翌日。スペシャルハードコースが始まった。最初は岩を引いて島を外周する。ダイは大岩三個だったが、リエルは元々の体力の違いでニ個引くことになった。
『ほら、がんばれー。ふぁいとー』
こんな全然心がこもってなさそうな励ましを貰っても、酸素を取り込むことに集中しているため突っ込むことが出来ずにいるのが修業の過酷さを物語る。
脚が痛い。いや、痛いなんて代物では無い。転生しなければ人生でこんなに脚を酷使することなど無かっただろう。今そんな事を考えても何の意味もないが、辛い時ほどどうでもいい考えをしたくなる。
『そんな下らないこと考えてる暇なんて無いぞー。もしもは無いんだ、今の事だけを考えておけ』
その後も、体術、瞑想、呪文など一通りやり終えた後、ダイが岩を割っていた。身長の三倍ぐらいはあるだろう大きさの岩だ。信じられない。
(凄いなぁ、ダイは)
この一日で、メキメキと腕を上げている。私は、何か上がっただろうか。
「あれ、まだ起きてたのか」
夜、ポップが森の中で偶然会った目の前の少女に言う。髪を結んでいたリボンは手首に巻いている。髪を下ろしたら割と長いようだ。腰に届くほどある。
「デルムリン島はどうだ?」
「割と居心地良いと思うぜ、おれは。ここでなら、見張りもしなくて良いし」
「あー、そうだったね、そういえば」
「何が?」
「いや、何でもないよ」
「あ、そうだ。ここってトイレとかあったりするのか?」
そういえば、とリエルに聞く。
「いや。そこら辺でする」
「あんがとさん。ところで、何か口調おかしくないか?」
「気のせいだ」
「…?そっか。ところで、何で起きたんだ?」
「これだ」
そう言って、リエルはクラムソードを見せた。
「一応、手入れにだな。ブルーメタルだからそう簡単には壊れないと思うが、念のため。めんどくさがって中々点検をしようとしないからな」
「しようとしないって、それお前のじゃないのか?」
「そうだな。まぁ、気にしないでくれ。じゃ」
手を振りながら背を向けて、去っていった。
「おやすみ…あ、忘れてた、トイレトイレ!」
「リエルさんは、多分ですけど攻撃魔法のイメージを【怖い】として受け取っているんでしょうね」
子供達が寝静まった頃、アバンがブラスに言った。
「と、いいますと?」
「よくある例なんですよ。魔法で怪我をしたり、失敗してとんでもないことをやらかしてしまったり。そういった事があったりして、本当はもっと上手く使えるのに、威力が弱くなってしまったり、魔法を使えなくなってしまったりするんです。リエルさんは、昔何かそういったことはありましたか?」
「…あぁ、そういえば。まだ魔法が使える様になった頃、一回だけメラの中に手を突っ込んでしまったことがありましたですじゃ」
「…なるほど。まぁ、最近は少しずつ威力が上がってきているらしいですし、段々と克服しているんでしょう。良い傾向です」
(ダイ君は、何処か苦手意識があるんでしょうね)
スペシャルハードコース二日目。
「やった、やった!」
リエルは大はしゃぎしていた。それもそのはず、アバン流槍殺法【地雷閃】を習得したのだ。リエルには剣は合わないという理由で、槍の修行に切り替えていた。クラムソードも改名しないといけないかもしれない。まだその予定は無いが。
『よくやったじゃないか、リエル!私も鼻が高いよ』
棒読みではなく、本当に嬉しそうにしている。なんだかんだいって、本気で修行に付き合ってくれているのだから少し嬉しい。
「えへへ…!やりました、先輩!」
また夜。
「そういえば、先輩って誰なんだ?」
と、ポップに聞かれた。
「あ、それおれも思ってたんだよね。前は夢って言ってたし…っていうか、せんぱいって何なの?」
どうやらダイは【先輩】の意味まで分かっていないようだ。
(うーん、どうしよう…)
元より先輩の事を人に言う気はさらさら無い。説明するのがめんどくさいというのもあるが、ちょっとだけ、先輩は私だけのものという独占欲もある。
『ふふ、嬉しいねぇ、後輩がそう思ってくれているってのは』
心の声がダダ漏れなのは数少ない欠点だ。『うぐっ…』という声も聞こえたが無視しておこう。
「秘密の一つや二つ、誰しもあるものなんだよー。と、いうことで!この話終わりー」
ポップは。
(…イマジナリーフレンドか何かなのか…?っていうか、昨日の夜も何か様子がおかしかったな…)
ちょっと心配していた。
ダイは。
「ねぇ、せんぱいって何?」
ポップに聞いていた。
『全く、可愛いねぇリエルは。例え一人でも好意を持ってくれている人がいる事は嬉しい限りだよ』
(そんなんじゃないですよ!ただ…?…ただ、何だろう。さっきまで思ってた言葉が突然出てこなくなりました。先輩、何か分かりますか?)
