はぐりんくえすと   作:楯樰

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20 ニートと学生と

 ゆんゆんがウチに来ていた頃は許婚なんて関係ではなく、純粋に友達として遊んでいた。

 

 いつも二人きりだったけど俺としては男女の性差を気にすることはなかった。いや、勿論「可愛い子だな」と思ってはいたけど、それはそれ。美的価値観に基づいたもので……そもそも当時8歳にも満たなかったし当然だ。

 

 許婚になるまではやましい気持ちなんてこれっぽっちも無かった。親からその話を聞かされたのは丁度10歳を迎えるか迎えないか、ぐらいの頃だったと思う。ゆんゆんもその頃になって、俺の家に来ることを遠慮し始めた筈だった。

 

 ただ俺がゆんゆん家に行くのは構わなかったのか、それからも放課後遊びに誘われることもあった。いや、そもそも毎日登校の時は一緒に行ってたし、偶に帰りも一緒に帰ってたけど。

 

 ただ自分の中でゆんゆんの存在が友達以上に変化したのは明確だ。

 

 言葉にはしないでも、彼女のことは大切で。ゆくゆくは──言いなりになるのはいい気分じゃないけど──ちゃんと付き合って、結婚して……なんて思ってた。

 

 ちょっと話が逸れた。……さて、つらつらと並べ立てたが言い訳である。

 

 家に女の子を招くという行為が、今と昔じゃ全然違うものに感じられることに一昨日ゆんゆんと従妹たちを招いた時には気がつかなかった。

 

 さっき『はぐりんのえっち』などと、全然嫌じゃなさそうに言われやっと気がついたド阿呆は俺です。

 

「ごめん……俺としてはそんなつもりじゃなくて……」

 

「いいよ、別に。寝かけてる君に家に行っていいかと聞いただけの私も悪いんだから。だから覚えてくれてただけでも文句は言えないよ……それより、そんな前から、ゆんゆんにそう思っていたことがショックなんだけど」

 

 あ、墓穴掘った。

 

「…………悪い。無神経だった」

 

「ああいや、意地悪で言ったつもりじゃないから。……私が仮に男の子で君の立場ならそう考えるだろうしね。そんなに落ち込まないでよ」

 

 最近謝ることばっかりだ。

 

 でも……デートのつもりで来ていたなんて、言われるまで全然わかってなかった。

 

 ……お洒落してるように見えたならそうでしかないだろ、俺の馬鹿。

 

「それで、連れ出されちゃったわけだけど。どうするのかな?」

 

 あるえが話題を変えようと聞いてくる。

 

「あ、うん……んー、取り敢えずお昼時だし。喫茶店か定食屋にお昼食べに行く……?」

 

 あのまま家にいるのが躊躇われて出てきただけだから、あまり考えてなかった。

 

「じゃあ喫茶店で。高いけど、今の時間定食屋よりは混んでないだろうしね」

 

 食事に誘うので今は精一杯だった。

 

 

 

 あるえの読み通り、今の時間の喫茶店は定食屋よりも店内の客入りは疎らで、混んでいる気配はなかった。机の淵に龍の意匠が彫り込まれたテーブル席の一つを陣取り、料理を注文する。

 

 ……デートだとは思ってなかったから、俺としては家で一日過ごすつもりだった。あるえも休みの日は書きたいものがあるだろうし、俺もあるえの書いた小説を読みたかったので駄弁りながら各々好きなことをしてればいいと思っていた。

 

 それでお互い暇になったならSHOUGIをやればいいと思っていた。ゆんゆんに負け越しているとはいえ、めぐみんと互角の戦いを繰り広げるぐらいには腕前の自信がある。男子クラスじゃ負け知らずだ。

 

 でも──それも全て母さんが気がかりじゃなければ。

 

 あの時やってきた母さんは、家にゆんゆん以外の女の子を招いてることについて、果たしてどう思っていたのだろうか。昨日は眠いからと安請け合いして、今日あるえを迎えたが、もっと気を利かせるべきだったのではないか。

 

 先程はあるえの誘惑を振り払うので余裕なかったけど、いざ避けていたことに直面すると考えざるを得ない。

 

「……なあ、あるえ。やっぱ聞くけどさ、うちの母さんなんか変じゃなかった? こう、怒ってた、じゃない。逆に怒っていなかったというか……」

 

 不安で堪らず、つい、料理が届いてから横に移動してきたあるえに振ってしまった。

 

