デレマスとのクロスオーバー『 基本はコメディ』 作:エビアボカドロックンロール
紅葉のように頬を赤く染めて上目づかいで呟く櫻井に俺は……
夢遊病のように手がシャツのボタンへと伸びていき、下から上へとひとつひとつ丁寧に外していった。
あえて上からではなく下から外していくところが恥じらいを高める最大のポイントです。
ひとつボタンが外れるごとにとてつもない背徳感が電流となって全身を駆け巡り、すべてのボタンを外し終えるころには太ももに感じていた櫻井と俺の肉体の境界線はどろどろに溶けて消えてしまったかのようだった。
「そ、そんなに見つめられると照れてしまいますわ…」
「いやだって―――中にもう一枚シャツがあるから……」
「シャツonシャツですわ♪」
「そ、そうか…」
気を取り直して再び下から舐めるようにボタンを外していく。
ひとつボタンが外れるごとにとてつもない背徳感が以下同文――
最後に首元のボタンを外しそっとめくるようにシャツを脱がせると、少し汗ばみ熱くなった肩が顕わに……ならなかった。
「――シャツonシャツonシャツ!!?それなら暑くなっちゃうのも納得だよね!!!」
「ふぅ。やっと涼しくなりましたわ♪――心さんにコーディネートいただいたのですけど…わたくしにはまだ早かったようですわ……」
「くっ、なるほど、始めからおちょくられていたわけだ……。――おい、そこで見てるんだろ……」
………あれ?誰もいねえのか…?
………え、うそ。やだ恥ずかしッ!!!
「真っ赤になる八幡ちゃま、お可愛いですわ♡♡」
。。。
紅葉のように頬を赤く染めて上目づかいで呟く櫻井に俺は……
「―――っていうかアイドルの服を脱がすとか普通に無理だからッッ!!」
200年前の倫理観ならいざ知らず、忌々しきは児ポ法。
「……」
「ないって!!やっぱこれはないって!!」
いきなり日和った俺を先ほどまでの火照りはどこへやら、極寒の表情で見つめる櫻井。
「――クリスマスにはまだ早いですのに、どうしてこんなところにチキンがあるのでしょうか……」
「チキンです。ヘタレです。すいません。何と言われようとも返す言葉もありません。マジで勘弁してください。俺が悪かったです。調子に乗りました。正直このまま雰囲気で行っちゃえとか思いましたが、常識的に考えたらあと一歩踏み出したらそこは刑務所だったんじゃないかと愚考しますッッ!!!」
即座に櫻井を膝から降ろし、先ほどまで温かい感触を楽しんでいた膝は今度は冷たい床へとキスしていた。無論、どうかしていた俺の額も冷たい床と同化していた。ネイルと同化したピッコロの気持ちが始めて分かった気がします。
「八幡ちゃま…、わたくしがどれくらいの覚悟を決めてこうしているんだと思いますか?」
「す、すまん。皆目見当つかん…。―――ま、まあ、あえてそれを言う必要は無いぞ―」
「―散々焦らされた八幡ちゃまに強引に、けれどもどこか優しく初めてを奪われて…いえ、捧げたわたくしはその後無事、元気な女の子を出産。事務所の皆さんが血の涙を流して祝福してくださる中で結婚式をキリスト式、神前式、仏前式、計3回行いますの。そして婿ぐことで櫻井を継いで頭首になりました八幡ちゃまの貞淑な妻として公私ともに支えとなり、ゆくゆくはラグビーチームが作れるほどに増えた子供たちを連れて家族みんなで海外旅行に行くのですわ♪」
俺の言葉は聞こえなかったのか、予定表を読むように諳んじる櫻井はおそらくもう一度尋ねても一言一句違えることなく言い切って見せるであろう確かさがあった。婿ぐって初めて聞いたわ。
つーかこれって……
