絵も書いていてメインがエロノベルだった人だと思う。いや、本当に?書いてる情報が正しければ一式さんです多分あってます。
甘い香りが弾けるプッチンプリンに俺のプラスチックスプーンが刺さる。引き上げるとプルルーンと揺れ、王者の光沢を放つ。
「描写するならこんな感じか」
俺はそんな事を呟きながら、部屋で最後のプリンを口に運んでいた。
ロロが居なくなってしばらくが経ち、ブクマは1件の10倍になった。口に出したくはないが、10件。
底辺をジェット機で通過中とも言える。投稿時間も物語の深みも、負けないものだと思ったんだが。
「カッコつけてもダメかもしれねぇな」
主人公じゃない、そう呟いた時だった。部屋のドアが吹き飛び、煙が辺りを包む。
「つ、次はなんだよ……」
咳き込みながらドア側を凝視すると、明らかに人ではない影が見える。
「お、お前は……!」
「そうだ、我こそは」
俺の記憶の引き出しを必死に引っ張って探し出した答え。
「――誰だ」
記憶に存在してなかった。
「ええ!?」
煙が消えると、背中にコウモリの様な羽を背負った黒い布切れ1枚の日焼け幼女が居た。
「本当に誰?」
「悪魔リリ、忘れないで」
「あぁ、なるほど」
リリは羽をユサユサして不快感を示していたが、正直どうでもいい。
「用はないから帰れよ」
「我はあるのよ、ソウゴ」
悪魔が来る理由が想像も出来ない。
「だからなんだ? しかも呼んでねぇから! 屋根裏でスタンバイしてろ!」
「口悪い」
一瞬ロロだと期待した俺の気持ち返せや!
「悪魔だからってその辺のアレと一緒にしたらダメ、我は助言しに来たの、お分かり?」
腹立つわ、帰れって言いたい。
「助言? 悪魔がそんなことしていいのか」
「……どんな小説書いてるのか見せてもらうわ」
『答えたくないからって無視すんな』
そう言うと、俺の黒歴史を開く。お気に入りが1件のゴミ山と、10件のゴミが見える。
「笑いに来たんなら帰れよ」
「とても面白くない、でも理由はわかる」
1件の奴は置いといて、10件の方は王道なファンタジーのつもりだった。セオリと一緒に考えて。
「貶すのも帰れよ、俺の努力わかる?」
「……努力? これで努力したの?」
「したわ! プロットも練って、プリン食って! アイス食って! 寝たわ!」
「ほぼ書いてないと思うの我だけ?」
プロット組めば大丈夫だと俺は思っていた。でも、それは違うらしい。
「とにかく、見切りじゃなくて、時間表作ってるんだよ」
「プロット書いた理由はある?」
「ない、セオリと組んだからってだけ」
「ダメなヤツそのものね」
「プッチンプリンをぶっかけてやろうか?」
それからリリの論破が続いた。まるで、俺とセオリとロロとの時間を無駄だと突きつけるように。
「…………」
「生きてるかしら?」
「あぁ、何が言いたいのか分からないがな」
この話すらも悪魔の嫌がらせかもな。
「小説書いてて楽しい?」
「へし折ってよく聞けるな、楽しくなんかねえよ」
俺は椅子に腰掛け、今の連載を放棄したくなった。なんだろう、確かにゴミ生んでしまったなぁって。
「じゃ、適当に完結させて新作でいいじゃない」
「それでいいのか」
「え? 楽しくないのに続けてどうするの?」
「…………」
黙り込んでしまった。俺は人気になる事とブクマしか頭になかったらしいな。
「割と続けてても関係ないわ、楽しくないなら打ち切りエンドで新作。次はノクターンでスライムとおトイレデートなんてどうかしら?」
リリはさり気なくネタ提供してくれた。
「悪魔がこんなことしていいのかよ」
「やる気を砕いてエタったゴミを生産、小説を衰退させていくのが悪魔な、の」
セクシーに人差し指を唇に当て、俺の頬をぷにっと押す。
「悪魔の罠に引っかかってしまったか」
「魂を売れば、ソウゴのブクマとポイントを増やすように手配する。ノクターン版は無償でしてやろう」
「何げにノクターン勧めるのやめろや」
「これが本当のセフレサービス」
「わかりずら過ぎてスベリもしねぇわ」
リリは無駄にやりきった顔をすると、黒い粒子に身を包んで消えかけ、再び現れる。
「そうそう、契約料としてプッチンプリンは貰ったぞ」
「ちょっと待て」
「ま、またな!」
「待てやあ!」
腕を掴んでも、すり抜けていく。完全に逃げられてしまった。
まさか、プリンが消えていた原因だったなんて……等価交換だったらしい。
契約したつもりもないからな、これも悪魔特有の嘘だろ。
それから、数日は1話投稿してお気に入りが2件付いて、消しての繰り返しだった。段々ネタの見極めが着き始めると、1話でもお気に入りがつくようになってて嬉しく思った。
だが、数話でやめるのは成長と言えるだろうか? 言えないけどロロとは距離が離れてくよな。
「お、3話でお気に入り10件だなんて、成長したよなぁ」
まぐれかもしれないが、嬉しくてつい口に出してしまう。これで俺は本気を出してみるとしよう。
少なくとも、1話の導入だけ上手くなっているはず。
40話を投稿して、お気に入りが50になった時だった。ドアが吹き飛んだ。