ありふれた悪魔狩人《DEVILHUNTER》で世界最強   作:ヴェルザ・ダ・ノヴァ

39 / 73
ハルツィナ樹海 ハジメとシアの共通点

 あれ(前回)から帝国の大型馬車と馬を使いハジメ達は【ハルツィナ樹海】を目指して進み、遂にそこへ到着した。

 

「それでは、ハジメ殿、雫殿、ユエ殿。中に入ったらくれぐれも我らから離れないで下さい。三人を中心にして進みますが、万一はぐれると厄介ですからな。それと、行き先は大樹『ウーア・アルト』で宜しいのですな?」

「ああ、案内よろしくな」

 

 カムは、ハジメの言葉に頷くと、周囲の兎人族に合図をしてハジメ達の周りを固めた。

 

「ハジメ殿、できる限り気配は消してもらってもよろしいですかな?大樹は、神聖な場所となっておりあまり近づくものはいませんが、特別禁止されているわけでもないため、フェアベルゲンや、他の集落の者達と遭遇してしまうかもしれません。我々は、お尋ね者なので見つかると厄介です」

「ああ、了解だ。ある程度、隠密行動はできるから大丈夫だ」

 

 そう言うとハジメ、雫は〝気配遮断〟を使う。ユエも、奈落で培った方法で気配を薄くした。

 

「結構です。では、行きますぞ」

 

 カムの号令と共に準備を整えた一行は、カムとシアを先頭に樹海へと踏み込んだ。

 

 歩いている間、ハジメ達は少し話し込んでいた。

 

「ハジメ、どうして一人で戦おうとしたの?」

「ん?」

 

 雫が言っているのは帝国兵との戦いについてだ。あの時、魔法を使おうとしたユエと閻魔刀を抜こうとした雫を制止して、ハジメは一人で戦うことを選んだ。帝国兵のせいで結局、雫とユエも戦ってしまったが、どうも少し気掛かりになってしまい聞いてみたのだ。

 

「ああ、少しな。ドンナーの実験を」

「……実験?」

 

 ユエが疑問顔で聞き返す。ハジメはドンナーを抜いて見つめた。

 

「魔物や襲ってくる馬鹿共を電磁加速で吹き飛ばしてもいいが、威力の強過ぎで後ろの民家を破壊、家に住んでる家族を皆殺しとかOUTだからな」

「そっか…でもどうして一人で戦ったの?人を殺す覚悟をつけるなら私たちも…」

「いや別にあいつ等を殺すことに戸惑いは無かったぞ。人間を殺したことはないが、人間のようなヤツ等はごまんと殺してきたからな。種族数えたらキリがないぞ。悪魔、ダークエルフ、狼人間、ハーピー、ミノタウロス、ゾンビ、悪霊、まだまだいるぞ?」

「「いえ、もうお腹いっぱいです!」」

 

 地球は意外にもトータスよりファンタジーだった!まあ、悪魔がいる時点で充分ファンタジーなのだが。

 

「……それに、人の嫁を犯すつってんだ。どうしたってキレる」

「「うっ」」

 

 ハジメのイケメンセリフに雫とユエの心に1,000のダイレクトダメージ!頬が紅くなっている!

 

 

 

「これで質問終わりか?」

「……あと、もう一つ」

 

 ハジメは二人にそう聞いて、ユエが一つ質問してくる。ハジメはそれを聞いた。

 

「何だ?」

「なんでシアに優しい?」

 

 そう、実はハジメ、ライセン大峡谷でシアの話を聞いてからシアに優しいのだ。それもちょっと過保護じゃないかと思うほどに。

 

「う〜ん、重ねてんのかもな」

「「重ねてる?誰に?」」

「過去の俺にだ」

 

 ハジメはそう言って遠い昔を見るような目をしていた。その目は少し悲しそうだ。

 

「昔、中学一年の頃だったか?俺、中一は銀髪で過ごしてたんだ。アメリカじゃ金髪とかいたから銀髪もなんとも思われなかったが日本じゃ違かった。数人に「銀色の怪物」「きみ悪い髪色の化け物」と言われリンチで蹴られて殴られて、気づいたらソイツ等をぶちのめしてた。それからだな、人に対しても力を躊躇わなくなったのは。中学二年からは髪も黒に染めたんだ。シアも「怪物」だのなんだの言われたし、シア自身も「怪物」って言われんのが怖かったらしいしな。だから、せめて一緒の間は優しくしてやろうと思って…ってどした?」

