本文に変更はありませんのでご報告だけ。
遅くなった理由についてはあとがきにて。
ステータスにレベル、魔法。そして──スキル。
この世に生きとし生けるもの。あるいは死して尚、その存在を世に留めるもの。
人は勿論、魔物に魔族。そして悪魔でさえ取得するもの。
林檎を落せば地面に落ちるのと同じ、世の摂理。他の何かの生命活動を停止させることで吸収される魂の残滓を経験値。その経験値がたまることで存在としての位階──レベルが上昇する。そして、人や人ならざる者たちは本来のステータスを向上させることができる。
でも、どうしてそんなものがあるのか、気にするものは居ない。
それは当たり前のものとして。あるいは、取るに足らないものとして。
曰く、この世の全ては神によって作られた被造物。
名を忘れられた女神に、今ちょうど里を騒がせている邪神。外の広大な世界にくらべれば遥かに狭い、この里の敷地の中にすら確かに存在している──そんな神々によってこの世界は形作られた。子どもの頃から俺もお前も、誰もが寝物語で聞かされた話。なんなら教会にいけば幾らでも詳しい話を聞かせてくれる。
世界共通の常識。誰も神の不在を説くものは居ない。居る筈もない。
だから、ステータスを神々によって与えられた恩恵だと言う人もいる。
……けれど、神の敵対者。悪魔、アンデットが同じように使えるものは果たして本当に神の恩恵なんだろうか。そうなると神が作ったというのも怪しい話だ。
そして人ならざる者共が使うスキルを、人は使うことが出来ない……例外を除いて。だがその例外こそが、俺がこんな夢を持つに至る理由。
《魔法スキル》は適性の如何はあるものの、誰もが取得自体はできる。しかし選んだ職業によってスキルの取得の可否は左右される。何時、何処で、誰が決めたかもわからない枠組みによって。
噂では勇者の血を引く王族しか扱えないスキルがあるらしいが、それも言ってしまえば伝説にしか聞かない『勇者』の職業に就いているんじゃなかろうか。
『魔法使い』が《大剣スキル》を取れないのは?
『戦士』が《初級魔法》を取得できない理由は?
「そうだから」と多くの人は思考を停止し追求しない。答えを知る、人ならざる者たちは語らない。あるいは人外でさえ興味を示していないのかもしれない。
だって聞いても誰も答えてくれなかった。真実を教えてくれなかった。
だから。
この身近な謎の真相を。一つの真理の探求に──いつからか俺は魅了された。
『当たり前を疑う。それができれば、きっと冒険者じゃなくとも、人として大成できる』
まだ俺がこめっこぐらいの時、同じように
スキルが何か? それを知るために、まずはこの世にある、ありとあらゆるスキルを覚えて極める。だから俺は『冒険者』でなければならない。アークウィザードでは不可能なことを可能にするために俺は『冒険者』を選んだ。
でも、それだけじゃないんだ。俺が『冒険者』を選んだ理由は。
めぐみんがさっき話してたお姉さんに感じたと言うように。
──あの時、確かに俺は。
職業に縛られず、数えきれないほどのスキルを使いこなし。
生ける『伝説』を圧倒する父さんの背中に憧れを感じた。
▽
「で、伝説とは……?」
「エンシェント・ドラゴン。滅茶苦茶長生きしてるドラゴン。最上位のモンスターだろうな……」
肩書だけは。
「!? じゃ、じゃあつかぬ事を聞きますが、あなたの父親はドラゴンスレイヤー」
めぐみんの言葉を首振って否定する。
「……あの時は凄くカッコよかった。ドラゴンも親父も」
「倒してない、とでも言うような口ぶりですけど」
「ああ。なんか話が通じるってわかって和解した。……その討伐の理由になった悪さっていうのが、偶に人里に降りて酒と家畜を盗んでた程度で、しかもそれはドラゴンからしてみれば盗んだつもりはなく。被害に遭って依頼を出してた街と遥か昔に血の盟約……ギアスらしきものを結んでたんだと。盗んでたつもりは無かったんだ。誤解がとけたのは良いけど街の人からしてみれば結んだ覚えのない約束に一騒動。盟約ってのも、街がまだ村だった頃の話らしく、契約を交わした一族の血筋が絶えていたが発覚してな。それにウン百年以上気づかないのもどうなんだって話なんだけど。今じゃ無理のない程度にドラゴンの素材と人間の食料と酒を交換することで解決。それを親父が月一くらいで納品しに行ってる。長く生きてきたドラゴンにとって一番の趣向品なんだとさ。窮屈だからって人化出来るのにしない偏屈な奴だったよ、あのドラゴン」
