デレマスとのクロスオーバー『 基本はコメディ』 作:エビアボカドロックンロール
「子供スマホに興奮する人お疲れ様です」
「不名誉すぎる挨拶はやめてください……」
そう言ってデスクにことりと置かれたマグカップからはコーヒーの薫りが湯気とともにふわりと広がり、その奥に感じる優しいミルク、あなただったんですね。お練乳様。
先ほどの言葉は意訳するならばおそらく“そろそろ休憩してはどうですか?”と言えばいいところを無駄なオブラートで包んでしまったのだろう。
言葉通りに取るなら“お仕事大変そうですねロリコンさん”。……失礼千万である。
「簡単スマホの方が興奮するんでしたっけ?」
「熟女好きでもねえよ」
「ロリコンでも熟女好きでもないのなら……ハッ!狙いは私ですかッ!!?」
何かに気付いたかと思うと自らの肩を抱きしめ赤くなった顔でチラチラとこちらの様子を見ている。
ええい、うっとうしい可愛い
つーか俺のストライクゾーン極端すぎるだろ……
「―――あなたは未亡人枠でしょ。美優さん」
少しムキになって言い返せば、すべての感情が消え落ちてしまったようにピタリと動きを止めてしまった。
窓際で太陽を浴びて狂ったようにカクカクと踊り続けるりんごろうも空気を呼んで微動だにしない。
「……実家に帰った時に親戚のおばさんが“あら?子供は旦那さんに預けてきたの?”って」
「…ッ!」
「―――私、未婚なんですけど…なんなら純潔ですらあるんですけど……そんなに経産婦っぽいですかね……?」
「経産婦……」
“大いなる力には大いなる責任が伴う”とはベンおじさんの言葉だが、男というのはどうして責任という言葉を嫌がるのだろうか。
元を正せば散々未亡人イジリをしてきたのは俺だ。何度も繰り返し未亡人と言っている間にそれは言霊となりやがて美優さんのオーラを未亡人へと変質させていったのかもしれない。
だとしたら美優さんが今感じている焦りは俺に責任の一端がある。一端でも責任を背負うのなら一旦と言わず、もう少し長い時間を背負ってみるのも悪くないかもしれない。
ここまで結論が出たのなら必然、俺が彼女にかける言葉はこれしかないだろう……
「マジウケる」
「よし、戦争じゃ」
般若の如き形相で立ち上がる美優さん。
「いや今回に関しては先に喧嘩を売ってきたのは美優さんでしょ…」
「うっ……確かに……」
イージーすぎるぜ。
つーか経産婦って言葉のチョイスからしてどエロ過ぎるだろ……
勢いよく立ち上がったものの振り上げた拳の行先を失った美優さんは縋るような視線を俺へと向ける。
いつだったか、30歳になってもお互いに相手が見つかりそうにも無かったら……みたいな話題を武内さんへと血走った目で語りかけているちひろを見たが、その血走った目に浮かぶ“武内さんが30歳になるまでの間、ありとあらゆるフラグをへし折り続ける”という覚悟はそれはもう鬼気迫るものがあったがそれはまた別のお話。
ともあれそんな縋るような目を向けられたら…
「なんですかその目、もっと泣かせたくなるじゃないですか……あれ?」
「ふふ、うふふ、やっと効いてきたようですね。実は志希ちゃん特性“心の壁薄くナール(中毒性は無いよ?ホントだよ?)”をコーヒーの中に入れさせていただきました」
は?いやいや……
良くも悪くも心の中と言うのは一生の中で他人に見せることが無い、本当の意味で墓場まで持っていくものだろう。それをたかだか薬を飲まされたくらいでつまびらかに話してしまうなんて……
「それ何てエロゲ?―――じゃねえ!!」
「そしてここにあるのはボイスレコーダーです。裁判で証拠能力として使えるように録音することに承諾してもらえますか?」
「ふんっ!別にかまわないわよ!どうせその録音した音声で私を脅して乱暴する気でしょう?エロ同人みたいに!エロ同人みたいに!!―――だ、ダメに決まってるじゃないですか……」
あ、ダメだわ。心が悦んじゃってる。なんかもうノリノリだし。
心を犯されるってこういうことなのね。んほぉ、八幡だんだん気持ちよくなってりゅ~とかそんな感じ。
「……比企谷さん、あなた疲れてるんですよ」
「やかましいわ。そりゃ疲れるでしょ、四六時中こんないたずらに警戒しながら働かないといけないんですから。実際ちょっと気を許したらこうして薬を盛られているわけですし……」
「それは、……ごめんなさい。―――嫌いになってしまいましたか?」
「嫌いだったらここまで力になりたいとは思わないでしょう……」
「「えへへ~~」」
―――心の壁がなくなったのは百歩譲っていいとして、これ本当に俺の心の声なのか!?
「うふふ、嬉しいです♪比企谷さんがそんなに私の事を想っていてくれたなんて♪」
「確かに美優さんの事は憎からず思っていますが、美優さんだけを特別に―――」
「私の事は好きですか?」
ん?そりゃ好きか嫌いかで言えば当然好きということになるが……
「――好きです。……ハッ!」
「言質取ったった……」
『確かに美優さんの事は憎からず思っていますが、美優さんだけを特別に――好きです』
「ちょっ、そういう使い方するんですか?」
「これを社内放送で流せばそれはもう婚約発表みたいなものですよね…?」
まさか俺のセリフから愛の告白と聞こえないこともない音声でかろうじて既成事実と言えなくもない何かを作り強引に責任的なニュアンスを取らせていっそのこと本当に経産婦になってやろうという計算なのか。
これが噂の逆レイプ。
「くっ、殺せ!」
とか言っちゃう。
「口ではそう言っても身体は正直みたいですよ?」
「口も身体も正直なんだよな~」
油断したら次から次へとよろしくない心の内がトロットロに吐露されてしまう。
「………養ってあげましょうか?」
「何卒よろしくお願い申し上げます」
「子供は何人欲しいですか?」
「女の子2人と末っ子に男の子が欲しいです」
「私の好きなとこ10個言えますか?」
「顔 胸 うなじ 鎖骨 おへそ 指先 くびれ 背中 内もも お尻」
「全部身体やんけ…自分どんだけすけべやねん……」
自分でも驚きだがびっくりするほど滑らかに口が動いたんだから仕方がない。
ふむ。………よく考えればこれくらいの軽口はいつものことかもしれない。
であるなら、そこに自分でも気づかなかった本音が乗ったところでこれはこれで一種のカウンセリングのようなものとして考えればそれほど悪いことではないのかもしれない。
「せっかくなので良く見せてもらってもいいですか?」
「えっ、」
「あっ、後でオカズにしたいので着エロも撮らせてください」
「えっ、えっ?」
「あー、だめだ。――すいませんっ!ちょっと個室ビデオ行ってきます!」
「あれぇ………?」