デレマスとのクロスオーバー『 基本はコメディ』   作:エビアボカドロックンロール

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単短編久川 凪「今日は凪が勝ちです。これで3勝3敗ですね」颯「え…?なんのこと…?」

 

 

「ちょ!こんなところでそんな格好で何してるんですか!?」

 

 いわゆるおやつの時間。手元にはCM撮影の際にもらった、とあるフォートの箱が中身をちょうど半分ほどに減らしてコーヒーの隣に並んでいた。

 うつらうつらと迫りくる睡魔に対抗すべくコーヒーを飲んでいたのだが、カフェインは未だ効いてくる様子もなく、なんとか定時退勤を目指してシコシコと仕事に励んでいるとベルばらっぽく白目を剥いた久川がやってきた。

 

「……事務所でスーツ着て仕事だが?」

 

「な、なんて破廉恥な言葉をッ…!」

 

「………」

 

 初めは何を言っているんだとデコピンでもしようと思った。

 だが頭ごなしに否定するのも違うと思い、俺にできる範囲でかみ砕いてみた。

 

 出会って4秒で。

 マジックミラー号。

 顔は○○身体は車内。

 義理の妹が。

 時間を止めて。

 事務所でスーツ着て仕事中。

 

 ―――やだ、俺ってばなんて破廉恥なセリフを堂々と言っちゃってるの。

 

「凪のおかげで首の皮とおちんちんの皮一枚で繋がりましたね」

 

 完膚なきまでに論破され猛省しているとさっそくぶっこんで来やがった。

 

「お前いきなりなに言っちゃて、……うお!顔真っ赤じゃねえか!!!」

 

 お仕置きにもちもちほっぺでもつまんでやろうかと思い振り返ると、耳まで真っ赤になった久川が無表情でふるふると震えていた。

 

 えー。恥ずかしいなら言わなければいいのに…

 

 震えながら立ち尽くすその姿は謎の魅力に溢れているが、これじゃあまるで俺が久川に卑猥なセリフを言わせて恥ずかしがっている所を見て興奮してるみたいじゃねえか。

 

 

 ……あれ…………天才か?

 

 このままエロくないのにエロく聞こえる言葉を延々と久川に言わせるのも高尚かつ雅な遊びで素晴らしいものだとも思ったが、極限の疲労状態でもなければ泥酔しているわけでもないので涙を呑んで今のところはひとまず自制しておく。

 

「き、今日はもっと恥ずかしいことをお願いするつもりなので、そちら方面にチューニングを合わせてみました」

 

「なにそれむちゃくちゃ興味ある」

 

 あるのかよ

 いや、健全な男子ならこの反応は仕方ないだろ。美少女がもじもじ、てれてれとえっちな単語を言うんだぞ?

 

「ぽ、ポッキーゲームとやらがいま徳島では大人気なんです」

 

「………あっそ。んじゃ俺まだ仕事があるから」

 

 だがそれで俺に実害があるのなら話は変わってくる。

 

 棒読みで、しかしなぜか恥じらいの伝わってくる絶妙なニュアンスでくだらないことを言うもんだからこれ以上巻き込まれてたまるかと、椅子をクルッと回してデスクへと向き直った。

 こういうのはたいてい最後は俺が泣くことになるんだ。

 

 だいたいなんでポッキーゲームが今人気になるんだよ。

 5Gにまで早まった高度情報化社会の中で香川に並んで徳島も時代を逆行してるとでも言うのだろうか。

 

 香川県民はeスポーツが部活の全国大会とかの規模になってもだけは参加しなさそうだ、なんてズレたことを考えていると手が届くか届かないかの距離で久川が小芝居を始めた。

 

「なんと。偶然こんなところにポッキーが―――あるはずなんですけどPは知りませんか……?」

 

「ちひろさんが満面の笑みを浮かべてどっかにもって行った」

 

「くっ、ことあるごと各種イベントにかこつけて武内Pを誘惑するちひろさんを計算に入れるべきでした……」

 

「何の計算かは知らんけど、まあそういうことで俺は仕事に戻るわ」

 

 先ほどまで不自然なまでに山のように積まれていたポッキーをギンギンに目を血走らせたちひろさんがどこかに持って行ってくれたことに心の中で感謝し、久川の作戦も始まる前に終わったなと安心して仕事に戻る。

 

 今頃、武内さんが口の周りをポッキーのチョコと唾液でべとべとにしていると思うと、心の底のさらにちょっと奥へ行ったところの隅っこくらいでは申し訳なく思わないでもないが尊い犠牲に合掌して目の前のシュンとなってしまった久川は見なかったことにする。

 

「――はーちゃんに大見得を切ったのに、どうしましょう……」

 

「…ん、なんか言ったか?」

 

「いえ、ワクチンも大事ですがポコチンも同じくらい大事です。と言っただけです」

 

「そ…、そうか。そんな顔を真っ赤にするくらいなら言わなくてもいいんだぞ…?」

 

「そ、そこにはふれないでくださいッ…!!」

 

 今日に限って妙に乙女っぽいリアクションを取り続ける久川。

 ちらりちらりと遠慮気味に視線をこちらに送る姿が、いつものあえて空気を読まない姿勢と違い過ぎて、新鮮さを通り越して恐怖すら覚えるが、わざわざそれを指摘してやぶへびになるのもあほらしいので手元のアルフォートをさりげなく隠すように腕を動かし画面へと視線を戻す。

 

「ほら、颯のところにでも行って来いよ」

 

「―――は や て……?」

 

「あ、いや、久川妹のところにでも――」

 

「そうですよね?はーちゃんのことは久川妹って呼んでましたよね?それがどうして颯になっているんですか?それなら凪のことは凪と呼ぶべきですよね?いえ、それよりもいつから颯と呼ぶようになったのですか?」

 

 ウルトラミステイク!

