デレマスとのクロスオーバー『 基本はコメディ』   作:エビアボカドロックンロール

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白衣の堕天使

 

 

 太陽が仕事をし始める少し前。

 目が覚めた俺は、今寝ているベッドが妙に心地の良いことに気が付いた。

 宿泊を伴う仕事が多くなりビジネスホテルや旅館で寝ることに慣れた一方で、自宅でゆっくりと寝られることのありがたみを殊更に感じ始めた昨今。果たして自宅以外でこれほど気持ちよく目が覚めたことがあっただろうか。いや、ない。

 

 さらに言えば昨晩はあれほどのお酒を飲んだにもかかわらず身体はすこぶる快調なことも疑問である。

 思い返せば美優さんを部屋に送って以降記憶がないので、そこから今しがた目覚めるまでの間に何か元気の秘密があるのかもしれない。

 

「んー、ムニャムニャ………やむ…」

 

「………まじか」

 

 自分の下半身のあたりから聞こえるむずがるような声が聞こえ、恐る恐る布団をめくったそこにいたのは気持ちよさそうに眠るそいつだった。

 きれいな顔してるだろ…ウソみたいだろ…。夢見なんだぜ。

 

 言ってる場合じゃねえな…

 え、まじ?夢見と朝チュンしちゃったの?朝チュンの作法などまるで知らんがベッドに腰掛けてタバコとか吸っちゃたりした方がいいのか?ルージュの伝言とか残した方がいいのか?

 そんな風に静かにパニックになること数分、次の瞬間には覚悟を完了し浴衣をパージするとともに夢見を優しく揺り起こした。

 

「んなぁ~~………。うぅ、もう朝…?………あ、ハチサマおはよう…」

 

「ああ、おはようりあむ。昨晩はよかったぞ、ありがとう」

 

 ろくに記憶はないけどダンディなセリフとか言っちゃう。

 

「え、てゆーかなんでハチサマパンツ一枚なの!?」

 

 なんでもなにも…自分が脱がせたんだろうに。(違う)

 白々しくもチラチラと俺の身体に支線を走らせる夢見。おいおい、あんまり見られると興奮するじゃねえか。

 

「ところで身体は大丈夫か?シーツを見るに初めてではないみたいだが」

 

「いやいや!こんな経験初めてだよ!!むしろハチサマこそいい大人なのになんでこんなことになるんだよっ!!」

 

「どうやら飲み過ぎたようだな…。大丈夫。責任はちゃんと取るつもりだ」

 

「責任!?……あぁ、大丈夫だよ。ハチサマ我慢して出さなかったから」

 

 聞きましたか奥さん?八幡のハチマン不発で終わったそうですよ?

 …ただそれと秘密の洞窟に侵入してしまって責任を取ることはまた別の話だ。スティックをインサートするのはそれだけ罪深いことなのだ。さらにはこれが夢見の初体験だと言うのだからなおのことである。

 

「―――酔い過ぎてイケなかったのか……。すまん」

 

「そーだよ!酔い過ぎはいけないことだよっ!」

 

「酔い過ぎはイケない…」

 

「まったく、ぼくだからよかったものの。いい大人なんだから気を付けてよね!」

 

 厳しさの中にどこか優しさをたたえた瞳で俺を見つめる夢見にうっかりときめきそうになる。

 ただでさえ粗相をしてしまったというのに、その上行為まで満足にできなかったというのだから救いようのない話ではないだろうか。

 いい大人なんだからなんて言ってくれる夢見だが、昨夜まさに大人になった俺なのだから昨日まで大人ではなかったのではないかと思う。ちひろさん曰く、シュレディンガーの童貞。巨大なお世話過ぎるわ。

 

 成人式が読んで字のごとく人に成る式なのだとしたら昨日までの俺は人ではなかったと言えるだろう。

 比企谷八幡。ただの人間には興味ありません。

 

「重ね重ねすまん。次からは気を付けるわ…」

 

