シンケンレッド
出典 侍戦隊シンケンジャー
順番 1番目
色 赤
正体 志葉丈瑠
決技 火炎の舞
1
あの魔剣の奴とのデュエルポンド以来、
穏やか日々が流れていた。
ある日はアクアのバイト先を冷やかしに行き、
ある時はジョーさんの剣の稽古に付き合わされ
またある時は総一さんとリアが歌ってるバーに飯を食いに行った。
それで一日も欠かさなかったのが特にやる事がないめぐみんとの一日一爆裂だ。
それは、寒い氷雨が降る夕方。
それは、穏やかな食後の昼下がり。
それは、早朝のさわやかな散歩のついでに。
どんな時でもめぐみんは、毎日例の廃城に魔法を放ち……。
めぐみんの魔法を傍らでずっと見続けていた俺は、
その日の爆裂魔法の出来が分かるまでになっていた。
「『エクスプロージョン』ッッッ!」
「お、今日のはいい感じだな。
爆裂の衝撃波が、ズンと骨身に浸透するかのように響き、
それでいて肌を撫でるような空気の振動が遅れてくる。
相変わらず、あの廃城は不思議と無傷だが、
それでもナイス爆裂!」
「ナイス爆裂!
カズマもだいぶ爆裂道が分かってきましたね。
今日の評価はなかなかに的を射ていて詩人でしたよ。
……どうですか?
カズマも冗談ではなく本気で爆裂魔法を覚えてみては?」
「そうだなあ、面白そうだけど今のパーティーメンバーだと魔法使いは2人もいらないからな。
でも冒険者を引退するときに余裕が有ったら爆裂魔法を覚えてみるのも面白そうだな。」
俺とめぐみんはそんな事を言い合いながら笑い合う。
今日の爆裂魔法の音は何点だった、いや、音量は小さかったが音色は良かったなど、そんなことを語り合いながら。
2
「コロッケー!コロッケ揚げたてですよー!
誰かコロッケ買ってくださいお願いじまずぅうう!
もう店長に怒られるのは嫌なんですぅうう!」
アクアが泣きながら売り子をしているコロッケを頬張りながら俺たちはのどかに空を見上げていた。
「もしかしてだが、その城って元は魔導士かなんかが実験のために建てたか改修した建物なんじゃないか?」
たまたまバッタリ会った総一さんがそんな事を言う。
「確かに私の爆裂魔法で木っ端微塵にならない所を見るとその様ですが、わざわざこんな魔王軍の前線から遠いこの街にそんな大層な物を用意しますか?」
「離れた街だからじゃないか?
魔王軍も王国もそうそう邪魔してこないし、
して来たとしても駆け出し冒険者だしな。」
「なるほど。」
魔王軍と言えば、ずっとこの町の近くに居座っているという魔王軍幹部は何をしているんだろう?
もっと言えば何をしに来たのだろう?
こんな前線から見て奥の方に何か用事があるとは思えないが…
『緊急!緊急!前冒険者の皆さんは、直ちに武装し、
正門前に戦闘態勢で集まってください!』
街中にお馴染みのアナウンスが響き渡る。
俺は武装を整えて現場に向かう。
大勢の冒険者が集まる中、そこに着いた俺たちは
その凄まじい威圧感を放つモンスターの前に呆然と立ち尽くした。
デュラハン。
それは人に死の宣告を行い、絶望を与える首無し騎士。
アンデッドとなり、生前を凌駕する肉体と特殊能力を得たそいつは紫がかった黒の鎧を着こみ、フルフェイスの兜に覆われた自分の首を前に差し出す。
「カズマ!めぐみん!アクア!ソウイチも一緒か!」
するとそのタイミングで戻ってきていたらしいダクネスが途中であったらしいリアと共に俺らの後ろからやって来た。
「あれが、例の魔王軍幹部か?」
「ひっ!……ッッ!」
それを見たリアが頭を押さえて顔をしかめる。
プレッシャーに気分でも害したのだろうか?
「リア?大丈夫か?」
「もしかして、アイツが例のお前と因縁のある魔導騎士か?」
「ち、がう……アイツには首があったし、
目玉みたいな宝石のはまった盾が……ッッッッ!」
総一さんの問いかけにこめかみを抑えながら蹲るリア。
「おいおい大丈夫か?」
ちょっと今あそこに居る魔王よりこっちの対処を優先できないかと俺たちが思った時
「俺は、最近この辺りに越してきた魔王軍の幹部の者だが……」
兜の奥からくぐもった声が聞こえる。
なんだかこみあげっ様にぷるぷると震えると
「まままま、毎日毎日毎日毎日ッッ!!
おお、俺の城に毎日欠かさず爆裂魔法を撃ちこんでくる頭のおかしい大馬鹿アークウィザードは、
誰だああああああーー!!!」
貯めに貯めた鬱憤を爆発させたと言わんばかりに怒鳴り声を上げるデュラハン。
「勝負がしたいなら正々堂々正面から来い!
