報復してツヤツヤとした顔のめぐみん、涙目のあるえ、ご機嫌なゆんゆんと別れた後は寄り道することなく家まで帰ってきた。
帰宅を姿の見えない母さんに知らせると、遠く、工房の方から返事が返ってくる。
手洗いを済ませたあとは制服のまま、母さんの声のした方へ。
部屋を区切る扉を開けて中へ入ると、フラスコやガラス瓶の中に入った色取り取りの液体が炙られ揺蕩い、あるいは冷やされ停滞している。
「はぐりんー? おかえりー。あ、そこ、爆発ポーションあるから気を付けてね?」
入ってきた足音に気が付いたのか、振り返り母さんは注意を促してくる。
「……なんで爆発ポーションなんか作ってるんだよ。それも一番取り扱いの難しい衝撃受けたら爆発する奴じゃん……」
よく、
「兄さんの作ったものだから凄く癪だけど、先天性の心臓病に効く薬になるんじゃないかーってさっき『通信魔法』でお父さんが」
「うへぇ。また親父はそんなことを……」
けど適当に言ってるわけじゃないんだろう。きっと今回も──
「まあ元はといえば王都の貴族からの依頼だからね。そんなにお父さんのこと邪険にしないであげて。実際それに近しい効能はあるみたいだし」
……やっぱりそうか。一体全体どこからそんな情報を仕入れてくるのだか。
「別に邪険にしてるわけじゃないよ、母さん。……最近ウザいんだよ」
「ふふふっ……まあまあ。でもホント、なんでそんなことお父さん知ってるのか不思議よねー。ポーション作製に詳しいわけじゃないのに! お蔭で意欲が湧いて湧いてしょうがないわ……!」
「倒れないように気を付けてよ……」
まったく。仕事熱心なのはいいけど、この前みたいに倒れられたら目も当てられない。
「わかってるわよう……。それで、はぐりんはどうして工房に来たの? いつもは危ないからあんまり近寄らないようにしてるのに。何か作りたいものでもあるの?」
母さんにはお見通しのようだ。
「うん。まあ、ちょっと。……病治療ポーションって材料ある?」
「あ、あー……丁度ネギをそれに使おうと思ってたんだけど……急ぎかしら?」
衝撃爆発ポーションを指して母さんが小首を傾げた。
「いや、それなら大丈夫。多分その辺歩いてたら居るだろうし、ちょっと譲ってもらってくる」
「普通出歩いてるだけで出会えないんだけど……あ、邪神の下僕がうろちょろしてるらしいから、気を付けてね? はぐりんが倒したって聞いたけど、偶々弱い奴に当たっただけかもしれないからね?」
「うん。わかってる。いってきまーす」
「はい、いってらっしゃい」
相変わらず心配性な母さんに見送られ、工房の勝手口から外へ出た。
──30分後。困ったことに今日はとんと見つからない。いつもは20分もすれば見つかるのに。母さんの言うように、いままで偶々運が良かっただけで、早々見つかるもんでもないか。
気に入られてるのか、っていうぐらい見かける時は見かけるから。……今日に限ってこうも見つからないと、嫌われたのかと思ってしまう。いや、野生のカモネギ相手に何思ってんのかって話だけど。
もしかすると邪神の下僕が彷徨いてるせいかもしれない。
……そんな気落ちをしながら家の前まで帰ってきたら。
「あれ、ゆんゆん?」
買い物かごに食材らしきものを入れたゆんゆんが居た。
「う、うん……あの、その……えっとね? その八百屋さんでお野菜が美味しそうだったから」
「うん……? ああ……」
緊張してるのはわかるけど、もうちょっと落ち着きを持って話せばいいのに。目も真っ赤だし。
「その、今日はぐりんの所にめぐみんが来るって聞いて。お肉も安くしてもらえたし……。だから晩御飯に……お、おお、お鍋でもいっ──したらどうかなぁ……って……ぇ」
……絶対今、言いかけた事言い直したなゆんゆん。そして自分の発言でしょぼくれている。
こういう嗜虐心擽られるようなことするから、めぐみんに意地悪されるんだ。何が言いたかったのかはわかってるけど……俺も少し意地悪したくなってきた。
「じゃあ有難くもらおう。お金は今度払うよ」
「あ……」
素っ気ない素振りをし、受け取るだけ受け取って、ゆんゆんに背を向けて玄関の方へスタスタと歩いていく。
扉を開き、振り返ってゆんゆんを見るとその場から動かないまま、肩を落として落ち込んでいた。
「ゆんゆん?」
「え、あ……ごめんね、私もう……」
