はぐりんくえすと   作:楯樰

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14 誤解と抱擁と

 

 期待に満ちた表情であるえが言う。

 

「……じゃあこれが本当に最後の確認だけど。本当に抱擁はしていいんだね?」

 

「さっきから良いって言ってるじゃん。……口同士以外でキスするぐらいだから良いって」

 

 キスだのなんだのと言うのに抵抗のなくなってきた、二回目の再確認。流石に「しつこいな」と、一言口から出かかった。

 

 でもそう思ったのは顔に出たのかもしれない。あるえは納得した様子を見せて。

 

「わかったよ。もう執拗には言わないよ──それじゃ、帰ろうか?」

 

「え、もう良いのか?」

 

「うん。きっとゆんゆんもそれぐらいで我慢できると思うから」

 

 あるえはそう言うとベンチから立ち上がりスカートを払う。

 

 ……抱擁。ぎゅっと、抱きしめる。そんな程度で女の子は良いものなのだろうか。

 

 つい先ほどまで、聞いてる方が恥ずかしくなるくらい、イチャイチャしたいと言ってた気がするけど。

 

 それにしても不思議だ。普段から作家らしい振る舞いを、とミステリアスなキャラ作りを欠かさないぐらいなのに。

 

 恋愛っていうのは人を変えるもんなのかなぁ。……俺も、あんな弱弱しい姿は見せるつもりなかったんだけど。格好悪いところは出来るだけ見せたくないのに。

 

 自己嫌悪に陥りそうになる俺を他所に、あるえは「それに」と話を続ける。

 

「あまりゆんゆんを除け者にしてこういう話をしてもね。妬いちゃうだろうし」

 

「ああ、うん。……嫉妬したゆんゆん恐いもんな」

 

「え、そうかい……?」

 

 あるえは知らないのかもしれない。

 

 ……魔物相手には感じない、あの別種の怖さを感じる、光の無い目をしたゆんゆんを。

 

 

 

 用の無くなったベンチを後にして、公園の出口へ向かう。

 

 見慣れた制服の女子が一人、丁度公園に入って……って。

 

「あれ、ゆんゆん? ……どうかしたのかい? そんな浮かない顔をして」

 

「……うん、さっきぶりね、あるえ。それに……っ!? ……はぐりん」

 

 俺の顔を見てビクリと肩を震わせるゆんゆん。……なんか俺しただろうか。

 

 いや、心当たりないから。責めるような視線はやめて欲しいぞ、あるえさんや。

 

 

 

 ……と、思っていると。

 

「──くらうがいいッ!」

 

「かは――っ!?」

 

「めぐみん!?」「はぐりん!?」

 

 頭に葉っぱを引っ掛けためぐみんが何処からか飛び出してきた。

 

 ──俺は、体重の乗った飛び蹴りを背中に受けて、しばし悶絶。

 

 回復魔法が使えるようになったのは暫くして呼吸が出来るようになってからだった。

 

 ……めぐみんの全体重が乗った良い飛び蹴りだった。俺でなきゃ死んでたな。

 

 

 

 ▽

 

 

 

 浮かない顔したゆんゆんを連れて再び、さっきのベンチへ二人並んで座る。

 

 俺の事が気になる、というか何か言いたそうな雰囲気をずっと出していたので、落ち着いて話を聞くことにした。

 

 ……で、あるえはというと。

 

「放してくださいあるえ! 私にはあの男を殴る権利があるはずです!」

 

「いや、多分だけどそれはゆんゆんの権利だよ。それに君がやったのは蹴りじゃないか。めぐみんは向こうで、この暴行事件の事情聴取するからね」

 

「何を言いますか! あの子を泣かして他の女にうつつを抜かしている野郎には鉄拳をですね!」

 

「はいはい。……というか、その他の女って私の事だよね!?」

 

 俺に襲い掛かろうとするめぐみんを羽交い絞めにして、少し離れたところへ行ってくれた。

 