偉業といえば偉業なのかもしれないけど。紅魔族的にはもうちょっとパンチが欲しいところだ。あるえにまだ話したことはないけど、紅魔族の琴線に触れるような話にしてくれるかもしれない。
「勿体ない……ドラゴンスレイヤー……いい響きなのに」
「まあな。……でも俺たち学生が飲んでるスキルアップポーション、実はそいつの血で作れてるのが殆どらしいぞ? 定期的に学校に卸せてるのも親父がそいつに実力を認められて友好的だからこそだし。母さん曰く、普通のドラゴンの血より何倍も効能が高いとかで一度に作れる本数も多いらしい」
「そうなんですか……」
俺の回りくどい長話を聞いていためぐみんはどこかそわそわとしている。
「どうした? 何か聞きたいことでも?」
「……その、自分の父親のようになりたい、というのがはぐりんの本当の夢で」
「おい、その言い方はやめろ。確かに後追いになるから、そう捉えられても仕方ないけど! いつか抜かすつもりで居るんだし!」
大体親父の真似がしたいわけじゃない。
ちょっとは格好いいところはあるけど、今じゃ基本ウザいだけだかんな!
「これは失礼。『冒険者』で遍くスキルを取得して極める。私が爆裂魔法に魅了されたのと同じで、はぐりん、あなたはスキルそのものに魅了されたと」
「まあ、うん。……阿呆なこと言ってる自覚はあるよ。でも不思議に思わないか? なんでこんなカードでスキルが覚えられるのか。レベルが上がったら強くなるのかって」
ポケットからカードを取り出し手慰みに指先でくるくる回転させる。
「いえ、私も不思議だなとは思いますよ。学校では色々な学説を知るだけで、何が本当かまでは追及してないですし。実際、エリス教ではステータスは神々によって与えられる恩恵だという共通認識ですから、不思議に思う人も少ないでしょう。魔物たちが持っているステータスは邪神によって与えられたものだという話ですし。私も含め、多くの人たちにとってそういうことは気になっても一蹴できる程度です。……というか器用ですね、それ」
めぐみんが指先で回転するカードを目で追う。気が散るようなのでカードを弾いて消した。
「……それの探求を目標としてる身としてはちょっとは気にしてほしいんだけど」
「はぐりんにそれはお任せしますよ。……いえ、私が言いたいのはそうではなく。はぐりんは全てのスキルをと言いますけど、その……爆裂魔法も、ですか? あと、今のどうやったのか教えてください、気になります」
「それは内緒。……取り敢えず《上級魔法》を取ったら、《転移魔法》取るくらいで、魔法は今のところ十分だからな。取得に75ポイントかかるし。……別に競うつもりは無いから、爆裂魔法はめぐみんに任せるよ」
「良いじゃないですか教えてくれても! ……わかりました。確かにはぐりんは『冒険者』ですから。確かにそうかもしれませんが……。……なんですか、ちょっと期待したのに……張り合いのない」
さみしそうに言うめぐみん。……もしかして同士が見つかったとでも思ったのだろうか。
「あー、いつかは取得するつもりではいる。……でも今からそれだけポイント貯めて爆裂魔法一個取るよりかは、前衛職のスキルの取得と強化をしたほうがいいだろ。魔法使い二人とパーティーを組む予定してるからな。俺が前に出なきゃ」
「今日みたいに騎士ごっこするんですね……ほんっと、アークウィザードばかり輩出している紅魔族らしくない発想ですよ、まったく」
「おい」
騎士ごっことは失礼な……いや、確かに遠距離から高火力の魔法を使う方が危険も少ないんだろうけどさ。
でもめぐみんは取得する予定と聞いてちょっと嬉しそうな顔。それから神妙な顔つきをして「ですが……」と前置きをして。
