デレマスとのクロスオーバー『 基本はコメディ』   作:エビアボカドロックンロール

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軽い気持ちで読んでいただければと思います。


単短編ヤンデレ3 八幡「おめっとさん」結衣「あ、ありがとう」

 

 

「今日は来てくれてありがとね。……ヒッキー」

 

 

 お店に入り飲み物と軽くつまみを注文して落ち着いたところで由比ヶ浜がそう切り出した。

 

 

「別に飲みに行くぐらいはいいんだが。…せっかくの誕生日に俺なんかといていいのか?」

 

「誕生日だから、ヒッキーが良かったんだよ」

 

 

 由比ヶ浜から食事の誘いがあったのが昨日のことだった。

 

 お店選びは俺に任せると言われ困っていると、目の前にいたちひろさんからアイドル達が飲み会をするときに利用している居酒屋をおすすめされた。確かにあそこなら個室もあるし舌の肥えたアイドルが通うほど味にも信頼がおけるということですぐに予約を取り付けた。

 

 

「…そうか」

 

「それにしてもヒッキーがこんなオシャレな居酒屋を知ってるなんて意外だったなー。お仕事の接待とかで使ったの??」

 

「…まあ、そんな感じだ」

 

「あ、ビール来たね。――はいヒッキー、かんぱーい」

 

「おう。おめっとさん」

 

「えへへ~。これで誕生日を二人でお祝いしてもらうの何年連続になるかな??」

 

「…他にも誘えって言ってんのにお前が頑なに誘わねえからだろ」

 

 

 そうだったけ?なんておどけながら由比ヶ浜は勢いよくビールを飲み下す。

 こいつには卒業以来、“パセラのハニトーおごってもらってない”を合言葉に事あるごとに連行されている。

 買い物の荷物のついでに何度かパセラに行ったりもしたが、“今はお腹いっぱいだから”と決してハニトーを食べることなく今日までが過ぎていた。

 

 

「それは…みんなとは別で誕生日会をしてもらってるから…」

 

「――なるほど…。……大丈夫、傷ついてないよ」

 

 

 衝撃の事実……

 

 

「だって何度誘ってもヒッキー来てくれないんだもん。仕事もいまだに何してるか秘密だし」

 

「――そういうことなら、まあ仕方ないな……」

 

「この日だけはヒッキーを独り占めできるのも嬉しいし……」

 

 

 こいつ自分がなに言ってるのか分かってんのか?

 

 まだ一杯も飲んでないのに頬を染め、ふぅっと吐息をこぼす由比ヶ浜に視線が引き寄せられる。それをごまかすように俺は残りのビールをぐいっと飲み干し通りがかった店員におかわりを注文した。

 

 

 

――――――

 

 

 

 掘りごたつって最高だよな~。ああ、お酒おいしい。以前高垣さんのお願いで仕入れたらしい播州一献とアテに鯛の昆布締め。さわやかな味わいの日本酒と旨みの強い鯛が相性抜群だ。お酒最高。お酒おいしい。

 どれくらい飲んだだろう。久しぶりに飲むお酒は疲れを癒しストレスを洗い流してくれる。お酒は心の洗濯だな。

 

 

 

「ヒッキー大丈夫?…目の濁りが、なくなってきてるよ?」

 

「らいひょうぶ。お酒おいしい」

 

 

 心配してくれる由比ヶ浜やさしい。

 机にぐでっとなった俺の頭をなでりなでりとしてくれる。

 

 

「そろそろいけるかな……。―――ねえヒッキー、次行こっか?あっ、そういえばゆきのんからもらったケーキがまだあるんだった、…うち来る?」

 

「お~う。行くかぁ~」

 

「(よっし!!!)――じゃ、お会計してくるね。ヒッキー立てる?ほら掴まって」

 

 

 由比ヶ浜の手に掴まって立ち上がる。

 冷たくて気持ちいい上に柔らかいから女の子ってすごいよな~。

 

 お誕生日様の由比ヶ浜に合わせたペースで飲んでたのになんで俺だけこんな酔ってんだ? そんなに疲れてたつもりはなかったが思っていたより疲労がたまっていたのかもしれない。

 

 ふらふらになりながらもなんとか由比ヶ浜に支えてもらい店から出る。あ、領収書は緑の事務員でお願いしました。

 

 

「ん、ヒッキーやっぱり男の子だね。思ってたより重たいや」

 

「そうかもしらん~」

 

「タクシー呼ぶね?」

 

「そうかもしらん~」

 

「せっかくだから帰ったらシャンパン開けよっか」

 

「そうかもしらんんん~ん?」

 

 

 

「何がそうかもしらんなんですか?比企谷さん?」

 

「………」

 

 

 

 

 

 

「さ、佐々木か?どどど、どうしたんだこんな時間に?」

 