「離せええ! 頭の後ろに胸を当ててこの私への当て付けのつもりかー! 本当にえらい目にあわせてやりますからねッ!?」

 

 なんて叫びながら連れて行かれるめぐみん。……なんか、全然話はしてないけど事情はわかったかもしれない。

 

 大方ゆんゆんを着けてたとかそんなとこだろう。それなら、ゆんゆん大好きなめぐみんに蹴られても仕方がない。しょうがないやつだ。

 

 報復は無しにしてやろう。……けど、今度ウチ来たときは一品おかず減らしてやるからな。覚悟しとけよ。

 

 

 

 ──大人しくなったらしいめぐみんの様子が気になるところだけど。

 

 ……ゆんゆんから聞いた話には、大いに心当たりがあった。

 

 ふにふらとどどんこ。二人と寄り道をすることになり、めぐみんや俺、あるえのことが気になりながらも、ゆんゆんは浮かれ気分で喫茶店に入った。

 

 でも、それは最初だけ。飲み物と、甘いものを注文して、やれ前世の恋人がとか、ダンジョンの奥に囚われた運命の人が、なんて変な恋バナをしたかと思ったら。

 

 二人の表情が暗く重苦しいものになる。

 

 そしてゆんゆんは──友達になる前に企んでいたことを、ふにふらから。そして、俺がそれを知って怒ったことをどどんこから聞かされた。どうしても薬が手に入らなかった場合、俺が用意するなんてことも。

 

 そう。……二人はあの時のことを。包み隠さず、正直に、渦中から蚊帳の外へと追いやられたゆんゆんに話したのだそうだ。

 

「──……私、そんなこと全然知らなくて。二人が……言い方はあれだけど……お金欲しさに私に近づこうと思っていたって謝られて……そんなの全然今まで分からなかった。……ねぇ、はぐりん。あの二人が『病気の弟の為の薬を買うために』って言ってたのは本当、なの?」

 

「ああ、多分本当だよ。確かめてはないけどな。俺と話した時も、かなり切羽詰まった感じがあったから」

 

「そう……」

 

 俺が質問に答えても、ゆんゆんの顔は曇ったままだ。その原因には気づいている。

 

 ──正直予想外だった。あの二人、俺と話したときはこんなこと話しそうな雰囲気じゃなかったから。

 

「なあ、ゆんゆん。俺に二人の話を聞きたいんだろうけど。……帰り際、二人はなんて言ってた?」

 

 俯き、首を横に振る。

 

「……何か言おうとはしてた、と思うけど。……支払いだけおいて飛び出してきちゃったから……」

 

 それは残念。でも、何かは言おうとしていたわけで。

 

 俺も二人が何を言おうとしていたかは勘付いただけで、確証があるわけじゃない。けど、この勘の確度はきっと高い。

 

 ……これが他人のことならきっとゆんゆんも、もう気づいていてもおかしくないはずなんだけど。

 

 でも、自分のことだから。それも友達のことで、考えが至ってないんだろう。

 

 ──さて、と。今度は俺の話す番だ。友達の存在に憧れるあまり、誤解をしてしまうゆんゆんに。

 

 それに多分ゆんゆんが落ち込んでいるのは、ふにふら達二人の所為じゃなく、……俺の所為だろうし。

 

「そっか。それは、まあ。しょうがないか。じゃ、俺の話を聞いて欲しい。……まずなんで二人がそんなことを話してきたか、わかる?」

 

「…………罪悪感?」

 

「多分それもあるだろうな。でも、罪悪感があるってことは、ゆんゆんを騙して悦に浸るような……そんな二人じゃないから。ゆんゆんは安心すればいいよ。彼女たちも本当は悪い子達じゃない」

 

「そう、……うん、そうだよね。二人とも魔が刺しちゃただけっていうか……」

 