「あなたのその夢は……その、叶わないとは言いません。ですが限りなく叶わないに等しいものです……一つのスキルを極めるのでさえ、人は自分の人生をかけなければならない……私だってあの魔法に人生かけるつもりでいます。わかっているのですか? 剣聖目指しながら魔法の深奥を目指すようなもの……いえ、事実はぐりんの夢はそうなのでしょう。……確かに、はぐりんはスキルアップポーションを飲むことなく今の時点で私達以上にスキルポイントを稼いでますから、無理じゃないのかもしれませんが……。さっきの話を聞いてちょっと怪しいですけど。それでもはっきり言って異常です。本当にスキルアップポーションを飲んでないならどうやって……公言できないようなこと、してないですよね?」
「……ああ。めぐみんの言う通りだ。人に言えないことをしてる訳じゃない。スキルアップポーションも飲んでない。……言ってもあまり受け入れてもらえないってだけでな」
馬鹿なことに人生かけようとしてるのは俺もめぐみんも一緒だ。だから欲張りな俺の夢が現実的でないとめぐみんは思うのだろう。
「……。別に、あなたが犯罪スレスレのことをしてようと私の事を巻き込まないなら良いんですけどね。ええ」
俺や親父の使っていたポーションは、今はまだその使用はおろか作ることさえ、在野のポーション屋では禁じられている。その悪魔的効果だけが注目されるばかりで、その副次効果を利用するのは親父と俺しか今はいないけど。……いつかは。
「まあ卒業できたらめぐみんにも俺が何をやってるのか教えるよ。本当に後ろめたいことは一切ないからな。あ、あと勘違いしないように言っとくけど、別にスキルを極めて真理を解き明かす事だけが俺の夢じゃない。……今じゃ里の土産物としてその装備が売られてる程度だけど、勇者として知られる伝説の紅魔族──へもぐろびんに負けない伝説を歴史に刻みたい。紅魔族に生まれた一人の男としてはこの世界に自分の名を轟かせたいだろ?」
紅魔族随一の冒険者になる。それは昔から公言してきたし、依然として変わらぬ目標だ。
「気が合いますね。紅魔族随一の魔法の使い手を目指すのは当然として。この名と、究極の魔法の凄さを遍く世界の人々に知らしめるのです。ネタ魔法と嘲笑われるのは真っ平ごめんですし」
名前で笑われるネタ種族が一発ネタみたいな魔法の存在意義を証明する、か。
……うん。流石はめぐみんといったところか。ようやく腑に落ちた。俺も大概だけど、めぐみんもおじさんの娘なだけある。方向性は違えど、情熱の掛け方はそっくりだ。
……問題のある魔道具ばかり作っているけど、あの浪漫を追い求める呆れるほどの熱意と姿勢だけは里の誰もが認めるところだから。
俺が感心していると台所をチラ見しためぐみんが。
「さて。……ゆんゆん! あなた盗み聞きしてないでこっちにきたらどうですか!」
どたどた、と台所の方から慌てた誰かの物音が聞こえた。
▽
各部屋に置いてある、呼び出しの魔道具でめぐみんが母さんを呼ぶ。
工房に篭ると中々出てこない母さんだが、今日は念の為送り届けると言っていたからすぐにでも出てくるだろう。
「それじゃあ帰ります。ゆんゆんも気を付けて帰ってくださいね?」
「あ、あのめぐみん……!」
ゆんゆんがおずおずと台所から出てきたあと、すぐにめぐみんはこめっこを連れて帰ると言い出して追求する暇を与えなかった。
食後もかなりゆっくりしていたけど明日も学校だ。そろそろ家に帰らないと明日に差し支える。
「はいはい、お待たせ。それじゃあ帰りましょうか。こめっこちゃん眠かったらおんぶする?」
「いい、自分で歩く……」
母さんがやってきて、こめっこに声をかける。
姉の膝の上で寝ていたこめっこは、寝ぼけ眼をこすりながらめぐみんの服の裾を掴んでいる。ちゃんと歩いて帰る気でいるようだ。
「……言いたいことがあるのはわかります。また明日、学校で話しましょう?」
「う、うん……」
二人に見られて、やってきた母さんがなんのことかと首を傾げる。
「それじゃあ……ゆんゆんちゃん、息子がついてくけど。気を付けて帰ってね」
母さんは一体何に対して気を付けろと言っているのか。ニヤニヤした顔をこっちにむけるなよ母さん。口だけで何か言って……『送り狼にならないように』だって? なるわけないだろ!
