はぐりんくえすと   作:楯樰

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11 週末とぼっち娘と

「『クリエイト・ウォーター』、いってぇな……くっそ。……『ヒール』」

 

 回復魔法で怪我自体は問題ない。でも痛い、辛……くない。けど、やめるわけにはいかない。

 

 ポーションはあと3本。今はレベルが上がっても、ステータスが上がるわけじゃない。上がった傍から()()()()してるから、蓄積されるのはスキルポイントのみ。

 

 その虚しさはもう感じない。

 

「そろそろ手を貸そうか、はぐりん」

 

「──いや、まだいい。親父はそこで、抑えてくれるだけでいいから」

 

「……頑固だなぁ。素直に『養殖』するのも手だと思うんだけど、俺的には」

 

「それじゃあ肝心の部分が育たないんだろ! 『パワード』! ……一度決めたことを、もう覆したりするのは嫌なんだ、よ!!」

 

「……実戦経験だけなら、もう充分だと思う」

 

 飛んでくる矢を視認。《神聖魔法》に含まれる身体強化の魔法を自分にかけて、貧弱になってる脚力を強化。飛んできた矢を後ろに跳んで回避した。

 

 追撃で飛んでくる矢を斬り落として、息を整える。

 

 再び、群の中へ飛び込んだ。

 

 

 

 残り、1本。もう奴らは用済みだ。でも数はまだまだ多い。この数は流石に、接近戦で始末しようとは思えない。

 

「ふー、ふー。……だあああ、もう! ゴブリンてめぇらウッザい! カースド『ティンダー』!! 『ウィンドブレス』ッ!!」

 

 気持ちだけの最大化。

 

 魔力を過剰に注ぎ込みんだ初級魔法は、最大化に恥じぬ威力を伴い、ゴブリンの集団の中で()()した。それを暴風さながらの()()で威力を上乗せする。全魔力の半分以上をつぎ込んだそれは大人たちの上級魔法の『インフェルノ』を凌駕する威力。

 

 でも、全魔力の半分以上使ってこの程度の威力しか出ないんだから、魔力効率ほんとクソだ。多分、上級魔法を20回は普通に打てるぐらい消費した。

 

 殆どが一瞬で灰塵になったが、運悪く逃れたゴブリンの断末魔と小汚い肉の焼ける臭いが、辺りに漂い始める。

 

「今のは『インフェルノ』ではない、『ティンダー』だ……」

 

 ステータスにものを言わせ、素手で抑えつけてた『初心者殺し』の息の根を止めながら、そんなことを親父が言う。

 

「……はー、はー。何言ってんの……?」

 

 ……でも、それいいかも。今度やることあったら使おう。

 

 ちょっと休憩だ……ああ、もう。レベル1での接近戦ほんっと疲れる。

 

 

 

 一休みして、ポーションを呷った。別に体力も気力も回復しない。もう慣れきった、弱体化する感覚だけだ。

 

 親父がこれ以上火事が広がらないよう、大量の水で鎮火してくれてる。

 

 んー、あれ、使ってる水生成の魔法……『セイクリッド』の枕詞がついてたけど、もしかしなくても神聖魔法だよな。

 

 あれだけ惨い死に方をさせたから、モンスターでも呪詛が溜まるのかも。わざわざ聖水を呼び出して此処の浄化もしてくれたようだ。

 

「あーごめん、はぐりん。今日はもうやめとこう。これから俺クエスト行かなきゃだから」

 

 クエストの控えを見せてくる。うへぇ、マンティコアの討伐か。

 

 つか、俺としてはそんなことよりも。

 

「……飲む前に言ってほしかったんですけど」

 

「ごめんごめん。……次の休みにはちゃんと付き合うからさ。あと何ポイント?」

 

「あと……2ポイント。……あーもう。俺、次の休みで上級魔法覚えられそうだって言ったのに……」

 

 最後の殲滅しただけじゃ足りなかったか……。

 

「ごめんって。でもそれぐらいなら、うん。休み使わなくてもなんとかなるね。飲んでて良かったかもしれないよ? ……それより、なんで今日あんなに気合入ってたのか、教えてくんない?」

 

 親父め、揶揄う気まんまんの顔してる。

 

「…………何で教えないといけないのさ」

 

「隠し事してるだろ、違う?」

 

「それは……違わないけど……」

 

「ああ、なるほど。女の子がらみだ! 自慢でもしたのかな? へー、ほー、はぐりんがねー! もうそんな色気付く歳かぁ……」

 

「違う!」

 

「許婚のゆんゆんちゃん? それとも、よく文通してる女の子かなぁ……?」

 

