デレマスとのクロスオーバー『 基本はコメディ』 作:エビアボカドロックンロール
みんな違ってみんないい。
なんと耳触りの良い言葉だろうか。
まるで自分の個性や感性が世間に認められているような気持ちになってくる。
でも本当にそれだけでいいのだろうか。
全てが数字によって優劣をつけられることを義務教育によって叩き込まれたはずの子供たちは、初めてこの言葉を国語の授業で聞いた時に一体何を考えたのだろう。
みんないいという響きにどこか救われたような気持になったかもしれないし、みんな違っていいのならどうして自分はやりたくもないことをやらされているのだろうと無邪気に思ったかもしれない。
俺はこう思っていた。
自分のことを表す言葉にどうして“みんな”が関係あるんだろうか。
“そのままでいい”と言うだけではダメなのか。
耳触りの良い言葉の中でさえも“みんな”と比べられることからは逃げることが出来ないのかと。
所詮この言葉で認められている個性や感性はあくまで他人と比べたときの分かりやすいキャラ付けやレッテルでしかなく、やがては十人十色と言うこれまた耳触りの良い言葉へと収束されていく前段階でしかない。
十人十色。つまりは一人一色。
あいつはいつも元気だから赤色を、あの子は可愛いからピンク色を、あの人は大人っぽいから青色を――
こうしていつの間にか俺には、誰にも選ばれず残った色が割り当てられる。
嬉しいことがあった時も悲しいことがあった時も、俺が担当している色は一つだけなのでそれに応じたキャラを演じるしかない。
だがいつでも同じ人間なんているはずがない。
ゆえに今こそ言いたい。光の当たり方によって見え方の変わる色もあるのだから、せめて一人二色くらいは必要なのではないだろうか。
結論。俺はSっぽいところもあるが別にドМな気分の日があっても愛さえあれば関係ないよねっ。
ーーーーーー
「……八幡ちゃまが壊れてしまいましたわ」
一心不乱にキーボードを叩き続ける俺に可愛い顔とくぐもった声でひどいことを言うのは、柔らかい金に輝く髪をツインテールに結わえた櫻井桃華だ。
いつものお嬢さま然としたカチューシャも非常に可愛いが、このツインテールから漂う小生意気なオーラもこれはこれで櫻井の持つ魅力を存分に発揮しているように思う。
あと櫻井が言うように確かにあまりにも長く画面と向き合い過ぎて少しおかしな思考になっていたかもしれない。
だから言っちゃう。
「桃華のツインテールは最高にわからせたくなるな」
「八幡ちゃま如きがわたくしに何をわからせると言うんですの…?」
「―――ごめんなさい」
むしろノータイムでわからせられました。ありがとうございます。
一見フラグとしか思えない櫻井のセリフだがこういうのは何を言ったかではなく誰が言ったかが重要だと俺は知っていた。
有言実行を地で行く櫻井の言葉を軽んじてはいけない。
あと今日の俺はわからせるより、わからせられたい気分だったということもほんの少しだけ関係があるかもしれないということをここに宣言しておきたい。
疲れた体に優しさ(わからせられ)が染み渡るぜ
「まったく…、夢を見る時は部屋を明るくして離れて見るものですわよ」
「ふ、深い…」
何を言っているのか分らず少し考えて、それでも分からなかったので適当に「ふ、深い…」とか呟いちゃう。
あと先ほどからなぜか子供特有の少し高い体温と布越しに感じる熱い吐息が俺の胸を温めている。
始めは仕事に夢中になりすぎるあまり幻でも見ているのかと思ったが、太ももに感じる儚いほどの軽さでありながらも確かに感じる質量は、今もなお俺の胸に形の良い鼻を押し付け何かを吸引し続ける櫻井を決して幻ではないと教えてくれる。
「ほら八幡ちゃま手が止まってますわ。わたくしの髪に鼻先を押し入れて肺が破裂するほど深く息を吸い込んでも構わないですからもう少しお仕事頑張ってくださいまし」
正直もう疲れたから残りは明日に回したいけど、それでも頑張れと言われたら頑張ってしまうのが男の子の悲しい性。
「おう……」
あと自分がされて嬉しかったことを人にもしてあげようとする櫻井の優しさには素直に感心するが、対面座位の体勢でお互いに吸引し合うとか完全に前戯です。ありがとうございます。
それからはゾーンに入ったのか、ずいぶんと長い時間を集中して作業に当たることが出来た。
一段落ついたのでそろそろ帰ろうと思い窓の外を見ると街はすっかり暗くなっていたが、俺の胸に引っ付いたままの櫻井はむしろ今からが本番だとでも言いたげな表情で俺の目を覗き込む。
「ふぅ…ふぅ…、わたくし暑くなってしまいましたわ…。八幡ちゃま、申し訳ないのですけれど上着を脱がしてくださいませんか…?」
頬を赤く染めて上目遣いで呟く櫻井に俺は……
A.脱がす
B.脱がさない
C.むしろ自分が脱ぐ
D.その他