はぐりんくえすと   作:楯樰

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9 疑惑と確認と

 出欠確認の後、担任が伝達と注意をして教室から出ていく。

 

 ……一昨日に引き続き里の中が慌ただしい。今日は昼まで自習だそうだ。時間はあるようなので、あるえと腰を据えて話をしておこう。本人はいいって言ったけど、まだ言うべきことを言ってない。朝あったときすればよかったのだろうけど、他に人もいて時間なくて出来なかった。

 

 ──めぐみんと話してから、俺は一つの決断をした。いや、目が覚めたというべきか。改めて考えると、浮かれていたんだと思う。いや、いまでもそう。経験がないから言い切れないけど、女の子二人に好意を寄せられることなんて、滅多とないこと思う。

 

 俺はあるえの『選ばなくてもいい』という誘惑に一度は納得してしまった。でも夜、話を終えてからゆんゆんの気持ちを優先しようと、考えを改めた。それは自分の本心、二人への好意に従った結果だ。でもそれは二人を比較したことに変わりない。選ばないは、優劣をつけないこと。けど俺はそれを定めてしまった。

 

 そして、その取捨選択をする上で自己分析をしていくうちに、ゆんゆんに対して独占欲が芽生えていたのに気がついた。醜い所有欲と似たそれ。俺のとは言わないまでも、ゆんゆんのことを誰にも渡したくない。……でもそれはゆんゆんに限ったことじゃなく、あるえに対しても。

 

 彼女が誰かと付き合うなんてことを想定したら少し、いや、かなり嫌だ。今だからこんなことを思っているのか、それとも前からだったのか。多分、以前から……なのかもしれない。

 

 とはいえ、ゆんゆんに対してもそうであるように、今はまだあるえと交際をするわけにはいかない。──その事を、伝えないといけない。

 

 まあ、随分と無茶なことを提案してきたのはあるえの方だ。人でなしなのはお互い様だろ。シェアするって。中々言えないだろ、普通。

 

「なあはぐりん。お前、大丈夫か?」

 

 物思いに耽って云々唸っているとへぶめるろーが話しかけて来た。

 

「……大丈夫か、って何が?」

 

「いや昨日混乱? 錯乱? してただろ、お前。帰って来てからもなーんか暗い顔してたし、聞くに聞けなくて。かと思えばきくもと達と喧嘩するし。今日はそうでもなさそうだから、悩んでることあるなら相談乗ろうかと思って」

 

「いや良いよ。相談したら俺が殺されるからな」

 

 お前らに。

 

「殺──ッ!? やはり組織がらみ、か」

 

「いや違うから。とにかく大丈夫だから。一応解決したし」

 

 話を聞いていたのか唐突に混ざって来たふじもん。組織ってのが三人からなるものを言うなら、あながち間違ってないけどな。

 

 きくもと達とは前から仲はあまりよくないけど、喧嘩の後、尾を引いている。聞き耳立ててるようだし、また喧嘩を吹っ掛けられたら堪らない。移動するか。

 

「図書室行ってくる」

 

「いってらー」

 

「存分に往け、我らの手の届かぬ所へと……!」

 

 二人に見送られて教室を出る。最近ふじもん日常会話ですら大仰過ぎるんだよなぁ……。お年頃だろうか。

 

 ──まず行くのは図書室。

 

 昨日めぐみんが『暴れん坊ロード 一巻』を読んでたから、続きを読みにいくだろう。で、ゆんゆんがそれについてく。そのゆんゆんと仲良くなろうと目論んでいるあるえも一緒に……いや、所詮憶測だしな。うーん。ま、そんなわけないか。居なかったら教室へ行こう。

 

 

 

「あ。あるえ」

 

 図書室に向かって廊下を歩いていると目的の人物とばったり出会った。

 

「やあはぐりん。男子クラスも図書室で自習してるよう言われたのかな?」

 