「なんであるえのこと、あ。いや、文通じゃないし、小説批評だし……」

 

 これ以上、絶対にぼろを出してなるモノか。ニマニマしながらウザ絡みしてくる親父とはそれ以上受け答えをせず、無視を決め込んだ。

 

 

 

「あら、お帰り。今日は早かったのね? お父さんは?」

 

 家に帰らされると、眠気覚ましにコーヒーを飲んでた母さんに出迎えられた。

 

「ただいま。親父は今日これから依頼があるとかなんとかで、俺だけだよ」

 

「ふぅん。……ま、お風呂入ってらっしゃい。傷口残ってたら、ゆんゆんちゃんに心配されるでしょ? 体力回復と解毒ポーションも入れて、ね?」

 

 一応血糊なんかは洗い流して、服も乾かして帰ってきたけど、まだ体についた臭いが残ってたかもしれない。今日も泥臭い戦い方をしたのはバレてるようだ。

 

「……わかった。風呂入ったらちょっと寝る」

 

「ちゃんとポーション入れなさいよー」

 

 工房の方に戻る母さんを見送って、風呂場に向かった。

 

 

 

 ちゃっぽん。湯船に雫の滴れた音が浴室に響く。

 

 転んだりして石で作ったであろう擦り傷や切り傷にお湯が染みる。ピリッとした痛みが一瞬走ったが、直ぐに治ってじんわりと冷えた体が温まってくる。

 

 ほうっと声が漏れる……今日も相変わらず命懸けだったなぁ。

 

「上級魔法覚えたらこんな無茶しなくても済むようになるかなぁ……」

 

 なんて。ありもしないことを口に出してみる。

 

 せっかく覚えた《剣術》系統のスキルを腐らせるつもりはない。俺はこれからも、安全とは無縁の戦い方を続ける。それに、『ルーンセイバー』や『ソードマスター』のスキルも使い熟したいし。

 

 ──魔法さえ使えれば、多分親父なんて目じゃない。知力も魔力も、紅魔族の血が入ってる俺は、レベル1の時点でも高レベル冒険者である今の親父を抜いてる。

 

 けど、それじゃあ本当の意味で追い越せたとは言えない。

 

 同じ土俵に立ってこそ、俺はあの背中を──

 

「あーやめやめ。……考えてもどうしようもないんだ」

 

 揶揄ってきた時のにやけ面を思い出して、少しバカらしくなった。

 

 今は体をゆっくりと休めよう。明日からまた学校だ。

 

 

 

 ▽

 

 

 

 次の日。

 

「はぐりんはぐりんはぐりん!」

 

「お、おう。……どうかしたの、ゆんゆん?」

 

 朝、いつものように……学校の始まる一時間前から居るゆんゆんと(待ち)合わせると、上機嫌に俺に近寄ってきた。

 

「あのねあのね! 知ってるかもしれないけど、お友達が出来たのよ! ふにふらさんとどどんこさんって言うんだけど、図書室で声かけてきてくれて……!」

 

「うんうん。……見てたよ。良かったねゆんゆん。で、お昼も一緒に食べたの?」

 

「そう! めぐみんも入れて四人で、机を囲んでねっ……めぐみんはやっぱりお弁当持ってきてなかったけど。……ああ、楽しかったなぁ……忘れないように日記にも書いたわ。髪留めのゴムも貰ったんだけど……でも、めぐみんが窓の外のミノムシ撃ち落とそうとして、私の机の中から勝手に使って無くなっちゃって……」

 

「へぇ、そりゃまた、気の毒に。めぐみんは悪いやつだなぁ……でも、本当に良かった。ゆんゆんもこれで、晴れてぼっちは卒業だ」

 

「……うん。ありがとね、はぐりん」

 

 ……あの二人のことは、いつか話そうとは思うけど。せっかく普通に友達が出来たと喜んでるんだから。今、それに水をさせばゆんゆんが悲しむ。

 

 実は一瞬。てっきり、脅迫まがいのお願い的なことをしたのがバレたかと思った。

 

 それは違うようだけど、少し浮かない顔をしているのが気にかかった。

 

「何か気になる事でもあるの?」

 

「いや、その。はぐりんといっぱい練習したのに、あんまり実践できなかったから……」

 

 ああ、それか。あの時俺が思ってたこと、ゆんゆん自身も気にしてたわけだ。

 

「いいよ、そんなの。友達っていうのは遠慮したり、気を使ったり……別に、全部が全部、相手の世話をし合うような間柄を言うんじゃないんだから。喧嘩もするし、結構キツイ冗談だって笑って流せるもんなんだよ。ゆんゆんは別に今まで、俺に気を使ったりしてなかったろ?」

 

 実はゆんゆんにとって、それに一番当てはまるのがめぐみんなんだけど。ライバルと書いて強敵と読み、強敵と書いて友と読むらしいから間違いじゃない。ゆんゆんもめぐみんも、お互いに友達ってさっさと認めればいいのに。

 

 ……ゆんゆんが友達作りの参考にしてる本が悪いのかもしれないな。

 

「え、遠慮は……その。……して、たけど。お世話もいっぱいされちゃってた気がするし……」

 

 ……あれ?

