ありふれた悪魔狩人《DEVILHUNTER》で世界最強   作:ヴェルザ・ダ・ノヴァ

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イカれた町、ブルック 前編

 数十分後、そろそろ町の方からもハジメ達を視認できそうなので、シュタイフ&ストームを〝宝物庫〟にしまい、歩きに切り替えるハジメ達。流石に、漆黒のバイクで乗り付けては大騒ぎになるだろう。

 

 そうして歩いていくこと少し、町の門にたどり着いハジメ達は、そこで門番をしていると思わしき冒険者風の男に呼び止められた。

 

「止まってくれ。ステータスプレートを。あと、町に来た目的は?」

 

 規定通りの質問なのか、どことなくやる気なさげな門番に対して、ハジメはステータスプレートを取り出して答えた。

 

「食料の補給がメインだ。旅の途中でな」

「ふ~ん」

 

 気のない声で相槌を打ち、ハジメのステータスプレートをチェックした門番は、問題なしと判断してステータスプレートを返した。

 

「そっちの三人は……」

 

 門番が雫達にもプレートの提出を求めようと、視線を向ける。そして硬直した。みるみると顔を真っ赤に染め上げると、ボーと焦点の合わない目で雫とユエを交互に見ている。門番の男は二人に見惚れて正気を失っているのだ。

 

 ハジメは指をパチンッパチンッと弾きながら声を掛ける。

 

「あぁ……大丈夫か?これが彼女()のステータスプレートだ」

「あ、ああ、すまない」

「それで、こっちの子(ユエ)のステータスプレートだがぁ……道中襲撃してきやがった魔物と戦っているうちに無くしちまってな…もう一人の兎人族は、察してくれ」

 

 その言葉に門番は成る程と納得したように頷き、ハジメ達に羨望の眼差しを向けた。

 

「それにしても随分な綺麗どころを手に入れたな。白髪の兎人族なんて相当レアなんじゃないか?あんたらって意外に金持ち?」

「ご想像にお任せするぜ」

「まぁいい。通っていいぞ」

「ああ、どうも。おっと、そうだ。素材の換金場所は何処だ?」

「あん?それなら、中央の道を真っ直ぐ行けば冒険者ギルドがある。店に直接持ち込むなら、ギルドで場所を聞け。簡単な町の地図をくれるから」

「おぉ、そいつは親切だな。ありがとよ」

 

 門番から情報を得て、ハジメ達は門の中に入っていった。門のところで確認したがこの町の名前はブルックと言うらしい。

 

 町中はそれなりに活気があった。ホルアドほどではないが露店も結構出ており、呼び込みをする声や白熱した値切り交渉の喧騒が聞こえてくる。こういう騒がしさは訳もなく気分を高揚させるもので、ハジメ達も楽しげに目元を和らげていた。

 

 シア以外は。

 

 シアは先程からぷるぷると震えて、涙目でハジメを睨んでいた。怒鳴ることもなく、ただジッと涙目で見てくるので、流石に気になって溜息を吐くハジメ。

 

「あぁー…どうした?」

「この首輪!これのせいで奴隷と勘違いされたじゃないですか!ハジメさん、わかっていて付けたんですね!うぅ、酷いですよぉ~、私達、仲間じゃなかったんですかぁ~」

 

 シアが怒っているのは、旅の仲間だと思っていたのに、意図して奴隷扱いを受けさせられたことが理由のようで、相当ショックだったようだ。もちろん、ハジメが付けた首輪は本来の奴隷用の首輪ではなく、シアを拘束する力はない。それは、シアもわかっている。だが、だとしても、やはりショックなものはショックなのだ

 

 ハジメはカリカリと頭を掻きながら目を合わせる。

 

「仕方ねぇだろ!?俺だって首輪嫌いなんだよ!俺が何ヶ月間首輪されてたと思ってんだ!?それでも我慢して、シアの安全のためにしてんだよ。誰かの奴隷だって証付けとかなきゃ、絶え間無い人攫いの嵐だ。……ってなに〝エキドナ〟みてぇにクネクネしてんだ?」

 

