デレマスとのクロスオーバー『 基本はコメディ』   作:エビアボカドロックンロール

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単短編ギルティ ちひろ「ふふーん!」武内P「いい笑顔です」

 

 

 

 どうしてこうなった…

 

 普段と比べて何倍も高く見える青空を見上げ思わず一人ごちる。今さら文句を言ったところで引き返せる状況ではなく、代替案も思い浮かばない。

 

 なんでも、来るはずだったエキストラグループがダブルブッキングとなってしまい、どうしたもんかと悩んでいた監督の目についてしまったらしい。指示が出されるや否や待ってましたとばかりに腕をまくるメイクさんや衣装さんに囲まれ、人生最初で最後のチャラ男スタイルに改造され、カメラの前に立たされてしまっていた。

 

 そんな今すぐにでもステイホームしたい俺の内心などには何の斟酌もなく、監督からゴーのジェスチャーが飛ぶ。……やるしかない。あいつらの仕事を俺のせいで台無しにするわけにはいかない。……逃げちゃ駄目だ、逃げちゃ駄目だ、逃げちゃ駄目だ、八幡行きまーす

 

 

 

「キキー!おまたせー!並んでくれててありがとギルティ―!」

 

 

――――あぁ、死にたい。新たな黒歴史です、ありがとうございます。

 

 

「全然オッケーギルティ―!みんな、こっちこっちー!」

 

 

 楽しそうですね、ちひろさん。

 大きく手を振りながらエキストラグループの先頭を歩く俺に呼びかける。

 事務所の近くで撮影だったこともあり、エキストラの中に見覚えのある顔がチラホラとある。当然そのまま映るわけにはいかないのでみんな思い思いに変装をしているのだが、……よりによってちひろさんはギャル、―――正直ありなんだよな~。

 

 

「あっ、あの姿は!」

 

 

 ばるるんと異次元の圧を伴い現れた及川が、いかにも憎たらしい表情を浮かべた俺とちひろさんをゆびさす。

 

 

「キキー!」

 

「現れたわね!ギルティ星人!」

 

「みんなちゃんと並んでるのに、横入はいけませんよーっ!」

 

 

 もはや原型が誰かも判別できないほどの変装を施しノリノリで横入するアイドル連中の前に、これまたノリノリでトランジスタグラマーな片桐さんが立ちはだかる。

 堀がまとまなこと言ってるのを見ると演技だと分かってても腹立つな。いや、普段から良い子であることに変わりはないんだが、注意されるとなんかこう…てか、なんでジト目なんだよ。かわいいな、くそう。

 

 

「そんないけない子は、私たちがお仕置きしちゃいますー!」

 

 

 及川のお仕置き?ふーん、えっちじゃん。

 

 

「いっくわよー!くらえ!正義のヒップアターック!」

 

「キキー!」

 

 

 台本ではフリだけのはずだったので油断していた俺は、片桐さんのヒップアタックを顔面でもろにくらい、巨大なマシュマロに包まれたような感触を仕方ないので脳に刻み付ける。正義のヒップアタック、ありがとうございます。

 

 最後のセリフをなんとか終え、幸せに浸り過ぎたからか、的確にアゴを打ち抜かれたからなのか、意識が朦朧とした俺の肩をちひろさんが支えながらなんとかフレームアウトしてようやく出番が終了した。痛ッ!誰だつねりやがったの!?

 

 

「不埒なギルティは許さない!」

 

「セクシーを以て悪を征する・・・わたしたち!」

 

「「「セクシーギルティ!」」」

 

 

 フレームアウトした後にふたたび出所不明の攻撃を受けようやく意識がはっきりとしたので、そろってセリフとポーズを決める3人に目をやる。

 このユニットでの初仕事にもかかわらず緊張や気負いはないようで不敵な笑みで“ばきゅんポーズ”を決めていた。

 

 正直あからさまに狙いの分かるユニットを組むことが、一部からはよくない印象を持たれるのではないかなどと警戒していた。だが仮に何かあってもこいつらならそんなことを気にせず自分たちの道を進んでくれると思う。

 これなら今世紀最大の赤っ恥をかいてまでチャラ男になった甲斐もあっただろう。終わりよければおけまる水産だ。

 

 

「“セクシーギルティの世直しギルティ!”いよいよスタート!」

 

「最後まで見てくれないとー!

 

「「「お仕置きしちゃうぞっ!」」」

 

 

------

 

 

 

「セクシーギルティの番組が放送されたが、すごい反響だったぞ。…良くも悪くも」

 

 

 予想していたことではあったが放送後は事務所ではPTAからの電話が鳴りやまず、モンペの対応をしてくれてたちひろさんは笑顔のはずなのに瘴気を纏い年少組から恐れられていた。今は武内さんがギャルメイクがギャップでとても良かったと褒めカウンセリングもとい、飲みの約束を週末にしたおかげで幾分回復をしたらしい。

 

 セクギルのメンバーも初めて聞くわけでもないのか、さもありなんといった感じである。…堀はさもありなんなんて言葉を知らいないと思うが。

 

 

「まったく失礼しちゃうわね!いったいあたしたちのどこが有害番組だって言うのよ!」

 

「ムムッ、それもさもありなん、と私は思いますが?」

 

「良くも悪くもって事は、良い方もあったんですよねぇ?」

 

「あ、あぁ、気にすることないぞ。良い意見の方が圧倒的に多かった。賛否両論なんて当たり前のことだ。むしろどちらかに偏るような事の方が異常と言えるまである。証拠に、見れば分かると思うがプロダクション始まって以来のプレゼントの量だ」

