ありふれた悪魔狩人《DEVILHUNTER》で世界最強 作:ヴェルザ・ダ・ノヴァ
濃霧の中、ハジメ達一行は大樹へ歩みを進めていた。ちなみに亜人混合大隊(仮)はフェアベルゲンで留守番している。なので、現在ここにいるのはハジメ、雫、ユエ、シア、カムの五人だ。
先頭をカムに任せ、雑談しながら進むこと十五分。一行は遂に大樹の下へたどり着いた。
大樹を見たハジメの第一声は、
「………
という驚き半分、疑問半分といった感じのものだった。雫とユエも、予想外なのか微妙な表情だ。二人は、大樹についてフェアベルゲンで見た木々のビッグスケールバージョンを想像していたのである。
実際はものの見事に枯れていた。
確かに直径50m程と巨大ではあった。だが、明らかに周囲の木々とは異なる異様だ。周りの木々が青々とした葉を盛大に広げているのにもかかわらず、大樹だけが枯れているのである。
「大樹は、フェアベルゲン建国以前より枯れていると聞きます。ですが、朽ちることはありません。枯れたまま変化なく、周囲の霧の性質と大樹の枯れながらも朽ちないという点から、いつしか神聖視されるようになりました。それだけな為、観光名所のようなものです」
ハジメ達の疑問にカムが解説を入れる。それを聞きながらハジメは大樹の根元まで歩み寄った。そこには、アルフレリックが言っていた石板が建てられていた。
「これは……オルクスの文様……!」
石版には七角形と頂点の位置に七つの文様が刻まれていた。オルクスの部屋の扉に刻まれていたものと同じだ。ハジメは確認のため、オルクスの指輪を取り出し確認したが、指輪の文様と石板の文様の一つはやはり同じものだった。
「
大樹が大迷宮の入り口だと確信したハジメ達だったが問題は此処からどうすれば大迷宮へ入る事が出来るのかである。アルフレリックにも口伝は聞いているが、入口に関する口伝はなかった。
ハジメがどうしよか悩んでいると、石板を観察していたユエが声を上げる。
「ハジメ……これ見て」
「ん?何かあったか?」
ユエが注目していたのは石板の裏側だった。そこには、表の七つの文様に対応する様に小さな窪みが開いていた。
「フッ、なるほどな。そりゃ口伝があるわけねぇよな」
ハジメは、オルクスの指輪を表のオルクスの文様に対応している窪みに嵌めてみる。すると、石板が淡く輝き出し、次第に光が収まると、代わりに文字が浮き出始める。
「ハジメ、どういうことよ?」
「つまりだ。ここの大迷宮のヒントが見てぇなら、どっかの大迷宮一つ以上clearしとけってことだ。その証拠に、指輪を嵌めたら文字が出てきたからな。口伝がねぇ訳だよ、見れねぇんだからな」
ハジメの言葉の通り、石板には
〝四つの証〟
〝再生の力〟
〝紡がれた絆の道標〟
〝全てを有する者に新たな試練の道は開かれるだろう〟
と書かれていた。
「けど、これどういう意味ですか?ハジメさん」
「……四つの証は……他の迷宮の証?」
「……再生の力と紡がれた絆の道標は?」
頭を捻る雫にカムが答える。
「おそらく、紡がれた絆の道標は、亜人の案内人を得られるかどうか、かと思われます。亜人は基本的に樹海から出ません。ハジメ様のように、亜人に樹海を案内して貰える事は例外中の例外ですから」
「再生の力は………ユエとハジメかしら?」
残る〝再生の力〟に固有魔法〝自動再生〟を連想した雫は二人の名を出すがが、ハジメが否定した。
「いや、それは違う。もしそうだった場合、〝自動再生〟を持ったヤツを何年待つんだ?そんな不確定要素を組み込むほど、ここの解放者も馬鹿じゃねぇだろ?」
「確かに…」
「とすると、この大迷宮に挑むには、再生に関する神代魔法を含めた大迷宮四つをclearしなきゃならねぇってわけだ」
目の前の枯れている樹を再生する必要があるのでは?と推測するハジメ。三人も、そうかもと納得顔をする。
「はぁ~、ちくしょう。今すぐ攻略は無理ってことか……面倒くさいが他の迷宮から当たるしかないな……」
