初めてのプロデュースが身内ってなんですか   作:ぱらぱらり〜

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やる気があったので続き書きました


第2話

 ──次の日。

 

 仕事に入ってすぐ、事務員のはづきさんからコーヒーと共に今月のスケジュールが書かれたプリントを渡された。

 

「オーディション、意外と早いんですね」

 

「はい、早い段階で合格しないといけませんので……その分レッスンも多めに入っています」

 

「……大丈夫だろうか」

 

「凛世ちゃんは真面目にレッスンに取り組んでいますので大丈夫だと思いますよ。見た目もアイドルとしては充分すぎますから。それより……」

 

 はづきさんは不敵な笑みを浮かべてこっちを見つめる。

 

「まさか、あの子がプロデューサーさんと知り合いとは思いませんでした〜」

 

「……彼女は自分の従兄妹なんですよ。こういうのに興味がある女の子とは思ってませんでしたので……まさかアイドル事務所に来るなんて」

 

「でも、プロデューサーさん的にはやりやすいのではないでしょうか? 身内の方ならコミニュケーションも取りやすいですし」

 

「でもそんなに会っていた訳ではないですし、身内だと甘くなってしまうような気がします。……下手に怒ったりして叔父さんに言われたりしたらこの事務所にいれないかもしれません……」

 

 叔父さん怖いからなぁ……。というかよく彼女がアイドルになること許可したよな。

 

「凛世ちゃん、真面目ですからそんな事する子には見えませんよ。それに、もしかしたらプロデューサーさんに会いたいからアイドルになりに来たかもしれませんよ」

 

「自分に会いにですか? はづきさん、彼女から聞いたんですか?」

 

「いいえ、女の勘ってやつですよ」

 

 女の勘か……。とはいえやっぱり彼女のプロデュースをするのは不安がたくさんだ。ちゃんとやっていけるのだろうか。

 

 はづきさんから渡されたコーヒーに角砂糖を二ついれて一口飲む。不安が重なって舌がいつもよりおかしいのか苦く感じる。

 

 カップを机に置いた後、スケジュール表を確認しやすくするために移動させようとした。

 

「あっ……」

 

 動かした手がカップを倒し、中身を机にこぼてしまった。

 

「うわ、まずい!」

 

 俺は急いでティッシュを探すがどこにも無い。そんな時、はづきさんが早かった。

 

「プロデューサーさんしっかりしてください。今拭きますから」

 

 少し不機嫌そうな声と共に彼女が机を拭いてくれた……のだが。

 

「は、はづきさん! どうして自分の後ろから拭くんですか!?」

 

 自分の後ろから抱きつくような形で机を拭いているのだ。彼女の身体が背中に密着してしまっている。

 

「この方が早かったのでしょうがないですよ〜」

 

「だからといってこれは……!」

 

「凛世ちゃんが今いなくて良かったですね〜いたらどうなったことか」

 

 なんでそこで凛世ちゃんの名前が……。

 

「おはよう……ございます。……!」

 

 時が止まったかのような静かさが訪れた。はづきさんが彼女の名前を出した瞬間、事務所の入口から凛世ちゃんの姿が見えた。彼女は呆然とした表情でこちらを見てくる。

 

「あ、凛世ちゃん、おはようございます〜。ではプロデューサーさん、頑張ってくださいね!」

 

「あ、ちょ、はづきさん!?」

 

 恐ろしい速さではづきさんが逃げていく。

 そしてじりじりと近づいてくる凛世ちゃん。最近はいつも見ている彼女の顔なのによく分からない恐怖を感じる。

 

「プロデューサー様、おはよう、ございます」

 

「お、おはよう。凛世ちゃん」

 

 いつも通りの挨拶。それで終わり、しばらくの静寂が訪れる。

 

「プロデューサー様は、はづき様のような、大人の女性と生涯を共にしたいのですか?」

 

「……え?」

 

 いきなり話が変わるので戸惑う。つまり俺がはづきさんみたいな人が好きなのかって事だよな。

 うーん、確かにはづきさんは仕事もなんでも出来て良い人だけど……。

 

「プロデューサー様は、凛世とは生涯を共に過ごしてはくれないのでしょうか?」

 

 ん? これって遠回しにプロポーズされてる? 

 

「うーん。俺なんかよりも良い人なんて沢山いるから」

 

「凛世は、プロデューサー様が、お義兄様が良いのです……!」

 

「いや、でも」

 

「お義兄様……」

 

 どうしよう。このままだと俺がはいを言わない限りずっと繰り返すやつだ。

 

「あぁ……じゃあこうしようか。凛世ちゃんが立派なアイドルになったら君のお願いを聞く。それで良いよね?」

 

「……分かりました。この凛世、プロデューサー様のために立派なアイドルになります。そして、お義兄様との一生を、手に入れたいと思います」

 

 納得してくれた上にアイドルを目指す志を高めてくれたので良かったとしよう。

 あれ? ここに来た以上、立派なアイドルを目指す訳だから彼女と結婚する事が決定した? 

 

「それと、凛世とプロデューサー様は、今は従兄妹という関係ではありません。ですので、凛世の事を、凛世と呼んで欲しいです」

 

「凛世ちゃん……」

 

 確かに、仕事の関係で身内と同じような感覚で凛世ちゃんと言うのもダメだな。

 やっぱり仕事とプライベートは分けるべきだろう。そういう意味だよね? 

 

「わかった……凛世」

 

「はい、プロデューサー様……。凛世はプロデューサー様のアイドルになるため、精進していきます」

 

 

 

 ────

 

 

「プロデューサーさん、凛世ちゃん今までやりもレッスンに力が入ってますね! この調子ならオーディションも上手くいけると思います……なにをしてるんですか?」

 

「あ、はづきさん……凛世が自分から離れてくれなくて……」

 

 いつも通り机に向かって仕事している自分。

 凛世は自分の首の間に手を回し、抱きつくような状態になっている。

 

「凛世ちゃん、プロデューサーさんが困っていますよ……」

 

「……プロデューサー様は、凛世のものです」

 

「……あっ、プロデューサーさん、頑張ってくださいね」

 

 はづきさんは何もせず行ってしまった……。

 

「凛世、このままだと仕事しにくいから……」

 

「凛世は、プロデューサー様の傍にいてはいけないのでしょうか」

 

「……いて大丈夫だよ」

 

「ありがとう、ございます……」

 

 さらにくっついてくる凛世。甘い匂いと、吐息がかかる。

 

 やっぱり自分は身内に甘いのかもしれない。

 

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