「中へどうぞ?」
もう少し自分の言いたいことを堂々と主張してくれれば、こんな意地悪しなかったのに。
「は、はぐりんっ……!」
「ごめん、つい出来心で。……いらっしゃい、ゆんゆん。そして、ようこそ久しぶりの我が家へ」
さながら高級レストランにでも連れて入るかのように、エスコートの真似事をして。
「う、うううう!」
「ちょ、ちょっと!?」
「もう、はぐりんっ! 意地悪しないでよ!」
ゆんゆんにぽこぽこ殴られた。
……ちなみに、探しに行くはずだったカモネギのネギは、ゆんゆんの持ってきた食材に交ざってた。
もう帰ってきたのか、と若干呆れながら出迎えてくれた母さんが、「嫁がネギ背負ってやってきた」と漏らして、ゆんゆんが真っ赤になった。
▽
グツグツ。トントン。
鍋が煮える音と、包丁で野菜を切っている音が台所から聞こえてくる。
母さんのものだ。
「ごめんなさい。私もお手伝いをしようと思ってたんだけど……」
「まあ、しょうがないよ」
ゆんゆんの家にお邪魔することは多々あるけど、彼女がウチに遊びに来た記憶はあまりない。
一応お客だからゆっくりしてれば良いのに、ゆんゆんは持参した白地に花柄のエプロンを着けて張り切っていた。……というのはついさっきまで。今は鮮度の良い野菜相手に手伝いを断念して、俺とボードゲーム中だった。
今何でもないかのように母さんは調理してるけど、高レベルの《料理》スキル持ちだからな。下手に手伝えば逆に準備が遅くなることもあってゆんゆんはしゅんとしてた。
「……うう。新鮮過ぎるのを買ってくるんじゃなかった……王手」
「ん? あ、しまった……。……じゃあこれで」
手伝いの名残惜しさからかエプロンは着けたまま。子供っぽさが抜けないけど中々……。
うーん、まるで本当にゆんゆんがお嫁に来たかのようで……んんっ。考えないようにしないとだらしない顔になりそうだ。つか滅茶苦茶劣勢でまずい。
気分転換にふと窓の外を見たらともうすっかり日が傾いてる。
「めぐみんのやつ遅いなぁ……」
「そうなの?」
「もしかするとお風呂入ってるのかもしれないな。……こっちの風呂に入ってから帰ればいいのに」
「へ、へー。めぐみん、はぐりんの家でお風呂入ったりするんだ……も、もしかしてそのまま泊まったりも……?」
「あー、うん。まぁ、ちょっと前まで泊まったりもしてたけど……こめっこちゃんが俺ん家の子宣言をおじさんにしたとかなんとかで最近は泊まらず帰るようにしてる……──って。ああ、いやその。ゆんゆん、気に障った?」
盤面のこと考えながら言ったせいで、ゆんゆんがどう思うかなんて考えてなかった。
「べ、別に。そんなことはないけど……。……二人は従兄妹なんだし」
全然そんなことある様子で俯く。……滅茶苦茶気にしてるな、これ。
「──……どうして、ゆんゆんがいるのでしょうか?」
「にゃーお」
「ぼっちのゆんゆんだ!」
「めぐみん!? というか、こめっこちゃん!? あんた、なんてことこめっこちゃんに教えてるのよ!」
ゆんゆん座るソファを挟んだ後ろに、いつの間にか家の中に入ってきていためぐみんとこめっこちゃんが居た。こめっこの手から逃れたクロも二人の足元で鳴いている。
「ちょろいゆんゆん! どうして兄ちゃん家にいるの?」
「こめっこちゃんっ! だから、もおお! めーぐーみーんーっ!!」
こめっこがずばずば棘のあることを言うが、当たるわけにはいかず、めぐみんへと襲いかかるゆんゆん。
「ひ、引っ張らないでくださいよ! 私も知りませんから! 服が、服が伸びるでしょうが! うぇ……きもちわる」
これはまた、一気に賑やかになったなぁ。
台所から顔を覗かせた母さんがめぐみんに声をかけて、その隙にめぐみんはゆんゆんの手から逃れた。
そして爆弾発言をしたこめっこに話を聞くと、こめっこちゃん家のご近所さんであるぶっころりー曰く、
『寂しがりの構ってちゃん。なのに友達の居ない奴のことをぼっちって言うんだよ』
とのこと。
「かー! あのニートは! お陰でとばっちり受けました! 今度会ったら容赦しませんから!」
「でもそれってめぐみんがこめっこちゃんに、私のことを変な風に話したからじゃないの? 別にその、ぶっころりーさんって人が悪いわけじゃあ……」
──いいか、こめっこ。よく見てろよ?