「大丈夫、だとは思うけどね。私も何か言われるのを少し覚悟してたんだけど。予想よりもあっさりしてて拍子抜けしちゃったよ」

 

「それなんだよなぁ……前、ウチの親そういうことに厳しいっていうのは話したっけ」

 

「……うん。はぐりんのお義母様はお義父上への愛情が深い話だよね。必ず夜には帰ってくるようにさせてるとか」

 

「あっさりしすぎてると思うんだよ。……もしかすると事前に知ってたとか……」

 

「……君を共有する話を持ち出したのは私だよ。私からはなんとも言えないんだけど」

 

 それは、そうなんだけど。

 

『溶岩竜の吐息風カラシスパゲティ』を絡めたフォークを手にしたまま考え込む。

 

 今日この後夜の帳が落ちた時、母さんに聞かれてなんと言うべきか。

 

 答えは出ている。でもそれで母さんが納得するかは別だ。

 

「ごめんね、はぐりん。私のわがままで……」

 

「うん? 何が?」

 

 黙っているとあるえもスプーンを『暗黒神の加護を受けしシチュー』の皿に浸けたまま言う。

 

「いや、だから……君が困ってるのは、私が君と一緒に居たいから……今の関係になることを持ち出したからで」

 

 なるほど。それでそんな事を。

 

「それは違うよ、あるえ。確かにあるえが言い出したことかもしれないけどさ。……ゆんゆんが良いと言ったからって、それを言い訳にするつもりはないんだ。今あるえを好きなのは俺だから」

 

「…………もう。やっぱり君の所為だからね。はぐりんが私を口説くのが悪いよ」

 

 そう言って照れるのを隠すようにシチューを口に運ぶ──あるえが落ち込むぐらいなら、それでいい。

 

 彼女に相談する事じゃなかった。二人のことで俺が困るのは全部俺の責任だから。めぐみんに言われたように優柔不断で、それでいて強欲な俺の所為。

 

 フォークに絡めたスパゲティを口に頬張ると、カラシが鼻にツンときて涙目になった。

 

 

 

 ▽

 

 

 

「ごめんね。……でも、あるえだけずるいじゃない。お休みの日にはぐりんの家に行くなんて、私聞いてない」

 

 ゆんゆんが少し恨みがましく言う。

 

「だって昨日帰ってる時に決まったんだもの。ゆんゆんに伝えようにも手段がないからね。それに、ゆんゆんは何度も行ってるだろうけど、私だってはぐりんの家に行ってみたかったんだ」

 

「うう……それは、そうかもだけど…………」

 

 開き直って言うあるえに、ゆんゆんは納得しかねる様子で俯く。

 

「なあ、二人とも、こんなにくっつかなくても……」

 

「ゆんゆんが離れたらね」

 

「……あるえが離れたら」

 

 肩と肩が密着するほど椅子を寄せてきている二人に助けを求めてめぐみんに顔を向けると。

 

 二人に挟まれた俺の向かいに座るめぐみんはそしらぬ顔を。

 

 そして、その隣のぶっころりーは血涙でも流しそうな顔で俺を見て居た。

 

 正直言って滅茶苦茶気まずい! 

 

 

 

 ──時は少し遡り、食事を終えて、次はどこへ、何しに行こうかと相談しようかと思っていた時、新たに喫茶店への来訪者が現れた。

 

「……はぐりん? あるえ?」

 

「ゆんゆん? それから……」

 

「デートとは良いご身分ですね、はぐりん。それと、こんにちはです、あるえ」

 

 めぐみんにゆんゆんだった。

 

「やあめぐみん、こんにちは。そうだよ、デート中なんだ。あまり邪魔をしないでくれると嬉しいな」

 

「で、でーと……」

 

 そう言って隣に座るあるえは腕を組んでくる。ゆんゆんが羨ましそうにこっちを見ている。俺は肘の柔っこい感触に硬直する。

 

「……ゆんゆん、そこへ座りましょう。盛大に邪魔してやりましょう」

 

「ええ!? ……あの、いいの?」

 

 目の据わっためぐみんの発言を受けて、ゆんゆんが伏せた視線を上げながら聞いてくる。

 

「あるえ……その」

 

「む……。……いいよ、座っても。本当はデートって訳じゃなかったみたいだし」

 

「それはごめんって。今度埋め合わせはするから。あと色々不味いから離してくれると」

 

「嫌」

 

 残念そうな口ぶりであるえからも了解を得たゆんゆんは、テーブル席の奥側。隣のテーブルから空いてる席を持ってきて、俺の隣に座った。

 