 も、ってことは女子クラスは図書室で自習してるよう言われた訳か。

 

 一応あるえとは会えたわけだし、図書室には行く用事はなくなったのか。

 

「んーまあ、そんなとこ。めぐみんとかは?」

 

「先に行ってるよ。私はメモを整理しておきたくてね。少し遅れてたんだ」

 

「……ふーん。ホント色んな所からネタ引っ張ってくるよな」

 

「ふふ、ありがとう」

 

 でもなあ、あるえが寝食を忘れるほど好きな小説作りに手がつけられないなんて。それほどまでに思い煩ったのが少し信じられない。それが俺のせいだということも。

 

「なあ。本気、なんだよな? 俺やゆんゆんとのこと」

 

「…………本気だよ。やろうと思えば、君をゆんゆんから奪うことは出来ると思う。それを考えないわけでもなかった。けど……でも。私は、傷つけたくない。君も……ゆんゆんのことも」

 

「そっかぁ……」

 

「……もう。口で言うのが恥ずかしいから小説に起こして渡したのに」

 

「なら、もうちょっと恥ずかしがる素振りを……いや、悪い。なんでもない」

 

 表情にはでてないけど、晒されてるほうの目は真っ赤だ。横から少し覗いてる耳先も。恥ずかしいのは事実だろう。昨日も同じこと言ってた気がするけど、あの時は俺も一杯いっぱいだったし、真偽の程を見通す余裕なんてなかったから。

 

 あるえの選択は俺やゆんゆんを傷つけないため。改めて、その選択が優しさ故のものだと知れてよかった。ゆんゆんに許してもらえたから、と大義名分はあるけど。心の底からあるえのことを好きになれそうだ。

 

 ──……疑惑が少しあった。何か別に企みがあるんじゃないかと。でも、それは杞憂で終わってよかった。不安だったんだ。

 

 飄々としているようだけど、あるえも人並みの感情がある。苦悩も。あの告白……ラブレターの内容を思い出して、少しこそばゆい。……本当にあのときは等身大の感情を感じて、震えた。

 

「それに、良い体験だと思うんだ」

 

「え、何が?」

 

「実際のハーレムってやつがどんなものか、知れるからね」

 

「あああ!? 極力目を背けてきたのに! お前の口からハーレムって言ったら駄目だろ!」

 

 ちょっと感心しかけた俺の気持ちを返せ!

 

 にやっと笑うあるえにそう思った。

 

 

 

「っとそうだ。あるえ。言っておきたいことがあるんだ」

 

「ん? 交際するのはダメって話かい?」

 

「……いやまあ、そうなんだけど」

 

 察しが良すぎるだろ。心の中で突っ込む。

 

「昨日、ゆんゆんと色々と話をしたんだよ。君について行くつもりらしいね。君さえ良ければ私も同行しようと思う。私も冒険者になろう。……それに、兼業作家のほうが何かと刺激を受けるだろうし、ね」

 

 理解が早い訳がわかった。それにしてもゆんゆんとどこまで話したんだろうか。……この際だから聞いておこうか。

 

「それは嬉しいけど。うん……話が早くて本当に助かる。あと、その……昨日ゆんゆんと他に何を話したかを聞いても良いか?」

 

 今朝、可愛い仕草に誤魔化されてしまったけど。一応、あるえがゆんゆんにどう言って納得させたのか知りたいところだ。……ゆんゆんが掌で踊らされている感はどうしても拭えないんだよなぁ。偏に、ちょろそうなのが原因なんだけど。

 

「何って……そう、だね。うーん。君の好きな所とか? 彼女は君の人柄もだけど、笑ってる顔が好きらしいよ。あとは君は何が好きで、何が嫌いかとか。彼女と遊んでいる時に何してるかとか。私も昼休憩時の君との蜜月について話したね。あ、そうだ。ゆんゆんも知らなかったようなんだけど、君の異常なスキル取得数のカラクリを聞かせて貰っても──」

