生徒会メンバーに一人加えただけ。
いつも通りの勢いで書いたもの。
短編。

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生徒会の一存 オリ主もの

 ――碧陽学園生徒会。

 そこには学園の生徒から投票で選ばれた人間と、優良枠と言う学年テスト一位のものが入ることができる。

 今期の生徒会には、投票で選ばれた美少女四人と、僕を含めた優良枠が二人いる。

 

 

 

 

 ―――――――――

 

 

 

 

 僕が帰りのSHRが終わり生徒会室に行くと、まだ誰もいなかった。

 いつもと違う生徒会室に違和感を覚え、ああ、僕は案外みんなのことが気に入っているんだな、と思う。

 生徒会室の中には、長机と人数分の椅子、そしてその奥には、会長がよく何かしら書いているホワイトボードが置いてある。

 僕は出入り口に一番近い椅子に腰掛けた。

 違う言い方をすれば、会長の席と向かい合うように座る。

 座ってから僕は、持っていたスクールバッグの中から、眼鏡と小説を取り出した。

 教室でもよく使う、暇つぶしのやり方である。

 まあ、教室では周りがうるさすぎて、小説に集中することは困難だが。

 栞が挟まっているところで本を開く。

 眼鏡をかけて、読み始めようとしたところで、僕の後ろの扉が勢いよく開かれた。

 

「どうもー! みんなのアイドル杉崎鍵ですよ-! って、直人だけか……」

「露骨にがっかりするんじゃない……。君らしいと言えば、君らしいが」

 

 入ってくるなり高いテンションのこいつは、この生徒会に僕と同じ優良枠で入って来た杉崎鍵。

 生徒会の女子全員を、自分のハーレムと豪語してやまない。

 顔はいいのだが、その言動で大分損をしている残念系イケメン、とでも言うべきだろうか。

 杉崎はそのまま自分の定位置の席、僕から見て左側の奥の椅子に座った。

 

「なあ、直人。今仕事どのくらい残ってたっけ」

「さあね。まあ、僕と君とでやれば、彼女たちが帰った後でも、何とか終わるくらいだと記憶しているよ」

「そっか」

 

 彼女たちとは、この生徒会に所属する女子四人である。

 杉崎はこの生徒会が発足されてから、彼女たちと触れ合いたいがために、下校時間までずっと仕事をやらず、彼女たちが帰ってから自分だけで仕事をやるという、無謀なことを言い出したのだ。

 僕はそれに付き合っている。 

 いや、僕が仕事をしていると思いたいがための行動ではあるが。

 

「杉崎」

「ん? なんだ?」

「君、目の下に隈ができているぞ」

「うえ!? マジで!?」

 

 もちろん嘘である。

 ちょっとした僕の意趣返しだ。

 言われた杉崎は慌てて立ち上がって、どうにかしようとしている。

 どうにかできる問題ではないと思うが。

 

「嘘だ」

「嘘かよ!?」

 

 杉崎は脱力して椅子に勢いよく座った。

 椅子がぎしっ、と軋む音がした。

 

「大体隈があったら、椎名姉が言うだろう。君と同じクラスだっただろ、確か」

「そりゃ確かに……」

「どうにしろ、君は働きすぎなのだから、心配させたくないのは分かるが倒れる前に休め。僕にも迷惑がかかるからね」

「俺を心配してくれてんのか?」

「……さあ、どうだろう」

 

 杉崎は少し嬉しそうにこちらを見てきた。

 あの顔はよく見る。

 僕の好ましくない顔だ。

 だから、次のセリフは予想できる。

 

「お前が美少女だったら最高だったのになぁ……ツンデレって奴だ」

「言うと思ったよ、まったく……」

 

 杉崎は心底残念そうに言う。

 僕は息を吐き、杉崎から視線を外し小説を読み始めた。

 

「いやいや、お前もいいやつなんだけどやっぱり美少女がいいなってことさ!」

「まったくフォローになっていないことを理解しているのか?」

 

 ドクはもう一度息を吐く。

 相変わらず、面白い男だ。

 思わず苦笑する。

 杉崎はそれを目ざとく指摘してきた。

 

「おっ、今笑ったな」

「君は、面白い奴だからね」

「お、おお……いきなり褒められて嬉しいんだが、恥ずかしいような……」

 

 そう杉崎が言ったところで、またもや僕の後ろの扉が開かれた。

 入って来たのは、他の生徒会のメンバー。

 会長である、小さい女子、桜野くりむ。

 その隣は書記、クールビューティーと言う言葉がよく似合う、紅葉知弦。

 そしてその後ろから、副会長、ボーイッシュな女子、椎名深夏。

 またその後ろから、会計、儚げな女子、椎名真冬。

 ちなみに椎名深夏と椎名真冬は姉妹だ。

 僕は椎名深夏を椎名姉、椎名真冬を椎名妹と呼んでいる。

 そして杉崎は副会長。

 僕は全体的な補佐を担っている。

 役職で言うならば庶務だ。

 