 言い訳があるなら言って見ろやゴルァ!と言いたげに睨んでいたシアだったが、その訳を聞く内に照れた様に頬を赤らめてイヤンイヤンと言いたげに身体をくねらせ始めた。二人が冷めた表情でシアを見ている。

 

「も、もう、ハジメさん、こんな公衆の面前でいきなり何を言い出すんですかぁ。そんな、容姿もスタイルも性格も抜群で、世界一可愛くて魅力的だなんて、恥ずかアヴェバっ!?」

「「調子に乗るな!」」

 

 調子に乗って話を盛った事で、雫とユエのから黄金の右ストレートを同時に食らったのは言うまでも無い。

 

「はぁ~、とりあえず、さっさと行くぞ」

 

 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 ハジメ達は、メインストリートを歩いていき、一本の大剣が描かれた看板を発見する。かつてホルアドの町でも見た冒険者ギルドの看板だ。規模は、ホルアドより二回りほど小さい。

 

 ハジメは看板を確認すると重厚そうな扉を開き中に踏み込んだ。

 

 ギルドは荒くれ者達の場所というイメージだが、意外に清潔さが保たれた場所だった。入口正面にカウンターがあり、左手は飲食店になっており、何人かの冒険者と思われる者達が食事をしたり雑談したりしている。酒の匂いはしないあたり、置いていないのだろう。

 

 ハジメ達がギルドに入ると、冒険者達が当然のように注目してくる。最初こそ、見慣れない四人組ということで注意を引いたが、彼等の視線が雫達に向くと、途端に瞳の奥に見える好奇心が増した。中には「ほぅ」と感心の声を上げる者や、門番同様、ボーと見惚れている者、恋人なのか女冒険者に殴られている者もいる。平手打ちではない所が冒険者らしい。

 

 テンプレのように、ケンカを売ってくる者がいるかとも思ったが、意外に理性的で観察するに留めているようだ。足止めされなくて幸いとハジメはカウンターへ向かう。

 

 カウンターには大変魅力的な……笑顔を浮かべたオバチャンがいた。恰幅がよく、横幅がユエ二人分はある。

 

「おや、珍しいね。大体のここに始めてくる男達は、美人の受付じゃなくてガッカリするのにねぇ。そんなこと考えなかったようだね」

「当たり前だろ。逆にそんなこと考える奴がいんのか」

 

 ハジメの返答に、冒険者達が「うわ、説教されてねぇ。珍しいな」みたいな表情でハジメを見ている。どうやら、冒険者達が大人しいのはオバチャンのおかげのようだ。

 

「さて、じゃあ改めて、冒険者ギルド、ブルック支部にようこそ。ご用件は何かしら?」

「ああ、素材の買取を頼みたい」

「素材の買取だね。じゃあ、まずステータスプレートを出してくれるかい?」

「あいにくだが、冒険者じゃないんだ」

 

 冒険者には様々な特典が付いて来る、ギルドと提携している宿や店は一、二割程度は割引きが利き、移動馬車を利用するときも高ランクなら無料で使えたりするのだ。

 

 生活に欠かせない魔石や回復薬を始めとした薬関係の素材は冒険者が入手した物が殆どだ。それらは魔物からの襲撃という危険を冒さなければ手に入れられない。

 

「あんたら冒険者じゃなかったのかい?」

「ああ、すまねぇな」

「いんや、大丈夫だよ。どうする?登録しておくかい?登録には千ルタ必要だよ」

 

 ルタとは、トータスの北大陸共通の通貨だ。〝ザガルタ鉱石〟という特殊な鉱石に他の鉱物を混ぜ、異なった色の鉱石ができ、それに特殊な方法で刻印したものが使われる。貨幣価値は日本と同じなため、青が一円、赤が五円、黄が十円、紫が五十円、緑が百円、白が五百円、黒が千円、銀が五千円、金が一万円となっている。

 

「ふむ、ならしておくか。悪いんだが、今は持ち合わせがなくてな。買取金額から差っ引いてくれ。もちろん、最初の買取額のままでいい」

「可愛い子三人もいるのに文無しなんて何やってんだい。ちゃんと上乗せしといてあげるから、不自由させんじゃないよ?」

 