 

 慌てて手で制してあるえが話すのを止める。

 

「ねえ待って? なんで俺の話ばっかりしてるわけ?」

 

「なんでって、恋バナしたからだけど」

 

「恋バナした!?」

 

 あ、あるえの口からそんな言葉が出てくるとは思わなかった……臆面もなく言う様は妙に堂々としてる。

 

「別に驚くような事じゃないと思うんだけどね。私たち二人は同じ人を好きになってしまったわけだろう? 共通の話題で話に花を咲かせるのは、なんらおかしいことじゃないと思うんだけど」

 

「俺は女子がわからない」

 

「君は男子だからね。というか、それぐらいしか二人で話せることがなかったんだ」

 

 それならわからないでもない、か? 基本俺と話している時は、あるえは聞き手に徹することが多いから。あるえの方から、自分のことを話すって滅多にない気がするし。

 

「本当にそれだけ、なんだよな?」

 

「それだけだよ。話題らしい話題がなくてね」

 

 話しかける側なら俺の話題に……なるかなあ……。

 

 でも、恥ずかしいな。聞いたのは余計だったかもしれない。

 

 

 

 ▽

 

 

 

「おや、誰か居るね」

 

 図書室の入り口が見えてきたあたりで、女子の制服を着た人影が二つ。それぞれ、ポニーテールとツインテールで髪を結んでいる。

 

 何やら小声で話をしているようだ。近づくにつれて、少しずつその内容が聞こえてくる。

 

「──ねぇやめとかない? ──絶対──だって」

 

「──……でも、そう──しないと」

 

 なにやら表情が暗い。目鼻立ちがはっきりしているのもあって余計に。《千里眼》を使うまでもなかった。

 

「どうしたんだ?」

 

「「っ!?!?」」

 

「いや、なにもそこまで驚かなくても。えっと確か……『ふにふら』と『どどんこ』だったっけ?」

 

 確か、ツインテールの方がふにふらで、ポニーテールのほうがどどんこ……だった気がする。

 

「うん、あってるよ。()()()()()()()()だね」

 

「さっきので合ってるから! って、なんであるえが答えるのよ!」

 

「めぐみんといい、私たちの名前ってそんなに覚えにくい!? ねぇ!?」

 

「冗談だよ。そんなカリカリしなくてもいいじゃないか。成長に悪いよ?」

 

 胸の下で腕を組んで見せるあるえ。いやあ、上に乗っかるって。どう見ても同い年には見えないんだよなぁ。

 

「あんたに言われたら一番納得するし腹立つから止めてくれる!?」

 

「まだ成長するし! 成長期だし!」

 

 見せつけるようにしているあるえはともかく、成長過程らしい二人のそれを見るの流石にあからさまなのでやめる。大丈夫だろう。めぐみんじゃないんだし。そんなに心配はいらないと思う。多分。

 

「で、何してたんだ? 入りもせずに入り口で。女子クラスは図書室で自習なんだろ?」

 

「い、いや……その」

 

 ふにふらが、言い淀む。

 

「……実は、その。ふにふらの弟が病気でね。それを治す薬を買うのにお金が掛かるからどうしようかって話を」

 

「ちょっと! どどんこ!」

 

「ああ、なるほど。高いもんな、病治療ポーション」

 

 紅魔の里では普通のポーションより高い傾向にある。王都の方では需要があるから結構安価にはなってる。その理由の一つが、材料の一つである稀少度の高いカモネギのネギを養殖場からまとめて卸してるから。野生のものよりも効能が落ちるとはいえ、他の材料の配合次第で賄えるからな。まあ、調合難度の問題で一般家庭で作ったり、常備できるほどではないけど。

 

 そんな病治療のポーションだけど、ここ紅魔の里では殆どの人が魔法やポーションを含む魔道具作成において精通している。需要の高い体力回復ポーションや魔力回復ポーションなどより高難度ではあるが、病気になっても材料の調達から調合や精製まで、機材さえあれば大体の人が出来るから、誰も買おうとは思わない。