「はい。……なんなんさん。今日はありがとうございました」
「こちらこそ美味しいお野菜沢山ありがとう。またね」
それだけ言って三人が玄関から出ていく。
母さんの『またね』という言葉に返事ができないで落ち込むゆんゆんは俺の顔を見てきた。
「はぐりん……どうしたの?」
「……なんでもない」
送り狼になるつもりは毛頭ないけど。
……ゆんゆんを抱きしめたときの感触を思い出してたなんて言えない。
母さんたちが出て行ったあと、追いかけるように家を出た。
街灯の魔道具がぽつぽつと夜道を照らしている。人の活動時間外の夜闇の中を歩くのにはすこしばかり心許ないが、今日は空が晴れていて月明かりが眩しいぐらいだ。隣を歩くゆんゆんの顔の機微さえ、しっかりと見て取れる。
とはいえ今は夜。人ならざる者たちの時間。魔物どころかご近所の魔王の手合いでさえ恐れる紅魔の里だが、夜の間は住民の殆どが寝静まり、魔物が紛れ込んでいてもわからない。もしかすると魔王の手先が忍び込んでいるやもしれない。油断はできなかった。
それに今日は邪神の下僕の事もある。封印が解けかかっているのは本当で、他にも下僕の悪魔が徘徊しているかもしれず警戒は怠れなかった。
『敵感知』スキルに反応はない。しかし、相棒の『ひのきの棒』を手にいつ戦闘が起こっても良いように身構えつつ、ゆんゆんの隣を歩く。
「……あの! はぐりん、今日はごめんなさい!」
『ひのきの棒』を握りしめ、敵感知スキルで警戒を続けていると急にゆんゆんがそう言った。
「……なんのこと?」
心当たりが多すぎて何に対して言っているのか判りかねる。
てっきりめぐみんと話していたことについて聞かれるんじゃないか、と身構えていたから尚の事見当つかない。でも盗み聞きしたことを謝ってるわけではなさそうだ。
「えっと、色々ね。特に今日は……養殖の時に助けて貰ったり、ふにふらさん達とのことでも、迷惑かけちゃったし……急にお家に押しかけちゃったりで、はぐりんには悪いことしたなって……」
「……迷惑だなんて思ってないよ。養殖の時は仕方なかったろ?」
もしかすると俺が出張らなくても先生が助けてたかもだし。
「そうかもしれないけど、他はっ! ……本当に、迷惑だと思っていない? 私のこと、面倒臭いって……」
……うーん。今更なんだけどなぁ。
「正直に言ってもいい?」
「……うう、やっぱり?」
「まぁ……うん。確かに面倒くさいなって思う事はあるよ? 今みたいにちょっとだけ。自立できるかな、俺がいなくて大丈夫かなって心配にもなる。……でも、ゆんゆんのそういう面倒なところも、俺はその……うん。好き、なんだよ」
「そ、そうなの?」
ちょっと引いてる? いや、そんなことないよな。
……誤解されないようにちゃんと言おう。
「ゆんゆんは俺に迷惑かけてるって思ってるかもしれないけど、俺は『頼られてる』、『信頼されてる』って思えるんだ。好きな人の我儘に付き合って、それを受け止められるのは男の甲斐性だ。あと、ゆんゆんは知らないかもだけど、好きな子から頼られて嫌な男は居ないんだぜ?」
「そう、なんだ……」
……それに俺だって君に沢山迷惑かけてる。
……謝りはしたけど、今日ゆんゆんを悲しませた一端を俺が担っていたことに変わりはない。
「じゃあ例えば。逆に俺がゆんゆんに迷惑かけたり、頼ったりしたら……ゆんゆんは嫌?」
「えー? うーん、どうだろ。今までそんなこと無かったから……」
例えが悪かった。俺の方は迷惑どころかゆんゆんのこと傷つけてるんだけど……本人が自覚してない分だけ罪悪感が湧いてくる。
「……じゃあ、ゆんゆんはめぐみんがいつもお弁当をたかってくるの、案外嬉しかったりするだろ?」
「それは、うん……? え、私がめぐみんと同類……?」
「え、そこ気になる?」
「さ、流石に私、めぐみんみたいにお弁当取ってったり、半分だけって言われたのに全部食べたりしないわよ! ……でも、その、卒業するまでに一回ぐらいはぐりんとお弁当の交換はしてみたいかも……駄目?」
「わかった。それはまた今度ね」
「本当に?」
「本当だから、ね?」
そういうところが面倒臭いんだぞ、ゆんゆん。
「──つまり私は、はぐりんからしてみれば、私にとってのめぐみんみたいな存在……ってこと?」
「いやこれ、さっきもそう言ったつもりなんだけどね。好意の種類は違うから、同じとは言えないけど」
「……な、なるほど。でも、やっぱりそれって迷惑に思ってるんじゃ──」
堂々巡りじゃないか!
