。でも、本物じゃないみたい」
窓から差し込む神秘的な光。少女の言葉にオルガもそちらに目を向ける。それは火星に住むオルガにとって、目にする機会が少ない月。尚且つ満月で青く輝いていた。
(月……月か。ミカ……)
自分が残してきてしまった相棒。その悔やみを思い出してしまい、少女がいるにも関わらず、葛藤の声をあげた。
「何やってんだ、ミカァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」
その叫びに少女は驚いた顔をする。だが、それも束の間。部屋のドアが勢いよく開き、入ってきた人影が一瞬でオルガに距離を詰めて胸倉を掴んだ。
ピギュ
「うるさいなぁ、なに?オルガ?」
「は……?ミカ、お前……」
そこにはここにはいるはずのない、ミカ———三日月・オーガスがいた。その結果、オルガの頭に思い浮かんだのはミカの死だった。
「まさか、ミカ……お前も」
「とりあえず謝りなよ。驚いてる」
「アッ、すみませんでした」
オルガは我を忘れて少女を脅かしてしまった。例え意味不明な状況下であっても、いや、こんな時だからこそ年上であるオルガが冷静でいなければいけない。
そこには通さなきゃいけないスジってもんがあるはずだ。
「いきなりで驚いたけど……平気」
「本当に悪かったな、嬢ちゃん。ところでミカ、お前はなにしてたんだ」
「2人より先に眼が覚めたから外の様子を見てた。あまり広くはなさそうだよ」
ミカは持ち前の直感で今いる場所がそこまで広くないと思い、少し歩き回っていた。特になにか起こったわけでもないので、オルガが叫んだ瞬間戻ってきたわけだが。
「そうか、ならさっさとこんな意味わかんねぇ場所でちまうか」
「俺はオルガが決めたことならやるよ」
「私も早くお父さんとお母さんのところに帰らないと……」
こうしてオルガとミカと少女は行動を共にすることになった。現在いる部屋は特に調べることもなさそうなので、一つしかないドアを開け放つ。
外は廊下となっており、沢山の監視カメラがそこら中に張り付いている。道も柵で塞がってるところがあるため実質一本道だ。
そして、この状況を見た少女は狼狽えてしまう。
「私は病院に来ていた……。でも、ここは私の知っている病院じゃない」
「は?嬢ちゃん、正気か?いや、俺らが言えたことでもねぇな」
オルガの記憶にもこんな場所は来たことも見たこともない。そもそも病院なんて施設は、ここまで監視カメラが付いているものではなかった。
「うん、俺もこんな場所知らないし」
ミカが火星ヤシを摘みながら答える。ミカにも覚えがないみたいだ。
3人は壁際の方まで歩いて行き、壁に文字が書かれていることを発見する。
自身で確かめてみるべきである
本来の姿か、望む姿か
天使か、生贄か
己を知れば門は開かれる
……全くわかんねぇ。何者か、なんて言われても俺は鉄華団団長、オルガ・イツカだ。それ以降のことはやっぱりよくわかんねぇ。
「正直ピンときませんね」
オルガは思考を放棄した。元より考えることは得意じゃないオルガにとって、これは意味不明な文字列と変わりない。少女はどうやら考え込んでいるみたいだ。
「……俺が見たときはこんなのなかった」
ミカは不思議そうな声を出しながら、そう言った。つまりはこの短時間で誰かがここに書いたということになる。
とりあえず色々調べてみないことには話が進まない。少女がすぐそばのドアに手を掛けて開いた。
———が、そこにいたのはオルガを殺したあの3人の黒服のヒットマンだった。
既に銃を構えており、あの時と同様に即座にオルガは少女を庇う態勢に入る。
「ミカァ!」
その一言を発しただけでミカは瞬時にオルガの意図を理解して、廊下へと出て迎撃の準備をする。
しかし、ヒットマンの行動の方が圧倒的に早かった。
「ゔぅぅっ!!」
あの時の再現のようにオルガは銃弾を背中に受け続ける。それを少女が心配そうな表情でオルガを見つめた。しかし、オルガもやられっぱなしでいる気はない。
「ヴァァァアァァアァァァ!!」
銃弾を放ち、1人のヒットマンに直撃する。その後ろからミカが冷静に2発の銃弾を撃って、残りの2人を貫いた。
そして、撃たれたヒットマンは幻のように霧散する。
だが、オルガから流れ落ちる血は本物だった。
「あっ……」
「オルガ!」
なんて声を出してやがる……!俺は既にあの時に死んでいたはずの人間だ……!気にすることじゃねぇ……!