 

 とはいえ、大人でも苦手な人はいる。一応里の薬屋には1本や2本ぐらいあったはずだ。それを買おうってことなんだろうけど。

 

「それで、二人はゆんゆんからお金を巻き上げる算段でもしてたってわけかい?」

 

 唐突にあるえが言う。

 

「おい、あるえ。そりゃ流石に二人に失礼だろ」

 

「いや、そうでもないみたいだけど」

 

 二人を見ると、どこか気まずそうにしている。あるえは、ほらね、と言わんばかりの表情で俺を見た。

 

「…………未遂とはいえ。クラスメイトにお金をタカるのはダメだと思うぞ、俺は」

 

「だから言ったじゃん! 流石にまずいって……!」

 

「うぅ……やっぱり、そうだよね……」

 

 まさに実行しようかという直前だったようだ。もしかしてあるえの当てずっぽうじゃなかったのか? 事前に何か話しているのをあるえは聞いたのかもしれない。

 

 けど、俺としては流石に知ってしまった以上看過はできない。あとで返せばいいやと思っているんだろうけど、確実に話がもつれる。……本人がきっぱり断れればいいんだろうけど、出来ないからな。人が良いゆんゆんにはそういうこと。

 

 頼られたら、全力でなんとかしてあげたいと思う。そんな子だから。

 

「どうして大人を頼らないんだよ。言ったら作ってくれると思うぞ? それに、最初っからゆんゆんにお金をタカるんじゃなくて、まずは相談すればいいじゃないか。魔法を覚えてない俺たちではできることは限られてるけど、それでも色々と方法はある」

 

「それは……ひっ」

 

「──っ、私が! 私が弟に治してあげるって言ったから! だからどどんこは悪くないの!」

 

 二人が慌てて言う。……どうして怯えてんだ?

 

「はぐりん、ちょっと感情押さえて。見たことがないくらい目が真っ赤だよ」

 

 あ、そういうことか。隠せてなかったようだ。

 

 ……外の人たちに感情昂ってるところ見られると怖がられるから、ある程度制御してるけど里の中では気が緩む。いったん目を瞑って深呼吸。ぐらぐらと煮え立っていた感情の高ぶりを鎮める。あるえに指摘されないと気づかないままだったかもしれない。

 

 努めて表情を柔らかくしながら二人に微笑むと、引きつった声で小さく悲鳴を漏らす。何故。

 

 ここまで怯えられてしまうのは、外で初めて感情昂らせたとき以来か。しょうがないのであるえに聞こうか。

 

「……なあ、女子クラスもポーション作成の授業はあるよな?」

 

「うん、あるね。それがどうかしたのかい?」

 

「お金が足りないなら、別に無理に買う必要はない。無いなら作ればいい。そうだろ? ……弟君は気の毒だと思うし、もし二人とも作れないなら紅魔族随一の職人の息子である俺が作る。どうだろうか?」

 

 紅魔族随一のポーション作りの名人の母さんから直々に教わってるんだ。スキルアップポーションなんかの最高難度のモノを除けば、職人としても食い扶持を稼げるぐらいにはなってると、太鼓判も押してもらってる。

 

 病治療ポーションなら簡単に作れる。

 

「そういうことなら……」

 

「うん……」

 

「よし。じゃあ、それで。代わりと言ったらなんだけど、二人に一つお願いしてもいいか?」

 

「か、体で払えとかなら無理……でも。うーん」

 

「ふ、ふにふら!?」

 

 あるえの視線が少し鋭くなった。

 

「いや、そんな無茶苦茶言わないって。そのだな。やろうとしてたことは許されない事だけど、未遂なわけじゃん? だからその……負い目なんか感じず、ゆんゆんと普通に接して上げて欲しいってだけ」