「もう! 俺は迷惑かけられても良いって言ってるの! ……ある程度ゆんゆんには自信もってほしい、自立してほしいとは思うけどっ! でも頼られないのは寂しいから!」
「はぐりん?」
……あ。
「いや、ごめん。忘れて。……と、とにかく! 俺がゆんゆんに何されようと嫌いになることは無いから! 何度も言うけどゆんゆんのそういうところも俺は好きなんだよ!」
恥ずかしさを誤魔化すように言い切って、ゆんゆんの顔を見て。……何を大声で口走ったか気が付く。
夜道の僅かな明かりでも十分わかるくらい照れた顔。闇の中でも爛々と輝く紅い瞳。
「……ありがとう、はぐりん。私、頑張るね?」
……俺も負けじと顔を赤くして、ゆんゆんの視線から逃れた。
気まずくて少し黙り込んでいたが、ゆんゆんが我慢できなくなったのか口を開いた。
「その、さっき話してたこと……なんだけど」
「忘れて……忘れて……」
あんな本音言わないようにしてたのに。
「あ、ううん! 違うの。……その、はぐりんの家でめぐみんとはぐりんが話してたこと」
「そっちか。……やっぱり気になってる?」
いや、それもそうだ。むしろ気にならないほうがおかしい。
「ごめんなさい。盗み聞きするつもりはなかったんだけど……入っていくタイミング逃しちゃって」
「別にいいよ。……ただ、めぐみんのことを俺がどうこういう資格はないから。明日めぐみん本人から話は聞いてほしい」
納得はした。理解もした。けど、だからといっておかしな夢だと思うのは仕方がない。
でもそれはめぐみんも、俺に対してそう思っていることだろう。
「……うん。だから、はぐりんの話を聞こうと思って。冒険者になって何がしたいのかなぁって気にはなってたから」
だからゆんゆんが気になるのは自然なことだった。
「そっか。どこから聞いてた?」
「えっと……はぐりんがスキルを全部取得するってめぐみんに言ったあたりから?」
「……じゃあ俺の話全部聞いてたのか」
「…………うん。本当に、あの話にあったのがはぐりんの夢なの?」
「ああ、そうだよ。……馬鹿みたいって思うだろ? でも、俺もめぐみんと同じで諦められない。知らないスキルを知りたいし、覚えたい、使いたい。知らない覚えられない……使えないまま死ぬのは嫌だ。使いこなして、俺は誰にも劣らない『冒険者』になりたいんだ」
……まぁ、でも他にも一つ目標ができたけど。それは言わないでおこう。
「そう、なんだ……すごいね、はぐりんは」
「そんなことないよ……ゆんゆんは、族長になるのが夢だろ? そのほうがすごいと俺は思うけどな」
「……そうかな?」「そうだよ」
自信を持たせるように食い気味に肯定する。
「で、でも試練を乗り越えれば誰でも出来るから……誰もやりたがらなくて、結局世襲制みたいになってるし……」
自由人多いからなぁ俺たち。その取り纏めなんて今の大人たちでしたがる人は居なさそうだ。
俺が生まれてからは一度も行われていないそうだが、紅魔族には古くから族長になる為に課せられる三つの試練があるのだそうだ。
二人一組で行われる儀式染みた試練を乗り越えることができれば、誰でも族長になれるのだとか。
ゆんゆんは俯きがちに言う。
「あの、……ん」
「うん?」
「試練っ! ……はぐりん、一緒に出てくれる?」
「いいけど」
「ほ、本当に?」
「本当だって。……でも、なんか怪しいな?」
「ぜ、全然そんな事ないわよ! ……別にお母さんがそこでプロポーズされたとか関係ないから!」
……。
「俺、ゆんゆんが奥手なのか積極的なのか偶にわからなくなる」
「へ? ……。あ! そ、その! べ、別にプロポーズしてほしいとか、そういうことを言ったんじゃないから!」