それが出来ないなら隠れていれば態々取って食ったりはせん!
それをいい事になぜあんな陰湿な嫌がらせを繰り返す!?
頭おかしいんじゃないか!!?」
・・・今気付いたが、爆裂魔法に城って、まさかあの廃城の事か!?
「どうしためぐみん?リアの次はお前も顔色悪いぞ?」
「あのデュラハン、爆裂魔法がどうとか言ってたけどまさかお前…」
ジョーさんがめぐみんをちょっと非難するような目で見る。
ますます青くなるめぐみんだが
「おい、行くんなら行った方がいいぞ。
他の奴らが犯人探しみたいの始めやがった。」
総一さんが指をさすと、俺にキャベツ狩りの後で初級魔法を教えてくれた女の子が引っ立てられそうになっていた。
「まってまって誤解だよ!
私駆け出しで爆裂魔法なんて使えないよ!」
その子と、その子の腕をつかんでいた冒険者の間をあえて割って入りながら前に出ためぐみんは気圧されながらも
「我が名はめぐみん!
爆裂魔法を操りしアークウィザード!」
「めぐみん?貴様ふざけてるのか?」
「ち、違わい!
我は紅魔族随一の魔法の使い手にしてこの街一番の魔法使い!
お前の城に魔法を撃ち続けていたのもお前をおびき出す作戦よ!
こうしてまんまと一人で出て来たのが運の尽きです!」
俺がいい加減爆裂魔法を撃てないとストレス性の病気で死ぬとか言うから連れてってやったのにいつから作戦になったんだろうか?
「結構大見え切っちゃってますけど大丈夫なんですか?」
「しかもさらっと紅魔族で一番とか言ってしまってるしな。」
「黙ってろ。ああいうタイプは一回調子狂うともう元の調子には戻れない。」
「だからっていくらアイツの爆裂魔法でも相手は魔王軍幹部だぞ?」
「でもこれだけ後ろに冒険者が控えてれば大丈夫よ。
このまま見守りましょう。」
俺たちの会話が聞こえたのか頬を赤く染めてカッコつけたポーズのまま杖を握り締めるめぐみん。
デュラハンはクツクツと嗤い。
「なるほどなるほど。
紅魔の者はおかしな名前と極めて高い知能と魔法の才能を持つというからな。
人間如きが魔王様に対抗するために造ったにしては出来はいい。だが惜しいな。」
パチン!とデュラハンが指を鳴らす。
すると奴の鎧の隙間が赤く光り、
「KUWAAAAAA………!!!」
赤い牙の生えた大口の魚のような頭部をもつ異形が現れた。
「ナナシ連中!」
ジョーさんが驚いた声をあげる。
「知ってるのか?」
「……俺達の先生を、剣の師匠を殺した奴が使役していたのも、色は違うがあいつ等だった!」
我慢できんと言わんばかりに手に剣をかけるジョーさん。
「おいジョー!」
「邪魔するなソウイチ!これは、正進怒涛流の戦いだ!」
総一さんを振り払い、
一人剣を抜いて突っ込んでいくジョーさん。
「いいじゃない、行かせてあげれば。」
髪をいじりながら何も心配ないと言う様にいうアクア。
「はぁ!?おい節穴女神あの軍団が見えないのかよ?」
「私が居るのよ?
あんな程度のアンデッドすぐに浄化してあげるわ!」
確かにアクアのターンアンデッドなら行けるかもしれないが
「……おいアイツにターンアンデッド叩き込むにはどれだけ近づければいい?」
「今めぐみんが立ってる所ぐらいまで。」
「……頼んだ。」
総一さんがそう言うとアクアはウインク一つするとジョーさんより早く前に出ていき
「魔王軍の幹部だか何だか知らないけど、
この私の前に出て来るなんて浄化してくださいって言ってるようなもんよ!
アンタが居座るせいでクエストが受けられないのよ!
覚悟なさい!『ターンアンデッド』!」
アクアは左手から純白の光を放つ。
それはデュラハンの召喚したナナシ連中を光に返しながらデュラハンを飲み込み、
<シーーッンケンジャー!>
消し去る事は無かった。
光が当たる直前。頭を首の上に居戻したデュラハンは、
アクアがかつて持たされたのと同じ黒いモバイレーツを使い、赤い戦士に変身した。
漢字の火を模したマスクの侍を思わせるその戦士は
「シンケンレッドだと……そんな、そんな馬鹿な!
レンジャーキーはここに有るのに!?」
信じられないとでも言いたげに何度も手に持ったレンジャーキーとデュラハンが変身した姿を交互に見る総一さん。
デュラハンは腰の刀を抜くと、黒い羽織が装着され
「魔王軍幹部デュラハンのベルディア。
シンケンレッド、参る。」
怪人紹介 その12
ベルディア
出典 この素晴らしい世界に祝福を!
地位 魔王軍幹部
武器 剣
備考 元は真っ当な騎士