はぐりんくえすと   作:楯樰

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3 友達と昼食と

 お昼休みはクラスメイトと飯食って、遊んで。たまにあるえがやってきて、飯食って、休みの間の話や、新作小説の批評なんかをして。

 

 放課後は結構な頻度でゆんゆんに付き合って遊んで。

 

 妹が生まれためぐみんは、暫く世話にかかりきりになっていたが、今では手を繋いで一緒に晩ご飯を食べにやってきたり。

 

 もう従妹のこめっこちゃんも4歳。姉に負けず劣らず利発なあの子は一人でも生きていける程にたくましく成長している。

 

 お姉ちゃんになっためぐみんは順調に姉馬鹿になっているようだが、昆虫食を教えようとしていたのは流石に止めた。

 

 どんな環境でも生きていけるように、という姉心なんだろうけど流石に見ていて辛い。別に昆虫食が悪いとは言わないけど。

 

 ──……と、まあ。他にも色々とありはしたけど、学校に通うようになって、それくらいの月日が経った。

 

 めぐみんや同い年の他の学校の友人たち、ちょっとませてきたと言われるようになった俺も、同じように。誰もが無事欠けることなく12歳になり。

 

 いよいよ魔法習得のための授業も本格化。

 

 ──学校ではスキルアップポーションが配られるようになった。

 

 

 

 ▽

 

 

 

「……よし、今日も全員いるな。昨日のテストの結果から発表するぞー。一位、はぐりん。二位、きくもと。三位、ふじもん。そして、四位へぶめるろー。はぐりん以外の三人は前へ出てこい」

 

「「はーい」」

 

 きくもと、ふじもんが先生に呼ばれて前に出ていく。

 

 隣の席の四位のへぶめるろーは、

 

「すまんな、はぐりん」

 

「いいっていいって。いつものことだから」

 

 それに別にスキルアップポーションが欲しいわけではないから気にしてない。

 

 ……というのはちょっとだけ嘘だ。

 

 こうして学校では成績上位者に渡されてるけど、本来は非常に高額なアイテム。一本でちょっとした家を建てるくらいは出来ちゃうぐらいに高い。

 

 殆んどの冒険者は馬小屋暮らしするほどで、お金に余裕ができることは稀だ。それこそ駆け出し冒険者は大概がお金のやり繰りで困窮する。冒険者の道を諦める最たる理由の一つ、なんだとか。

 

 ……現金な話。お金に変えられるのなら、手元に一本くらい持っておきたいのが本音だ。

 

 親が作っているからといって、なんのデメリットもなくスキルポイントを得られるスキルアップポーションは、こんなポンと渡されるようなものじゃない。

 

 ちゃぷちゃぷと、ご機嫌なことを隠せずにポーションを揺らしながら帰ってきたへぶめるろーは、席に座って早速、栓を開けて飲み干した。

 

「ふぅ。……なあ、この調子ではぐりんは卒業できそうなのか? やっぱり、おかしいと思うんだ。なんだったら俺たちは現体制への反逆も」

 

「大丈夫だよ。週末のレベリングで結構あるからな」

 

 紅魔族的言い回しで抗議することだけど。ゆんゆんが聞いたら本気にしてしまいそうだ。

 

「……まあ、それならいいんだけどさ」

 

「うん、ありがとう。気持ちだけ貰っとくよ」

 

「じゃあお気持ちだけ」

 

「空の瓶を渡すんじゃない!」

 

 突き返してけらけらと二人で笑う。

 

 ──初期ポイントは各職業の有用なスキル獲得に使った。プリーストの《回復魔法》やウィザードの《初級魔法》。あとはクルセイダーなどが取得できる《状態異常耐性》各種。《物理耐性》、《魔法耐性》などの守りのスキル。……あとは《宴会芸》スキルなんかも。ネタスキルじゃないかと思っていたけどこれが意外と馬鹿にならない効果を持っていたりして。

 

 と、色々と先達(おやじ)に教えてもらい、初期スキルポイントや稼いだポイントから、必要最低限のスキルを獲得していって今のスキルポイントは36。

 

 ……スキルアップポーションさえ貰えていれば──《上級魔法》を取得してとっくに卒業できていてもおかしくなかった。

 

 

 

 一時間目の授業が終わって休憩時間。次の授業は身体測定。今回は先に女子クラスがやって、男子クラスが後からだそうだ。

 

 紅魔族の成長は早い。それは『紅魔族随一の発育』と自ら公言するあるえや、ゆんゆんを外の人達と比べるとよくわかる。12歳はあんなに発育してない。どこがとは言わないけど。