 

 

 堀のせいでかなり動揺してしまったが、それ以外の二人もそれほどへこんでいないようで一安心だ。こいつらなら大丈夫だとは思っていたが万が一ということもあるからな。

 

 だが本当のピンチはここからだ。主に俺の。いっそプレゼントなど無かったことにして捨ててしまおうと思ったくらいだ。

 

 

「ふーん?あたしたちの魅力で贈り物をしたくなる気持ちは分かるけど?」

 

「開けてみてもいいですかぁ~?」

 

「かまわないぞ、一応中身はすべてチェックして確認してある」

 

「ムムッ!フエラムネです!懐かしいですね!」

 

「私のは、沖縄のちんすこうですね~。修学旅行で行って以来なので嬉しいです♪」

 

 

 片桐さんのジト目を後頭部にガンガン感じるが俺には何のことか分からない。フエラムネもちんすこうもただのお菓子だし、美味しいじゃん。

 

 

「私はビールね…段ボールで送ってくるなんて見どころあるじゃない…」

 

「よかったですね!ははっ!うらやましいです!はははっ」

 

「ムムッ!ブランドのキーケースまで入ってました!これはなんて読むんですかね…?フェラ、ガモ??」

 

「わ~綺麗ですね~。万華鏡です♪」

 

「…日本酒、ね」

 

 

 顔面を5センチ前まで寄せて片桐さんは日本酒の瓶を天に掲げる。いい匂いしますね。あと、顔が怖いし近いですよ?

 

 

「最後はミニカーでした!お手紙が入ってますね?…これはフェラーリです。ユッコちゃんのフェラーリをサイキックで大きくしてください。…ムムッ!挑戦状ですね!」

 

「赤と白と緑の大きな布ですね~どこかの国旗でしょうか?えーと、オマーン国旗でこっちのCDはオマーン国歌だそうです」

 

 

 あっ、死んだわ。

 仕方ないじゃん、グレーゾーンっぽいし直接的ではないし…なんとなくムクムクといたずら心が湧いたんだよ。最終チェックの武内さんはこーゆーのに疎いからオッケーしちゃうんだよ。だから悪いのは武内さんだよね?

 

 

「どうしてあたしにはセクハラしないのよッ!?」

 

 

 片桐さんは謎の供述を叫ぶと、一升瓶を置き拳を握り締めた。そっちかよ。そしてそっちかよ。

 つい力が抜けそうになるが目の前に迫る腰の入った拳は止まってくれそうにない。

 

「ムムッ?まだ早苗さんの箱にはお酒が入ってるみたいですよ?」

 

「白くてドロドロですねぇ〜」

 

 間一髪で拳はこめかみを掠っていった。こういうのってピタリと止まるもんじゃないの?側頭部からプスプス聞こえるんですけど。

 

 

「これはマッコリね…。----八幡君はこのドロドロした白濁液をあたしに飲んで欲しいってことね?」

 

「や、どうぞ好きにしてください。片桐さんの物なので」

 

「なるほど、谷間に注いで直接すすりたいと」

 

 

 言うわけねえだろ。なんで逆セクハラされてんだよ。

 

 

「体温くらいの温度で飲むのが美味しいんですかぁ〜?」

 

「ぬる燗ですね!サイキックでは高温になりすぎてしまうので体温を使うのはナイスアイデアです!」

 

「それだけじゃないみたいよ?鎖骨にキムチを置いておつまみにしたいと顔に書いてるわね」

 

 

 書いてるわけねえだろ。どんだけ倒錯した趣味を持ってると思われてんだよ。

 

 

「ムムッ!ホントです!小さくですがこめかみの辺りに書いてあります!!」

 

「達筆ですね〜せっかくなのでこのまま彫りますかぁ〜?」

 

 

 片桐さんの神技は置いといて、及川の発想が花山薫と同レベルなことに恐怖を感じる。

 

 

「仕方ないわね〜!八幡君もまだまだ若くて元気だものね♪」

 

「まあ、片桐さんよりは若いですけ、ッ!」

 

「次は当てる上に魂を砕くわ!」

 

 

 抜き手!!?明らかに貫く為の形に整えられた手が音を超えて掠っていく。

 反対側のこめかみにも落書きされてしまったのだろうか。今のは確実に俺が悪いので文句は無いが、及川の琴線を刺激し両こめかみにタトゥーを入れられるのはまだ勘弁してもらいたい。

 

 これ以上片桐さんのソウルブレイクスティンガーを食らうわけにはいかないので口には気を付けよう。

 

 

「すみません、冗談です。---堀と及川は武内さんの所へ行っといてくれ。片桐さんと少し話がしたい…」

 

「むっ!……そーいう事ですね!さいきっくぱわーを充填してあげますよーっ!」

 

「大人のお話をするんですねぇ〜頑張ってください!」

 

 

 なにやら慌て始めた片桐さんをよそに堀と及川はパタパタと出ていってしまった。

 

 

「なっ、なによっ!!?わたしだけ呼び止めて!!」

 

「別に何も無いですよ。…ま、お祝いに飲みにでも行きませんか?」

 

「…ふん!八幡君がどうしてもって言うのなら行ってあげるわ!」

 

 

 またしても近づいてくる片桐さんを手で制す。距離感大事、いわくソーシャルディスタンス。

 

 

「………あっ!美優さんも誘っていいですか!?」

 

「ぶっころ!!」

 

 

 

 

 




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