「事務所に忘れ物をしちゃったので取ってきたんです」

 

 

 なぜだろう。佐々木から妙な迫力を感じる。酔い覚めちゃったよ。

 

 

「そ、そうか。でもこんな時間に一人で出歩くのは良くないな」

 

「それより比企谷さんは今からどこへ行こうとしてたんですか?」

 

「べ、別に帰ろうとしてただけだぞ?」

 

「…ヒッキー?」

 

「でしたら比企谷さんが送ってくれませんか?千枝、実は一人で怖かったんです」

 

「……ヒッキー?」

 

 怖い。由比ヶ浜も怖いし佐々木も怖い。

 由比ヶ浜は何この子、こんな良い所で邪魔するなんてどうしてやろうか。って目してるもん。佐々木の目は、…何を考えてるか全く分からんが、闇より暗いことだけはわかる。

 

 当然のことだが子供の佐々木が一人で歩いているのを目にしてほっとくわけにも行かないので、由比ヶ浜には悪いが別でタクシーを拾って送ることにした。

 

 

「すまんな由比ヶ浜。さすがに子供をほっておくわけにもいかん」

 

「いや、まず誰だしその子。似てる子がドラマに出てるの見たような気がするんですけど…」

 

「あー。えと。…世の中には3人似てる人間がいるらしいぞ?――おい、佐々木!押すなって、タクシーに押し込もうとするなって!」

 

 

 由比ヶ浜と問答をしているとその間に佐々木がタクシーを止めてくれていた。

 

 外を歩くときは帽子と眼鏡をするように言っていたのに、今日に限って何もしていない佐々木に由比ヶ浜が反応を見せる。

 だがプロデューサーをしてることを言うとさらにめんどくさくなりそうなので適当にごまかしてると、佐々木にタクシーの奥へドンッと押し込まれた。

 

「ちょ、ヒッキー何にも答えになってないし!」

 

「では、胸が大きいだけのお姉さん。千枝は比企谷さんに送ってもらうので、お話の続きは……また来年にでもしてください」

 

「なっ!!どういうことだし!!!……ちょっとヒッキー!!」

 

 

 シートに倒れこんでしまいふらふらと頭をあげると佐々木も遅れて乗り込んできた。押し込まれてシートとキスしているときに佐々木と由比ヶ浜が何か話していたようだが幸か不幸か俺の耳には聞こえてこなかった。

 

 

「すみません、運転手さん。〇〇町の〇〇マンションまでお願いします」

 

「え?なんで俺の家?」

 

「―――千枝が来なかったら比企谷さんどこへ行くつもりだったんですか?」

 

「……家に帰るつもりだったぞ?」

 

「なら問題ないですね♪――運転手さん、外の女の人がうるさいので早く行ってください」

 

 

 

「……問題ないです」

 

 

 タクシーが走り出すと後方から『また今年も逃がした―!!』という咆哮が聞こえたがきっと気のせいだと信じたい。去年も聞いた気がするけど信じたい。

 

 

 

――――――

 

 

 

 千枝の誕生日は6月7日です。

 比企谷さんが何をしてくれるんだろうかとその日は一日中そわそわしちゃいました。だって彼が担当するアイドルはみんな何か素敵なプレゼントをもらってるんです。千枝には何をくれるのかと楽しみになってしまうのも仕方ないと思います。

 

 なのに、なのになのになのに!

 『おたおめ~』の一言だけ!!!!

 ぜったいに許しません。身体に心に魂に千枝の存在を刻み付けてやります♪

 

 

 

 とは言えそう簡単に有効そうな作戦も思いつきません。

 何かいいアイデアが出ないかなーと事務所の屋上でぼーっとしている時、チャンスは唐突にやってきました。

 比企谷さんのプライベート用のスマートホンがメッセージを受信したのです。

 千枝のスマートホンは比企谷さんのスマートホンをハッキングしているので常に同期していて、何かあった時にはすぐに対応できるようになっています。

 

 画面を見てみると高校時代の友人から食事のお誘いが来ているようです。★★★ゆい★★★なんですかね、この登録名。未央さんかスパムメールのどちらかしかありえないです。本人の品が知れるというものです。

 

 しかし逃すわけにはいかないこのチャンス。すぐにちひろさんに連絡を取り、年増組がいつも使っている居酒屋をおすすめするようお願いしました。

 あそこはかなり融通を聞かせてくれるので事務所御用達といった感じだそうです。“アイドル飲み姿カワイイ選手権”もあの店で行われました。カメラを忘れて泥酔する姿に企画は大好評だったそうです。

 

 

――――――

 

 

 次の日の夕方、先に居酒屋へと入り個室にカメラとマイクを設置し別部屋で待機しているとターゲットの二人が入ってきました。お店の人にはこういうドッキリと言って協力してもらいました。

