こんな作品にも感想等をくれると咽び泣きながらゲッダン踊ります。
それでは、どうぞ。
ヘドロに片足突っ込めば
いやぁ 中々抜け出せない
そして其れは 我々にも言える事だ
*
「────────フゥ~。やっぱり、倉庫暮らしもさみしいな⋅⋅⋅⋅」
月明かりのみが照らす人っ子一人いない港に佇む男。目も気だるけだ。
彼の服装はいたってシンプル。
まず、黒のセンター・クリースを被り、白のシャツを着て真っ黒のネクタイを締め、それらの上に羽織るのは真っ黒のロングコート。履いているベイカーパンツは白。シャツはズボンに入れていない。そして、マフィアが履くようないかにもな靴。
タバコの煙が辺りに漂う。
主人公、“
そんな彼は、この世に辟易していた。
「つまらないなぁ。どこかに旅に出ようか⋅⋅⋅⋅」
タバコを指でくりくりしていると、彼の後ろからギュゥゥン、となにかが開くような音がした。
「あら。それでしたらいいトコロがありますわよ。ご紹介致しましょうか?」
カヤは、ん?と言いながら懐からアーカードの使う銃のジャッカルのような銃(色は銀でリボルバーがついている)を振り向くついでに声の出元へ、まるで息をするように構える。
そこにいたのは、腰から下に行くにつれフリフリがついていて、袖の部分にも同じように施されている道士服を着て、真ん中には紫の布が身体に添うようにして首から垂れている。布の下には陰陽玉が施されている。
扇子で口元を隠している金髪のロングヘアーの女は少しだけ銃を見るが、どうと言う事はないと言う風に目線をカヤへ向ける。
「おお。びびらないんだ。ハジキじゃあ駄目だね」
カヤが感心したように声を上げる。カヤは金髪の女に拳銃での脅しが効かないと分かると、潔く銃口を女から外し、懐へ戻す。
「あらあら。オハナシの通じる御方は好きですわよ」
「ははは。どうだかねぇ。ま、俺もアナタの言うオハナシは好きかもよ」
金髪の女がふふふと笑えば、カヤがカラカラと乾いた笑いを返す。両者話すことが無くなり、そして一定の静寂が場を包む。
「んでさ、御用は何かな?御用の内容によれば、料金はしっかりと取るよ?」
カヤが口を開いた。人差し指と親指をくっ付けて、ゼニのマークをつくりながら。
「あらやだ。あなたはこの世に辟易していたんではなくて?」
「⋅⋅⋅⋅ねぇ。君って良く事件の黒幕とか言われない?」
「まあ、似通ったことは言われるかしらね?」
売り言葉に買い言葉。話が一向に進展しない。
カヤはそれに痺れを切らし、タバコをコンクリの地面に落とし、靴で踏み、付いた火を消す。
「はは。それじゃあ言葉遊びはここまでにして。本題をどーぞ」
「ありがとうね。人間さん。それで、本題なんだけど⋅⋅⋅⋅⋅⋅貴方、楽園に興味無いかしら?」
波打つ音が、谺した。
「楽園⋅⋅⋅⋅か。ちょうど退屈な日々に飽き飽きしてたんだ」
「では、今すぐにでも⋅⋅⋅⋅「ちょっと待ってね」はい?」
ズボンのケツにあるポッケから名刺入れのようなシガレットケースから一本タバコを取りだし“NO SMOKING”と彫られたジッポライターでタバコに火を付ける。
タバコから出た煙が月明かりに照らされながら怪しく漂う。
タバコを吸うカヤの姿は、驚くほど様になっていた。
「ふぃぃ~。あ、ゴメンね。タバコが吸いたくなったとかじゃそんなんじゃなくて、ウチに頼れる相方がいるからさ、ソイツも連れて行きたいんだよ」
「それぐらいでしたら⋅⋅⋅」
「オッケイ。それじゃあ呼ぶね」
タバコを持っていない手を口元に持っていき、人差し指と親指を輪にして咥え、いわゆる指笛を吹く。
ピーッ!!と甲高い音が響く。
直後、バサバサと羽ばたくような音が夜空から聞こえた。
「ボス、あんたまた面倒事に首突っ込んでんじゃあ無いでしょうね?」
軽トラ二つ分程(縦に積んだ場合)の大きさの鴉がカヤの隣に降り立つ。
一本一本がしっかりと艶のある羽根。肉食の恐竜を彷彿とさせる三歩の脚。
まるで宝石を埋め込んだかのように輝く眼。例えるならば深い色のカイヤナイト。
微かに開いた嘴の奥から声が聞こえる。普通の鴉はしゃべらいし、何よりこんなにでかくない。紫が見上げてしまう程大きいのだから。
となると、この鴉は⋅⋅⋅⋅「妖怪かしら?」
巨大な鴉を見つめていると、自分でも気付かない内に言葉が漏れ出ていた。
紫は思わず下げていた扇子を口元へ戻した。
「おお、ご名答。にしても、良くわかったね?お姉さんも妖怪だったりするのかな?」
「! へぇ、勘が宜しいのね」
「あはは。ご謙遜を。さっきの登場といい、