 

 ハジメは自分の過去を語っていると、雫はハジメの頭をナデナデして、ユエはギュッと背中に飛び乗って抱きしめてきた。周りを見てみると数十人の兎人族が目に涙を浮かべている。

 

「「ハジメの過去。予想より辛い……/辛かった……」」

 

 雫とユエの言葉に兎人族全員がうんうんと頷いていていた。

 

 

 

 

 それからしばらく歩き進むと、突然無数の気配に囲まれて全員歩みを止める。殺意、連携は凄まじいことこの上ない。カム達はせっせとウサミミを使い索敵をしている。

 

 そして、何かを掴んだのか苦虫を噛み潰したような表情を見せた。シアに至っては、その顔を青ざめさせている。ハジメと雫、ユエも相手の正体に気がつき、面倒そうな表情になった。

 

 その相手の正体は……

 

「貴様等、何故人間といる!種族と族名を名乗れ!!」

 

 虎模様の耳と尻尾を付けた、筋骨隆々の亜人だった。

 

 樹海の中で人間族と亜人族が共に歩いている。

 

 その光景に、虎の亜人はカム達に裏切り者を見るような眼差しを向ける。その手には両刃の剣が抜身の状態で握られていた。周囲には数十人の亜人が殺気を滾らせて包囲網を敷いていると思われる。

 

「あ、あの私達は・・・」

 

 カムが何とか誤魔化そうと冷汗を流して弁明を試みるが、その前に虎の亜人の視線がシアが捉えられ、その眼が大きく見開かれる。

 

「白い髪の兎人族だと?貴様ら報告のあったハウリア族か……亜人族の面汚し共め!長年、同胞を騙し続け、忌み子を匿うだけでなく、今度は人間族を招き入れるとは!反逆罪だ!もはや弁明など聞く必要もない!全員この場で処刑する!総員かッ!?」

 

ビュゥゥゥゥゥウウウウオオオオオオ!!

 

 虎の亜人が問答無用で攻撃命令を下そうとしたその瞬間、急に風が吹き荒れ始めた。虎の亜人はその発生場所を見ると、そこには戦斧(七戦斧ヒュドラ)を掲げているハジメがいた。七戦斧ヒュドラの刃は緑色に輝き風を呼んでいる。次に空に雷雲が立ち込め稲妻が雷鳴と共にハジメに直撃した。否、七戦斧ヒュドラの刃に当たり稲妻が吸収された。その刃には黄色と白が混ざったプラズマが纏われている。

 

「おい、俺の依頼人に手ぇ出すなよ。ハウリア族の安全は俺が確約している。もし、コイツ等(ハウリア族)を殺すんなら、お前等を楽しいparty(血祭り)に招待するぜ?」

 

 ハジメがそう言うと、七戦斧ヒュドラを思い切り振りかぶって振り下ろす。すると、木の一本に稲妻を落とした。その木は黒焦げになっており、プシュゥープシュゥーと音を立てながら白煙をあげている。

 

 それを見て虎の亜人は滝の様な冷や汗を流して、恐慌に陥って意味もなく喚いてしまいそうな自分を必死に押さえ込んでいる。彼の周りの亜人族は全員が今の一撃を見て腰が抜けたのか尻餅をついて座っている。

 

(なんだ……?なんだ今の一撃は!?あんな攻撃が出来るのか!?詠唱もせず?冗談じゃない!こんな、こんな奴が人間なのか!まるっきり怪物、いや、人間の皮を被った悪魔じゃないか!)

 

 恐怖心に負けないように内心で盛大に喚く虎の亜人など知ったことかというように、ハジメは七戦斧ヒュドラを虎の亜人に向けて言葉を続ける。

 

「だが、ここで退くのであれば手は出さねぇと約束する。俺も無闇に攻撃したりはしたくねぇしな。さっさと決めてくれよ?tigerman」

 

 虎の亜人は確信した、想像してしまった。攻撃命令を下した瞬間、目の前の男が自分達を蹂躙、殺戮されていくところを……

 

 虎の亜人は、フェアベルゲンの第二警備隊隊長だった。フェアベルゲンと周辺の集落間における警備が主な仕事で、魔物や侵入者から同胞を守るという仕事に誇りと覚悟を持っていた。その為、例え部下共々全滅を確信していても安易に引くことなど出来なかった。