 

「ごめん。……俺のせいだったら悪いんだけど。何か遠慮することあった?」

 

「……もっとお昼を一緒に食べたかったし、食べさせ合うのも遠慮してたし……でもはぐりんは別に悪くないから。めぐみんが邪魔ばっかりするから……」

 

 あーっと。それは誤解があるな!

 

「その、ゆんゆん? この前初めてお昼誘ってくれたときもだけど、別にめぐみんは邪魔したくて邪魔してたわけじゃないらしいから。アイツ、親に決められた俺たちの関係が露呈しないように、気を使ってくれてたんだとさ。だからそれは、あんまり怒らないで上げて欲しいな」

 

「え、そうなの? でも……」

 

 言いたい事はあるのはわかるけど、それは本人に直接言って欲しい。流石に多分、それに関しては素直に認めるから。

 

「あと、食べさせ合うって言うのは、ほら、この前めぐみんにも言われたじゃん。……その、俺も、いつもは二人きりだったし、それをずっと言ってこなかったのは悪いけど。ああいうことは女の子同士ならまだしもね? 男の俺と、女の子のゆんゆんが友達同士ですることじゃないって。……あるえが取材だのなんだの言ってたけど、交際してる男女……んん、特別仲の良い男女がするって言うか!」

 

 交際もしてないあるえに既成事実にされてしまったから、駄目と言えなくなった。

 

 ……でもゆんゆんとは元々許婚なわけだから、別に他にも色々とやっても問題は……いや、うん。あるえに駄目だと言った以上、ゆんゆんとだけするのは駄目だ。

 

「じゃあ別に、許嫁の私とはぐりんはしても良いと思うんだけど……特別なら、良いのよね?」

 

「そ、それは……うん。そうかもね。俺、一昨日もあるえとしちゃってるし……」

 

 やっぱりゆんゆんもそう思うよな……俺も男だからなぁ。……どれくらい我慢できたものやら。

 

 恋人たちがする事は、殆ど小説批評を通じてあるえに教え込まれた。読む側もそれなりに知ってないといけないからって……ああ、思い出しただけで顔が火照る。

 

「なーんだ……あるえが中々教室に帰ってこないなぁって思ってたら。へぇ……はぐりんとお昼、食べてたんだ……」

 

「あっ、え、っと。ゆんゆん?」

 

 目が。

 

「ずるいなぁ……私の知らないところで、あるえははぐりんとイチャイチャしてたんだね……」

 

 い、いや、別に隠すような事でもないと思ったから言ったけど、なんか不味いこと言ったか、俺……!?

 

「あの、ゆんゆん、ちょっと目が。その、怖いから」

 

 瞳が赤くないのが逆に。

 

「……あ! ごめんなさい! ……ちょっとだけ、嫉妬しちゃった。私は、ふにふらさんとどどんこさんと仲良くなろうと必死だったから別に、二人がそういうことしてても良いはずなのに……」

 

「ゆんゆん……」

 

「そうよね。あるえも、二人きりになりたいものね。……私と同じ、だものね」

 

「ゆんゆん!」

 

 聞いていられない。

 

「!? な、何、はぐりん……ビックリしちゃうじゃない。えっと、どうかしたの?」

 

 ふにふらと、どどんことしたやり取りについて話す訳じゃない。それはゆんゆんがもう少し、精神的に成長してから。

 

 話すのは、喫茶店で話したこと。……お互いに思っていることを打ち明けた話は、ゆんゆんにもするべきだと思ったのだ。……あるえは良く思わないだろうけど。

 

 …………正直さっきのゆんゆん、めちゃくちゃ怖かった。

 

 

 

 一昨日あった、事の顛末を話していく。

 

 学校と、家に帰るまでの間あるえと一緒に居て、そして、喫茶店であるえが俺にお願いしてきたこと。

 

 俺が、彼女に謝ったこと。順を追ってゆんゆんに話していった。

 