「……本当に?」
「……ぅぅ」
「別に俺、ゆんゆんが試練の間にプロポーズしてほしいって言うんだったらしなくもないんだけど?」
「……は、はぐりんの意地悪ぅ……!」
まあ、きっと二人組で挑む相手が居るのか心配になってたから、という理由なんだろうけど。
別にゆんゆんは両親みたく、そこで結婚の申し込みをされたいわけじゃないのは俺も分かってる。
けど。けどなぁ……。
可愛いったらありゃしない。……そんなに反応されたら、俺本当に送り狼になりかねないぞ。
昼間のあるえといい、ゆんゆんといい、誘うような事言わないでほしい。
▽
「それじゃ、はぐりんありがとう。……またお父さんに捕まったら面倒だから」
無事、送り狼になることなく、ゆんゆんを家の前まで送り届けることが出来た。
「うん。わかった。……ゆんゆん、言い忘れてたけど、今日はありがとう」
「へ?」
本当は忘れてたわけじゃない。言おうと思っていた。
「今日ゆんゆん、お祝いのつもりで買ってきてくれたんだろ? 俺が卒業できるようになったから。急に来たからって俺たち全然迷惑に思ってないから、昔みたいに何時でも来てくれたらいいからな」
高い食材なんか持って行って気を使わせたくない。けど、お詫びもお祝いもしたい。そんな気持ちでゆんゆんは今日来てくれた。でも確証がなかったから……俺の自意識過剰じゃないみたいでよかった。
「う、うん! また行かせてもらうね! ……んん──はぐりん、今日はごめんなさい。それから、卒業できるようになっておめでとう」
……めぐみんがいるところでこういう話すると、絶対茶化されるから、ゆんゆんも言うに言えなかったんだろう。
そうだと確証はなくとも祝ってもらえるのは……嬉しかった。でも、先駆けしてお祝いされるのは少しだけ寂しい。
「ありがとう。でもまだ俺卒業した訳じゃないから……だから、みんなも卒業出来たら。めぐみんも、あるえも、俺の友達とも一緒にちゃんとお祝いしよう。勿論、ゆんゆんもね。大勢のほうがきっと楽しいからさ」
「……め、迷惑じゃないかな?」
「迷惑なもんか。……そういうところはゆんゆんも自信を持つべきかな」
「そうなの?」
「だって……嬉しいことは嬉しい、楽しいことは楽しいで、俺はゆんゆんと共有したいから。卒業祝いのパーティー、したくない?」
「したい! 私だってはぐりんと一緒に……でも、はぐりんの友達って……男の子、だよね?」
「そうだけど身構える必要はないって。気の良い奴らだし、友達になってくださいって一言言ったらなってくれるさ」
「そ、そうかな……そうだと、いいなぁ……」
俺の友達……へぶめるろーとふじもんと友達になれたときのことを想像してるのだろうか。
二人と友達になれたらか……うーん。なんか必要以上に仲良くされたら嫌だな。
ゆんゆん可愛いし。二人がつい、まかり間違って好意を抱いても仕方がないのかもしれないけど。
それこそ寝と……んん。
「やっぱり男二人呼ぶのやめとく」
滅茶苦茶失礼なこと考えてるかもしれないけど、ふと過った不安を拭えるなら俺は友情よりもゆんゆんを選ぼう。
「ええ!? なんで!? 私一緒にご飯食べに行くとこまでどうしようかって考えてたのに!」
ゆんゆんには悪いけど。今の隙だらけのゆんゆんが男友達作ろうなんて無理だと思う。
変わらず感想と評価の催促。頂けると幸いです。
遅くなった理由はFateの夏イベが忙しかったからですね。
それだけ。でも悔いはない。
またどうぞよろしくお願いします。
意識調査です。投稿時間は何時ごろが良いですか?
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