デレマスとのクロスオーバー『 基本はコメディ』   作:エビアボカドロックンロール

36 / 71
単短編嘘 ちひろ「………責任」八幡「ほんとなんもなかったですから……」

 

 

 

エアコンの効いた事務所から出るとじっとりとした重く湿った空気が身体にまとわりつき一気に不快指数があがる。そのうえ、暗く淀んだ空から降る大粒の雨は恨みでも晴らすかのように強くアスファルトを叩きつけ、自宅までのたった10分をこれでもかと憂鬱なものに変えてくれる。

 すっと大きく息を吸い込み感じる雨の匂いは、つい先ほど夕立が降り始めたであろうことを伝えてくれる。これなら早めに退勤しておけば降られる前にバイクで帰れたかもしれないと少し後悔する。

 

 

 

―――

 

 

 

「………何してんの?」

 

 

 バイクは諦め、たまにはゆっくりと景色を見ながら帰るのも悪くないかと傘をひろげ、途中で晩酌用に買ったつまみのお惣菜を片手に上機嫌で帰ってみれば、マンションの玄関を入ったオートロックの横にセーラー服の少女が濡れ鼠でうずくまっているのが目に入ってしまった。陰気なオーラがマンションの外まで漏れてたので正直このまま無視して部屋まで帰りたい……

 

 

「ずっとここで待ってた……」

 

「―――雨が降ってきたのせいぜい20分前くらいだぞ」

 

「ずっと(15分)ここで待ってた……」

 

 

 一度も顔をあげずに呟くその姿は未だに大粒の雨が降り続ける空のように暗く、あと一押しで何かが切れてしまうのではないかというような危うさがある。

 

 

「物は言いようだな。――――――はぁ…。あったかいお茶くらいなら出してやる…」

 

「………こんな時だけ優しい」

 

「自分の住んでるマンションのロビーにセーラー服姿のお前がずっと座ってるよりはマシだからな…」

 

 

―――

 

 

 お茶だけとは言ったものの冷えて震え始めた体を温めるため、すぐに風呂を沸かせて叩き込む。着替えは前に茄子が勝手に置いていったのを置いておけばいいだろう。

 

 

 リビングのソファーに座りよく冷えたビールをカシュッと開け、体が求めるがままに大きく一口。このいっぱいのために生きているといっても過言じゃねえな…

 そのままポリポリと落花生をつまみながらニュースを流し見していると、ぱたぱたと着替える音が聞こえてきた。

 

 風呂から上がっても相変わらずどんよりとした空気を隠そうともしない。隣に腰掛けドライヤーを俺に押し付けるとそのままそっぽを向き、頭をぐいぐいとこちらへ押しやってくる。

 

 

「なに、しろってこと?」

 

「………」

 

 

 小さく首肯しソファーから立ち上がると膝の間にぽすりと腰を下ろす。ドライヤーをかけやすいように移動してくれたらしいがそんな気を使えるならもう少し離れてくれませんかね……

 

 

 背中まで伸びる長い髪のブローをようやく終え、仕上げにぴょこりと踊るアホ毛をハート型に整える。ドライヤーの大きな音だけが響いていた部屋がしんと静まり返りこちらから何か話しかけた方がいいんだろうかと悩んでいると、暗い雰囲気にしていた原因が重い口を開いた。

 

 

「もうむり………」

 

「……お前が自分で決めたんだろ」

 

「これ以上我慢できない!」

 

 

 少しずつ声色が悲愴的なものに変わり、今日まで抑えていた分を取り戻すかのように荒れていく。

 

 

「もういい!!」

 

 

 はじけるように立ち上がると止める暇もなく机に置いてあったビールに手を伸ばす。

 

 今日まで積み上げてきた物の大切さを知りながら、それを壊すように、自分には必要ないものだと叫ぶように、荒い手つきで缶に入った残りを飲み干しがくりと膝をつくと頭を抱え込みうずくまってしまった。そして次第にぶるぶると震え……

 

 

 

「ぷはぁ~~~~!!!久々のビールが身体の隅々まで染み渡る~~♪」

 

「女子高生の役作りはもういいのかよ、佐藤」

 

「はぁとって呼べって言ってるだろ☆それよりハチ公ビールおかわりよこせ☆」

 

「………まあ今日くらいはいいか」

 

 

 震える身体で久々に飲んだビールのおいしさを表現する佐藤。

 来月に撮影予定がある映画の役作りのために日ごろから佐藤っぽさを出来るだけ抜いていたのでこの特徴的な口調を聞くのも随分と久しぶりな気がする。だから何だって感じではあるが……

 

 

「かぁ~!うまい!正直このいっぱいのために生きてるとこあるよな♪―――ほらほらつまみもあるんだろ☆」

 

「…はいよ」

 

「良いこと考えた!お返しに乾燥がすんだらセーラー服また着てやろうか?JKはぁとでいけないお酌しちゃうぞ☆」

 

「うわキツ」

 

 

 エンジェルローキック☆なる的確にダメージを与えるだけの地味な技を俺に浴びせながらうっとうしくキッチンまでついてくる佐藤にチーズやオリーブなどワインに合いそうなつまみを運ばせる。

 

 

「なになにハチ公☆素敵ディナー演出しちゃう感じか?仕方ないな~朝まで付き合っちゃうぞ♪」

 

「あほか。ケーキ食ったら帰らせるわ」

 

「ふふふのふ♪晩酌用のつまみとか言ってちゃっかりケーキ買ってんじゃん☆やっぱりハチ公のモノローグは信用ならねえな☆」

 

 

 適当に選んだワインと適当に作った料理で乾杯をして淡々と食事を楽しんだ後、9時になる前に佐藤はタクシーで帰っていった。

 ほんとだよ?

 

 

―――

 

 

 

ちひろ「おはようございます。ずいぶん疲れた顔してますけど…寝不足ですか?」

 

八幡「ども…。至って元気ですよ」

 

ちひろ「………同じような表情をしたはぁとちゃんも一緒に来てましたけど、、まさか朝帰りじゃないですよね?」

 

八幡「まさかり担いだ金太郎がどうかしましたか?」

 

ちひろ「……晶葉ちゃーん!ウソ発見器ってどこにありましたっけ!!」

 

八幡「べ、弁護士を呼んでくれ!」

 

 

 

瑞樹「ほんとのところはどうなの?」

 

心「起承転結で言うと……転?」

 

瑞樹「わからないわ」

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。