──兄ちゃん何すんの?
「何を甘っちょろいこと言ってるんですか。あのニートはさっきみたいに、無知で幼気なこめっこに変なことを教えこむ穀潰しなのですよ? アレさえ変なことを教えなければ、こめっこがあんな風に人を悪く言うわけがないじゃないですか。事実とは言え。原因は全て、あのぶっころりーにあります」
「……いやだから。うーん。めぐみんが家で私のことなんて風に話してるのかを聞きたいんだけど。――というか今事実が如何とか言った!?」
「言ってないです。あと、家でゆんゆんについて話していることを言うのはやめときます」
──耳がー……でっかくなっちゃった!
──えええ!? すごいすごい! お耳がおっきく……あれ!?
「どうしてよ! やっぱりめぐみんがこめっこちゃんに私がぼっちだの構ってちゃんだのって話したんでしょ!」
「…………黙秘します。というかはぐりんは何をしてるのですか?」
「ちょっとめぐみん話逸らさないで、終わってない……本当に何をやっているの?」
「何って……暇つぶし」
責任の所在を追求するのを止めた二人がやっとこちらを気にしてくれた。肝心のところを見逃しやがって。
「もっかい! もっかいやってみせて! 姉ちゃん! 兄ちゃんの耳おっきくなったんだよ!? んで、ちっさくなった!」
よしよし。成功率は『器用さ』のステータスが影響してくるらしいけど、中々うまくできたようだ。
「フフフ……こめっこよ。神は言っている。『芸は乞われてするものじゃない』……と」
「ええー!? 見たい見たい! もっかい!」
「そうだなー……じゃあ、そろそろ晩御飯出来上がるし。お手伝いを頼めるかな? 我が親愛なる従妹、こめっこよ」
「…………お手伝いするから。今じゃ駄目?」
「……後ならもっと凄いのみせられるんだが。そうか、いいのか……」
「っ!? しょうがねーなー!」
──おばちゃん、こめっこお手伝いするー! と、ソファから飛び降りて、母さんのところに駆けて行くこめっこ。本当にどこで覚えてきたんだか。また変な言葉遣いをしている。……ぶっころりーの仕業だろう。あのニート今度会ったらとっちめてやる。
こめっこの座っていた場所に、入れ替わるように跳び乗ってきたクロが、そうだと言わんばかりに「にゃあ」と一鳴きして頭を太腿に擦り付けてくる。……猫にしては人懐っこいよなあ。さっきもこめっこと一緒に俺の『宴会芸』に驚いてたりしていたし。
なーんか引っかかってるんだけどなぁ。喉元まで出かかって、小骨が刺さったような感覚がしてもどかしくて仕方がない。
……さて、それはさておき。
こめっこが手伝いに行って、黙ったままクロを撫でる俺。そして気まずそうにする二人。
これから鍋食べようっていうんだ。険悪な空気で食べる鍋ほど美味しくないものはない。……まったく二人は何時までやるつもりだったのやら。
家族以外の人と大勢での食事に慣れてないゆんゆんは、まあしょうがないとしても。めぐみんはそれを理解してない訳じゃないだろうに。
「……あの、はぐりん」
「はあ。気にすんな。さ、食べる準備しよう」
それに、こめっこの相手をしていたのは好きでやったことだから。一々気にされても困る。
「……??」
色々とわかってない様子のゆんゆんは、言葉少なにやり取りをする俺とめぐみんにオロオロと困惑していた。
▽
「こら、こめっこ! せっかく具材が沢山あるんです! お肉ばかりとっては……!」
「姉ちゃんはいやしんぼ」
「別に私がお肉食べたいから野菜を食べろと言っている訳じゃないですよ! ……いいんですか、こめっこ。はぐりんのお母さんやゆんゆんみたいな体型になりたくないんですか?」
なんだその言いくるめ方。自分がなりたいからってそんな……。
「……。……わかった、食べる……おかーさんや姉ちゃんみたいになりたくない」
「……。えらいですよ、こめっこ。──そういうわけでっ!」
こめっこに何か言いたそうにしていためぐみんは。
「あああ! どうして! なんでめぐみん的確に私が取ろうと思ったのをとってくのよ! ほかの取ればいいじゃない!」
「おっとなんですか、その顔は。ゆんゆんが食べようとしているものを私が食べれば、同じような体型になれるんじゃないか……なんて思ってないです、ええ、全然。偶々ですよ?」