 

 先に入ってきたのは比企谷さんです。いつものスーツですね。これで気合いが入っていたりしたら逃げ出してしまっていたかもしれないので良かったです。

 その後ろを続いて入ってきた女性はかなり巨乳ですね。肩だしニットがボディラインを美しく強調し、ミニスカートがチラチラと比企谷さんの視線をマタドールのように引き寄せています。比企谷さんやっぱり巨乳が好きなんでしょうか?千枝もきっと大きくなるのでもう少し待っていて欲しいです。なんなら自身の手で育ててもらってもかまいませんし。

 

 

 

 最初の注文を済ませて落ち着いた二人はなんだかとてもいい雰囲気です。事務所にいるアイドルの誰とも違う、二人だけの空気感のようなものがあっという間に個室を包みました。

 コンっとジョッキをぶつけ乾杯をする二人。比企谷さんの照れたような表情がたまりませんね。あれだけでお酒のアテになりそうです。

 

 その後も二人は楽しそうな雰囲気で時間が流れています。それにしてもあの巨乳、飲ませすぎじゃないですかね。酔わせて比企谷さんを持ち帰ろうとする狙いが丸わかりです。浅はかです。

 

 もうこれ以上黙って見ているのも飽きてきたので、志希さん特性の“ヨイマワリヤスクナール”を巨乳が注文したお酒に混ぜて提供するようにお願いしました。お店の人には適当に言って協力してもらいました。

 これで酔ってもらって早々にご退場願いましょう。酔った女性に手を出すような比企谷さんではありませんから、そうなればこのお誕生日会もお開きになるでしょう。

 

 

 ……そう思っていた時期が千枝にもありました。まさか比企谷さんがカルーアミルクを飲むだなんて思わないじゃないですか。まったく、そんなとこもかわいいんですから。

 次に注文した日本酒を飲み始めたとき、比企谷さんに異変が訪れました。

 

 

『らいひょうぶ。お酒おいしい』

 

 

 は?かわいすぎかよ?

 ろ、録画してたのを後で見なおしましょう。永久保存版です。

 

 千枝が比企谷さんのあまりのかわいさに悶絶していると巨乳の目がギラリと光るのが見えました。警戒しなければ、と思っているとすぐに比企谷さんの手を取ってお店を出ていってしまいました。

 

 千枝が守護らないと!

 

 急いでお片づけをし、お店の人にお礼を言って追いかけます。

 お店を出て比企谷さんの所へ到着したのは本当にギリギリのタイミングでした。

 

 

「何がそうかもしらんなんですか?比企谷さん?」

 

「………」

 

 

 気まずそうな表情の比企谷さんもたまらないです。

 心のシャッターと隠しカメラのシャッターを押し、トトトッと比企谷さんへと近づきます。

 ふわりと漂うアルコールとタバコの香りが、焦る千枝の心を落ち着かせてくれます。

 

 

「それより比企谷さんは今からどこへ行こうとしてたんですか?」

 

「べ、別に帰ろうとしてただけだぞ?」

 

 

 どこに帰ると明言しないあたりが比企谷さんのずるがしこいところですね。でも逃がしません。

 

 

「でしたら比企谷さんが送ってくれませんか?千枝、実は一人で怖かったんです」

 

 

 

 こういえば甘くて優しい比企谷さんはきっと断れません。

 隣で巨乳がじっとりと睨んでいますがさんざん個室で比企谷さんを堪能したんですから、これ以上は強欲が過ぎると思います。……千枝も楽しそうな二人を見ているのはつらかったけれど我慢したんです。

 

 ちょうどアプリで呼び出したタクシーが来てくれました。

 うんしょうんしょと比企谷さんを奥へと押し込みます。

 

 

「では、胸が大きいだけのお姉さん。千枝は比企谷さんに送ってもらうので、お話の続きは……また来年にでもしてください」

 

 

 せっかく目の前に極上の料理が並んでいるのに黙って見送ることしかできない巨乳さんには申し訳ないですが、恋愛と戦争では手段を選ばないとダージリン様も言っていました。

 ぐったりとタクシーに座る比企谷さんの隣にピトっと千枝も腰を下ろします。本当はお膝に座りたいですけれど、道路交通法的によろしくないのでお家に帰るまでの我慢です。

 

 

「え?なんで俺の家?」

 

 

 この期に及んで逃げようとする比企谷さんを2秒で論破して、運転手さんに進むようにお願いします。

 

 ……や、やってやりますよ。身体に心に魂に千枝の存在を刻み付けてやります。

 おめでとうが貰えなかったから……お、おめでたをもらうのも、や、やぶさかではないです!!

 

 

 




誤字修正非常に助かっております。
評価も頂けると喜びます。
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