「えーと、食料に水、着替えに武器…あと何かあったっけ?」
「あ、ダイ、私日記持っていっていいかな?あと羽ペン」
「えっ、リエルお前日記書いてんの?ちょっと見せてくんね?」
「駄目だよ、おれも昔頼んだことあったけど絶対に見せてくれなかったんだから」
私達は今、旅のための荷造りをしていた。アバン先生とハドラーは先に行った。その時にアバンのしるし、というネックレスのような物を貰ったが、雫のような形でとても綺麗である。因みに日記を見せられない理由は明確、他の世界から来たことがバレるからである。
「ところでさ、ゴメちゃん何処か知らない?朝から居ないんだ」
「ダイも知らないの?私も見かけてないんだよね」
「大方、別れが辛いんで何処かに隠れて居るんじゃろう」
「そっか…」
この島はアバン先生が張ったマホカトールで邪気が祓われているため大丈夫だが、この島を出た途端に皆は正気を無くしてしまう。だから出られないのだ。それでも、ずっと過ごしてきたゴメちゃんに最後会えないのは寂しい。
「えっと、これから北の方にあるロモスで王様に会って、それからパプニカに行けば良いんだよね」
三人で今一度地図を見る。やっぱり何回見ても九州である。
「無理するでないぞ、三人とも」
「うん」
「行ってきまーす!」
「行ってくるぜ、じいさん」
舟を押して、そのまま乗り込む。初めてなので転びそうになったが、なんとか堪えた。
「じゃあみんな、元気でー!」
帆を張って、舟が進んでいく。
「…それにしても、ラインリバー大陸に着くまで暇だね」
ダイが言った。マジでやる事が無い。周りを見渡しても海、海、一面の青い海。代わり映えしない光景が続いていた。
「だな。オール漕ぐか、襲ってくるモンスター倒すぐらいしかやる事ねぇし…島ではどうやって遊んでたんだ?」
「えっと、木々に飛び移ってたり、海で泳いだりとか…ご飯集めついでにキノコ狩りとか…」
実は私は元々キノコが大の苦手なのだが、食べているうちに慣れてしまった。勿論好きになったというわけでは無いが、昔に比べると大きな進歩である。
「今海で泳ぐとそのまま舟に追いつけなくなりそうだし、モンスターにも襲われそうだしなあ…無理だな」
「だよねー…」
今は結構風が強いので、その分舟も早くなっているのだ。これに泳ぎで追いつくのはロープで身体を舟に縛ってもいないかぎり至難の技である。
「釣り道具とか持ってくりゃ良かったかな…いや、そしたら荷物が増えちまうし…」
「やること無いなら寝ない?一人だけ起きてかわりばんこでさ」
ダイの提案だった。
「確かに、ずっとこのまま起きてて夜寝てる時にモンスターに襲われたらたまったもんじゃないしね」
じゃんけんで決めたが、私だけ一人負けしたのでまず私が見張りをすることになった。私の次はダイ、その次にポップといった順番だ。
『みんな寝たな』
「あ、先輩」
幽霊フォームになって先輩が出てきた。…やっぱ幽霊フォームも呼びづらいな、でも他の名前思いつかないし…うーん…。
『やっぱり晴天の青空が一番良いな。気分が良くなる』
「ですね、それに今日が雨だったら雨宿りする場所も無いからびしょ濡れになるところでしたよ」
だが、私の一番嫌いな天気は雨ではなく曇りだ。前世はそんなことは全く無かったのに、曇りの日は気分がどことなく悪くなる。何らかの嫌なことを思い出しそうになるのだが、結局それがなにか分からず一日が終わる。そういう日だ。
『ラインリバー大陸に着いたら、モンスター達は今以上に問答無用で君たちを襲ってくるから今のうちにしっかり休んでおけよ。もしリエルが寝てても、私が退治しててやれるが…この姿じゃあ、いくらなんでも限界があるからな』
「はーい」
『…あと、これ、気付いてるか?』
「?」
気付いてる?何に?と思った矢先、先輩が海に潜っていった。そして、舟の真下で何かの衝撃があったあと、先輩がマーマン片手に浮上してきた。
『コイツが舟をひっくり返そうとしてたことだよ』
「…全然気づきませんでした…」
五日後。特に何事もなく無事ラインリバー大陸にたどり着いた。
「久しぶりの地上だー!」
「三半規管死ぬ…」
流石に五日感もの間小舟の上で揺られていたらこうなりもする。
「…リエル、お前相当なグロッキー状態だけどよ…大丈夫か?」
「逆に何でダイとポップは平気なのか知りたい…あ、ちょっと待って吐きそう」
「ええっ!?」
「リエル、大丈夫?」
「うん…ごめん、二人とも」
「いや、そもそも普通はこうなるもんだから気にしなくていいぜ」
着いて早々に吐いてしまった。正直かなり気分が悪いが、まあ歩いていくうちに吐き気は治まるだろう。
「えーっと…ロモスまで森を突っ切って行けば良いんだっけ?」
舟の上で、ダイと私で描いた地図を見ながら言う。前にロモスに行った時の記憶だけが頼りなので、かなり地形が曖昧だが…。
「うん!多分それが一番早いと思う!」
「ダイ、お前の言葉を信じるからな。くーれーぐーれーも、迷ったー!なんてことに…」