 頑なにあるえが俺から離れないのを見て、ゆんゆんも椅子ごと身体を寄せてきた。

 

 ゆんゆんの目の前の空いてた席にめぐみんが座ると、もう一人来訪者が。

 

「二人とも何処へ……あ、はぐりん……」

 

「昨日ウチの母さんの裸を見かけて氷漬けにされてたぶっころりー!」

 

 俺の顔を見て昨日氷漬けにされたのを思い出したのか、震え始めたぶっころりーに立ち上がって追い討ちをかける。ついでにあるえの拘束から逃れる。

 

「ちょ……あ、あの別に故意に見ようとした訳じゃ……! あの、女の子たちからの視線が痛いんだけど! 誤解を招くようなことを言わないでくれ、はぐりん! 見れてない! や、見てないから!」

 

 その口ぶりからしてちょっと見たかったのか、めぐみんとゆんゆんからのニートへ注がれる視線は変わりなかった。

 

 

 

 ……あるえとぶっころりーがお互い名乗りを済ませ、ぶっころりーが席に着き──そして時は今に戻ると。

 

 俺の訴えは結局聞き入れてもらえず、拘束を解いたが少し拗ねているあるえと落ち込んでいるゆんゆんは俺をサンドイッチにしたまま。

 

「ぶ、ぶっころりーは二人にその、昨日言ってた相談をしにきたんだよな?」

 

 気まずさを誤魔化すためにぶっころりーに話を振る。

 

「べ、別に羨ましくなんかないんだからね!」

 

 話題転換失敗。ニートの間髪入れないツンデレ染みた返答に会話が途切れる。

 

 そんな中救世主が。

 

「…………はあ。時間が勿体ないです。さっさと用事を済ませてしまいましょう。お腹も減りました。ゆんゆん、メニューをとって下さい。ここのニートに奢らせます。あと、私が嗾しかけたとはいえ、いい加減二人とも離れたらどうですか。ぶっころりーに見られてたのが発覚したからと白昼堂々二人してくっつくのはまずいと思いますよ」

 

「……うう、そう、よね。……はい、めぐみん。私もカラシスパゲティを」

 

「やっぱり俺に奢らせるんだね……」

 

「あ、払います! 私の分は! ……えっと、それで何ですか、私たちへの相談っていうのは」

 

 破壊神の生まれ変わりを自称する割に、めぐみんは面倒見がいい。今度うちに来た時は楽しみにしているといい。

 

 めぐみんに言われてメニューを渡したゆんゆんがくっつけていた席をずらして離し、あるえもそれに倣って離れてくれた。

 

「『いたいけな女の子たちに聞きたいことがあるんだ……はあ……はあ……』と、鼻息荒く聞いてくる程のことですからね。余程のことなのでしょう」

 

「だから俺そんな風には言ってないよね!? ……わ、わかったよ。朝の件は俺が悪かったから。ゆんゆんの分も奢るから、許してくれよ」

 

 何やったんだろうか。気になる。

 

 財布の中を見て肩を落としたぶっころりーは。

 

「……それで。今日はすまないね、二人に集まってもらったのは他でもない。昨日はぐりんにも相談したんだけど、実は俺……。好きな人が出来たんだ」

 

「ええっ!?」

 

「ニートのくせにですか!?」

 

「ニートは関係ないだろ! ニートだって飯も食えば眠りもするし、恋だってするさ! ……その、あるえは何を書いてるんだい」

 

 抗議をするぶっころりーを他所にメモ帳を取り出し、ペンを走らせるあるえ。

 

「……二人の時間に水を差されちゃった訳だし、その分は取材させてもらおうかなってね。それにニートが主人公の話も面白そうだし」

 

「いや、あの実は俺はニートって訳じゃなくてだね。里の靴屋なんて仕事に収まる器の男じゃないからで……」

 

「なるほど。勉強になるね。ニートの言い訳の仕方は初めて知ったよ」

 

「ほぼほぼ初対面なのにイジる事に遠慮がなくてびっくりだよ……」

 

 あるえは「ああ、私のことは放っておいてくれていいから」と言ってメモ帳に目を落としたまま、文字を綴る。

 

 パフェが届き、スプーンを手に取っためぐみんが。

 

「まさかぶっころりーの恋バナまで聞く日が来ようとは……私の周りにはどうして色ボケが多いのでしょうか。それでその相手というのは? 知っている人ですか? ……それとも、私たちのうちのどちらかなんてことは……」

 