「あれ? もう二人ともいたの?」

 

 会長がそう言いながら僕と向かい合うように座った。

 紅葉さんは杉崎と向かい合うように、椎名姉は杉崎の隣、椎名妹は姉と向き合うように、それぞれ座った。

 これで、生徒会メンバーが全員そろったわけだ。

 杉崎は改めて生徒会室の中を見回した。

 

「やっと揃いましたね、俺のハーレムがっ!」

 

 杉崎は椅子から立ち上がり、高らかに言う。

 すかさずツッコミが入る。

 

「誰が貴方のハーレムよ!」

 

 いつも通りに会長が言った。

 そんな会長の頬は、淡い桜色をしていた。

 案外、満更でもないように見える。

 その様子に、僕は息を吐く。

 

「ほらほら、直君も呆れちゃってるから、そこらへんでやめときなさい二人とも」

「紅葉さん、直君は子供っぽいからやめてくださいと言ってるじゃないですか……」

 

 紅葉先輩が二人を見ながら言ってきた。 

 直君と言うのは、紅葉先輩が僕につけたあだ名のようなものだ。

 ちなみに杉崎はきー君。

 鍵だからキーらしい。

 ……どうでもいいか。

 

「いいじゃない可愛くて」

「僕は名前に可愛さを求めていないんですよ」

「あら、残念」

「ご期待に応えられず申し訳ないです」

 

 僕は小説を読みながら適当に返した。

 真面目に返してもいじられるだけだ。

 これくらいの感じがちょうどいい。

 それに、長く話していると杉崎がやってくるからね。

 ふと視線を杉崎に向けると、まだ会長とイチャイチャしているようだ。

 今みたいに、一人に絞って付き合おうとすれば、僕としても微笑ましく応援しやすいのだが。

 まあ、そうなることはゼロに等しいだろう。

 

「お、直人。今なに読んでんだ? あたしの貸した奴?」

「ああ、君に借りた熱血ものだよ。主人公が理論も何もかもすっ飛ばして気合いだけで勝利をもぎ取るっていうのは、いろいろツッコミたいところもあるが読んでいて面白い」

「おお、思ってたより好感触だな! お前のことだから、こんな馬鹿な主人公があるかって、突き返されると思ってたぜ」

「君の中の僕はどんな人物なんだ……」

 

 僕は息を吐く。

 椎名姉は何時ものように笑顔だった。

 

「ははっ、悪い悪い。いつも小難しそうな本ばっか読んでるからさ」

「別に、難しいものではないよ」

 

 椎名姉とはそこで話を切り、また小説を読み始める。

 今は主人公が、悪の秘密結社の本部に乗り込んでいったところだ。

 相変わらず、物理法則も何もかも無視した動きをしていた。

 しばらく読んでいると、視線を感じて顔を上げる。

 

「……何だい? 椎名妹」

「ふぇ!? あ、いえ、集中して読んでいるなって、その、見てただけです……」

「なら……別にいいのだが……」

 

 上げた視線の端で、杉崎に椎名姉がヘッドロックを極めているのが見えた。

 いつも通りの光景だ。

 気にするほどのことじゃないと思い、また小説に視線を落とそうとしたところで、会長が立ち上がった。

 

「もう! そろそろ始めるわよ!」

 

 会長はそのままホワイトボードに、今日の議題らしきものを書き始めた。

 それはまたどこかで聞いたことのあるようなもので、それがまた、僕に日常を感じさせた。

 ――いつも通りの、生徒会。

 

 

 

 

 ―――――――――

 

 

 

 

 下校時刻も過ぎ、夕日が窓から射すようになった時刻。

 生徒会室は静かになる。

 会長たちが帰り、残った僕と杉崎が仕事をしているからだ。

 

「いつも言うけどさ、無理に付き合うことはないんだぜ? 俺がやりくてやってるんだし」

「なら、僕もいつも通りに答えさせてもらうよ。僕も、僕がやりたいようにやってるだけだ」

「……そっか。やっぱいいやつだな、直人は!」

 

 杉崎が作業の手を止め、僕の肩に手を回す。

 僕もその勢いに揺さぶられ、手を止めざるを得なかった。

 息を吐き杉崎を見る。

 

「君は行動が唐突すぎるきらいがあるな」

「なんかすまん……」

「別にいい。……さっさと終わらせて、帰りにどこかファミレスでもよるとしよう」

「おう、賛成! んじゃあ、お互い頑張ろうぜ」

「ああ」

 

 杉崎は作業に戻った。

 僕もまた作業に戻る。

 静かな生徒会室に、カリカリと言う音が響いている。

 夕陽が顔を、照らしていた。 



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