覚悟はしていたものの、ここまで来て後回しにしなければならないことに、ハジメは歯噛みした。しかし、大迷宮への入り方が見当もつかない以上、悩んでいても仕方ない。気持ちを切り替えて先に三つの証を手に入れるべきだろう。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
現在、ハジメ達は大樹から帰り、出発の準備をしており、ハウリア達に別れの挨拶をしていた。
「んじゃお前ら!俺達は先に他の大迷宮を攻略してくることになった。だから一旦は此処で別れだ。だが、俺達はまた必ずここに帰ってくる!だから、お前達にさよならは言わない。また会おう!」
「はっ!我等亜人族はいつまでもハジメ様方のお帰りをお待ちしております!!」
『お待ちしております!!』
「おお!フェアベルゲンの繁栄と発展を願っているぞ!」
「行ってきます、父様!皆さん!」
こうしてハジメ達はシアを新たな仲間に迎え、カム達の見送りを背に、新たなる迷宮への旅を再開する事となった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
樹海の境界でカム達の見送りを受けたハジメ、雫、ユエ、シアは再びシュタイフに乗り込んで平原を疾走していた。シュタイフにはハジメが作製したサイドカー〝ストーム〟を取り付け、ハジメ、雫の順にシュタイフに乗り、シアがユエを抱っこする感じでストームに乗っている。
「ハジメさん。そう言えば聞いていませんでしたが目的地は何処ですか?」
「え?ああ、ライセン大峡谷だ」
「ライセン大峡谷?」
「ああ、一応、ライセンも七大迷宮があるって言われてっからな。グリューエン大火山を目指すルートで行くから、西大陸に行くなら東西に伸びるライセンを通りながら行けば、途中で迷宮が見つかるかもしれねぇだろ?」
「そんなついで感覚でライセン大峡谷を渡るんですか……」
そう言われ、シアは思わず頬を引き攣らせた。トータスの人にとってライセン大峡谷は地獄、又は、処刑場というのが一般的な認識であり、彼女に至ってはつい最近一族が全滅しかけた場所でもある。
そんな場所を唯の街道と一緒くたに考えている事に内心動揺する。
ハジメは、シアの動揺がわかり、声を掛ける。
「しっかりしろ!今のお前なら谷底の魔物なんかにゃ負けねぇよ。ライセンは、放出された魔力を分解する場所だぞ?身体強化に特化したお前は何の影響も受けずに動けるんだ。まぁ、俺もだが………頼りにしてんぞ?」
「ッ!わっかりましたぁ~!任せてください!」
能力故の優位性を説き、微笑んで信頼している旨を伝えるハジメ、その威力は絶大だった、とだけ言っておく。
「ではライセン大峡谷に行くとして、今日は野営ですか?それとも、近場の村か町に行きますか?」
「町だな。今後のために素材の換金、物資の調達がしたいからな……それに、何と言ってもコーヒー豆が欲しいんだよ。奈落に落ちてからコーヒー一杯も飲んでないからな」
今後、町で買い物や宿泊をするなら金銭が必要になる。素材なら腐る程持っているので換金してお金に替えておきたかった。料理面は、ハジメの料理が某天の道を行き、総てを司る男並みに上手かったことから、飯関係は解決していた。しかし、ハジメからしたら、調味料はろくに揃っていなかったり、約二ヶ月間コーヒーが飲めなかったりで、いい加減に我慢の限界であった。ちなみに、オスカー・オルクスの隠れ家にも食材はあったが、コーヒーや調味料は大して無かった。
それに、ライセン大峡谷にある大迷宮に入る前に、落ち着いた場所でやりたい事もある。
「ハジメさんの料理はとても美味しいですから、今から楽しみですぅ」
「確かにね」
「…んっ。ハジメの血も美味しいけど、料理も美味」
そんな感じで数時間ほど走り、日が暮れ出した頃、前方に町が見えてきた。ハジメの頬が綻ぶ、奈落から出て空を見上げた時のような、〝戻ってきた〟という気持ちが湧き出したのだ。雫とユエもどこかワクワクしているように見える。きっと、ハジメと同じ気持ちなのだろう。
「んじゃ、飛ばすぞ!」
ハジメは、シュタイフのスピードを上げ急行した。
あとちょっとで三章か……