「色ボケって……あ、いや! こ、困ります! 私が好きなのははぐりんなので! ごめんなさい!」

 

 色ボケというのが誰のことか追求したいが、それ以上に聞き捨てならないことが聞こえた。

 

「君たちには告白するつもりなんて更々ないからフラないでくれゆんゆん、悲しくなる。大体俺、ロリコンじゃな……あ、こら! やめ、止めろよめぐみん! 悪かったから、俺のコーヒーにタバスコを入れるのは止めてくれ! 何で、はぐりんはこっそり塩を入れようとしてるんだよ」

 

 ……なんか腹立ったから。

 

「……ふう。君たち本当に似てて本当に従兄妹同士なのかと疑う時があるよ。……それで、その。俺の好きな人っていうのは……」

 

 

 

 ▽

 

 

 

 ──当たり前かもしれないが、魔力の豊富な紅魔族は、魔法関連の仕事に就くことが多い。

 

 中には陶芸家や画家なんかをやっている大人も居るが、ゴーレムにさせたり、魔道具にさせたりと、普通にやれば持て余す魔力を態々利用していたりする。

 

 魔力を一切使わない仕事をする人たちはごく僅かだ。隣にいる作家志望も将来的にはそのうちの一人になるだろう。

 

 ぶっころりーの好きな人。うちの母さんから譲り受け、『紅魔族随一の美人』を継承したそけっとだ。

 

 喫茶店を出て、今はその占い屋を営んでいる彼女の店に俺たち五人は向かっていた。

 

「そういえば、どうしてはぐりんのお義母さまは『美人』を名乗らなくなったんだい? 昔代替わりしたとか聞いたきりでよく知らないんだ」

 

「それが俺もよく知らないんだよな。……多分美人を謳っていたら、言い寄られて困るから、とかだと思うけど。昨日もどっかのニートに裸見られかけて凍らしてたし」

 

 前を歩くぶっころりーがくしゃみをした。昨日のアレで風邪でも引いたのだろうか。

 

「なるほど……お義父さまは愛されてるんだね」

 

「…………息子としてはそういう話をするのはちょっと恥ずいんだけどな」

 

 あるえとそんな話をしていると、横で聞いていたゆんゆんが。

 

「でも羨ましいよね。昔なんなんさんを外で見かけた時、はぐりんのお父さんと腕組んで歩いてて。仲良さそうで……その、私もああなりたいなぁって思うもの。……どうしたの、はぐりん顔隠して」

 

 遠慮無しに会話に混ざってきてそう言う。

 

「……ゆんゆんはたまに大胆なこと言うから油断ならない」

 

「ええ!? ……あ」

 

 俺の指摘に顔が赤くなるゆんゆん。誰と、とは明言してなかったが此処には頭の良い紅魔族しかいないから言ってるようなものだ。

 

「ゆんゆん、私に嫉妬させたいのなら大成功だよ。嫉妬のあまりこの後私がはぐりんをグチャグチャにしてもいいならその調子で話せばいい」

 

 赤くなったゆんゆんを目を紅くしたあるえが睨む。

 

「べ別にそんなつもりで言ったんじゃないからね! って、グチャグチャって何!? なんかえっちぃんだけど! はぐりんに何するつもりよ!」

 

「おや、グチャグチャって聞いてエッチなこと想像するゆんゆんも相当卑猥だと思うけどね」

 

「!?」

 

 きい、と睨み合う二人。

 

 間に挟まれた俺は何されるのか怖くて前屈みになりそうだ。

 

「さ、最近の女の子たちは発達してるなぁ……お、着いたぞ」

 

「おい、何で一瞬憐れむように私を見たか聞こうじゃないか」

 

 横を歩いていためぐみんの追及を無視して──そそくさと近くにあった茂みで身を隠すぶっころりー。ぶっころりーが隠れたのに釣られて、俺たち四人も茂みに隠れる。

 

 同意見ではあるけど、めぐみんはこれからだと思うのでそんな目で見ないでやってほしい。

 

「相変わらず美人だよなぁ、そけっとは…………」

 

 箒で掃き掃除をしている想い人を前にして、感嘆の声を漏らしたぶっころりー。

 

「此処まで来といてなんですが、やはり今日のところは私たちが遊んであげますから、やめませんか? 片や紅魔族随一の美人で、片や何の取り柄も変哲もない、親の仕事を継ぐのも嫌がる将来性のないニートですよ」

 

「お付き合いしたいなら、せめてお仕事に就いてたほうが……」

 