 

「はぐりん……それは」

 

 所謂きっかけになればいい。二人の罪悪感に付け込む形になるとは思うけど、付き合っていくうちに普通に仲良くなれると思う。

 

 ゆんゆんは良い子だ。それは、ふにふらとどどんこもきっと一緒だ。多分、普段はこんなこと考えはしない筈だから。

 

 二人は顔を見合わせて目を見開いた。

 

「そ、そんなんでいいなら……」

 

「わ、わかったわよ。それじゃあ私たちはこれで……ねえ、行こうよどどんこ」

 

「えっと、はぐりんだっけ。どうしてそんな風にゆんゆんのことを気に掛けてるの?」

 

「ちょっと! そんな込み入った話聞いてどうすんの!」

 

「だって気になるじゃん!!」

 

「そりゃそうだけど!」

 

「ははは……いや、いいよ。うーん、そうだな」

 

 どうして、か。……俺としてはどうしてそんなこと気にするんだって聞きたいけど。未だに本人が恥ずかしがって友達と認めないめぐみん、変な共有関係を結ぶことになったあるえ。ゆんゆんに友達がその二人しか居ないのは異様を通り越して異常だから。でもそう、聞いたら聞いたで、質問にちゃんと答えないのはどうしてだと邪推されかねない。

 

 かといって正直に言うわけにもいかないからなぁ。好きな人のうちの一人だなんて。

 

「まあ、俺にとって大切な存在だから、かな」

 

「ふ、ふーん。そう、なんだ」

 

「えっと……それじゃ、ありがとうね。行こ。どどんこ」

 

 素っ気ない反応を見せて二人は図書室の中に入っていく。

 

 ふと隣を見るとあるえが何か言いたそうな顔をしていた。視線が合う。

 

「なんだい?」

 

「……いや、なんでもない」

 

 言うべきことはある。あるえのことが好きだと。そして、ゆんゆんのことも好きなろくでなしで、他にもあるえは俺のことを沢山誤解してる。美化しすぎだと思うんだ。

 

 だけど、今はそれを……言うに、言えなかった。

 

 

 

 ▽

 

 

 

「ちょっとあんた、何それ? ちょーウケる! なになに、友達いないの?」

 

「と、友達は……いる、けど……」

 

「え? あ、いや、いないんでしょ? でなきゃ、そんな……。……『魚類とだって友達になれる』……? ね、ねえ。その本は止めときなさい。せめて哺乳類にしときなよ……」

 

 少し離れた席でゆんゆんが、妙なテンションのどどんことふにふらに絡まれてる。密かに俺と繰り返していた特訓は活かされていないようで、ゆんゆんはまともに返事が出来ていない。ちらちらとこちらに視線を寄越していた。

 

 けど俺は手助けしない。何も知らない体だ。だいぶ揺らいでるけど。

 

 ……告白されてから無性にゆんゆんが可愛くて仕方ない。無意識に惚気てるのかもしれない。

 

『ねえ流石にキツいんだけど!』

 

『ど、どうしよう。ちょっとこれは予想以上……』

 

 縮こまって恥ずかしがるゆんゆんを見て、あの二人は怖気づいているようだった。

 

 めぐみんが『暴れん坊ロード 二巻』を読みながら、偶に視線をゆんゆんへとやるめぐみん。

 

「正直驚いてます。ぼっちのゆんゆんにああして友達ができるとは……なんか様子がおかしいですが」

 

「私から見れば、めぐみんの方がぼっちって感じだと思うんだけど」

 

「うるさいですね……! あるえも大差ないでしょうに!」

 

「孤高の存在たる我に、友など要らない……孤高故に──って冗談だから。これからも良き友人で居ようじゃないか」

 

「それがいいです」

 

 察しの良さは相変わらずで、あるえがなんとか誤魔化してくれる。このまま話題を逸らそう。

 