「そうだよ、ゆんゆん。薬を買うお金のことで頭がいっぱいになって無かったら、あの二人もこんなこと考えつかない筈だ。……でも、俺はその、ゆんゆんからお金を巻き上げようとしてたことに、我慢できなくて怒ったわけだけど」

 

 あの時は少し、感情の抑制がうまくできてなかったなあ。二人には悪いことをした。

 

「私が先にお礼を言うべきだったのに。私ったら……自分のことばっかりで。ごめんなさい……それから、二人を止めてくれてありがとう、はぐりん」

 

 精一杯取り繕って、ゆんゆんが言う。……そんな無理をしてまで今言わなくてもいいのに。いや、俺が言ったからか。

 

 言わなきゃよかったと少し反省をする。……ゆんゆんは優しいよ。本当にもう。

 

「ううん、気にしてないから。俺が好きでやったことだし……ごめん、話が逸れた。……それじゃあ、次に。二人がなんで罪悪感を感じて、ゆんゆんにこの話をしてきたか。わかる? 嫌われるかもしれないのに」

 

 二人が打ち明けてきたのはきっと罪悪感からだけじゃない。……でも、これはゆんゆんも気が付いてるはずだ。

 

「そんな、でも。……あ、ありえないから。私なんかに。めぐみんの言うように騙されやすくって、ちょろい私と、だなんて……」

 

 やっぱりわかってる。あとはもう、認めるだけ。

 

「いいや、違うよ。友達になる、ならないはまず自分がそうなりたいか、なりたくないかだよ。……二人は少なくとも最初は、君と仲良くなりたくて声を掛けてきてくれたはずだ。それが俺に言われたからなのか、お金を巻き上げようと考えてから、なのかで言えば大差はないかもしれないけど」

 

 ゆんゆんがハッとした顔を一瞬してから俯いた。あの二人が何と伝えたかは知らないけど、やはり俺が()()()()()()()もゆんゆんは聞いてたようだ。

 

 ……ゆんゆんのことだから、俺が何でそんなこと言ったか邪推したに違いない。

 

 これが多分、落ち込んでいる一番の理由。……俺がゆんゆんのことを遠ざけようとするために、とか。そんなことあるはずないのに。

 

 仮に俺がゆんゆんと普通に恋仲なら、ゆんゆんもそんなこと思わないのかもしれないけど。でも違う。あるえがいる。

 

 ゆんゆんは頭でも理解して納得もして、あるえのことを受け入れている。けど、不安なものは不安なんだ。

 

 自分が邪魔になったんじゃないかとも、思ったのかもしれない。

 

 ……ふとあるえが気になって、そっちを見ると茂みを挟んだ向こう側に少し頭が覗いている。盗み聞きしてるなぁ、あれ。

 

 そして黙りこくるゆんゆんを再び見据える。

 

「ただ、ゆんゆん。……二人が今日、ゆんゆんに話したのはちゃんとしたかったから──だと思う。君と仲良くなりたかった。でもそれは初めと違って、君のことを知った他でもない自分たち自身の意思で。嫌われることを覚悟してでも、負い目を感じることなく君と仲良くなりたかった。俺は少なくとも話を聞く限りそうなんじゃないかって思うけど──ゆんゆんは二人と仲良くなりたい?」

 

「……っ」

 

 ゆんゆんは黙ったまま、顔を上げて俺の顔を見る。怒りたくても怒れない、そんな悲しい顔で。

 

 そんな顔をされると、キュッと胸の奥が締め付けられる。好きだなんだとゆんゆんに言った癖に、俺って奴は……。

 

「……俺が、君と友達になるように言ったこと」

 

「……っ」

 

「いつかは俺も話そうと思ってた。けど今は……ゆんゆんが悲しむと思ってさ。いや、言い訳だな……ごめん。君を騙すようなことをして、二人に話させて本当に、ごめん」

 

 ──こんなことしか言えない自分に嫌気がさす。

 