 ハジメは、有り難く厚意を受け取っておくことにし、ステータスプレートを差し出す。戻ってきたステータスプレートには、新たに〝冒険者〟と職業欄に追加され、更にその横に青色の点が付いている。

 

 青色の点は、冒険者ランクだ。上昇するにつれ赤、黄、紫、緑、白、黒、銀、金と変化する。冒険者ランクは通貨の価値を示す色と同じである。つまり、青色の冒険者とは「一円程度の価値しかない雑魚」と言われているのと一緒ということだ。きっと、この制度を作った初代ギルドマスターの性格は捻じ曲がっているか悪魔に憑りつかれていたに違いない。

 

「男なら頑張って黒を目指しなよ?お嬢さん達にカッコ悪いところ見せないようにね」

「ああ。それで、買取はここでいいのか?」

「構わないよ。あたしは査定資格も持ってるから見せてちょうだい」

 

 オバチャンは受付だけでなく買取品の査定もできるらしい。ハジメは、あらかじめ〝宝物庫〟から出してバックに入れ替えておいた素材を取り出す。品目は、魔物の毛皮や爪、牙、魔石だ。カウンターの受け取り用の入れ物に入れられていく素材を見て、再びオバチャンが驚愕の表情をする。

 

「こ、これは…!とんでもないものを持ってきたね…。樹海の魔物の奴だね?」

「ああ、やっぱ珍しいか?」

「そりゃあ、樹海の中じゃあ、人間族は感覚を狂わされるし、一度迷えば二度と出てこれないからハイリスク。好き好んで入る人はいないねぇ。亜人の奴隷持ちが金稼ぎに入るけど、売るなら中央で売るさ。幾分か高く売れるし、名も上がりやすいしね」

 

 それからオバチャンは、全ての素材を査定し金額を提示した。買取額は九十六万八千ルタ。滅茶苦茶な額だ。ハジメは、「やっぱ、アイツ等狩り過ぎだろ……」と、汗を流しながら脳裏にハウリア達を思い浮かべた。しかも、本来はこれにギルドの登録料が上乗せされているのだから、正確にはもっと高額だろう。

 

「でも、いいのかい?中央ならもっと高く売れるよ?」

「さっきも言ったが、金がなくてな。ここで頼みたい」

「そうかい」

 

 ハジメは百四枚のルタ通貨を受け取る。

 

「もう用事はないかい?」

「ああ、もu、おっと、そうだ!門番から、ここなら町の簡易な地図を貰えると聞いたんだが…」

「ああ、ちょっと待っといで……ほら、これだよ。おすすめの宿や店も書いてあるから参考にしなさいな」

 

 門番からの話を思い出したハジメがその話題を持ち掛けると、直ぐに出してくれたが…

 

「あぁ……これいくらだ?」

「タダだよ。当たり前じゃないか」

「おいおい、いいのか?こんな立派な地図を無料で。申し訳ないんだが……?」

 

 手渡された地図は、中々に精巧で有用な情報が簡潔に記載された素晴らしい出来だった。これが無料とは、ちょっと信じられないくらいの出来である。

 

「構わないよ、あたしが趣味で書いてるだけだからね。書士の天職を持ってるから、それくらい落書きみたいなもんだよ」

「そうか。ありがとよ」

「いいってことさ。それより、金はあるんだから、少しはいいところに泊りなよ。治安が悪いわけじゃあないけど、その三人なら関係なく暴走する男連中が出そうだからね」

「なに、そん時は後悔するまでぶちのめすさ。それじゃ、ありがとな」

 

 オバチャンは最後までいい人で気配り上手だった。

 

 ハジメは礼を言って入口に向かって踵を返した。三人も頭を下げて追従する。食事処の冒険者の何人かがコソコソと話し合いながら、最後まで雫とユエ、シアの三人を目で追っていた。

 

「ふむ、いろんな意味で面白そうな連中だね……」

 

 後には、そんな女性の楽しげな呟きが残された。

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