 

「…その前に、一つ聞きたい」

 

 虎の亜人は掠れそうになる声に必死で力を込めてハジメに尋ねた。ハジメは視線で話を促した。

 

「…目的は何だ?」

 

 端的な質問。しかし、返答次第では、ここを死地と定めて身命を賭す覚悟があると言外に込めた覚悟の質問だ。虎の亜人は、フェアベルゲンや集落の亜人達を傷つけるつもりなら、自分達が引くことは有り得ないと不退転の意志を眼に込めて気丈にハジメを睨みつけた。

 

「ウーア・アルトの下へ行きてぇんだよ」

「何?大樹の下へ………だと?何のために?」

 

 てっきり亜人を奴隷にするため等という自分達を害する目的なのかと思っていたら、神聖視はされているものの大して重要視はされていない"大樹"が目的と言われ若干困惑する虎の亜人。〝大樹〟は、亜人達にしてみれば、言わば樹海の名所のような場所に過ぎないのだ。

 

「そこに七大迷宮の入口がある筈だからだ」

「何を言っている?七大迷宮とは、この樹海そのものだ。一度踏み込んだが最後、亜人以外には決して進むことも帰る事も叶わない天然の迷宮だ」

「ああ、確かにここは迷宮と言っても過言ではないだろう、だが、七大迷宮ではない。そう言うには魔物が弱すぎる」

「弱い?」

「ああ。もしこの樹海が本当の七大迷宮なら途轍もなく強い魔物がいてもおかしくない、それこそベヒモス級のな。だが、この樹海には強者の気配が全くない。それに……」

「なんだ?」

「七大迷宮は〝解放者〟今では〝反逆者〟と呼ばれる者たちが作った試練だ。亜人族だけがeasy clear出来るのは試練とは言わねえだろ?だからこの樹海は七大迷宮じゃねぇのさ」

「・・・」

 

 ハジメの話を聞き終わり、虎の亜人は困惑した。ハジメの言っていることに理解が出来ないからだ。樹海の魔物を弱いと断じることも、解放者とやらも、迷宮の試練とやらも・・・・・・聞き覚えのないことばかりだ。普段なら、戯言と切って捨てていただろう。

 

 しかし、今この場において、ハジメが適当なことを言う筈がない。圧倒的に優位に立っているのはハジメの方であり、言い訳など必要ないからだ。しかも、妙に確信に満ちていて言葉に力がある。本当に亜人やフェアベルゲンには興味がなく大樹自体が目的なら、部下の命を無意味に散らすより、さっさと目的を果たさせて立ち去ってもらうほうがいい。

 

 虎の亜人は、そこまで瞬時に判断した。しかし、ハジメ程の驚異を自分の一存で野放しにするわけには行かない。この件は、完全に自分の手に余るということも理解している。その為、虎の亜人はハジメに提案した。

 

「・・・お前が、国や同胞に危害を加えないというなら、大樹の下へ行くくらいは構わないと、俺は判断する。部下の命を無意味に散らすわけには行かないからな」

 

 その言葉に、周囲の亜人達が動揺する気配が広がった。樹海の中で、侵入して来た人間族を見逃すというのが異例だからだろう。

 

「だが、一警備隊長の私ごときが独断で下していい判断ではない。本国に指示を仰ぐ。お前の話も、長老方なら知っている方もおられるかもしれない。お前に、本当に含むところがないというのなら、伝令を見逃し、私達とこの場で待機しろ」

 

 冷や汗を流しながら、それでも強い意志を瞳に宿して睨み付けてくる虎の亜人の言葉に、ハジメは感心しながら答えた。

 

「OKだ、ちゃんと伝えさせろよ?」

「無論だ。ザム!聞こえていたな!長老方に余さず伝えろ!」

「了解!」

 

 虎の亜人の言葉と共に、気配が一つ遠ざかっていった。それを確認してハジメも七戦斧ヒュドラを〝魔具庫〟に戻し伝令が帰ってくるのを待ったのだった。

 

 To be continued……

登場人物の設定資料みたいなのいりますか?(やるなら三章)

  • やれよ(章の最初)
  • やれよ(章の最後)
  • 両方やれよ(章の最初と最後)
  • どっちでもいい
  • さっさと話進めろや!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。