「……それはでも私が、不甲斐ないから、だから。……でも。ねえ、はぐりん……どうしてなのかだけは聞かせてほしいの。なんで二人に、私と仲良くなるよう言ったのか。その、私、もしかしてはぐりんが私のことが、き、嫌いに」

 

「なるわけない!」

 

「っ!?」

 

 食い気味に言う。最後までは聞きたくなかった。

 

「ごめん、大きい声出して。……ゆんゆんのことが嫌いになったわけでもなく俺は、ただ切欠になればと思ったんだ。二人がゆんゆんと仲良くなるきっかけに──だから嫌いになんて絶対なってない、ならないから。安心して欲しい。……その、誤解なく聞いて欲しいんだけど。あの二人はゆんゆんと同じくらい優しいからさ、きっと仲良くなれると思って俺、言ったんだよ」

 

「……二人が?」

 

 徐々に表情が明るくなってきた。というか照れてるみたいだ。

 

 元気づけるためとはいえ……なんかこんな話するの、俺も照れくさくなってきた。

 

「あ、ああ。……ふにふらは、弟の為になんでもしようとする非情さはある。けど、それは大切に思っている優しさの裏返しだ。そしてどどんこは、友達の弟のために一緒に泥を被ろうとするくらい、ふにふらとその弟のことも大切に思ってる。……そうだな、話しててお互いが紅魔族随一を名乗れるくらいには、友達思いなんじゃないかなと、俺は思ったよ」

 

 少なくとも、彼女たち二人はお互いを大切に思ってる。

 

 それは俺や、あそこで盗み聞きしている二人よりも、ゆんゆんの方がわかってる──店を飛び出す間際、言おうとしていたことについて、ゆんゆんも察しがついたようだ。

 

「え、あ……嘘、わ、私……何も言わずに……!」

 

 最後まで話を聞かず、自分が逃げ出したことを気に病むゆんゆん。

 

 あの二人は、聞けばきっとゆんゆんが喜ぶことを言おうとした。『友達になってください』ってのは紅魔族的じゃなくてベタかもしれないけど、多分そんなことを。

 

 でも、それはもう二度と言ってもらえないかもしれない。けど。──ゆんゆんが言うことなら出来る。

 

「じゃあ、明日会ったら勇気をだして言おう、ゆんゆん。今度は君から。……もう一度聞くけどゆんゆんは、ふにふらとどどんこ、二人と友達になりたい? ……ゆんゆんからお金を巻き上げようと企んで、それが露見して、俺に怒られて、君と友達になれと俺に強要されたかもしれない……そんな二人と。ゆんゆんは友達になりたい?」

 

「そんな意地悪な言い方しないでよ! 強要なんてしてないじゃないのはぐりんは! ……確かにそう言われるとちょっと考えるけど。……でもっ!」

 

 いつもの調子が出てきた。

 

「でも?」

 

「わ、私! 友達になりたい! 二人とっ……!」

 

 そこまで言えたら十分だ。ここに来るまでに大雨が降ったあとみたいな顔も、すっかり晴れたみたいで。

 

「うん。じゃあそれを俺じゃなく彼女たちにそれを言おう。今日、先に飛び出して帰ったことを謝ってからね」

 

「うっ……できる、かな……自信、ないなぁ……」

 

「あそこの二人にちゃんとゆんゆんが言ったか確認するから、言わないのは無しな?」

 

 あるえとめぐみんの頭が震える。「バレてたか」「バレてますね」って二人してなに言ってんだか。

 

「……ぅぅ、が、頑張るねっ……!」

 

 すっかり元気になって意気込むゆんゆん。

 

 成長した。本当に。……身体はともかく心が。

 

 ……まだまだ心配なところはあるけど、でもこれでもう一人でも友達が──……。

 

 いや、駄目だ。まだまだ、俺が支えてあげないと。

 

 そんな言い訳を自分にする。でもどんどんゆんゆんに対する感情が胸の奥から溢れてくる。

 

 可愛い、愛おしい、触りたい、感じたい、という正直な感情。

 