それこそ、普通に、冷静になれば誰でも分かる事だ」
二人が先程と同じようになりかけると、それを見かねた妖怪鴉が艶々の嘴を開く。
「ボス、すぐに話を逸らそうとするのはあんたの悪い癖だ。
あぁ、スイマセンね、お姉さん。ボスはとんでもなくアホなんです。許して下さいね」
「へ、へぇ⋅⋅⋅そうなの」
意外としっかりした性格で驚いているし、お姉さんと一日で二回も言われたので内心上機嫌な八雲紫であった。
「それじゃあ二名様、ごあんな~い。⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅と行きたいのだけれど、二人とも、この世界に未練はない?」
紫の絹のような指でフィンガースナップを虚空にすれば、不可解な事にスキマが開く。
スキマの中は真っ暗で、どこまでも続いていそうで、目玉がギョロギョロと動いている。
その隣で、いつの間にか日傘を広げた紫が真剣な眼差しで二人に問う。
既に一歩踏み出していたカヤは呼び止められたと思い、紫を見る。
「未練?あ~⋅⋅⋅⋅⋅俺達の荷物はどうなるの?」
想定していた答となにもかもが違う答が返って来たので吉本新喜劇でよろしくやっていける軽いコケを披露した。
「えぇ⋅⋅⋅未練なんてさらさらないの?」
「うん。まあ、褒められたものじゃ無いけどね」
ははは、と自虐的に笑う。目は闇を隠し持っている。
そう、とカヤを一瞥をくれると、今度は鴉へと目線をやる。
「? あ、この姿では駄目ですか?」
「駄目って言うか⋅⋅⋅⋅姿変えれるの?」
「化け狸と同じ要領ですよ。ホラ」
と言うと、大鴉の身体から炎が溢れ、大きな妖怪鴉を包む。その炎は次第に小さくなっていき、革靴の音が炎の中から響く。その音は、此方へ近付いて来る─────。炎の中から出て来た男は、死んだ魚の目をしていて、全身を黒で包んでいた。
ま、ボスの身長よりは頭三つ分程高いんですけどね。
「えぇ⋅⋅⋅⋅(困惑)」
紫が文字通り困惑していると、紫の隣にいたカヤに燼鴉は言った。
「ボス、先に行ってて下さい。後から行きますんで」
「へぇ、燼鴉は俺に毒味役をしろって言うのかい?」
目を閉じた作り笑いを顔に張り付け、燼鴉に向き直る。何でも、これが日常茶飯事なのだから驚きである。
ちなみにこの時紫は自分のスキマが毒物みたいと言われたので顔には出ていないが心の中でムスっとしていた。
「ははは。毒味役じゃなくて勇気ある一歩ですよ。ボス」
「腹黒ね。燼鴉くん」
「最近ボスからサービス残業バリバリでMONSTERゴクゴクなんです」
これについてはカヤが悪い。そう思ってしまった紫。
あー、あれの事ね。と額に冷や汗を浮かべながら目を逸らすカヤ。
そして⋅⋅⋅⋅⋅。
「ですからボス、先に行ってて下さい」
「え?」
カヤが振り向くも時既に遅し。
燼鴉はカヤにヤンキー蹴りをキメていた。
「燼鴉アァァ!!!?」
「ふぅ。スッキリした」
Cの形でスキマへ飛ばされ呑まれたカヤ。ドヤ顔でコロンビアしている燼鴉。スキマと燼鴉を交互に見る紫。
な ん だ こ れ
「あ」
「ん?どうかしたのですか?」
明らかにやらかした感じの声を出した紫に対し、何がなんだかわからない燼鴉。言うまでもなく原因はお前だ。
「急に入ったから乱れちゃった⋅⋅⋅」
「ちょっとエッチいですね。その台詞」
「狙ったのよ」
「なるほど」
艶のある声でえっちい台詞を言う。音フェチならば絶頂ものである。一瞬にして筍が竹へとニョッキッキ。それはもうぐぐーんと成長するのだナ。
紫はムフー。と自信ありげに豊満なお胸を張る。
ふーん、エッチじゃん。
燼鴉はおおー。と言いながらピッチリと嵌まった革の手袋で拍手をしている。
そしてもはや二人からはカヤの存在は忘れ去られている。哀れなり。神嵜何屋。
「あ、ボスが言ってた我々の荷物なんですけど、貴女のチカラでその楽園とやらに運んどいてください。場所を教えてくれたら取りに行きますんで」
では。と言ってスキマへ入った燼鴉。
波止場にはまるで最初から何事もなかったかのような静けさがあった。
「うふふ。彼らが幻想入りする事で齋すモノ。ワタクシに見せてくださいね⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅」
紫は霧に溶けるようにスキマへ消えた。
いかがでしたでしょうか。
東方何でも屋。皆様のお気に入りになれば幸いでございやす。
誤字脱字等々ありましたら報告していただけるとありがたいです。
さーて、がんばるぞぉ。