自分の声にコンプレックスのある子がVtuberとして頑張る

そんな感じの短いお話

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宣伝担当Vtuber夢橋

 わたしこと鈴木風花はいつからか人前で話すのが嫌になっていた。

 

 あまりにも高い所謂アニメ声と言うのだろうかそんな自分の声が嫌いというわけではないが、小さい頃から周りと違うという単純で子供らしい理由でいじめられていたのと、話したときの周りの人達の反応というか喋っているわたしを探すようなそういった反応などが嫌になったのだ。いつからか人前では極力話さないようになっていったし、外に出ることも少なくなっていった。

 

 自分の声は自分の物だしどうこうできることもできなかったし“好きになる”ようにした。人前に出ないならと思い高校一年の時からサボりがちで家にこもっていることが多かったので、顔を出さずに雑談配信といったようなものをしてみたこともある。ネットの世界では自分の声は好評だった。ネットの世界では自分の声は需要があるのだと、あの不思議そうにする周りの人達の表情を見なくてすむのだとも理解した。それから何があるか分からないので年齢は隠して学校から帰ってきたら配信、サボって家にいる時に配信と結構な頻度で配信をしていた。ネットは怖いと言ったときにコミュニティ限定で放送すればと言われその通りにして、優しいリスナーに囲まれて楽しく日々雑談したり色々配信することができた。そのおかげか人前でないのなら喋ることが楽しくなっていったのだ。我ながら良いリハビリになったのではないかと思う。でも、ある時にいつもだったら断っているはずのリスナーからのSNSをやってほしいという提案に気の迷いか今の自分なら大丈夫だという慢心からか了承してしまったのだった、それが失敗だった。

 

 かなりの時期、日常で人と話さないということもあったのか、自分に向けられる欲望悪意というものがなくなったものだと、あれは小さい頃特有のものだったのではないかと誤解していた。SNSを開設してみてリスナーに向けてのボイスなどをあげたりしていると、ある程度リスナーが拡散してくれる、それを見て聞いた人がさらに拡散してと今までコミュニティ限定でのネットとはいえある程度閉じられた世界で配信していた自分には一気に拡がり過ぎてしまった。可愛い声に対する欲望丸出しのリプや、連続でリプをしてくるアカウント、不特定多数の人に見られないようにする機能を使えば良いと気づいたのは怖くなってSNSのアカウントを閉鎖してからだった。

 

 気の迷いで始めたSNSを閉じてから、勧めてくれたリスナーにもなんだか申し訳なくなってしまい配信をすることも辞めてしまった。自分の声にそういったことを求めている人がいるということも今では理解できるし、しょうがないなぁとも分かる、だかその時の自分には無理だった。それから高校に行くのも嫌になり通信制の高校に転校して高校を卒業するまでは、いろいろな配信やラジオを聴いたりして自分の声との向き合い方を考えるようにした。どうにかアニメ声を変えれないのかと大人っぽい女性の声や低い声などを練習してみた。自分にはそういったことの才能があるのか分からないが、その練習の成果もあってかアニメ声らしさを抑えた声で喋れるようになった。元々の声もその時にはこれも自分なのだと納得していたので、普段知らない人と話す時や外で話す時はその他所行きの声で喋るようにしたのだ。

 

 高校を卒業してからは、叔母が役員をしているという音楽プロダクションで手伝いをさせてもらいながらボーッと過ごす日々が続いた。そんな日々に変化が生まれたのは叔母からのとある提案からであった。

 

 「わたしがVtuber?むりだよ、そんなの!」

 

 ある時に叔母に呼ばれて会社に行った時に言われたのであった。

 昨今、Vtuberという流行がきているのだと叔母が勤めている音楽プロダクション「ARCH -アーチ-」は理解していた。ならばそちらの方面においてバーチャルシンガーを起用して音楽プロダクション所属というのを売りにしていけば面白いのではないかと、初期費用やそれをペイできるほど利益が取れるのか全く分からない新しい世界ではあるが、元々面白いことがしたいという会社の気質もあってかトントン拍子で話が進んでいったのである。

 

 「だってわたし、歌なんて歌えないよ?……すごい音痴だし」

 

 ある時にリスナーに勧められ音痴でも良いからと歌わされて、リスナーに歌わせてしまって申し訳ないと思わせるという黒歴史の配信をしたことがある、あれは記憶からも抹消したい配信であった。

 

「風花に歌わせるわけじゃないわ、あなたには宣伝担当としてデビューする子たちと一緒にVtuberとなって欲しいの。一応現時点で2人デビューさせていこうかと思ってるのだけど、その子たちにはとりあえず最初は歌のほうに専念してもらおうかと思っててね。それで別に宣伝とかその他の配信は宣伝担当1人に任せてみようかなーってね、どうせ機材を揃えるなら色々やったほうが面白いでしょ?」

 