 

 ……友人をいやらしい目で見るつもりは無いんだけどなあ。どうしても目が行ってしまって……親父の血だろうか。母さんでかいし。

 

 その点めぐみんはちっとも成長していない。安心安全のめぐみんだ。

 

『やめてめぐみん! もげちゃう! もげちゃうからあ!』

 

 廊下から聞こえてきたゆんゆんの声にちょっと吹き出しかけた。良くないことを考えていたせいかもしれない。

 

 というか、朝から早々やめてほしい。男子の殆どが身悶えしだした。

 

 

 

 保健室へ移動して順番に計ってもらう。

 

「……うーん。はぐりんはまた伸びたわね。伸び率で言えば一番じゃないかしら。つぎ、へぶめるろーは……」

 

 ガッツポーズ。もうチビだチビだと言わせない!

 

 保険の先生の前から退くと、きくもとが絡んでくる。

 

「ちびはぐりん。どうした伸びてたのか? ん?」

 

「伸びてるよ! もうチビチビ言うんじゃない! そう言うきくもとはどうなんだ! もう成長止まったんじゃないですかぁ!?」

 

「はあ? 視線の高さが前の時と全然っ変わらないんだが?」

 

「ぶっころ!」

 

 きくもとの挑発に我慢ならずに襲い掛かる。ステータスは俺の方が上だっつーの!

 

「あ、ちょ、ちょっと! こらーっ! やめなさい! どうして貴方といいめぐみんといいそんなにケンカっ早いの!」

 

 苦戦したが、なんとか負かした。

 

 ──……ちょっとゴタついた二時間目の授業も終わった。

 

 

 

 ▽

 

 

 

 午前中の授業が終わり、教材を片付け。お昼休みが始まったので教室から廊下に出ると──

 

「は、はぐりん……」

 

「っ!? 吃驚した、なんだゆんゆんか。おどかすなよー」

 

 ドアの向こう側に隠れていたゆんゆんに声を掛けられた。

 

「ご、ごめんね! 別に驚かせるつもりはなくて、ほら今日はこんなにも天気がいいじゃない? だからその、せっかくだからお昼を一緒にどうかなって……」

 

「まあ、それは別に良いけど。ゆんゆんは外でお昼食べたいの?」

 

「う、うん! 天気の良い日に誰かと一緒にご飯をするのに憧れてて……どうしてそんな呆れた顔してるの?」

 

 今までにも機会なら幾らでもあっただろうに。……おかしいなあ。出会ってからそれなりになるのに、どうしてこんなに引っ込み思案なのだろうか。

 

「なんでもない。弁当取ってくるよ。あ、他に人を誘ってもいいよな」

 

「……え?」

 

 教室の中にいったん戻って弁当を取るついでに隣の席の奴を誘う。

 

「へぶめるろー、昼飯ゆんゆんと一緒に外で食わないかー?」

 

「はあ!? ちょ、お前はなあ! ……はあ。俺はふじもんと食うから!」

 

「ふじもんは?」

 

「うっ、我が身をもってしても彼の陽光の下に出ること能わず!! 行け! 我に構わず!」

 

 フラれてしまった。……まあいいか。

 

「ごめん。人数多い方が良いと思ったんだけど」

 

「……え、あ、ううん、別にいいの! その、ほら! よく知らない人と一緒だと私も、遠慮しちゃうから……」

 

「そ、そっか……」

 

 違うクラスとはいえ、何年も一緒の学校に通ってるんだから知らない人って呼ばないであげて。

 

 話が聞こえていたであろう教室の中を覗いてみると、目に見えて二人は落ち込んでた。

 

「ははは……。……じゃ、二人だけだけど、行こっか?」

 

「っ! うん……!」

 

 ゆんゆんがはにかむ。

 

 その後ろへ見覚えのあるシルエットが近づいてきた。

 

「探しましたよ、ゆんゆん。勝負もせずに私にお弁当箱を押し付けて、こそこそと自分の分を持って何処かへ行ったと思ったら、こんなところで何をしているのです?」

 

「はぐりん、新作が出来たんだ。読んでもらいたいんだが……と、すまない。お取込み中だったかな?」

 

 お腹を鳴らすめぐみんと、手に何枚かの用紙と弁当箱をもったあるえだ。

 

「あるえにめぐみんも。あ、そうだ。ゆんゆんに外でごはん食べないかって誘われたんだけど、一緒にどう?」

 

「あ、あのちょっとはぐ「いいですね! 早速行きましょう!」め、めぐみん……」

 

