デレマスとのクロスオーバー『 基本はコメディ』   作:エビアボカドロックンロール

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単短編茄子 茄子「お父様、お母様。カコは今日、大人になります……」八幡「…鼻血でてんぞ」

 

 

 

 大きく息を吸い込むと胸いっぱいに彼の香りを感じます。

 

 事務所から自転車で10分ほどの距離にあるマンションの一室。一人で住むには広すぎる2LDKのお部屋で私、鷹富士茄子はもう一度深く息を吸い込みます。

 

 紅茶の香りの漂うイギリスアンティーク家具で揃えられたお部屋。玄関、洗面所、リビング、寝室、至る所に他の女の痕跡を見つけてしまいイライラしますが全て上書きしてやったのでひとまずはよしとしましょう。

 趣味の良いソファーに腰を下ろし部屋の主である比企谷さんへと視線を送りますが、呼びつけた私には目もくれず黙々とパソコンへ向かい在宅勤務に励んでいます。

 

 

「呼んでねぇよ。カコさんイーツとか言って不法侵入してきたんだろ。……こんなの流行らせやがった浅利は絶対にしばく」

 

 

 だいたいサムターン回しって隠し芸に含まれるの?普通に犯罪だよね?などブツブツ呟く比企谷さん。お部屋モードはいつもより独り言多めのようですね。すこぶる可愛いです。食べちゃいたいくらいです。

 

 いつも目にするスーツ姿の彼も素晴らしいものですが、今の部屋着姿も筆舌に尽くしがたいものがありますね。さらには私が以前にプレゼントしたものを着てくれているのだから独占欲も満たされるというものです。

 ……実は部屋着と今私の着けている下着の柄がお揃いだと知ったらどんな顔をしてくれるでしょうか。念のために選んできて正解でしたね。

 

 

「……着替えてくる」

 

 急に着替えるだなんてどうしたんでしょうか?変な電波でも受信してしまったのかもしれませんね。

 立ち上がる際パシリと閉じた扇子も私からの贈り物です。もちろん文字入れは私です。“茄子の揚げびたし”―――なんかエロいですよね?

 唯一不満があるとすればお外で使っているところを見たことがないことですかね。良いアピールになると思うんですけどね~?茄子の揚げびたし。

 

 この扇子にはしっかりとした理由があるんです。

 実は一富士二鷹三茄子には続きがあると言われており、所説ありますが四扇五煙草六座頭が多くで伝えられています。扇子と煙草と坊主頭です。

 つまり煙草を愛飲し、私を愛する彼に、さらに扇子まで持たせてしまえばこれはもう実質妻と言えるのでは?―――思い付いた自分を褒めてあげたいです。

 

 本当は煙草も定期的にプレゼントしたいのですが、彼は恩師からもらったブランド物のシガレットケースを使用しているので銘柄が分からないし、私たちが真似して吸うのを防ぐためか教えてもくれないんですよね~。

 

 残りの座頭、つまり坊主頭ですが、これだけはダメです。マルコメ頭もきっと可愛いでしょうがピョコンと踊るアホ毛を今はまだ味わっていたいのです。ワンチャンあっちの方は坊主の可能性もありますが、未だ確認できていないんですよね~

 

 さておき、この部屋にいる間は多くのライバルを差し置いてこの私こそが彼の一番近くにいることを改めて実感することができます。

 

 

 

 ―――彼のことばかり考えていると、なんだかお腹の奥が熱くなってきてしまいました。率直に申し上げて、ムラムラします。

 

 幸い着替えから戻った比企谷さんはパソコンに夢中で、私のことなんかまったく見向きもしません。いつもならもどかしい素振りにも今回だけは幸運を感じずにはいられません。

 ……それに、想い人の部屋で一人耽るのも、ええ、悪くないです。昂ぶります。鷹富士だけに、昂ぶります。

 念のために確認しておきましょうか。

 

 