 ──悲しませた癖に。浅ましい、自分の欲求が。

 

「ゆんゆん。抱きしめても良い?」

 

「え、今なんて──ちょ、ちょっと!? はぐりんっ……!?」

 

 でも、もう駄目だ。答えを聞く前にゆんゆんを抱きしめた。色んな感情が溢れてくるのが止められない。

 

 もう自分に言い訳できない。俺だ。彼女が心配だから……じゃない。好きだから。

 

 厚顔無恥なのはわかってる。でも、俺は、彼女の側に居たい。

 

「あ、ああ!? あの二人、抱き合ってますよ!? というかはぐりんから!? あるえはいいんですか、あれ!?」

 

「あれは良いんだよ。あー、先越されちゃったなぁ……」

 

「ええ…………?」

 

 なんか二人が言ってるけど知らない。そんなことより、こうして。体全部で好きな子のことを感じてたい。

 

「ちょ、ちょっとぉ! は、はぐりんっ! あ……! あの、ふ、二人が見てるから! ……も、もお……!」

 

 あたふたとして、耳の先まで赤くしている。嗚呼、匂いもこの体の柔らかさも何から何まで、可愛い。この真っ赤な耳も、食べちゃいたいくらいに。

 

 ……あるえにキスより大したことないって言ったけど、これ結構えっちぃ気分に……や、全然大したことないから黙っとこ。

 

 

 

 ▽

 

 

 

「まったく、声を掛けなければ何時まで抱き合ってたんでしょうかね、この二人は! 見てる方の気分にもなってくださいよ!」

 

「面目次第もない……」

 

「…………うう、はい」

 

 ベンチに座ったまま、ゆんゆんと二人めぐみんの説教に肩を狭める。

 

 見なきゃいいじゃん、と言いたかったけど。実際、二人に見られているのは承知のうえでやったことだし。

 

 ……ただ、ゆんゆんが真っ赤になって口を聞いてくれないくらいやってしまったのは素直に反省だ。でも、やりたくてやったから後悔はしてない。

 

 …………柔らかかったなぁ。

 

「あ、今はぐりん、ちょっと抱き心地を思い出した?」

 

「っっ……!!」

 

 あるえに指摘されてゆんゆんが勢いよくこっちを向く。

 

 あ、やばい、今顔に出たか。と、確認のため咄嗟に口元を触るも、特に痕跡は残ってない。……けどその反応、疑惑だけでゆんゆんの堪忍袋の緒が切れるのには充分だったようで。

 

「い、痛い! 痛くないけど! ご、ごめんってゆんゆん! つい君が可愛くて!」

 

「もお! もおおお!! そういうこと言って! 私っ! すっごく恥ずかしかったんだからねっ!」

 

 ようやっと喋ってくれた。かわりに肩をポコポコ何度も叩かれるけど、それも可愛いものだ。

 

 それに、ゆんゆんも満更でもなかったのは知ってる。途中から抵抗は止めて背中に触れるか触れまいかと、悩むように腕を動かしていたし。

 

「でも、私からしてみたら羨ましい限りだよ、ゆんゆん。……こればっかりは私が先にしてもらいたかったのに……!」

 

「それはごめ……というか、あるえね……? こんなこと、はぐりんに嗾けたのは……!」

 

 まずい喧嘩になる、と思ったらめぐみんが。

 

「あああ!! 痴話喧嘩なら他所でやってくれますか!? 落ち着いて話も出来ないんですか、二人とも!」

 

「「いや、めぐみんにだけは言われたくない!」」

 

「うぉ……な、なんなんですかその仲の良さは……。……まあ、いいですけど。……その、はぐりん。さっきはごめんなさい、つい、気が逸って私史上最高の蹴りを背中に入れてしまって……」

 

 気まずそうに言ってくるめぐみんへ、俺は努めて朗らかな表情で。

 

「ハハハ。まあ、あのナイスキックに免じて許してやるから。……ただ、次夕飯食いに来たときお前だけおかず一品無しな」

 

