デレマスとのクロスオーバー『 基本はコメディ』   作:エビアボカドロックンロール

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単短編1 あかり「愛ゆえに人は苦しまねばならぬ!! 愛ゆえに人は悲しまねばならぬ」あきら「最近北斗の拳読みましたか?」

 

 

 

 ふわりとムスクの香りを感じる。

 武内さんが珍しく香水でもつけているのかと顔をあげるが、視界にはドアの隙間に消えていく誰かのポニーテールが見えるだけだった。

 

 すんすんともう一度嗅覚に集中してみるが空調の風に流されたのか先ほどの香りはもう感じることが出来なかったが、代わりにコーヒーの良い香りが二つの笑顔とともに届けられた。

 

「山形りんごをたべるんご♪」

 

「そろそろコーヒーブレイクはどうデスか、八兄ぃ」

 

「お前らか…」

 

 よほど集中して疲れていたのか霞がかかったようなぼんやりとした疲労を感じる。

 何はともあれお礼を言ってコーヒーを受け取るとシャーっと椅子を転がして隣に滑り込んできた二人が心配そうに俺の顔を覗き込んできた。

 

「…?体調でもわるいんご?」

 

「目が腐っているのはいつものことデスが今日はどこか違いますね――」

 

「ああ、実は…」

 

「――いつもは出会いがしらにセクハラしてくるのに…」

 

「やらいでか」

 

「八幡さんそれだとやらずにはいられないって意味んご」

 

 おっと本音が…

 法にぎり抵触しない範囲でのセクハラ、通称セクハラ定食は俺の数少ないライフワークのひとつ…なんてことは断じてない。

 

 なんてことは断じてない…のだが……

 

「な、なあ」

 

「弱気な八幡さん…じゅるり」

 

「あかりチャン?」

 

「夢見は俺を嫌っているのか…?」

 

「八兄ぃ?」

 

 説教するときには毎回その無駄にでかい胸から寸毫たりとも目を離さなかったりするがそれがよくなかったのだろうか。もしくはあのバナナか?バナナが悪いのか?

 女性は自分への視線に敏感だというのは聞いたことがある。それは翻って他人への視線はそれほど頓着していないということではないのか?ならば俺が夢見の胸を見ているのは夢見にしか気づかれていないはずなのでここに完全犯罪は成った。

 

「んー、大丈夫!きっとりあむちゃんには伝わってると思うんご!」

 

「…八兄ぃはりあむサンには特に厳しいデスからね。まあ、りあむサンもあれはあれで楽しんでると思いますよ #ツンデレ乙」

 

 椅子の上で膝を抱えて座り込む俺に両側から慰めの声がかけられる。

 なでなでよしよし。

 

 あと視線云々も大丈夫そうだな。

 

「――やっぱりそうだよな…いや、いつもはそんなこと欠片も思ったりしねえんだがなぜか今日だけは夢見が可愛くて思えてな、一言謝らねえと気が済まないとゆーか…」 

 

「ふーん?それよりどうしていきなりそんな妄言を吐いてるかの方が気になるんデスけど…」

 

「いつもあれだけ楽しそうにいじってたのは無理してたんご?――胸をガン見したり、やたらとバナナを食べさせたり」

 

 気付かれてたらしいっすわ

 あとやはりバナナは外聞が悪いようだな……よし、次からはアイスにしよう。

 作戦会議を脳内で行いながら無意識に言葉がこぼれること幾ばくか。俺が何かをしゃべるごとに2人の表情は曇っていき、いま現在、心配と警戒の割合が五分五分にまで変わってきていた。

 

「いやあれはあれでまごうことなき本心だ。ただ、今は可愛がりたい欲求を抑えられないんだ。どうして日ごろあんなにおもちゃにして、もとい厳しくしてしまったのか……」

 

「この人本心でセクハラしてるってカミングアウトしてるけど大丈夫んご?」

 

「……よく見たら眼もバキバキじゃないデスか」

 

 もはや警戒を通り越して哀れんだ視線、きゅんです。

 2人のママから「誰がママんご」ありったけの優しさを感じながら薄い胸板でも「死にたいんデスか?」バブみってのはこれほどまで濃厚に感じられるのだなーと感動していると、廊下に響き渡る品のない足音が聞こえてきた。

 

