ちなみに自分です。ちなみに今日誕生日です。
俺の視界に飛び込む天井、どうやら夢だったみたいだ。
ボヤけた視界を擦るために腕を伸ばす。
「ここは何処!?」
俺の頭を支える餅のようなクッションは心地よく揺れる、気持ちいいな。ここは何処だ。
「お兄ちゃんの部屋ですよ?」
視界の上を遮るロロちゃんの顔が心配そうに覗く。おかしい、経験した事ない状態かもしれない。
「そうか」
「あの、退いてください……」
俺は把握した、クッションは太ももだと!
「動きたくな」
「お願いします」
天井が隠れるほど顔を近づけられて、無表情でそう言われたら。
「すみません嘘です、動きます」
従うだろ!
という訳で、鼻にティッシュ詰めてパソコンと向かい合ってる。隣にはロロちゃんがスタンバイしてるけどな。
長時間椅子に座るのは、腰を痛めるから注意したい。
「お気に入りの数少ないですね」
「駄作だから仕方ない」
「更新とかどうなってますか?」
更新する時間は適当と答えておいた。調子に乗って0時59分に投稿したりもしたな。
「それはダメです!」
「そうなのか?」
「1時20分とかにした方が見てくれます」
「なるほどな」
それから色々、更新に関して言われた。
『更新した時は更新報告しましょう、リンクURLも付けるとバッチリです』
『手動にしましょう』
『重複掲載も色んな人に見てもらえます、このサイトとかどうですか?』
役に立つ情報は頭に入れるタイプなのだが、なかなかスッと入らない。多分ロロちゃんのせい。
「URL付けましたか」
背後から歩み寄る足音。
「まだ付けれてないな」
「忘れたなら1から教えます!」
右肩をポンと叩かれ、振り向くと俺のほっぺたに突き刺さる細い人差し指。
「引っかかりましたね」
ワンピースを少し揺らして聞いてきた。ロロちゃんなりの息抜きなのだろうか。
有難いけどさ、俺は気になってしまうんだ。
「触れたら、地獄に行くんじゃ」
その瞬間、険しくなったが、いつもの無表情に戻る。
「お兄ちゃんに触れるのはセーフです」
「そんな理不尽ルール聞いてな――」
「お兄ちゃんが、私に触れるのはアウトです」
グイグイとお兄ちゃんお兄ちゃん言われたら、そりゃもう。
「ですよね、俺が間違えてました」
あっさり負けてしまい、ふらつく俺がいた。
助けようとしてか、お兄ちゃん! とか言って、殺しに来た天使のロロちゃんから宣伝について学ぶ事に。
俺のイメージはSNS系統で、ガンガンしていくのかと思っていた。
「お兄ちゃん、宣伝するならここにしましょう」
そう言って教えてくれたサイトは口コミ創作サイトだった。どうやら創作専用のSNS的な奴。
ドンピシャじゃねえか!
「アカウント作らないと行けないんだろ」
「大丈夫です、お兄ちゃんのアカウント作ってました!」
ジャジャーンと背後で文字が出てきそうな雰囲気。
ロロちゃんはパスワードとIDを打ち込むと、ッターン! という爽快な音を響かせキメる。
しかし、画面は動かない。
「……ダブルクリックでした」
「ははっ」
「笑わないでください」
気を取り直してログインという部分をクリックすると、ロロという名前のアカウント。
そして、ツイートがあった。
『今度、好きな――』
「見てはダメです!」
「ぐは!」
ロロちゃんからラリアットを食らった俺は、椅子ごと後ろに倒れ込み、続きが読めないようにログアウトされていた。
「び、ビックリするわ」
よろめきながら、椅子を起こして座り直す。
「アカウント間違えたんです!」
そう言って新たなIDとパスワードを打ち込み、ッターン! と軽快なミスをしていたが、笑うとミスは何度でもあります。と言われてしまった。
……2度目じゃん。
「今更だけど天使のロロちゃんって、この世界のネットを使えるよな。なんで使えるんだ?」
天使の時点でおかしいし、聞くのも愚問。でも、気になってしまう。
「小説というのは、2種類あります。本の小説とネット小説です。ネット小説を読む為にタイピングの勉強をします」
自信満々に言いながら、人差し指でポチポチしてるロロちゃん。
「どっちが好き?」
「私はどちらも好きです。最近はネット小説に、どハマリしてますけど」
紙の本だけじゃないんだな。
そして、パソコンの画面がプロフィールに変わる。
「これがお兄ちゃんのアカウントです」
ミズマシ・ソウゴという名前がプロフィールに書かれていて、本当に作ってあったんだなって思う。
「これで、どう宣伝する?」
「まずは名前をお兄ちゃんに変えないといけませんね」
そして俺の作者名はお兄ちゃんに変わってしまった。こんな名前の人存在しないよ。
「まずはツイートしてみましょう」
「わかった」
適当に文字を打ってみるか。
『お兄ちゃんって言います! 小説書いてるので宜しくお願いします!』
打ち終えると、クリックですよ。と言われた。
「どれも変わらないから」
「きっとクリックです」
「俺は叩くほうだと思うけど」
というか、下の方にEnterって書かれてる。
「じゃあ、ロロちゃんはクリックね。外れたら」
「なんでも願いを叶えます!」
張り切ってんな! という訳で、クリックする。
「……」
「……」
動かない、エンターキーを叩くとツイートされ始める。
「よっしゃ」
「お兄ちゃん……!」
本で顔を隠してて、唸り声をあげていた。
「願いとか要らないから、膝枕して欲し」
「分かりました、それで許して下さい」
「冗談だか、ら」
俺は鼻を抑えつつ、ふらっと椅子から転がり落ちた。
多分スガルが編集してくれた?と思う。