「嬢ちゃんを守んのは俺の仕事だ……!」
オルガの頭の中に音楽のようなものが鳴り響く。オルガの死を見送るかのように、鉄華団の進むべき道を象徴するかのような希望の華の歌が。
「俺は止まんねぇからよ……!お前らが止まんねぇかぎり……その先に俺はいるぞ!」
オルガはせめてもの想いとして、ミカと少女にあの時と同じように行くべき路を指し示した。
「だからよ、止まるんじゃねぇぞ……!」
———オルガは2度目の死を迎えた。
「……は?」
(なんで生きてんだ……?)
オルガは確かに絶命した。意識も途切れた。なのに数秒後には怪我もなく、そこに生きていた。その証拠にミカも少女も理解が追いついていない顔をしている。
「……?まぁ、これは死んでいいオルガだから」
「勘弁してくれよ、ミカ……」
「……?」
変な事態は起きたが、このことも含めて詳しく調べる必要がある。オルガの身になにが起きたのか、それも解決するべきだとオルガとミカは判断した。
「とりあえず、景気良く前を向こうじゃねぇか!」
「……うん」
オルガは少女を庇って死んだことを気にしないように元気付けた。この年頃の普通の少女が、絶命するところや死体なんて見る機会も滅多にないだろうということも含めて、大きい声を張ってフォローを入れる。
改めて部屋の中を見渡す。当然監視カメラがあり、電源のついていないパソコンが置かれていた。電源ボタンを押しても作動しない。
前の壁一面にはガラス張りがされており、中央だけ鏡になっていた。
そこには少し焦りを浮かべている少女に、オルガやミカの姿が映り込んでいた。
「……いつもの私」
「いいんじゃねぇの」
客観的に見ても目の前に映る少女は可憐や綺麗と言った類であり、更に年相応な小柄で華奢な姿。将来はクーデリアみたいな美人になるのではないかと思い、オルガは称賛の言葉を送った。
鏡を見ていると背後でパソコンが起動した音が聞こえた。そちらに向かうと『情報画面を開いています』と流れた後に『質問にお答えください』と喋り出した。
———あなたの名前は?
その質問に少女は一瞬戸惑い、辿々しく答える。
「……レイ、レイチェル・ガ「俺は鉄華団団長、オルガ・イツカだぞ……!フヘッ」……」
少女、もといレイチェル・ガードナーことレイの声を遮り、迫真の声とせせら笑いでオルガは質問に答えた。
「ちょっといい?」
「……?」
ミカはレイを呼び寄せて、何やら話し込みながら、手振り身振りで説明をする。そして戻ってきたレイがオルガに対して———。
「ぶっ……!っか……!」
———渾身の右フックを炸裂した。オルガは倒れ伏し、なぜか血だらけになりながら先ほどの状態になっていた。
オルガの脳内には先ほどの音楽が鳴りながら、殴られたことよりも、自分の体への違和感の疑問を複数浮かべていた。
(いつの間に俺の体はこんな柔になったんだよ……?)
いくらなんでも、少女のパンチを喰らったところで倒れるほど軟弱でもあらず、あまつさえ殴られて血だらけになるとはどういうことなのか。
そして、勝手に口が動くように言葉を発していた。
「だからよ、止まるんじゃねぇぞ……!」
そのままオルガは息絶えて、数秒後には何の異常もない元の体に戻っている。異常ではないが異常ここに極まれりと言ったところか。
「わけわかんねぇ。どうなっちまったんだよ、俺の体は……」
「それでも進み続けるしかないよ、オルガ」
「……そうだな。どうせ後戻りはできねぇんだ!」
オルガは気合いを入れ直す。もう一回パソコンの方に向き直して、質問の続きを待つ。
「そういや、嬢ちゃんの名前はレイチェル……でいいんだな?」
「……うん。レイ、でいいよ」
「改めて俺の名前はオルガ・イツカ、鉄華団の団長だ。こっちは……」
「まだ答えてなかった。三日月・オーガス」
レイが鉄華団という言葉を不思議に思ったが、自己紹介も兼ねたミカの声と共にパソコンの質問が更新され、思考を遮られた。
———年齢は?