 そけっとの美人ぶりに当てられたのか、めぐみんとゆんゆんに諭される。

 

「同じように、昨日はぐりんにもアドバイスされたよ。でもニートだって夢は持って良いはずだ! もしかしたらダメ男が好きな変わり者かもしれないだろ? 現に──」

 

「現に?」

 

 不意に、黙っていたあるえがぶっころりーに聞き返す。

 

「いや、なんでもない。ともかく聞いてみないことには、分からないじゃないか!」

 

 賢明な判断だ。『現に此処に二人も』なんて口にしていたら、俺の手によって危うくニートの氷像が出来上がるところだった。俺を馬鹿にするのはいいけど、二人のことを悪く言われたら我慢できるかわからない。

 

 ──こんな話をしている間にそけっとは掃き掃除を終えて、店の中へ入っていってしまった。

 

「自分をダメ男と自覚しているのは好感が持てますね。やるだけやってみましょうか」

 

 さっき聞いたが、ぶっころりーはめぐみんとゆんゆんに、相談に乗ってもらうだけではなく、そけっとの好きな男性のタイプも聞いて欲しかったようだ。

 

 ちなみに俺が聞きに行くのは「嫉妬しそうだから無理」と言われた。前は無意識だったが。今ならその気持ちはよくわかる。

 

「でもどうするの、めぐみん? 正直、私はぶっころりーさん自身がそけっとさんに話を聞きに行くべきだと思うんだけど。その方が話も膨らむだろうし」

 

「ニートの俺にそんな度胸と社交性があるとでも? あったらニートなんてやってないよ」

 

 偉そうに言えることじゃないので胸張って言わないでほしい。

 

「やっぱり無理なんじゃ……」

 

「ゆんゆん待って下さい。今考えてますから。そうですね……」

 

 顎に拳を当て知恵を絞りだしているめぐみん。

 

「うーん……あ! そうです。そけっとは腕の良い占い屋。ぶっころりーの未来を占ってもらうのです! 未来の恋人を!」

 

「なるほど。……占いにそけっとが映れば良し。でも違う人が映ったなら脈なしということだね。流石は『紅魔族随一の天才』だね。どうしようもない真実を突きつける訳だ」

 

「ちょっとあるえ、別にそんな言い方しなくてもいいじゃない。私は良い考えだと思いますよ……? もしそけっとさんが映ったなら、そのままお付き合い出来る可能性があるんですし……それに違う人が映ったならそれはそれで……」

 

 女子三人の言葉に腕を組んで思案げにうなづいていたぶっころりーに俺は。

 

「あるえとゆんゆんの言うことはもっともだけど。仮にそけっとが映っても、違う人が映ってもだ。俺たちは神も悪魔も恐れぬ紅魔族。気に入らない運命ぐらい軽く覆して、ブチ壊してしまえばいいだけだよ。今のぶっころりーの本気具合が試されてる、ぐらいの気持ちで占って貰えばいいんじゃないか?」

 

 それを聞いたぶっころりーは顔を上げて。

 

「君たちは占いをしてもらえる前提で話してるけど、ニートにそんな金あるとでも? ニート舐めんな! あったら毎日通い詰めてるさ!」

 

「帰りましょう」

 

「帰ろうか」

 

「わわ! 待って、待ってくれって! 俺だって良い考えだと思ってるけど現実問題お金が足らないんだよお!」

 

 ふざけたつもりでも、逆ギレされて帰ろうとするめぐみんと俺に慌てて謝るぶっころりー。

 

 大の大人がこうやって子供二人の服に縋っているのを見ると流石に足を止めざるを得なかった。

 

「でも、そけっとさん店の中に入っちゃったし、好きな男性のタイプを聞くにしても、いきなり訪ねてそんなこと聞くのはどうかと思うんだけど」

 

「初対面に近いんだし、ゆんゆんには無理……とは言わないでも難しいだろうね」

 

「私には無理って思ってるでしょあるえ」

 

「思ってない。で、一体どうするんだい?」

 

 ごめん、ゆんゆん。悪いけど、俺も含めて多分この場にいる全員ゆんゆんにはできないと思ってる。

 

 ぶっころりーは再び腕を組み真面目な顔を見せて。

 

「仕方ない。此処は一つ、占い代を工面しようか」

 

 どうせ暇なんだからそれぐらい稼いで貯めとけ、と言いそうになったがやる気になってるところに水を差すわけにもいかないのでやめといた。

 

 

 

 

意識調査です。投稿時間は何時ごろが良いですか?

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