デレマスとのクロスオーバー『 基本はコメディ』   作:エビアボカドロックンロール

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軽い気持ちで読んでいただければと思います。


単短編久川 颯「なー15歳の誕生日おめでとう!」凪「はーちゃんこそ14歳の誕生日おめでとうございます」

 

 

 吊革につかまり何を見るでもなく流れる景色を眺めていると、聞きなれた到着のアナウンスが耳に入ってくる。外回りが一段落ついた安心感もあり無心で電車に揺られていたが、ようやく事務所の最寄りまで帰ってくることができたようだ。

 

 満員電車から吐き出されるように下車し改札をくぐり抜けると、アスファルトを打ち付けるほどの大雨が降っていた。

 そういえば朝のニュースで梅雨入り宣言だとか言っていた気がする。最悪ビニール傘でも買えばいいかと思い折りたたみも持ってきていない。

 

 まぁ目的地の事務所はすぐそこだし今回は走れば大丈夫だろう。

 よし、と気合いを入れ進行方向を睨むと、ピンクと淡いブルーの水玉が散りばめられた傘を持った少女が、真っすぐこちらへと近づいてくるのが見える。

 

「あー!はっちゃんやっぱり傘忘れてたっ!急に降ってきたから大変だと思ってはーが迎えにきてあげたよ♪」

 

 

 ファッションモデルのようにその場でくるりと回りポーズを決める久川。そんな短いスカートで回っちゃいけません!

 事務所のホワイトボードには帰社時間も書いてあるからそれを見て迎えに来てくれたのだと思う。話し方からするとおそらく妹の颯が来てくれたのだろう。

 

 

「…久川か、すまん助かった。―――で、俺の傘は??」

 

「…あ。……忘れちゃった♪」

 

 

 破壊力抜群のてへぺろが俺を襲う。ちくしょう、かわいいな。

 

 

「何しに来たんだよ…」

 

「んー、そうだ!はい、これ持ってはっちゃん!」

 

 

 少し考えると何か思いついたのか、久川は手に持った傘を俺に差しだす。トトロかな?

 

 

「そしてぇ~、ぎゅっ!――うん、これなら二人とも濡れずに帰れるね♪」

 

「……天使かな?」

 

「んー?はっちゃんなんか言った?」

 

「い、いやなんでもない。もうすぐレッスンだろ?さっさと帰るぞ」

 

 

 小さな傘だからね!とさらに強く左腕にしがみつきこちらを見上げる。さらには俺の不審な鳴き声に小首をかしげる。

 ゆーこさん!徳島から産地直送であざとさが届いてますよ!

 

 

「えー、せっかく二人になれたしゆっくり帰ろーよー。それともはっちゃんは、はーだけじゃ不満なの?なーも合わせてリバーシブルで楽しみたいの?」

 

「何言ってるかわかんねえよ。なんだよリバーシブルって。裏返んのか?」

 

「わーお。凪の裏返り、あるいは裏切り。―――この入れ替わりトリック、はたしてPに見破れましたかな」

 

 

 口調、纏う空気、何気ない仕草、先ほどまでの暴力的な可愛さ、全てがガラリと変わる。抱きしめていた腕も離しトンッとステップを踏んで俺から離れる。

 

 

「………凄まじいモノマネのクオリティーだな。一瞬ほんとに入れ替わったかと思ったわ、さすが双子だな」

 

 

 弱くなったとはいえまだ雨は降っているので、もう一度傘へと招き入れて歩き出せば思いのほか素直についてきた。 

 

 

「おおPよ、気付かないとは情けない。凪は初めから凪ですよ。あるいはジャギですよ」

 

「…は?だから久川妹が姉のマネをしてるんだろ?」

 

「残念、ジャギを無視されてしまいました。姉より優れた妹は存在しないのですよ」

 

「最初からお前が妹のマネをして迎えに来てくれていたってことか…?」

 

「おふこーす」

 

「………まじで分からんかったわ。…すまん」

 

 

 お隣の事務所にいる双子とは違い、こいつらは服装や口調がかなり特徴的なので見分けること自体は簡単だ。だがそれはそのアイコン的な特徴がなければ見分けがつかないということでもある…

 

 

「……愛があれば見分けがつくそうですよ。――なるほど、Pに愛はないということか。切ないぜ…」

 

 

 大げさなリアクションでヨヨヨと涙を拭うしぐさをし、こちらをチラチラと伺っている。

 

 

「14歳が愛とか言うなよ…」

 

「愛に年齢は関係ありませんよ。そして凪は今日で15歳です。結婚できるお年頃まであと1年、れっつカウントダウン」

 

 

 事務所へと到着し玄関をくぐり傘を返す。濡れずに帰れたお礼を言い、もうひとつカバンから出した小包も渡す。

 

 

「――子どもには関係なくても大人にはあるんだよ。ほら、大したもんじゃねえがプレゼントだ」

 

「わーお。このサイズ感、婚約指輪だな。そこまで言うなら仕方ない、同じ墓に入ってあげましょう」

 

「どこにこんな流れで、しかも中学生にプロポーズするやつがいるか。――お前には髪飾り、妹の方はピアスにした」

 

「……ありがとうございます」

 

 

 おずおずと受け取りながら妙に古い結婚観でプロポーズに答えてくれた。てかプロポーズじゃねえよ。

 

 

「おう。――せっかくだから妹の方にも今のうちに渡しとくか」

 

「も、もし!!!来年までに凪とはーちゃんを見分けられるようになっていたら、ほ、ほほ本当に結婚してあげましょう!!!」

 

「…は?」

 

 

 ついでなので妹の方にもプレゼントを渡しに行こうと歩き出すと前をふさがれた。しかも逆プロポーズされちゃったよ。

 

 

「な、ななな、なんてね!はい、はっちゃんまた騙された~!はーのフリをしたなーのフリをしたはーが正解でした!だ、だから、来年はっちゃんと結婚するのははーなんだからね!!!」

 

 

 でも両方と結婚したい場合は要相談なんだからね!と捨て台詞をはきどこかへ走り去ってしまった。

 ……結局どっちだったんだ? 

 

 

 

――――――

 

 

 

「わわ!なー顔真っ赤じゃんどうしたの!?」

 

「はーちゃんはーちゃんビッグニュースです。凪は来年の今頃には久川ではなくなっているかもしれません」

 

「え!どうゆうこと!ゆーこちゃん離婚しちゃうの!?」

 

「さらには義理のお兄さんが、さらにはさらには甥か姪ができてしまうかもしれません」

 

「ええ!ほんとにどうゆうことなの!」

 

「………あと1年。これほど待ち遠しいとは……」

 

 

 

 

 




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