僕の選んだ道   作:Kiiron

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※いじめ表現があります


※

 

 

「僕、どうしたらいいんだろう」

母親の後ろで、呆然と立ち尽くしているショータくんが目に入り、戸惑う。

 

 

目の前に浮かび上がった文字の羅列。

 

“生まれ変わりますか?”

“はい”“いいえ”

 

 

「……生まれ……変わる……」

そう呟いて、眉間に皺を寄せた。

もうこんな想いをしたくない――。

したくない、したくない……だけど。

 

ショータくんへと視線をそらす。

「僕は……」

僕は……。

彼へと向かって歩き出す。

戸惑いがちに、彼に手を伸ばす。

触れることのない指。

締め付けられるような痛みに、その場にしゃがみこんだ。

 

どうしよう。

僕、今、独りだ……。

 

 

涙で霞む視界に再びあの文字の羅列が浮かび上がった。

 

ゆっくりと伸びる指。

――それでも。

それでも、僕は。

 

 

急に辺りが真っ暗になる。

波打つ鼓動の音が響く中、微かに人の声がした。

「頑張って下さい、もう少しですよ!」

「スースーハースースーハー」

「踏ん張って」

 

女性の声がする。

それも、三人ぐらいの。

何とも形容しがたい、悲鳴のようなうめき声のような声が耳をつんざく。

 

 

「っんぎゃあ!うんぎゃあ!」

ああ。

僕、生まれ変わったんだ。

本当に。

前世の記憶を伴ったまま……。

 

ぐらりと意識が歪んだ気がした。

走馬灯のように駆け巡る、虐待された日々。

地獄のような時間。

ぐるぐる混ざって交ざって雑ざって……

 

 

気が付いたら、僕はあの時と同じ過ちを犯してた。

 

日だまりのような抱擁を受け、夢心地の僕はつい、魔が差したんだ。

きっと。多分。そうに違いない。

「僕、コータだよ。 今度はイイコにしてるから、外へ出さないでね」

 

いつか聞いた、ヒステリック。

平手でぶたれた頬。

じんじん痛む頬に流れる涙。

鬼のような、母親の顔。

掴まれる髪。

引きずられる、体。

 

お母さん。

お母さん、お母さん。

ねえ、お母さん。

どうしたの? お母さん。

 

ひんやりとした床。

見慣れた光景、蛇口から滴り落ちる滴の音。

 

やめて、やめて、やめて。

お母さん、やめて。

 

 

どうして、なんで。

浴槽に沈めては引き上げられる頭。

 

ぐるぐる回る視界。

――そういえば。

 

コータとして生まれた時も、ちょっとした一言が原因だったような気がする……。

 

 

何だっけ。

何を、言ったんだけ。

薄れゆく意識。

何かを叫ぶ、母親。

「気味が悪い」

――ごめんなさい。

「どうして生まれてきたの」

――ごめんなさい。

「どうして、また記憶が残っているの……!」

 

 

ああ。

そういえば僕、微妙に前世の記憶を持っていたんだっけ。

 

 

ずっと考えてた。

疑問があった。

“どうして僕は再びあの両親のもとへと生まれ変わったのだろうか”

 

怖い話にも出てきた女の子。

境遇こそ違えど、同じ両親のもとへと生まれ変わった。

 

 

彼女はどうして同じ両親を選んだのだろうか。

 

どうして僕は、同じ両親を選んでしまったのだろうか。

あんなに嫌っていたのに……。

どうして、どうして……。

幼き日の、コータの記憶。

 

「お母さん、僕、生まれ変わったんだよ」

 

お母さん。

僕、生まれ変わったんだよ。

 

 

同じ過ちを繰り返す。

誰かのついたため息が、聞こえた気がした。




矛盾、終わります。
次からは違う話になります。
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