デレマスとのクロスオーバー『 基本はコメディ』   作:エビアボカドロックンロール

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単短編練乳3 ちひろ「儲け話があるんですけど聞きます?」八幡「(最終的に私だけが)儲け話があるんですけど聞きます?の間違いでしょ」

 

 

 

「は、八幡ちゃま!ちょうどいいとこにいらっしゃいましたわ!」

 

 

 ちょうどいいも何も、自宅のベッドに俺がいるのは当然のことだ。

 

 突然開け放たれた扉の音で目を覚ました俺が最初に考えたのはそんな呑気なことだった。

 あるいは寝坊してしまい誰かが迎えに来たのかもしれないと思いカーテンの隙間から外を見るが、朝日のあの字もなく綺麗な月が未だ夜が明けていないことを如実に物語っていた。

 

 扉の方へと目をやれば金糸のような髪をふわりと広げ、月明りを煌めかせる櫻井はそれはもう幻想的なまでの美しさであったが寝ている所を叩き起こされた俺にそれを愛でる余裕はなかった。

 

 

「―――今何時だと思ってやがる」

 

 

 必然、口調も乱暴なものとなる。

 

 

「朝の2時47分16秒ですわ。そんな時そばみたいな質問は後にして!八幡ちゃまも一緒にカウントダウンなさってくださいませ!」

 

「え、こわ。なに?時報なの?」

 

 

 時に大将、今何時でい。でおなじみの落語、時そばは関係ない。

 俺が白目を剥いているその間にも無情にカウントダウンは続く。

 

 

「5・4・3・2・・・いつもありがとうございますわ♪八幡ちゃま♪」

 

 櫻井の手にひかれたクラッカーがぽへっと情けない音を立てて破裂する。

 近隣住民に配慮したのかサイレンサー付きのクラッカーは音がない分、私が盛り上げますと言わんばかりに紙吹雪が部屋を埋め尽くしなぜか極上の触り心地。良い紙使ってますね。

 

「………そのサイズのクラッカーでは物理的に説明できないレベルの紙吹雪をありがとう」

 

「さて、ただいまを持ちましてわたくしたちが出会ってからちょうど1000万秒なわけなのですけれども」

 

 だそうですよ奥さん、意味わかります?私は微塵も分かりませんし分かる日が来ることもないでしょう。

 1000万秒という意味の分からんアニバーサリーに現実逃避をしながら紙吹雪を手に取りふぁさーと広げてみる。

 ………鼻セレブじゃんよ。

 

 

「………」

 

「どうかなさいまして?」

 

「………こわぁ~、笑顔こわぁ~」

 

 

 紙吹雪のカーテンの向こうからこちらを覗く櫻井は、見ている分には完全無欠にアイドルスマイルのはずだが身体が震えるのはなぜだろう。笑顔の起源は威嚇とかそんな感じだろうか。

 

 

「続いては八幡ちゃまお待ちかね、度を越したプレゼントの時間ですわっ!」

 

「待ってねえし続くな。せめて朝までは寝かせてくれ」

 

「ね、寝たいだなんて……そ、そういうのは13歳からと法律で決まってますのよ!」

 

 

 決まってないので俺は寝る。

 

 

「Zzz…」

 

「でも、八幡ちゃまがどうしても今すぐにとおっしゃるのであれば法律を変えることもやぶさかではないですわ♡」

 

 

 やぶさかであれ。

 

 

「Zzz…」

 

「沈黙は肯定と的な具合でちょいと失礼しまして―――か、硬いですわ…これが男性の身体…それに…平常時でこの硬さ……」

 

 

 ちょいと失礼するな。

 

 

「Zzz…」

 

「ふふ♡撫でるとピクピクしてお可愛いことですこと♡」

 

 

 腹筋がね!!

 

 

「腹筋がね!!」

 

「―――あら?起きてましたの八幡ちゃま…」

 

「こんな部屋で寝てられるか」

 

「ふふ、ミステリー小説みたいなセリフですわね♪」

 

 

 図らずも言ってみたいセリフ16位を使うことができ内心上機嫌。よってノリノリ。

 

 

「ほんとミステリーだわ。俺の部屋にどうやって入ったかとか、1000万秒ってなんなのとか」

 

「A secret makes a woman woman.――ですわ!」

 

「やかましい」

 

「ところでプレゼントなんですけれども」

 

 

 早くプレゼントを自慢したい子どものように…というかまんまその通りなんだがもじもじと話を戻そうとする櫻井に、しかし俺は何か返せるようなものがないことに気が付いた。

 そもそも115日がなんの節目なんだって感じではあるが…

 

 

「―――つか、俺は何も用意してねえぞ…」

 

「気になさらないでください。八幡ちゃまは八幡ちゃまとしてそのまま健やかに生きてさえくれればいいんですの。例えその心も体もわたくしのものにならないのだとしても八幡ちゃまが今日を幸せに生きているという事実だけでわたくしは幸せですの♡何があろうと八幡ちゃまには未来永劫幸せに生き、そして幸せに死んでいただきますわ♡無償の愛とは対価を求めるものではないのです♡」

 

「お、重い…」

 

「そう!これがわたくしの想いですわッ!」

 

 

 なんで櫻井の笑顔を見ると体が震えるのか今分かった。狂気だわこれ。

 顔に飛んできた櫻井の唾を寝間着の袖で拭いながら言葉を返そうとすると、我が意を得たりとばかりにウキウキと説明を始めた。

 

 

「はぁ。んでプレゼントってのは?あんま高価なもんは受け取れねえ――」

 

「そうおっしゃると思いまして今回は帽子やスニーカーなどにしましたの」

 

「えっ、マジ?……普通に嬉しい。あ、でもブランドもんとかも――」

 

「そうおっしゃると思いまして今回はブランド物ではないですわ」

 

「東京特許許可局ッ!!!」

 

「……そ、そうおっしゃると思いまして」

 

「無理やりにそうおっしゃると思わなくていいんだぞ?」

 

 

 床が見えないほどに埋め尽くされた紙吹雪のせいでプレゼントは見当たらないが、今回は後で値段を聞いて胃を痛くするようなことにはならなさそうだ…

 

 

「…コホン。そうおっしゃると思いまして新たにブランドを作ってきたのですわ!」

 

「斜め上過ぎる」

 

 

 胃が痛いよぉ…

 

 

「ロゴは八幡ちゃまのイニシャルから取りましたの」

 

「え、えっちすぎる……」

 

「帽子もH、スニーカーもH、パーカー、パンツ、バッグ、シャツ、靴下に至るまですべてがHですわ!」

 

「エルメスってご存じない?」

 

「あら?そういえばビルの屋上にも八幡ちゃまのブランドロゴがあったような…」

 

「ヘリポートってご存じない?」

 

「むむ~、使用料をいただかなくてはいけませんわッ!―――安心なさってくださいまし、すべて八幡ちゃまのお小遣いですわ♪」

 

 

「良心ってご存じない?」

 

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