「そんな見え見えな嘘つかなくても……ってまた取った! まだお皿に残ってるじゃないの! 私全然食べれてない……」
相変わらずいじめっ子を発揮させているめぐみん。いや、少し必死すぎる。
流石にゆんゆんが可哀想になってきたので代わりに小皿に一通り取っていく。
「ん、どうぞゆんゆん」
「あ! ずるいですよゆんゆん!」
「何がずるいのよ! あんたが私の取らなきゃいいだけじゃない! ……ありがとう、はぐりん」
「どういたしまして。……めぐみん、あんまりゆんゆんを虐めてたら、昼間に言ったおかず一品抜きを発動させてもいいからな」
「昼間の……んんん!? な、鍋、ですよ? まさか鍋が一品なわけじゃないですよね!? だってこれをとりあげられたら何も残らない――」
「一品は一品だろ?」
「ごめんなさいもうしませんからゆるしてください」
「よろしい」
そんな俺とめぐみんのやり取りを見ながら笑顔で食べていた母さんは。
「娘が沢山出来たみたいで嬉しいわねー……ゆんゆんちゃん早くウチの子にならない?」
「うぇ!? ……あのぅ……それは、まだその。早い気がする、ので……」
言ってやってくれゆんゆん。まだ12歳だぞ、俺たち。適齢期も迎えてないって。
「そう? もうそろそろ良いと思うんだけど……」
「それに! その、はぐりんと冒険者をやる約束してて……」
「…………へぇ、ほー。やるわね我が息子」
「母さん後で話すけど、絶対今考えてるような事しないから! つか今食事中!」
どうせ冒険者稼業してる間に──とか考えてるに違いない。
「わかったわかった。でも、私が何考えてるのか察せる辺り、はぐりんって大分ませてるからね? ゆんゆんちゃん、気を付けてね?」
「え、何をですか? というかなんなんさん、一体何を考えて……?」
「……ゆんゆん、追及するな。墓穴掘るから。母さんの言う事は無視すればいい」
ゆんゆんにとっては、敷居の高いことかもしれないけど。親しい間柄でもちょっとは人に冷たく当たることを覚えた方がいい。
「無視だなんて、そんな……」
難しい顔で野菜を口に運んでいくゆんゆん。
誰にでも優しいところは俺も好きだけど、反面ちょろくて雰囲気に流され気味なのは心配になる。
「あの、こめっこの教育に悪いのでそう言う話するのやめてもらえますか……?」
「姉ちゃん、何の話?」
「知らなくていいですよ、こめっこ。なんでもないです」
「ねえ、やっぱり私とこめっこちゃんだけ置いてけぼりなんだけど……! やめて、仲間外れにしないで……!」
別に仲間はずれにしてるわけじゃないけど。
「ゆんゆん、後で話すから。この話題は一旦忘れて。──ほら、ネギが美味しそうだよ。はい、あーん」
「え、あ、あの! はぐりん!? その、みんな見てるから! ちょっと、そんな顔しないでよぉ……! ……あーんっ……! ……っ!?」
誤魔化すためにやったけど、人前でやるのは恥ずかしいみたいだ。顔を真っ赤にして涙目にまでなってる。
……俺も恥ずかしいんだからお相子だ。お相子。
「兄ちゃんとゆんゆんがいちゃいちゃしてる……」
「見ちゃいけませんよ、こめっこ。…………あの、ゆんゆん?」
横を見るとゆんゆんが顔を真っ赤にして水を……あ。
「ごめん! 冷ますの忘れてた……」
「ら、らいひょうぶらから……」
全然大丈夫じゃなさそうだった。
そんな俺たちの様子をこめっこちゃんが目を丸くして、めぐみんが呆れた様子で。母さんだけが楽しそうに見てきていた。
ゆんゆんの口の中の火傷を回復魔法で治して、鍋を再開。
締めはご飯を入れて雑炊にしたが、めぐみんとこめっこ、俺以外は手をつけることなく食事が終了した。出汁まで残さず完食である。
おどおどと後片づけを母さんに申し出たゆんゆんは台所で洗い物をしているが、最後まで食べていた俺たち三人は食後の休憩。母さんはこれ幸いと早々に工房に戻った。
特にこめっこちゃんはソファでめぐみんの服に涎を垂らしながら寝ていて。
クロはこめっこちゃんに抱えられたまま寝落ちされて、逃げ出そうと暫くもがいていたものの、今は諦めてぽっこりしたお腹の上で丸くなっていたる。
こめっこちゃんなぁ……俺やめぐみんと同じくらいの量を食べるから。毎度のこととはいえ驚きを隠せない。