「あ、そうだ!美優さんの様子も見に行かないとっ!」

 

「なに?俺美優さんにまで手出してたの?そこまでいくとさすがに節操なさすぎでしょ…」

 

「…ハチサマが部屋まで運んだんじゃん?――もしかして何も覚えてないの…?」

 

「……頭が真っ白に」

 

「船場吉兆のささやき女将か」

 

 どうやら美優さんにもぶっかけて、もとい、迷惑をかけてしまったらしい。 

 クビ待ったなし。

 今までさんざん鋼鉄の精神力で誘惑を跳ね返してきたというのに、俺と言う人間はたかだかお酒に酔っただけでこれほどまで最低な人間へとなり下がってしまうのか。

 

 お酒を飲んだ時に人が変わったように暴れる輩がいるがそれは人が変わったのではなく、むしろ普段から抑圧されていた部分があらわになるらしい。であるなら、あの日雪ノ下さんが言った理性の化物とはまったくその通りではないか。理性が化物だったのではなく、一枚薄皮をめくったそこにある本性こそが化物のようだと彼女は言いたかったのではなかろうか。

 

 自己嫌悪していると扉の隙間から声が聞こえてきた。

  

「あきらちゃーん、八幡さんまだ起きないのー?」

 

「しぃっ!静かにあかりチャン!」

 

「んー?そろそろ朝ごはんだから呼んできてって言われたんご」

 

「げっ!あきらちゃんにあかりちゃん!!」

 

「あー!八幡さん起きてるじゃないですかー!…ってなんでりあむさんもここにいるんご?」

 

「ぼ、ぼくは無実だ!ハチサマが無理やり抱き着いて離さないから仕方なくここで寝ただけだっ!!」

 

「証拠は録画できているので朝食の時に上映会でもしましょうか。ご愁傷様デス #罰ゲーム確定 #パラセーリング」

 

「やだやだやだー!セーリングってあれだろ!?パラシュートみたいなのつけられて船で引っ張られるやつだろ!!?」

 

「ほら行きますよ!とっとと歩いてください!!こんなことなら船で連れ込まれてる時に完全に潰せばよかったデス!!」

 

 そのまま夢見は砂塚にずりずりと引きずられどこかへ連行されてしまった。

 一方残された俺はと言えばにこにこ笑顔で近づいてくる辻野が醸し出す、妙な迫力に言葉を発せないでいた。

 

「八幡さん?」

 

「は、はい」

 

「八幡さんはまだ清い身体んご♪」

 

「……へ?」

 

「だから安心するんご♪」

 

 そう俺に告げると、砂塚と夢見の後を追いどこかへとかけて行ってしまった。

 

 ………そうか。――俺はまだ……

 

 

 

 いや、なんで知ってんだよ

 

 とりあえず美優さんの様子でも見に行くか。

 ふわぁ、安心したらまた眠くなってきた……

 

 

ーーーーーー

 

 

りあむ「あれハチサマ?なんで美優さんお姫様抱っこしてんの?―――お、お持ち帰り…?」

 

八幡「ちげーよ。飲み過ぎてぶっ倒れちまったから部屋まで送ってんだよ」

 

りあむ「えっ!倒れちゃったの!?」

 

八幡「まあ、ただの飲みすぎだから大丈夫だ」

 

りあむ「何言ってんのさハチサマ!泥酔した状態で寝ると吐瀉物が喉に詰まって窒息することもあるんだよ!介抱するのなら責任をもってしなきゃだめだよ!!」

 

八幡「………」

 

りあむ「え、どうしたの…?」

 

八幡「夢見に正論を言われたからムカついた…」

 

りあむ「子供かよっ!―――ほらぼくも手伝うから早く寝かして、ってハチサマも酒くさっ!!」

 

八幡「んあー?」

 

りあむ「ハチサマもかなり飲んでるじゃん……はぁ。美優さんの次はハチサマの介抱だなこりゃ……」

 

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