「……13」
「19……「オルガ、違う」は?」
オルガの声がミカに遮られる。違うと言われたが、何が違うのか。オルガは19歳であり、その歳が享年となった。
「よく自分の身体をみて」
オルガは自分の身体を見てみる。よく見れば死んだ時より遥か前———というよりも鉄華団を立ち上げた当初の姿まで戻っている。最初に起きた時に感じた違和感はそれなのだろう。
「ってことは17か」
「うん。俺は15」
———なぜ、ここにいるのですか?
早々と質問が更新されていく。こちらのペースなど考えてはいないみたいだ。
「病院に来ていて……気がついたらここに……」
「さっぱりわかんねぇ」
「分かるわけないじゃん」
———なぜ?
「……?」
「わかんねぇつってんだろ!」
「あんた、何言ってんの?」
———なぜ?
———なぜ?
答える間もないほど連呼をされ、レイは怖がり、オルガとミカは次第にイラついてきた。
「おまえ状況分かってんのか?」
「消えろよ……お前」
———なぜ病院に?
次に来た言葉で体を少し震えさせながら、レイは思考の海に沈んでいく。レイの様子にオルガは気づき、鉄華団に所属する子供達のように頭を撫でながら声をかける。
「大丈夫だ、すぐ側に俺達がいる。俺達は嬢ちゃん……レイの味方だ」
思考に沈みながらもその言葉はレイに届き、落ち着きを取り戻していく。次第に断片的にだが、レイの脳裏に記憶が蘇ってくる。
「……人が死ぬところ、殺されるところをみたから。……目の前で」
「俺じゃねぇか……」
「違う。……だから、カウンセリングに連れてこられた」
レイの頭には眼鏡をかけた男性のような、金髪の男性なような姿がボヤけて思い出された。
———今後どうしたいですか?
「……早くここから出たい。お父さんとお母さんに会いたい……」
「何、心配いらねぇさ。団長しての俺の仕事だ」
その言葉にミカは口角を上げる。どんな状況だろうと、どんな場所であろうと、オルガ自身がどうなっていたとしても、オルガの信念は決して変わらない。
「お前を……俺が連れてってやるよ!」
「オルガならそう言うと思ってた」
———記入終了
終了の言葉と共にピッと音が聞こえ、扉の開く音が聞こえた。廊下にあった塞がれた柵の扉が開いたのだろう。
部屋を出て開いた扉の先に向かうとエレベーターがあった。しかし昇りボタンしかなく、今いる場所はB7となっていた。
3人がエレベーターに乗り込み、扉が閉まると突如鐘の音が鳴り、放送が響き渡った。
———最下層の彼女は生贄となりました。みなさま、各フロアにてお準備を。
「今の放送……何……?」
「どうやら、俺たちの命をまき餌ぐらいにしか思ってねぇみたいだな」
オルガは今の放送に眉を潜める。生贄だのなんだのって話はこんな幼い少女にする話ではない。相手方は相当腐りきってるようだ。
「一度決めたことなら、通さなきゃいけねぇスジがある。レイを連れて絶対にここから出てやるよ!」
オルガの宣言と同時にエレベーターは鈍い音を立ててB6階へと停止した———。
ここまでの閲覧ありがとうございます!動画を見て頂いてる方にはお分かりでしょうが、かなりの改変が入っています。
まず。オルガ自体の深掘りをしていますね。単純にギャグとして済ますのではなくて、シリアス風味になってます(というかなってしまいました)。
そして描写ですが、こちらもやったことや見たことのある方は分かるかもしれませんが、ゲームとアニメの設定が入り混じってますね。アニメの殺戮の天使(殺戮のオルガ)がタイプライターに対して、ゲーム版のPCを使用しております。描写の書き込みも自分なりに書いていますので、ギャグ要素が少なくなってしまったことが悔やみですね。シリアスにしないといけない病気でも持ってるんでしょうかね、私。
あとはこれ以上続けてしまうと、文字数が多くなりそうな感じがしてしまったので、動画より遥か前の地点で1話が終わってますね。これからも続きをどんどん書いて行きます!
では、ここまで読んで頂きありがとうございます!次回もお楽しみに待っていただけると幸いです!
誤字脱字などがあれば報告の程をよろしくお願いします!