「へ、へぇー……あるえがそんなことを……」

 

 本当に赤裸々に話したから、こうして話すだけでも照れくさい。聞いてるゆんゆんも顔が赤くなってるし、声も裏返っている。

 

「うん。滅茶苦茶恥ずかしかった。俺、頑張ってゲスな男になろうと思う……ってやっぱり変だよな」

 

「うん、変。……い、いや! わかるのよ? あるえの言いたいことは私もわかるんだけど……でも、でもね? やっぱり、はぐりんはそんな人じゃないから。自分でもそういう風に言うのは、やめて欲しいかなって……」

 

 確かに、あの時は言葉の綾だと本人も言ってたし、他の言い回しは無かったのか、と内心思ってたけど。

 

 ……でも俺が、結局は好きな人を一人に絞れない、最低のクズ野郎なのに違いはないから。

 

「ありがとうゆんゆん。けど事実だから。……その、ゆんゆんに悪い気はしたけど……ちゃんと、あるえにも好きだって伝えた。二人きりの時には、なるべく相手の事を考えないようにする。……そうでないと、不誠実だ。だからなるべく今みたいに、あるえが居ない時には……」

 

「はぐりん……、……うん」

 

 どうして告白されるまで気づかなかったのだろうか。あるえの言っていたことは正しかった。ゆんゆんからの好意が、今は痛いくらい伝わってくる。

 

 ゆんゆんも本当ならシェアなんて気持ち良いことだと思ってない。……でもあるえのために、ゆんゆんはそれを選んだ。

 

 俺がこんなこと言っちゃ駄目なんだろうけど。……それはきっと彼女の弱さでもあって、強さなんだろう。

 

 けど、それ以前にゆんゆんは優しい子だ。俺もあるえもその優しさに甘えてしまってるのかもしれない。

 

 ──駄目だなぁ。ゆんゆんとは許婚だとしても、ちゃんと二人と恋人になれるまで、デレデレしないって決めたのに。俺は意思が弱すぎる。

 

 今凄く、ゆんゆんのこと抱きしめたい──

 

「でも、羨ましいなぁ……」

 

「羨ましい?」

 

「あ、その、違うのよ? 嫉妬とかじゃなくて。……ただ、あるえと喫茶店に二人きりで行って、お互いに思ってる事を言い合えるのって、いいなぁって……」

 

 相変わらず変な所に憧れというか、そういうの持ってるよなぁ……。

 

「ゆんゆんも言えば良いんだよ、言いたいことがあるなら……その、俺なら大体のことは聞くよ? 腰を据えてめぐみんと話したときに、もうゆんゆんの邪魔はしないってアイツも言ってたからさ。……だから、お昼ならいつでも誘ってくれたらいいし、帰る時の寄り道だって。……それ以外の、恋人らしいことも……その、ある程度は。ゆんゆんがしたいって言うなら」

 

「うん、うん……って、ええ!? めぐみんともそんな話したの!? はぐりんとそんな、羨ましいことを!?」

 

「いや、そっち!? それ一昨日言ったよ!?」

 

 もう! ゆんゆんは、もう! 俺、結構恥ずかしい思いして言ってるのに!

 

「え、あ、あの時!? あの時は……! は、はぐりんが急に、あんな大胆な事してくるから、つい頭の中真っ白になっちゃって……!」

 

「……それは、ごめん。は、話を戻すよ? ……ゆんゆん、何かない?」

 

「え、えー、我が儘? その、本当に言ってもいいの? 急に言われても、沢山あり過ぎて何から言ったら良いのか……」

 

「いや、何も今ここで全部言う必要はないからね?」

 

 うんうん、と悩むゆんゆんに一抹の不安を感じつつも、じっと待つ。

 

 沢山あるなら、一個ずつ聞いて行けばいい。……妄想癖が激しくなってる節があるのは、いい意味で考えれば、何をどうしたいかを考えているという事だから。うん。良い傾向かもしれない。

 

 ……けど、今どうしても決められないって悩んでいるのなら。

 

「そのっ、ゆんゆん。どうしても選べないなら……その、手、繋いでも良い? これも、ゆんゆんのしたいことの一つ、じゃない……?」

 

「え……う、うん!」

 

 いつもは、何となしに考えていることを察して、提案する形でゆんゆんの希望を叶えてきた。

 

 ──……けど、今日は俺から。それは、今ちょっとだけ、好きな子に触れたいからという理由で。

 

 誰でもない自分の意思で、ゆんゆんの手を握った。

 

 

 

 ▽

 

 

 