 自分の先走った考えが恥ずかしかったのか顔を赤くした風花。

 

「でもなんでわたしなの?そんなの会社の人にやらせればいいでしょ?こんなちんちくりんにやらせたってうまくいくわけないじゃん……。」

 

 そんな風花の返答に待ってましたとニヤニヤしながら叔母は言う。

 

「へぇ、そう?でもあなた配信したことあるし、お喋りしたりするの好きでしょ?アニメ声配信者“ふーちゃん”さん?」

 

「!?」

「えっ!あれ、え、なんで!?誰にも言ったことないのに!!」

 

「あなたの配信をうちの会社の野郎が観てたのよ、それであなたが手伝いにうちに来てる時たまに素で返事してる時の声を聞いて確信したんだと、よかったわね、いつまでも覚えていてくれるリスナーがいて」

 

「うーーーーー!!!嬉しいけどうれしくない!!!」

 

「で、配信もしたことあってそういうのが好きならあなたに任せてみてもいいかなって思ってね。どう、やらない?今あなた何もしてないんでしょ?」

 

 先程のふざけたやり取りなどなかったかのように、話し方は優しいが叔母としてではなく会社の人間として風花に対して聞いてくる。

 

「……や、やらせてほしいです」

「実際わたし自身このままでいいのかなって思ってたし、配信にも未練があったのは事実だから、叔母さんのもとでやれるなら変な心配とかはしなくても大丈夫そうだし、ぜひよろしくお願いします!」

 風花は真面目な顔で頭を下げながら返答する。

 

「うん、わかったわ、よろしくお願いします」

 

 こうしてわたしこと鈴木風花は

「ARCHバーチャル部門所属宣伝担当Vtuber夢橋さん」として、デビューすることになったのである。

 

 そのことが会社内で発表された際には1人の男性が奇声を上げて喜んでいたらしい。

「ふーちゃんと仕事できる!!!!!うおおおおおおお!!!」

 

 

 

 そんなやり取りがあってからすぐにARCHでは新規プロダクションとしてバーチャル部門の立ち上げを発表、そこから2名のデビューをするにあたってのオーディションをすることも発表したのであった。世間では有名な音楽プロダクションが参入するというVtuberとは何なのかといった疑問から、Vtuberに興味を持ち視聴をしてハマっていく人が徐々に増えていき、Vtuber全体の人気アップの手助けとなっていったのである。そして、そんな世界に参入してくるバーチャル部門とはどんなものなのかARCHへの期待も高まっていったのであった。

 

 

 

 それらの発表があって数ヶ月、とうとうARCHバーチャル部門の初配信の日となった。

 

【初配信】バーチャル部門発足【ARCH】

 

コメント:待機

コメント:待機

コメント:待機

コメント:待機

コメント:待機

コメント:きたな

コメント:さてどーなる

 

 大々的な発表もあってか初配信であるが待機している人数は1万人以上と多い。音楽プロダクションからのデビューということもあり、期待値が高いのだろう。しかしそんな期待を裏切ることがすぐに起こるのであった。

 

テロップ:今から準備中の宣伝担当が出てきますが、流れていることは知らされておりません。健気に頑張る姿をご覧ください。

 

コメント:ん?

コメント:は?

コメント:ん?

コメント:なにこれ?

コメント:いきなりドッキリスタートかよw

コメント:草

 

「あー、あー、テステース、音声さん聞こえますかー?」

 

コメント:ぬ!

コメント:幼女?

コメント:ちいせぇ!可愛い!

コメント:ええやん

コメント:prpr

コメント:かわいい

 

 テロップが流れた後には白い背景にバーチャル部門の制服を着た140cm代ぐらいだろうか小さなショートカットの女の子が横を向いて喋っていた。

 

「う〜〜っ、緊張するよ〜!」

「わたしなんかで大丈夫かな〜、不安になってきた〜」

 

 独り言であろうか女の子はぶつぶつとかわいい声ですでにリスナー1万人以上に聞かれているとは知らずに喋っている。

 

コメント:かわいい

コメント:かわいい

コメント:登録しました

コメント:おじさんがいるよ、大丈夫だよ

コメント:あ〜

コメント:最高やん

ARCH.Vシステム部門✔︎:彼女は宣伝担当の夢橋さんです

コメント:運営おるやんけ

コメント:助かる

コメント:助かる

コメント:らすかる

コメント:夢橋さんね、おけ

コメント:夢ちゃんかわいい

 

「緊張してきた、おみずおみず」

 そう言って3Dのキャラクターは何も持っていないが両手で何かを持って口へと持っていくのが見て取れる動きをする。

 

コメント:お水助かる

コメント:飲み方可愛いかよ

コメント:あざとい

コメント:こいつやりおる

コメント:これが自然ってマ?

コメント:お水美味しい?