「でも本当、お前らって友達居るの? ゆんゆんとめぐみんはベッタリだし、あるえは結構な頻度で昼休みに男子クラスに遊びに来てるけど」

 

「……」

 

 つい気になって口を挟んでしまった。紅魔族随一の天才は黙り込む。しまった、言い過ぎた。すまん。

 

「黙り込んでるめぐみんは置いといて、私には友達はいるよ? さきべりーとか……。天気の話するぐらいには仲は良いかな」

 

「いやそれ、社交辞令的な……や、悪かったって。二人ともそんな暗い顔すんなよ」

 

 二回目。ごめん、あるえ。一昨日はさきべりーと帰ったって言ってたし、嘘じゃないよな。本当に友達だもんな。本当に……?

 

 

 

 めぐみんが本を閉じた。読み終わった訳じゃなさそうだ。

 

「……あの、あるえ。我慢できないので聞いてしまいますけどその──……どうしてなのですか」

 

 躊躇いつつ、真剣な表情をしてめぐみんが言う。

 

 曖昧な問い。態とそんな言い方をしためぐみんの言いたいことは俺も、あるえも察しが付いた。

 

「……別に、隠すつもりはなかったけどね。人知れず知られているのは、いい気はしないよね」

 

「悪い。けどめぐみんには隠し事が昔から出来なくてさ。昨日問い詰められて全部話した」

 

「はーあ。君の正直な所は好きだけどさ……もう」

 

「いや、惚気ないでくださいよ!?」

 

 少し頬を染め、拗ねたような事を言うあるえにめぐみんはうんざりした顔になる。ホント、よくこうも堂々と言えるよなぁ。恥ずかしいったらありゃしない。それもめぐみんの前でよくやる。

 

「はぐりんにも言いましたけど、その、……実質ハーレムじゃないですか。あるえはいいんですか?」

 

 めぐみんが、配慮したのか小さな声で言う。

 

「いいんだよ。私が言い出したのは知ってるんだろう? 共有することも、それに伴って起こる問題も君なら察しがついてると思うけど。全部承知の上だよ。ゆんゆんにも、その辺はしっかりと話して賛同してもらってる」

 

「抜かりがないですよね、ホント。……正直こんな話をアナタとすることになるとは思いもしませんでしたよ」

 

「私もさ。それもこれもはぐりんのお陰かな」

 

「……はあ。こうも堂々とされると、なんだかあなた方の事で、頭を悩ませたのがバカらしくなりますね……」

 

 そうボヤくとめぐみんは再び、ぱらぱらと本を開き目当てのページを見つけて読書に戻る。

 

「──でも、良かったです。良い噂を聞かない二人ですけど、あの子もああして友人が出来そうで。騙されやすい子なので目が離せないと思いますが……あるえもあの子のこと、よろしくお願いしますね」

 

 読書をしながら言うめぐみんの言葉にはどことなく寂しさが滲んでた。

 

「うん。わかったよ……なんだか寝取られたみたいな反応するね。めぐみん」

 

「──!? ね、寝取られじゃない! 台無しですよ!? ねぇ、はぐりんこれ、ホントに大丈夫なんですか!? あるえ絶対良からぬこと考えてるでしょう!?」

 

 俺は冗談で言ったのはわかってるから安心してる。

 

「いや、だって君とゆんゆん普段百合百合しいからさ。つい、ね?」

 

「あああああああああ!?」

 

「い、痛いよ!? 本で人のことを殴らないでくれっ!!」

 

 ……ていうか、ずっと思ってたことだけど。

 

「やっぱりめぐみん、ゆんゆんにゲロ甘じゃん」

 

 もしくはツンデレ。

 

「こ、のっ……!」

 

 と、図書室で暴れるんじゃない! 暴れん坊ロードかお前は! ってぇ! こいつ本の角でッ――!?

 

 

 

 

 

 

 

 




一方のゆんゆんは羨望の眼差しで三人を見てた。

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