「よし、今日も全員出席だな。それじゃ、お前らよく聞けー。女子クラスの後にやる予定だった紅魔族伝統の『養殖』だが、今日は合同でやることになった。授業が始まるまでに、三人グループを三つ作っておけ! それが終わり次第次第、各グループで集まって校庭に集合するように! 以上だ!」

 

 そういうことになった。

 

『養殖』はレベルアップの機会。すなわち、多くの者にとって《上級魔法》取得に近づく絶好のチャンスだ。

 

 実際、普段のテストの成績が振るわないクラスメイトたちほどやる気になっている。

 

 ……いや、俺がもらえてなかったから実感なかったけど、成績上位者はもうすぐ覚えられるのかもしれない。ふじもんもへぶめるろーも気合は十分なようだ。

 

 親父の言っていたのはこれの事か。……確かに、ポーション飲んでて良かったかも。

 

「なあ、はぐりん。お前はあと何ポイントで《上級魔法》覚えられそうなんだ?」

 

 ワクワクした様子で隣のへぶめるろーが耳打ちしてきた。

 

「ん、言ってなかったけ? あー……ちなみに聞くけどへぶめるろーは?」

 

「あと5ポイントだけど」

 

「じゃあ、あと7ポイントにしとく」

 

「お前なぁ……バレバレの嘘つきやがって。……つか、お前どんだけ初期ポイント持ってたんだよ。『冒険者』はスキル取得にポイント多く消費すんだろ? なのに、あとそれだけって……20ポイント以上は少なくとも持ってたのか?」

 

「まあそんなとこ。……他にも欲しいスキルあったしな。ちゃんと貯めてたら実はもう取れてた」

 

「うへぇ……どうしたって最弱職なんて取ったんだか。……お前の親父さんのことは知ってるけどさあ。家庭の方針とか、なんとかって言ったって……《上級魔法》以上に取りたいスキルなんてないから、お前ん家のことは俺には理解出来ん……」

 

 親父は『冒険者』だけど、里のアークウィザード顔負けの魔法の使い手だからな。外は勿論、里の中でも有名だし、冒険を休みにしている日は自主的に警邏とかしてたりして結構頼りにされてる。……紅魔族のセンスにも理解あるし。俺にはあんなだけど。

 

 教育方針と銘打って、俺が自ら親父と似たような道を進もうとしているのは、へぶめるろーには話してないからなぁ……。このことを知る由もない。

 

「ははは。……まぁ、事情があんのはわかってくれよ。それに俺、お前らとの学校生活は結構気に入ってたよ。……こんな生活が続けばいいのにってずっと思ってる……」

 

「はぐりん……それは俺もさ──……でも、なぁ、しっかし俺の方が早く卒業できそうなのか。下手したら今日中に卒業できるかもしれないよな!」

 

「あ、多分俺も今日中に卒業できるかも」

 

「やっぱ嘘じゃんあと7ポイントとか! 3ポイントとかだろ! なんでお前そんなに早くポイント貯めれるんだよ! お前母さんにスキルアップポーション貰ってんじゃないだろうな!」

 

 惜しいあと1ポイント。

 

「んなわけないだろ! とにかく! ……ずるいことはしてない。昨日もだけど、真っ当に俺はポイント稼いでるんだよ」

 

「ほんとかお前ー?」

 

 小突いてくるへぶめるろーをいなして、席を立つ。

 

 グループ分けはいつも通り、俺とふじもんと、へぶめるろーの三人で組む。

 

 ──スキルアップポーションが外で高額で取引されている事実は、子どもに知らせてはならない。

 

 そういう暗黙の了解が大人たちの間で存在する。

 

 卒業した後に担任から生徒に知らされ、愕然とした表情をさせるまでが恒例の儀式だと、学校にもスキルアップポーションを卸してる母さんが言ってた。

 

 ……確かに、皆の驚く顔が見たいのはわかる。けど配布してもらえない俺が一番、その事実は知りたくなかった。

 

 いつも、スキルアップポーションを獲得できる順位の圏内を彷徨っているへぶめるろーが、仮に、家計の収入源の一つになる程だと知れば、ほぼ毎日がぶ飲みしているそれの正体に気が付きかねない。

 

 まさか、一本で一財産になるとは思いもしないだろう。知ったら飲まない奴が出てきそうだ。めぐみんとか。

 

 

 




評価と感想欲しいです。ギブミー反応。自己肯定感が欲しいだけじゃなくて、客観的な反応も知りたいなと。
モチベーションが上がれば次が早めに仕上がるので、良ければどうぞよろしくお願いします。

意識調査です。投稿時間は何時ごろが良いですか?

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