「ありがとう──って今なんて言いました!? 今日のおかず、一品、無し……!?」

 

 愕然とするめぐみんに大きく一度だけ首肯する。「ああああ」と、地面に手を突いて嘆いた。……あれ、今日だっけか? めぐみん来るのって……そういや月末だな。昨日は来てなかったけど……。

 

「ゆんゆんの所為ですからねッ……!!」

 

「ええ!? わ、私のせいなの!? ……というか、めぐみんがなんではぐりんにドロップキックしたのか、私ちょっとまだよく分からないんだけど……」

 

「それは……い、一生わからないままでもいいんじゃないですかね!?」

 

 慌てためぐみんが、知らなくてもいいとシラを切る。

 

 しかし事情を先ほど聞いたであろうあるえが。

 

「ほら、あの二人いい噂を聞かなかったじゃないか。それでめぐみんはね、今日ゆんゆんのことが心配だから後をつけて」

 

 盛大にぶっちゃけた。ああ、やっぱり……。

 

「うああああああああ!! あるえ! 誰もそんなこと言ってないですよね! ね! 違います! 違いますからね!? あれは仮に一人で帰っていても、もしもの時囮になる人間が近くにいればいいなと思っただけであって……ちょっとはぐりんはどうして笑ってるのですか! 何か言いたいことがあるなら聞こうじゃないか!」

 

 真っ赤になって否定し、立ち上がってあるえの服を引っ張るめぐみん。あるえは事実を言ったまでと、どこ吹く風でつい笑ってしまった。

 

 それにめぐみん凄い慌てようだから、つい。くく。

 

「い、いや。ごめ……。……ふう。やっぱりめぐみんは、ゆんゆんが大好きなんだなって」

 

「な、なな!? 何を言っ──」

 

「そうなのめぐみん!? あ、その……気持ちは嬉しいけど、わたしの好きな人は──」

 

「人の話を最後まで聞かずにあなた達は! だ、別にゆんゆんのことを誰も大好きだなんて言ってないのですが!? 誤解を招くようなことを言わないでもらえますかはぐりんッ……っ!!」

 

 今日の晩飯のおかず一品無しが気にかかってるのか、俺へと今にも襲い掛かろうとするのを必死で拳を握り締めて堪えているめぐみんに、いつの間にかノートとペンを構えたあるえが。

 

「うん、小説に参考になりそうだ。ナイスツンデレ!」

 

「────!!」

 

 キレためぐみんがあるえに襲いかかる。

 

「ちょ、っと!? どうして私に!? 痛い! 痛いよ! 捥げちゃうから! 胸を、胸を揉むのやめさせてはぐりんっ!! ぃやんっ」

 

 執拗に胸を掴み、揉むなんて生易しいもんじゃない手付きで、めぐみんが──

 

「は、はぐりんは見ちゃダメ!」

 

 ごめん、あるえ。見た……助けたいのは山々だけど。

 

 ゆんゆんに目隠しされてるから、あるえには自分でなんとかしてほしい。

 

「この、この! なんなんですか、この無駄肉は!」

 

「やめ、やめてよめぐみん! ……ひゃんっ……」

 

 滅茶苦茶気になるところだけど、残念なことにゆんゆんのガードは固く、視界は真っ暗闇で閉ざされている。

 

 ……そんなゆんゆんは。

 

 揉み合う二人に、困った素振りを見せながらも、どこか笑っているようだ。

 

 

 

 




イチャイチャ既にしてるんだよなぁ。(溜息)
はぐりんの視点ばかりですが、裏ではちゃんとそれぞれに登場人物達は動いているので、推察しても良いかもです。

感想評価有難うございます。進展あまりしなくて申し訳ないです。
ですが書きたいところはしっかり綿密に描写したいので、許してくださいなんでもしますから!(何でもするとはry)

意識調査です。投稿時間は何時ごろが良いですか?

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