 近づく足音、胸に溢れる全能感、三分の一の純情な感情。

 

「ばばーん!りあむちゃんはあえて集合時間の3分前に出社するよー!!ハチサマー!!ほめてーー!!!」

 

「お!やっと来たな夢見、待ってたぞ!!それにしてもお前はえらいなー!2分前までに到着できるなんて!!3分ありゃカップラーメンはもちろん子供だって作ることができるからな!!ナイスおっぱい!!」

 

「ち、近いよッハチサマ!どうしたのさ!…今おっぱいって言った?」

 

「おっぱい?何かの聞き間違いだ!こんなに可愛くて素直で優しいお前にどうしてそんな言葉をかけられる!!えーと…そう!告解!お前のおっぱいについ告解してしまいそうになったと言いたかったんだ!」

 

「は、ハチサマ…… やっと分かってくれたんだね!これからはチヤホヤしてもらえる!!!あの鬼畜眼鏡のハチサマに!!」

 

 どろどろに溶ける思考は俺の意思を無視して思うも思わざるもまとめて言葉として溢れさせる。

 傍で見守る辻野と砂塚の視線がビシビシと後頭部に刺さるがそれすら気持ちがいい。三分の二のマゾな感情だ。笑顔がこぼれる。

 

「りあむさん心の中ではあんな呼び方してたんご……」

 

「あかりチャン?今の一連のやり取りで気になるのそこデスか?―――八兄ぃ………3分は早すぎデス………」

 

 3分…?いったいなんのこっちゃ?

 むしろ俺は……

 

「あかりちゃん!あきらちゃん!何か知ってるの!?」

 

「実は、さっき志希さんが八幡さんに香水をかけたんデスけど、そしたら今までりあむさんに厳しくしすぎたと嘆きだしたんデス」

 

「志希さん特性の“ダメな子ほどかわいい(マジでかわいい!!)”って香水らしいです。都会の技術はすごいんご!」

 

 2人は夢見に何かを説明しているが俺にはよく理解できない。

 肩をがっちり固定してキマッた目で褒め続ける俺に、やがて夢見はガタガタと震え始めた。

 嬉しくて震えてるんだよね?

 

「志希さん的には普段の態度からしてダメな子と思われてるから、それを利用して甘やかしてもらおうとたくらんでたらしいデスよ。ただ心の中で八兄ぃは志希さんのことをこれっぽちもダメとは思っていなかったみたいデスが……」

 

「複雑そうな表情だったんご…、作戦が失敗したのとはまた別のところで刺されたみたいな…にへらって感じの笑顔が可愛かった…」

 

「へぇ〜よく分かんないけどすごいんだね〜。……あ!ちょっと待ってよ!それじゃまるでぼくがダメダメみたいじゃんか!!」

 

 よく分らんがこれは夢見が責められているのか?

 たとえ世界中の人間、動物、魚、虫の全てが夢見を責めるのだとしても俺だけは味方だ。

 

「そんなことないぞ夢見!!お前の良さは俺を含めまだ世間も分かっていないだけなんだ!!すぐに伝わるし俺が代表して伝えるまである!」

 

「ハチサマ!なんだよもう、実はチョロいのかよ!いいんだよ、もっと甘やかしてくれても…?」

 

「大体30分で効果は切れるよ~」

 

「何言ってんだ?まあいいや。それよりお前また炎上しただろ、自粛中で家にいる時間が増えるのは分かるが頼むからもう少し大人しくしてくれよ」

 

「あれ!?ボーナスタイムもう終了!?嘘だよね!ハチサマはりあむちゃんのことすこすこのすこだよね!?ちょっと、ハチサマ!なんで無視するのさ!!」

 

「ん~本音が出やすくなる香水は失敗だったみたいだねー。もっと志希ちゃんのことかまってくれると思ったんだけどにゃー」

 

 

「……本当は八幡さんはりあむさんのことをダメな子って思っていないんご??」

 

「可愛くて素直で優しい言ってましたね」

 

「だいたいお前は――それに何度も言わせれば分かるんだ――しかもそのたびに俺が後始末してんだぞ――」

 

「うわーん!ハチサマの鬼畜眼鏡ーーー!!!」

 

「あっ!おい待て夢見!」

 

 

 

 

「歪んだ愛んご」

 

「そんなセリフ誰から教えられたんデスか…?」

 

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