食べれるうちに食べとかないと、って思ってるのだろうけど……俺としては、食い溜めしなきゃいけないめぐみんのところの家庭環境に嘆くべきか、それとも冒険者になる身としては、その逞しさを見習うべきか……。
「いっぱい食べました……まさか鍋だとは思いましませんでしたよ」
穏やかな顔でこめっこの髪を梳くめぐみん。腹が満たされているのもあるんだろうけど、いつも学校で気だるげにしている姿からは想像つかないくらい今、お姉ちゃんお姉ちゃんしている。
「お礼はゆんゆんにな。そういや、昨日は来なかったみたいだけど。……どうしてだ? 確か昨日からだろ、おじさん達居ないのって」
「それが実は……。お昼を調達しにこめっこを連れてぶっころりーなんかを冷やかしにいったら、こめっこが私譲りの魔性っぷりを発揮して、おかしやら食べ物を貢がせてきたんですよ」
「ああ、なるほど」
物乞いの真似事はするなと言うのは簡単だけど、それくらい今月末も厳しいわけか。
「……魔性の座を妹に譲るのに思うところがないわけではないですが、こめっこにも『紅魔族随一の魔性の妹』という二つ名が出来たので、良かったら偶に呼んであげてくださいね?」
「はいはい。……まぁ、でももうすぐ俺、里でるかもしれないからなあ……」
「え? ……ああ、もう取得できるようになったんですね?」
「うん。つっても、お前たちが取得できるようになるの待つつもりでいるけど」
「……私だったら溜まったらすぐに取得したくなるものですが、我慢強いですね貴方は」
「いや、ホントな? 今滅茶苦茶我慢してる。色々と取りたいスキルがあるし……」
「はあ。……まあ私はあの魔法しか覚える気がないので、その誘惑はよくわかりませんが」
すごいよなぁ、ホント。50ポイントだっけか、爆裂魔法の取得に必要なポイント数。あと4ポイント……もう46ポイントぐらいまで溜めてるって話してたし、今日の養殖がちゃんと出来てれば今日中に取得できてもおかしくなかったのに。
「そういや、どうしてあの魔法を覚えようと思ったのか聞いてなかったな。どうしてなんだ?」
「? あれ、話しませんでしたっけ?」
「うん。聞いたことはない、はずだけど」
「……私がこめっこぐらいの歳の頃、漆黒の毛並みをした巨大な魔獣に襲われそうになったことは? 聞いたことありませんか?」
「それは、あるな。……それと昔、邪神の墓の封印が今みたいに解けかかったって話も。中から現れたらしい邪神が流れの凄腕魔法使いに爆裂魔法で倒され、再封印された……って確か大人たちが話していたような」
「……今言うと疑われそうなのですが、どうやらあの時の封印を解いたのは私みたいなんですよね。封印のパズルで遊んでたら、うっかり」
「おまっ……お前、俺以外に絶対言うなよ?」
その頃からめぐみんの『知力』は大人顔負けだったというわけか。なんかとんでもないこと聞いてる気がする。
「わかってますよ。それで、現れた魔獣からその流れの巨乳のお姉さんに私は助けてもらったのです。あの爆裂魔法で。……そう、我が目標は、かの恩人に極めし我が究極の魔法を見てもらうこと。あの時助けてもらった幼子はこんなにも強くなりました、とね」
微塵の羞恥も感じさせず、めぐみんは堂々と言い放った。
「なるほど。それは……確かにしょうがないわな。俺もお前も同じ穴の貉というわけか」
「私が語ったのです。はぐりんの夢について、そろそろちゃんと聞かせて貰ってもいいのでは?」
……まあ。そうか。そうだよな。
そろそろ俺の目標を公言していくべきだろう。
まだ、めぐみんには話したことがない俺の夢。否、目標。
今まで口に出して言うのは恥ずかしくて言いたくはなかったけど。一紅魔族として、夢や目標が語れないようじゃ笑われる。
「我が名ははぐりん。紅魔族随一のスキルコレクターにして冒険者を生業にする予定の者。やがてこの世全てのスキルを極める者。……それが俺の夢であり目標だよ」
さっきまでの穏やかな顔は何処へやら。信じられないという顔をして、めぐみんはこめっこを撫で付ける手を止めた。
意識調査です。投稿時間は何時ごろが良いですか?
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