妖精と転生
拝啓、お母さん。俺は今、でっかい狼から全力で逃げています。
「…何でこうなったんだよぉぉぉ!!!」
いやホント、どうしてこうなった。
☆☆☆☆
始まりは、寒さで目が覚めた事だった。
おっかしいなぁ。昨日はいつもの様にちゃんとベッドで寝たはずなんだが。
布団を蹴飛ばしでもしたのか?そう思いつつ、目を擦りながら起き上がってみる。…やけに頭が重いのだが、気のせいだろうか。
そして目を開けると。
目の前には、森が広がっていた。
…いやいや、何を言っているんだ俺は。目が覚めたら森の中に居るとか、そんな事ある訳無いだろ。…無いよな?うん、無いわ。まさか攫われてここに放置された、なんてことも無いだろうし。
というかさっきから、視界の端に白っぽい何かがチラチラ見えるんだけども。何だこれ、と思い引っ張ると。
「…痛っ!?」
俺の頭に痛みが走った。…え、これ自分の髪?俺の髪こんな白くない筈なんだが。そしてこんなに長くなかったのだが。腰辺りまであるぞこれ…。
しかし、痛みがあったってことは夢の類などではなく、現実という事になる。
「一体何がどうなってッ……!?」
…どういうことだろうか。俺は元々、どこにでも居るような普通の男だったはずだ。もちろん、声もそれなりに低かった。それなのに、何で自分の口からかなり高い声が出ているんだ?…混乱して聞き間違えでもしたのだろうか。
「あ、あ。あー。」
…聞き間違いではなかった、確実に高くなっている。それも、
まずは立ち上がってみる。…目線が、低い。元々180cmくらいだったのだが、それよりかなり低くなっているように感じる。体感で140…いや、それよりも低いだろうか。
下を向く。…胸の辺りに、決して大きいという訳ではないものの、小さく、確かな膨らみがあった。
最後に、ある場所に手を入れ━━絶望した。以前までそこにあった、男の象徴とも言えるモノの感触がしなかったのだ。
それらが意味する事は、つまり。
「…何でロリっ娘になってるんだよぉ…」
俺は、静かに崩れ落ちた。
☆☆☆☆
しばらくして、ようやくショックから立ち直ることが出来た。…まだ理解したくないけどね。
これからどうしようか。とりあえず、もう一度周りを見てみるか。現状把握をしないと何も始まらないしな。
…で、周りを見たのだが。やはり、見渡す限りの木、木、木。どう考えても森のど真ん中である。しかしそこまで木は密集していない様で、所々日の光が差しているのが見える。
と、ここまで見てもう一つ気付いたことがある。後ろを見た時━━つまり俺の真後ろに、透き通るような薄い何かが見えるのだ。だけど、しっかり見ようとして体ごとそっちに向くと、ソレは意思でもあるかのように視線の反対側に回り込んでくる。
それを何回か繰り返し…じれったくなり、手を伸ばしてソレを思いっきり掴み取った。
「ひゃあああああああああ!?」
その途端、俺の背中側を中心に今まで感じたことが無い様な感覚が襲い掛かってきた。
「び、びっくりした…。何だ、今の」
ホントにびっくりした…しかも、すごい女の子っぽい声出ちゃったよ。
ていうかコレ…よく見たら、
もう一度、よーく見てみる。2対4枚の、先がちょっと尖ってる大きくて薄いソレは。まるで、アニメやゲームに出てくる妖精のような…。
「…ま、まさか。」
つまり、「
ガサガサッ
「ッ…!?」
そんな本日2回目のショックに震えていると、突然自分の居る場所のすぐ近くから音が聞こえてきた。何か居るのかと思い、警戒しながらそっちに振り向くと。
目の前に、巨大な狼が居た。…どうやら、さっきの大声で呼び寄せてしまったみたいだ。
大きさは前の俺と同じか少し大きいくらい、つまり今の俺よりも結構大きい。そのせいか、かなり威圧感がある。
しかもソイツの目は、獲物を狩る捕食者のような、そんな目をしていて…。
俺は、後ろを向いて全力で走り始めた。
追記:サブタイを少しだけ変えました。
感想や評価、誤字報告などありましたら是非。