 

 そんな可愛い夢橋さんをリスナーが観ているうちにいよいよ番組が始まる時間になったようである。画面の向こうも慌ただしいのが分かる。

 

「それでは配信始まります3,2,………!」

『はい!はじまりました!皆さんお待たせ致しました!ARCHバーチャル部門初配信へとようこそ!』

 

コメント:は?

コメント:だれー?

コメント:ゆめちゃんを返して

コメント:幼女どこ?

コメント:おんなじ子?

コメント:すげぇな

 

 そしてOP映像が終わってとうとう本当の配信が始まったときに聞こえたのは先程の可愛い声ではなく落ち着いた声であった。

 

『……あれ?なにかおかしいですね、みなさんどうかしましたか?』

『ていうかゆめちゃんって私名乗りましたっけ?』

『ん?んー?スタッフさーん、どういうことですかー?』

 

『はぁ?本番前の準備中から流して……』「え?」

「え〜〜〜!!なんで!?だって、え!うそでしょ!?」

 

コメント:おかえりw

コメント:おかえりw

コメント:ゆめちゃんおかえり

コメント:うるせw

コメント:なにも聞こえなくなった

コメント:つ鼓膜

 

「あ〜ごめんなさいごめんなさい!うるさかったですよね、でもでもあんまりじゃないですか?!え〜、どうしようどうしよう!!」

 

コメント:もちつけ

コメント:そのままのきみでいて

コメント:おちつけ

コメント:おちけつ

ARCH.Vシステム部門✔︎:ゆめちゃんかわいい

コメント:おい

コメント:運営?

コメント:同意

コメント:わかる

コメント:わかるマーン

 

「あっ、大丈夫ですか?このままでも大丈夫?ほんと?」

 

コメント:大丈夫

コメント:大丈夫

コメント:おけ

コメント:いいんだよ

コメント:かわいいは正義

コメント:prpr

 

「……わ、わかりました、スタッフさんからもそのままでいけと言われたのでこのままいきます」

「ん、んん!あーあー、はい!ということで色々ありましたが、待望のARCHバーチャル部門初配信はじまりまーす!担当はARCHバーチャル部門宣伝担当夢橋がお送りいたします!短い時間ですがよろしくお願いいたします!」

 

 そんなこんなでドタバタした初配信が始まって、ARCHバーチャル部門もスタートしていったのである。

 

 

 

 

 

 

 

  〜〜一年後〜〜

 

「はい、みなさんこんにちは、こんばんは、おはようございます!ARCHバーチャル部門宣伝担当の夢橋です」

「初配信から一周年ではありますが変わらず今日も今日とて、ARCHバーチャル定期連絡会はじまりまーす」

 

コメント:おはようございます

コメント:おはようございます

コメント:おはようゆめちゃん!

コメント:まってた

コメント:今日もかわいい

コメント:もう一年かー

 

「はい、みなさんお待たせしました!ね〜、ほんともう一年経ってますよ〜。色々ありましたが、なんとかやってこれたのもみなさんのおかげです!ありがとう!」

 

コメント:ええんやで

コメント:ドッキリが懐かしい

コメント:ゆめちゃんががんばったからやで

ARCH.Vシステム部門✔︎:ゆめちゃんかわいいありがとう!

コメント:運営おるやんけ

コメント:おいw

コメント:ほんとこいつはw

コメント:むしろいない日がないやろw

 

「もう運営さん!コメントしてくれるのはいいけど仕事してくださいね」

 

ARCH.Vシステム部門✔︎:はい!わかりました!

コメント:草

コメント:裏山

コメント:俺もゆめちゃんに注意されたい…

コメント:ゆめちゃんと仕事がしたい人生だった…

コメント:運営そこ代われ

 

「話を戻しますが、なんだかんだでARCHバーチャル部門も宣伝担当はわたし1人ですがメンバーは増えてきてみなさん色々な歌配信やら雑談やら楽しんでますか?」

「一年経って色々ありましたが、わたし的には配信がバーチャル部門のチャンネルではなくなって宣伝担当のチャンネルになったことですかね〜」

 

コメント:それな

コメント:宣伝担当というかゆめちゃんチャンネル

コメント:バーチャル部門で一番の登録者

コメント:宣伝が一番人気とは??

コメント:ゆめちゃんやしな、仕方ないね

 

「わたしなんかでほんとうにありがたいことです、みなさんほんとうにありがとうございますね」

「では雑談する前にバーチャル部門の今後の配信連絡などの宣伝、仕事をしていきましょ〜」

 

 そこには自分の声に悩んでいたわたしはいなくて毎日を素敵に楽しく過ごしていた。

 

「みなさんのおかげで自分の声が好きになれました、ほんとうにありがとうございます、これからもARCHバーチャル部門共々よろしくお願いしますね!」

 

 

 




短いお話でしたが、こんなん読みたいなぁってお話でした。
Vtuber小説早くふえるんだよ!!

……コンプレックス持ってる子っていいよね

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