「私も一緒に行くよ。……まあ、ゆんゆん良いじゃないか。ちょっとしたピクニック気分を味わうのなら、人数は多いに越したことは無いだろう? 友達同士、仲良くしようじゃないか」

 

「と、友達……え、あ、その、それは嬉しいけど! でもなんでか嬉しくない!」

 

 ゆんゆんがおかしなことを言いだした。あるえと顔を見合わせて首を傾げる。

 

 めぐみんは呆れたようだった。

 

「それよりも早く行って飯食おう? 休憩時間が少なくなるし」

 

 ぞろぞろと女子三人、男一人のパーティで校庭に向かう。

 

『……無性に爆発魔法取りたくなってきた……』

 

 教室の方からそんな声が聴こえた気がしたが。……気のせいだろう。

 

 後ろの方で三人が何か話している。

 

「仲が良いのは知っていましたが、やはり意外ですね。あるえがはぐりんと何かしているというのは」

 

「そうかな? 里の外の事を聞くなら一番身近だから、色々と取材だったり相談だったりさせてもらっているんだけどね」

 

「ほう、例えばどんなことを?」

 

「作家のなり方だとか、立ち振る舞いとか。あと、批評をしてもらったり、休みの時はどんなことをしているのか、とか聞いたりね」

 

「……それ、相談を逢う口実にしてませんか?」

 

「してない」

 

 きっぱりと言い切るあるえに、めぐみんは追求を諦めたようだ。

 

 するとゆんゆんが。

 

「……ねえめぐみん。どうして私を探しに来たの? お昼のお弁当なら今日は勝負も無しでいいから上げるって言ったじゃない」

 

「だからですよ。いつもなら私の周りをちょろちょろとして構ってほしそうにするゆんゆんがタダで恵んでくれるだなんて……絶対おかしいじゃないですか! なので気になって探してました」

 

「もう! そんなの理由があるに決まってるじゃないの! おとなしく食べてればよかったのに! というか、逆にアンタの方が『美味しそうですね、美味しそうですね』なんて言いながらポーションチラつかせて、いっつも私の周りをウロウロしてるんじゃないの!」

 

 どっちも本当の事を言ってそうなんだよなぁ。

 

「…………じゃあ聞きますが、その理由とは一体? まさか、どこかの誰かさんと二人きりでお昼を食べようとでも思っていたのですか? どうなんです!?」

 

「わー! わああああーっ!! ち、違うわよ! ……その、友達なんだから、別にお昼ぐらい一緒にしたって良いじゃない……って」

 

「そうだね。私も週に何回かははぐりんと昼休みを共有しているし。普通の事なんじゃないかな?」

 

「「……」」

 

「な、なんだいその目は。何か言いたいことでもあるのかな」

 

「かなり頻繁にどこかへ行っていると思えば、全部はぐりんの所でしたか……いえ、別に悪いとは言いませんよ。親戚の私は夕食に呼ばれたりするので食事を一緒にするのは普通のことだなと、改めて思っただけです」

 

「……私も別に、はぐりんと放課後遊んでるし……なんとも思ってないわよ」

 

 ……『女三人集まれば姦しい』なんて言葉を親父から教わったけど。

 

 けど、これは……、

 

「……黙って聞いてたけど、なんか恥ずかしくなってきたからやめてもらってもいい……?」

 

 別に他意はないんだろうけど! ないんだろうけどさあ! もうすっげー恥ずかしい!

 

 

 

 ▽

 

 

 

 フォークに刺さったおかずを突き出し、ゆんゆんは微動だにしない。

 

 ……食べろと?

 

「食べないのですか、なら私がもらいますね!」

 

「ああ!? め、めぐみんのはあるでしょ! どうして横から取ってくのよ!」

 

「おいひいでふ」

 

 ゆんゆんは、フォークまで食べそうな勢いで取っていっためぐみんの肩を揺らして抗議する。

 

「あの、ゆんゆん? 俺、流石に食べさせてもらうのは恥ずかしかったんだけど」

 

「え、あの。いつもしてるから……駄目だった……?」

 

 ゆんゆんが聞こえないほどの小さな声で呟いたのを《読唇術》スキルで拾った。……確かにいつもしてるけど。いつだったか、ゆんゆんがどうしてもしてみたいって言いだして。それから遊びに行ったら毎回何かしら食べさせられてる。照れるくらいならしなきゃいいのにと思うんだけど。

 

 ……にしてもなぁ――ゆんゆんに誘われて、昼食を外で食べることになったが……ちょっとこの状況には考えが至らなかったな。

 