「ひきがやさーんっ♪」

 

「あぁ」

 

「お紅茶淹れましょうか?」

 

「あぁ」

 

「もうすぐしたら夕ご飯もお作りしますね?」

 

「あぁ」

 

「……今夜は一緒に寝ましょうね~♪」

 

「あぁ」

 

 

 仕事に夢中でこちらに注意を払っていないことを確かめるだけのつもりでしたが、思わぬ言質を取れてしまいました。やだ、カコさん大勝利じゃないですか。今夜……授かってしまうかもしれませんね。

 こうなってしまうと、なおのことブレーキは壊れてしまいます。小声で比企谷さんと呟いてみても反応は見えません。

 

 

 ぽしょりとこぼれた愛しい人の名前をきっかけに堰を切ったように私の右手は

 

 ――優しく髪を撫で

 

 ――甘く耳に触れ

 

 ――掻くように首筋を伝い

 

 ――なぞるように自慢の双丘を越え…

 

 下へと降りていきます。 

 

 ついに指先が私の“スイッチ”に触れた瞬間、寂しさも羞恥も嫉妬も独占欲も背徳感も……反転し、快感へと変わってしまいました。

 

 

 思わず彼の残り香のするクッションを抱きしめます。

 右手の指先はいつ彼が来ても大丈夫なように綺麗に整えられた薄い森を、丘を、更に開拓しようと動き回ります。

 

 背後では彼が熱心に業務に打ち込んでいるというのに、私はなんてイケないことをしているのだろう。

 しかしそれすらも今を彩るスパイスとなり、自分を慰める手はことさら勢いを増していきます。

 漏れる声を彼に聞かせるわけにはいかずハンカチを噛み締めても、喘ぐような吐息を止めることは出来ず思わず顔を覆います。

 

 1分なのか10分なのか1時間なのか、どれだけの時間そうしていたかは分かりません。

 やがて達してしまった私は荒い息を漏らしビクンと背を弓なりに反らす。

 

 さすがに大きな音に気付いた比企谷さんはゆっくりとこちらを振り向き……

 だめ。こんな私を見ないでください……

 

 

 

 

「―――switchの電源入れてどうぶつの森するだけで、なんでそんな描写があるんだよ……」

 

 

 

「―――てへっ♪どうです?興奮しちゃいました?本当に頂いちゃってもいんですよ?」

 

「……俺もどうぶつの森するわ」

 

「もうっ草食なんですからっ♪」

 

 薄着の私にチラッと目をやり、ソファーの隣に深くゆっくりと腰掛けゲームに没頭する比企谷さん。

 

 何気ない休日の柔らかい雰囲気が私たちを包みます。リラックスした彼の横顔はことさらセクシーなものへと変わり、私もゲームをしているはずなのについ目線が引き寄せられてしまいます。

 

 アイドルとプロデューサの関係性を頑なに守ろうとする彼に“二人で休日にゲームなんてまるで恋人みたいですね♪”なんて言ってみてもきっと“恋人なんかいたことねえから分かんねえわ”なんて返されちゃうんでしょうね。―――恋人いたことないですよね?

 ともあれ、これだけアプローチをかけてもうんともすんとも言わないんですから、過激なアプローチも致し方なしですよ。

 

 でもまだ裸の言葉をぶつけるのは怖くて、心の奥のその少しでもが伝われば良いな、なんて冗談にしてごまかしてしまうのも難しい乙女心だと分かって欲しいものです。

 

 

 

 

「―――二人で休日にゲームなんてまるで夫婦みたいですね♪」

 

「……そうだな」

 

「カコッ!?ひ、ひひ、比企谷さんがデレた!!!」

 

「夕飯も作ってくれるらしいしな」

 

「き、聞いてたんですか!?」

 

「寝るのが楽しみだわ」

 

「………(ボフッ)」

 

 

「フッ。またつまらんものを斬ってしまった」

 

 




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