なった。
「…うん、やっぱこうなると思ったわ」
「だ、大丈夫だよポップ!ほら、ここを曲がれば多分…」
「…同じところじゃねーか!」
多分同じところをぐるぐる回っている。そうでなくても森の中なので、方向感覚はばっちり狂っていた。もう夜である。
「…ねえ、ダイ。これ、やっぱり遠回りしてでも普通の道を通った方が早かったんじゃ…」
「ま、うだうだ考えててもしょうがないしもう飯にしようぜ」
確かに、ずっと歩きっぱなしで空腹である。もう休んだ方がいいかもしれない。
「…あ、そーいやダイとリエルは料理したことあんの?」
手頃な大きさの石を円形に設置しながらポップが尋ねる。ダイはいい感じの枝を集めて、私はそれを石のサークルの中に置いていた。置き終わったのでポップが威力弱めのメラを唱えて、焚き火に火を付ける。
「おれ、野菜とか切ったことならあるよ!」
「魚焼いてた!」
生前は目玉焼きしか焼いたことが無かったので大きな進歩である。
「んじゃ、ダイはそこの果物とパデキアの根っこを切っててくれ。おれはいっかくうさぎを解体するから、リエルはそれを焼く係な」
「香草焼き?」
「へへーん、今日はアバン先生直伝!直火焼きいっかくうさぎorアルミラージのスープさっぱり風味だ!あ、果物はすぐ腐っちまうからデザートとして食べるだけだからな」
「うっまああああぁ!なにこれポップ、どうやって作ったの!?」
「どうやっても何も、リエルお前そこで見てただろ…」
美味い。美味すぎる。語彙力がもう死んでいるが、とにかく美味い。兎はもともと淡白な味のため疲れた身体の喉をあっさりと通り過ぎ、それでいて隠し味にほんの少し入れたパデキアの渋みがスープの味を一極端にしないようにうまくまとめ、独特な風味を作り出している。硬いパンをスープに浸しふやかして食べるとまた美味いのだ。
「そういえばさ、ポップってどうやってアバン先生に料理習ったの?おれなんやかんや失敗するからさ、旅してる間に色々教えてほしいんだ」
「もちろん良いぜ、ダイ!リエルは良いのか〜?絶好の花嫁修行のチャンス、逃しちまうぞ〜」
ということで、私も料理を教えてもらうことになった。メイン料理は大方モンスターだろうが、まずはあばれうしどりを食べてみたいところである。牛と鳥どっちなんだろう。
【旅立ち、船上一日目】
デルムリン島を出たが、舟でやることが少なすぎる。ゴメちゃんはやはり袋の中に紛れ込んでいたようだが、バレるのが心配で話しどころか動くこともできないため私達よりも暇そうである。そのうち寝始めたが、モンスターが出現するたび飛び起きているため安眠も出来ていなさそうだった。
[旅立ち]
デルムリン島から出て、ロモスへ向かうため漕ぎ出した…って書くとちょっとかっこよく見えるけどめっっっちゃ暇。死ぬほど暇。話す話題も多分明日で尽きそうだし景色は一面の青。方向感覚狂いそう。しりとりしてても最後らへん言葉を絞り出すのに三人で考えてやっと出るぐらいだったから、結局はやることも無くなって当番をじゃんけんで決めてかわりばんこで寝た。
テスト期間終わったので堂々と小説が書けます。
今回、というかこの小説全体的にほのぼのとしてますね。これからのバトルシーン書けるかどうか不安になってきます。
先輩はあまり出てきませんが、大抵はリエルの中で大人しくしていたり側で三人を眺めてニヤニヤしていたりします。三人がスープを食べていた時はこっそりリエルに一口だけ食べさせてもらっていたとか。
因みに、ハーメルンにも投稿しているこの小説の前日譚「第二次アルマゲドン」を読むとリエルと先輩のことがよく分かるかもしれません。まだ完結していませんが、次話からの展開の鍵となる人物も出てます。でも別に読まなくてもこの小説は読めますし、「第二次アルマゲドン」にはダイの大冒険要素は微塵も出てこないので読まなくて良いです。どちらかというと「リエルちゃんと先輩マジかわいい好き〜!!」という私みたいな思考を持ってる人向けですね。
タイトルの「ダイの兄妹になりました。」は日本語が不自然というご指摘を頂き、改めて考えてみると「確かにそうだな…」と思ったのですが、タイトル変えるか変えないか皆さんの意見に委ねたいと思います。期間は私が次話を投稿するまでです。尚、選択肢「別にどっちでも良いかな〜。」以外の投票数がゼロ、もしくは同点だった場合今まで通り「ダイの兄妹になりました。」にしようと思います。ご協力お願い致します。
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「ダイの兄妹になりました。」で!
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「ダイの妹になりました。」で!
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別にどっちでも良いかな〜。