 それぞれ対面で食事を一緒にしたことは何回もあるからいいか、と少し浅慮が過ぎた。

 

 そんな事を考えている俺を他所に、あるえが口を開く。

 

「女の子同士ならまだ、分からないでもないけどね。はぐりんは男の子じゃないか。恋人ならまだしもね。男女の友達なら、しないだろうね」

 

 ズバズバいうなあ。

 

「そ、そんなあ……! で、でも……」

 

「それはそうと、はぐりん。あーん」

 

 あるえがフォークに突き刺したおかずを差し出してきて、

 

「あーん……。……ん?」

 

「あ!」

 

 ……あれ? さっきゆんゆんにこういうことをするのはおかしいって、あるえが言ってなかったか?

 

「ねぇ、ちょっとあるえ!? なにあんたはぐりんにあーん……ってしてるのよ! おかしいでしょ! 私に『おかしいだろうね』なんてついさっき言ってきたばっかじゃないの!! それに……〜〜もう!」

 

「取材だよ、取材。ちょっと恋人たちの描写が難産でね」

 

「取材……? ねえ、取材って言っとけば何でも許されると思ってない……?」

 

 取材なら仕方ない。

 

「どうだった、美味しかったかいはぐりん?」

 

「まあ、美味しかったけど。……なあ、あるえ。前やらなかったか? 多分数えれるぐらいはしてると思うんだけど」

 

「ええ!?」

 

 ゆんゆんが叫んだ。

 

「こういうのは鮮度が大事でね。……ふふ。そうか美味しかったんだね。よかったよ。私も作った甲斐があったね」

 

「鮮度、鮮度ね。……そういうことにしとく」

 

 取材と言う割には嬉しそうな顔してるな、と思ったけど黙っておく。そんな顔をみてこっちが気恥ずかしくなる。

 

 ゆんゆんは──何だかもう涙目で、今にも怒りだしそうだ。

 

「……ちょっと意地悪しすぎたかな。ゆんゆん、第三者の視点から恋人がどんな風に食べさせ合うのか取材したいんだ。もう一回、はぐりんに食べてもらったらどうだい? はぐりん、いいよね?」

 

「え、あ、まあいいけど」

 

 今までのやりとりは少し不意をつかれて呆気にとられてしまったけど……

 

「……? ……!? そ、そういうことなら仕方ない、よね? えっと……じゃあ、はぐりん。あーん……」

 

 ゆんゆんと恋人のつもりで食べさせてもらう……って、いざそう言う場面を想像してやるとなると途端に緊張してしまう。というか恥ずかしいな!

 

 ゆんゆんも顔真っ赤で、余計に意識してしまう。

 

 と、思っていると。

 

「──ってちょっとめぐみん!? どうしてまた食べちゃうのよ!」

 

「おいひいでふ」

 

「あんたのお弁当私が作ったやつなんだから一緒なの! どうして邪魔ばっかりするの! これははぐりんにあげようとしてたものなのに……!」

 

「……んぐ。……いや、それがすごく美味しそうに思えたので。あと無性に邪魔してやりたくなりました。あるえも言いましたけど、友達同士がすることじゃないですよ? あなたとはぐりんは何なのですか? 友達なのでしょう?」

 

「ぅ……! そ、それは確かにそうだけど……でも」

 

「あと目の前でいちゃつくのを見るとイラつくのでやめてください」

 

「それ個人的理由じゃない! それに……いちゃつくって、そんなつもりは……」

 

「というか、はぐりんもはぐりんです。この状況に甘んじすぎではないですか? ハーレムのつもりですか?」

 

「……あんまり考えないようにしてた事を指摘しないでくれ。頼むから……」

 

 本当に今更だがこの自分が置かれている状況にすっごい恥ずかしくなってきた。

 

「なるほど、これがハーレムってやつなんだね……」

 

「あるえ、絶対今の状況をそのまま書くんじゃないぞ。読まずに破くからな」

 

「……善処するよ」

 

 ネタ帳に書き込んでいたあるえに釘を刺して、弁当の残りをかき込んだ。

 

 




約5年ほど経過しているので、色々と変化しました。
純朴ショタから小生意気な小僧にクラスチェンジです。

tips あるえの夢
臆すことなく己が野望を名乗りに加えた。
発育だけが取り柄じゃないと、少女は高らかに宣言した。

tips「善処する」
信用に値しない。

1話の長さは?

  • 3000字程度
  • 4000字程度
  • 5000字程度
  • 6000字程度
  • 7000字以上
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