 いや、別に颯と何かがあって距離が縮まったとかではないのだが先日デート、もとい資料集めにショッピングをしている時に太ももをつねられながら「次から颯って言わないと返事しないんだからねッ!」と言われてしまい身も心もキュン限界を突破した俺はナギお嬢様のごとくハヤテを連呼していた。その時の勢いのままシスコンの目の前で妹の名前を呼ぶという愚行を犯してしまった。

 

「ま、まあ落ち着け久川――」

 

「――凪だッ!!」

 

 ネタかガチか分からないレベルでブチギレてらっしゃる……

 

「…凪、頼むから落ち着いてくれ…レナってるぞ…」

 

「おっと、失礼。今後ともよろしくお願いしますね。……八幡さんぱい」

 

「おいやめろ。参拝なら奉られちゃってるし産廃ならおいおい泣いちゃうわ」

 

 落ち着いたと思ったが実はまだ怒ってるよね?

 

「失礼、噛みました」

 

「――違う、わざとだ……」

 

「噛みまみた」

 

「わざとじゃない!?」

 

「神がいる」

 

「よし!産廃じゃなくて参拝の方だった!!」

 

 こうして無事、久川の「凪です」凪の怒りを抑えることに成功したのだった。

 

 

―――

 

 

「閑話休題」

 

「お前が「凪」――凪が言うのかよ…」

 

 そしてまたしてもウルトラミステイク。

 隠していた腕をうっかりあげてしまいアルフォートが丸見えになってしまった。

 

「………なんと。……こ、こんなところに、あ、ああ、アルフォートが…!」

 

 うんうん、分かるよ。想像しちゃったんだよね?アルフォートでポッキーゲームしちゃうところを。

 ほぼゼロ距離だもんね。鼻とかたぶんくっついちゃってるもんね。

 エスキモーキスって言うんだよ。

 

 あと一応言っておくが、……凪のこのリアクションが見たくてこれ見よがしにアルフォートを出したわけではない。

 

 自動スリープで暗くなったパソコンの画面に映る、これ以上ないほどにやにやした俺と不意に目があったが、その事実が開示されてなお俺は無実だと言い張る所存だ。

 

「ま、せっかくだから付き合ってやってもいいぜ。ポッキーゲームとやらに」

 

「ナギッ…!?」

 

「ナギ…??」

 

「…ナーギナギナギ」

 

「ワンピースの笑い方…」

 

 おもしれーなおい。

 

 攻守が目まぐるしく変わる中でお互いが攻め手を欠き、ここぞという必殺ポイントを見つけることができず戦いは次第に泥仕合の様相を呈してきた。

 

 まあ、これが何の戦いかと聞かれると答えに困るのだが。

 

 そして今は俺のターン。

 ここで…決めるッ…!

 

 おもむろにアルフォートを咥え、椅子のキャスターを転がし久川の前まで行き、すらりと流れる頤に両手を添わせつぶやく。

 

「ほれっ、やれるもんならやって――」

 

「――もぐもぐ。……ごちそうさまでした」

 

 チュッと甘い音が鼓膜を揺らしたかと思うと、すでに口元にチョコはなくただ柔らかな感触だけが熱を帯びて残っていた。

 

 意味深なごちそうさまの声に目を白黒させながら逃げようとするも、意趣返しのつもりか凪の両手は俺の頭を左右からがっちりと固定し微動だにしない。

 

「これは癖になりますね……もう一口……」

 

「いやいやだめだむぐぐぐ――」

 

 先ほどの不意打ちとは違い今回は恋人に対してするようにゆっくりと近づいてくるので、避けようと思えば避けられたはずなのだがなぜか相変わらず俺の頭が微動だにしないのは凪の力が強すぎるからか俺の心が弱すぎるからか。

 

 柔らかな肉の感触とともに伝えられたのはチョコの甘さか乙女の甘さか。

 歯ぐきから舌に至るまでを丹念に蹂躙した凪は最後にブルリと震えるとくたっと倒れ込んでしまった。

 

「………おい。恥ずかしがっていたのは演技か」

 

 倒れ込んだ凪を見下ろしながら息を整えた俺から最初に出たのは強がりの言葉だった。

 

「…ふぅ。そんなわけないじゃないですか…」

 

 息の荒いままゆっくりと立ち上がった凪は指の腹でなまめかしく唇を拭いながら事務所の扉を開く。

 そして聞こえてきた言葉を鑑みるに、どうやらこの展開は凪も予想外だったようだ。

 

「……もしかして俺が煽ったからか?」

 

 俯いたままぷるぷると震え扉をくぐる背中に、煽りすぎたかもしれないと声をかける。

 そしてパタリと扉の閉まる直前、聞こえるか聞こえないかくらいの大きさで凪はポツリと呟いた。

 

「ブラフですよ」

 

 

 

「―――ふっ、おもしれ―女……」

 

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