『いや?何なんだろうね、一体』
絶対何か隠してる。十二、三年一緒に生きてるから何となく分かる。ただ、今はそっとしておいた。
「ねぇ、リエル!怖い話無い⁉︎」
突然、ダイが聞いてきた。
「ん?何で?」
「ポップがさ、怖い話してくれたんだけど、こう言う話初めてだから面白くって!ねぇ、何か無い?」
「成る程、怪談話という訳か。ポップはどんな話をしたんだ?」
「簡単に言うと、村で噂になってた夜のカンテラ大男がおれの親父だったって話」
一体全体どうしてそうなってしまったんだ。
「別の意味で怖いというやつか」
「っていうか、リエルまた口調変になってないか?」
「リエルは夜いっつもこうだよ」
深夜になると大体こうなる。そうダイは説明した。
「まあいい。では、私の話を聞いてくれ」
リエルは話し始めた。
「五本の指があった。それらはとても仲が良く、いつも支え合って生きてきた。人差し指と中指は特に仲が良く、いつも一緒だった」
「指って大体いつも一緒なんじゃねえのか?」
その声を無視して話を進める。
「ある時、人差し指の第一関節から上が反対側の手の指に切られた。人差し指は死んだ。そのショックで中指は自身を真ん中から真っ二つにし死んだ。そして年月が流れ、薬指と小指は寿命で死んだ。そして、親指だけが残った。それは何も変わる事なく、そこに有り続けた。何度斬られても元通りになった。焼かれても灰がら復活した。そして頭や胴体、足が死んでも、親指だけは生き続けた。親指は静かに泣き、こう呟いた。死にたい、と。…どうだったかな?」
「…これ、怖い話のカテゴリに入るのか?何か全然分からないまま終わったけど」
「つまりだな、不老不死が一番怖い、という事さ。どうだい、ちゃんと《怖い》って意味は入ってるだろ?」
「よく分からないけど、面白かった!ねえねえ、もっと無い?」
「あるぞ。どんどん話してやろう」
その後、アバン先生がもう遅いからと止めるまで怪談(?)話は続いた。全て自作の物語らしい。怪談とリエルが言っている話は大体よくわからない話だったが、話を盛り上げるのには十分だった。
【ポップとアバン先生】
遂にこのデルムリン島に、ポップとアバン先生がやってきた。この三日後、大冒険が始まる。覚悟しておかねば。
[アバン先生とポップ]
島中のモンスター達が凶暴化して、その後来たアバン先生という家庭教師が皆を鎮静化していった。見かけはちょっと胡散臭いが、実力は確かだと思う。私はと言うと、ガーゴイルを倒しきれずに先輩に助けられてしまった。先輩に失望されない様にもっと頑張らなくては。それにしても、ポップがメラゾーマを放った時はびっくりした。私もあんな呪文を放ってみたいな。
はい、待たせてしまってすみません(誰も待ってない)。
毎回毎回執筆が難航しております、単三水です。これほど才能が無い奴居ないんじゃなかろうか。
そうこうしているうちにアニメではバラン戦まで終わってしまいました。時の流れって早いですね。
さて、次回は多分魔軍司令様が出てきます。多分なので出てこなかったらごめんなさい。
タイトルの「ダイの兄妹になりました。」は日本語が不自然というご指摘を頂き、改めて考えてみると「確かにそうだな…」と思ったのですが、タイトル変えるか変えないか皆さんの意見に委ねたいと思います。期間は私が次話を投稿するまでです。尚、選択肢「別にどっちでも良いかな〜。」以外の投票数がゼロ、もしくは同点だった場合今まで通り「ダイの兄妹になりました。」にしようと思います。ご協力お願い致します。
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「ダイの兄妹になりました。」で!
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「ダイの妹になりました。」で!
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別にどっちでも良いかな〜。