「覚悟じゃなくてただの妄想じゃね…?」
「何か言いまして?」
後頭部に感じる推定20センチ。正直嫌いじゃない。
櫻井はブレーキのつもりで踏んだのかもしれないが、残念ながらそこは俺のアクセルだ。的なフレーズが浮かんだ。
「うっ、なんでもないです……。最後に一つだけ聞かせてくれ、ラグビーは7人制か?それとも15人制か?」
「……ご想像にお任せしますわ♡」
「―――ワンチーム……」
。。。
紅葉のように頬を赤く染めて上目づかいで呟く櫻井に俺は……
なぜか自らのネクタイを引きちぎり、ボタンがはじけ飛ぶのも意に介さずシャツを強引に脱ぎ捨てた。
「アギャッ!!」
「あ……」
そして不幸なことにはじけ飛んだボタンの一つが櫻井の眉間に直撃し、あまりの衝撃に白目を剥きそのまま後ろへと倒れ込んでしまった。
「とりあえずソファーに運ぶか…」
気絶してしまった櫻井をお姫様抱っこで抱えあげるが、鍛え上げられた俺の筋肉には一切の負荷も感じない。普段武内さんと地下のトレーニングルームで鍛えている時に使用するバーベルに比べれば綿のようにすら感じた。
物足りなく思った俺はおもむろにスクワットをすることにした。
しかしお姫様抱っこでは軽すぎてトレーニングが成立しないので両手で頭上に持ち上げるようにして、あえてその不安定さを筋肉によって支えることにした。イメージとしてはアシタカとサンがシシ神に首を返すシーン。
安全に最大限配慮したうえで俺のスクワットはどんどんと勢いを増していく。
全身を駆け巡る乳酸がそろそろ休憩しろと訴えかけてくるが、限界のその先を見るためにはこんなところで休むわけにはいかない。
「ハァ、ハァ……」
幼女を頭上にかかげ息を荒げて上下運動を繰り返す俺はもしかしたら変態として見られてしまうのかもしれないが、取り入れる酸素の全てを肉体へと送っていた俺の脳みそはそのようなことは些事として処理したようだった。
「クッ、ハァッハァッ…げ、限界突破あ゛ぁ゛ぁぁぁ!!!!」
そしてついに俺の筋肉は肉体の枷を超越し、その筋肉圧は日本から遠く離れた筋肉の本場、アメリカでも観測されたと後で聞いた時はゴールと言うよりもようやくスタートラインに立てたような誇らしい気持ちだった。
しかしここで問題が発生した。
櫻井を優しくソファーに寝かせる筋肉残量がないことに気が付いてしまった。
まさかアイドルを乱暴に落とすわけにもいかず残された選択肢は魂の代価と引き換えに筋肉の扉を開くことだけだった。
通行料として筋肉を持っていかれる危険性もあるが致し方ない……
「お見事です。比企谷君」
俺が扉を開こうとしていたその刹那、圧倒的横隔膜の筋肉圧から生まれる重低音は事務所に存在するガラスの全てを破壊しながら颯爽と現れた。
「た、武内さん…!」
「後は私に任せてください……阿ッ!!!」
刹那、いや刹那すら超えて虚空のまにまに光速をはるかに上回る速度で広がった筋肉圧が地球、果ては銀河をも包み込んだ。
一説によるとこの時の筋肉圧によって世界各地で救われた命は1億人にも上っていると言われている。NASAには宇宙から感謝のメッセージが届いたとか…
こうして櫻井をソファーへと寝かせることが出来た。
「…すいません。俺にはああするしか方法が思い浮かばなかったんです…」
「―――比企谷君の筋肉道は私が守ります。あなたはあなたの信じる道を進めばいいんです」
「た、武内さんッ……。あっ。こ、これは涙ではなく、疲労物質の乳酸が分解されるときに出る水です…!」
「ははっ、なら新しくエネルギーが作られたってことですね。それじゃあ太陽に向かって走りましょう!」
「はいっ!!!」